森と花の国の王子

あーす。

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アールドット国王の別邸

バルバロッサ王とシャーレ、そしてレジィの提言

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 ずっとその様子を、無言で見ていた王が、やっぱり王の横でずっと見てる、ギュンターに呟く。

“…性的経験、ほぼ無い環境か?”
ギュンターは、首振って二人を示し、頷く。
“だって王子様なんだろう?
俺らみたいな…そっ中そこらで、好きなだけまぐわってる男女だって、見てないはずだ。
俺の死んだ母の姉、引き取ってくれて義母になったんだが…。
旦那の手が開くと、まだ小さい俺ら兄弟の居る前で、直ぐおっ始めるんだぜ?”

バルバロッサ王は、腕組みして呻く。
“俺の母も娼婦だったしな。
男は入れ替わり立ち替わり、入って来て母とシてる。
母は男が帰ると、毎度俺を見ては
『今の男、どヘタ。
あんたも大人になったら、女買わないとヤれない、どヘタな男にんなんて、なっちゃダメよ!』
と、説教垂れた”

エディエルゼは爆涙してると言うのに。
そんなふざけた言葉が聞こえてきて、ミラーシェンがびっくりして二人を見てるのに気づき、振り向いて怒鳴りつけようとした。

けどギュンターが
“母親が毎度違う男とシてるの、嫌じゃ無かったか?”
と尋ねていて…。
思わず、ミラーシェンと一緒に、王を見る。

王は幾度も頷いて言った。
“だがそれで金を稼いで、俺を育てたからな。
母は男が大金置いてくと、嬉しそうに、誇らしそうに。
俺を見た。
『これで当分、美味しい物食べられるよ!』
…母は美人だったから。
高級娼館にだって、行けたはずだった。
が、そこに子供は入れない。
俺の為に…町の下級娼婦に成り下がった。
要するに…母は俺を熱愛してた。
誇りこそすれ…蔑む気は、微塵も無い”

エディエルゼはそう言い切った…王を呆けて見つめた。
そんな…惨めな境遇なのに…少しも自分を卑下する様は見られず、むしろ…母親の愛情を、宝石で飾られた王冠のように感じ、誇っている微笑。

バルバロッサは見ているエディエルゼに気づくと、言って退けた。
“お前が、愛情込めて抱いてやれ。
そうすればミラーシェンも、快感に素直に身を、任せられる”

けれどギュンターは、顔を下げた。
“女の婚約者しかいない、男とシた事無い王子様だぞ?”

言った後、エディエルゼに確認取る。
“無いんだよな?
男、抱いた事”

その時、また横の空間に。
エディエルゼの体験が、映像となって見え始めた。

薄汚い酒場。
エディエルゼに従う部下らが、一人のひ弱な男を捕まえ、尻を剥き出しにし、エディエルゼに向ける。

彼は差し出された生け贄のようなその尻に、容赦無く突っ込んで犯す。
ひ弱な男は泣き叫び、尻の穴から血が滴り落ちる…。

エディエルゼが達すると、次に側近の部下が、その男の尻に挑む。
男は腕を掴まれ押さえ付けられたまま。
剥き出しの尻を次々男に犯され。
血まみれで悲鳴を上げ、叫んでる。

“もう…お許しを!
お許し下さい…っ!”

けれど逞しい銀髪の男らは、嘲笑う。
“雪原を彷徨う人食い化け物ドズゴルに食われないのは、俺達が体張って戦ってるからだろう?!”
“これっくらいの出血で、喚くな!
奴らに喰い付かれ、片腕無くした男だって、今だ戦士だ!”

王もギュンターも、雪原を彷徨う、毛皮を纏った化け物の群れと戦う、エディエルゼとその部下らを見た。

飛びつき、喰い付く化け物を剣で薙ぎ払う。
一瞬でも躊躇すれば…喉笛噛みつかれ、虫の息。
そして倒れれば…化け物らに手足を引き千切られ、食われる…。

ギュンターも呆けたが、バルバロッサ王も呆れた。

“…北の地には、あんな化け物が生息してるのか?”
“…アースルーリンドの樹海にも、『影の民』の“障気”に憑かれた化け物が居るが…。
毎度あんなんと戦ってるんなら…強いはずだ”

半分寝入ってるようなオーガスタスの声も響く。
“熾烈な環境だな…”

エリューンが、寝言のように呟く。
“アースルーリンドよりは、マシでは?”

