森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
上 下
387 / 418
アールドット国王の別邸

アースルーリンド一行の動向を見せて貰う、王とラステルとエウロペ

しおりを挟む
 翌朝、通常道理起きて食事を取ったのは、エウロペとラステルだけ。
二人は綺麗に片付けられた書斎で、召使いの給仕で朝食を取る。

パンにバターを塗りつけながら、エウロペは向かいに座るラステルに尋ねる。
「ロットバルト殿は?」
ラステルは螺旋階段裏の、寝室の扉を見た後、ため息交じりに囁く。
「…酒が入ってますからねぇ…」
エウロペは笑顔で頷いた。
「レジィとテリュスも同様ですよ。
オーガスタスは…」
「ぐっすり寝ていたから。
起こしませんでした。
いざと言う時、彼は頼りになるから。
ゆっくり休んで欲しい」
エウロペも、同意して頷いた。
「戦闘時。
彼が声を発すると、皆奮い立つ。
負ける気がしない。
そういう人は…滅多にいない」
ラステルも頷く。
「アースルーリンドは、樹海から盗賊の襲撃が頻繁だとか。
戦い慣れてると言う事もありますが…。
オーガスタスだけでなく、ローフィスもギュンターも。
弱者を庇いながら戦う事に、慣れている…。
彼らのお陰で、私はデルデの手当が出来た。
デルデが無事なのは…彼らのお陰だ」

エウロペはそう告げて俯く、ラステルを微笑んで見た。
「そう…ゆっくり、告げてる間もありませんけどね」
ラステルは顔を上げて、言い切った。
「本当ですよ!」
それを聞いたエウロペが笑うので、ラステルも釣られて笑った。

けれど突然、扉が開いてバルバロッサ王が颯爽と入って来る。
どかっ!と二人が見渡せる椅子に腰掛けると、ナイフとフォークを取り上げ、喋り始めた。
「…オーデ・フォール中央王国軍が通れるよう作業してた、偵察隊とお前の配下、撤退させたぞ!」

ラステルは頷く。
「妨害が…激しくなった?」
バルバロッサ王は無言で頷く。

エウロペが囁く。
「…では…攻め入って来ますね。
何としても…オーデ・フォール中央王国軍がこちらに到達する前に、王子をさらうつもりで」

ラステルがすまなそうに、バルバロッサ王をチラ見する。
「…そんなおつもりじゃなかったでしょうに…お手数おかけします」

けれど王は肉の塊をフォークで刺して頬張り、呻く。
「確かに今、あんたらを追い出せば、この城は安泰」

ラステルも。
エウロペにも見つめられ、王は二人に視線を送る。
「…するか。
そんな薄情じゃ無い」
言って、ふとフォークを止める。
「けど追い出さない代わり、エディエルゼに抱かせろと言えば…。
今なら、条件飲むかな?」

けれどその質問は自分らに向けられていず、ラステルもエウロペも顔を見合わせる。

王は気づいて二人を見ると、グラスを取り上げ笑った。
「気にするな。
戯れ言だ」

「…戯れ言に聞こえませんが」
ラステルが呟き、エウロペも頷いた。

王は快活に笑うと
「その前に、戦闘だ。
魔法使いに、敵勢力の今の配置と攻め込み予定を聞きたい」
と言い、食事を続けるのを見て、エウロペもスプーンを口に運び、ラステルは肩すくめた。


 三人がデルデの寝かされている、寝室へと訪れる。
シュテフだけが起きていて病人の横に立ち、オーレもミラーレスも、部屋の隅の長椅子で眠り込んでいた。
エドウィンとシュアンも寝ていて、起きてるのはレンフとラフィーレだけ。

二人は食事をしていて、顔を向ける。

レンフは入って来る三人の中にエウロペを見つけるなり、彼だけを見つめるので、シュテフが
「レンフ…」
と釘刺した。

レンフが顔を下げるのを見て、王もラステルもエウロペもが、意味が分からず疑問に首捻る。
ラフィーレが、レンフの見てる映像を皆の脳裏に送った。

途端…エウロペの衣服が透け始め、彼がどんどん裸になっていく様が映し出され、エウロペは王とラステルに振り向いて見つめられ、顔を思いっきり下げた。

「…透けて見えるのか?」
王に聞かれ、シュテフが憮然、と唸る。
「そう。
ちなみにレンフは、己の欲のためにしか、ほぼ能力を使わない」
レンフはふくれっ面で言い返す。
「あんたらに、今でも光、送ってやってるだろう?!」
シュテフは無言で頷き、心話で告げた。
“そこだけは、評価してやる”

バルバロッサ王が口開く前に、ラフィーレが微笑む。
「長くなるから、座ったら?
アースルーリンドの一行、今敵陣地に入ったから。
彼らの意識を追って状態見るから」

王とラステル、エウロペは顔を見合わせ、近くの椅子に腰掛けた。

間もなく、アースルーリンドの一行が崖の入り口から中に入る映像が、皆の脳裏に浮かび上がった。
真っ暗な中、岩だらけの洞窟の、坂道を上がって行く。
暫くゴツゴツした岩道を馬で駆け昇り、やがて光で包まれた壁の前に出ると、ディアヴォロス左将軍がその壁の中に、馬ごと飛び込んだ。

他の皆も、次々飛び込む。

出た先は樹海の端。
左将軍は止まること無くそのまま駆け続け、夜明け頃、森の中の宿屋に辿り着いた。

宿屋の扉を開けると、中にフードを被った男がいる。
彼はディアヴォロスを迎え入れ、一行は休憩に入った。

フードの男が、ディアヴォロスと話し込む間。
ディンダーデンは横に座るとても綺麗なシェイルを、ジロジロ見る汚いゴロツキ風の、他の客達を睨み付けていた。

「俺に、喧嘩売ってもいいぞ。
いつでも買ってやる」
そう凄み、青い瞳の流し目をくべると。
ゴロツキ達はぞっとし、すごすご視線をシェイルから外してた。

間もなく一行は騎乗して駆け出す。
先頭はフードの男とディアヴォロスで、フードの男が風でフードが落ちると、ディアヴォロス同様黒髪だった。

“ディングレー…案内役のために先に来てたんだね…”

ラフィーレの囁きに、王が尋ねる。
“あの黒髪の男も、仲間か?”
ラフィーレは頷く。
“「左の王家」で、ディアヴォロス様の年下のいとこ”

直ぐ、スフォルツァらしき眠たげな声が、皆の脳裏に響く。
“…我らと一緒にアースルーリンドを出たのに…王宮には行きたくない…って…。
ダダこねて、残ったんですよ…。
左将軍の案内役に抜擢されたんですね…”

ラフォーレンもぼやく。
“…下町の酒場で、好きなだけ遊ぶ気だったんでしょうが…残念でしたね。
くくくくくっ…”

ラステルが、寝ながら話してる風のラフォーレンの、楽しそうな笑い声に呆れて尋ねた。
“…一緒に来るはずだったの?
どうして王宮は、嫌なのかな?
ゼイブンは大好きなのに”

スフォルツァの、凄く眠そうな声が響く。
“ディングレーは王族なので。
名乗ると王族扱いされ、王族しなきゃならなくなって、肩が凝るんでしょうね…。
見て下さい、今の彼。
まるで無頼の風来坊。
だれがあれ見て、王族だって信じます?”

皆、脳裏のディアヴォロスの横で併走し、騎乗してる黒髪の男を見る。
飾りのまるで無い、質素な暗い色の衣服とマント。
男らしく整った顔立ち。
真っ直ぐの長い黒髪。
狼を思わせる、鋭い青の瞳。

確かに強そうに見えた。
が、気品があるとか貴公子とかには、到底見えない。
はぐれ者で猛者の剣客。
が、ぴったり。

ラフォーレンも呻く。
“あれが、気楽なんです。
彼、アースルーリンドにいると、人前では王族と伺い見られるから。
疲れるらしいんですけどね”

ギュンターが、寝こけた声でぼやく。
シェンダー・ラーデン北領地の王と同然の領主、ローランデの方が、余程気品があると。
いつもぼやいてたな…。
ローランデを見せてくれ…”

ラフィーレがギュンターの要請に従って、ローランデを映し出す。
真っ直ぐな明るい栗色の長髪を、さらりと肩に、胸に流し、湖水のような青の瞳は際立ち。
所作も仕草も自然体で品格が滲み出ていて、優しげな顔立ちは美しくも凜としていて。
文字道理、“貴公子”の名が相応しかった。

シュテフが憮然、とラフィーレに告げる。
“別に移せ。
ギュンター、見ながらヌいてるから”
ラフィーレは
“?”
だったけど。

王もラステルもエウロペも意味が分かって、ほぼ三人同時に顔を下げた。

レンフだけが
“ギュンターって、カオはすげーイイけど、育ち雑草じゃん?
よくあんな、ピッカピカの貴公子、オトせたよな?”
とざっくばらんに感想を述べた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...