エウロペも囁くような声で告げる。
シュテフザイン森と花の王国にも…タマに高い山脈渡って、はぐれ人食い化け物ドズゴルが入って来る…”

エリューンが、その声に返答した。
“大勢が…よってたかった嬲り殺すけど…素早くって強靱で…。
いつも大勢、怪我人が出る”

エウロペがまた、囁いた。
“大抵テリュスが矢を放ち、仕留める…。
どれだけ素早い敵でも。
テリュスの矢は射抜く”

バルバロッサ王はまた、幼いミラーシェンを見つめる。
“お前も将来、あんな化け物と戦う男になるなら。
尻を犯され、体を嬲られた事ぐらい。
鼻で笑え”

けれど顔を下げるミラーシェン同様、エディエルゼも俯いて告げる。
“…男に犯されるような男は…戦士になれない”

ギュンターは呆れた。
“アースルーリンドのシェンダー・ラーデン北領地に似てるな。
雪国の男ってみんな、犯される男に偏見だらけだな”

エディエルゼは囁く。
人食い化け物ドズゴルから、民を守れる戦士は讃えられる。
戦士は…どこまでも強く、男らしさの象徴とされる。
男に犯されるような弱い男は…その反対で、最下層の軟弱者だ”

王は肩すくめた。
“男に尻ホられる男はひ弱?
お前王子だろう?
ミラーシェンをしっかり戦士に鍛え上げ、そんな偏見、ブチ壊せ!”

エディエルゼはバルバロッサを見た。
奴隷から盗賊に…。
そして盗賊らと奴隷を解放し、反乱軍を立ち上げ…王朝を転覆させた実力者。

一奴隷だった彼が、今や王。
自ら実証していたから…反論は無理。

“ミラーシェン…”
エディエルゼに見つめられ、ミラーシェンは涙を浮かべ、首を横に振る。

“無理…兄様!
だって…男に触られるの、怖いけど…。
怖いのに…嫌なのに!
…刺激が欲しくなる…。
そういう体に、なってしまってる!”

あんまり悲しげに泣くミラーシェンに、エディエルゼは彼をそんなにした男らに腹を立て、悔しさに歯がみした。

が、ギュンターが肩すくめる。
“刺激され続けた後だから。
その反応は、普通だ。
けど愛情込めて抱かれれば、少しずつ収まる”

その時、シャーレの声がした。
“うん、レジィがそう!
レジィは少ししか…嫌な思いしてないけど。
エルデリオン王子に、何も知らない時に犯されて。
凄く嫌で泣いてたけど、デルデロッテに優しくされて、元気になったの。
今、僕と違って、お尻に挿入れられても、気持ちいいんだって!”

その後、レジィが気恥ずかしげに囁く。
“バラさないで、シャーレ…。
だってデルデロッテって、凄く上手で素敵なんだよ?
挿入れられると、うんと気持ち良くって…。
もっと気持ち良くなっていい…って…感じる所、優しく擦ってくれるの…。
でも僕だって、ミラーシェンやシャーレを無理矢理したおじさん達、あんまり好きじゃない…。
デルデに比べると、気持ち良くないんだもん”

ギュンターが、呻く。
“レジィ、それって…”
バルバロッサも言った。
“ヘタ…って事だな?”

レジィは、頷いてる様子だった。

“捕らえられた後、一度されたけど。
そこ!
って思うとこに、届かないの。
じれじれするとこばっか、こすこすしてて…。
もっと奥か手前なのに!
で、自分だけ気持ち良かった。
とかって満足してるし。
ほんっとに、最低!”

テリュスが、ぼそり…と呟く。
“…俺達の可愛いレジィが…されてヘタとか…言うように、なっちまった…”

エウロペもエリューンも、落ち込んでるのか。
無言。
レジィは、慌てて言う。
“あ、エリューンも素敵だったよ?
荒削り…って言うか、初々しくって…。
青年ぽくって…。
胸が、きゅんきゅんして…”

エウロペの、気遣う気配がし、エリューンは
“それは…ありがとう…”
と、沈んだ声で囁いた。

けれどレジィは、まだ叫んだ。
“あのね、デルデとか…凄く優しくって上手な人に、されてみて!
もう、ぜんっぜん、違うから!
でね、でねっ!
気持ち良くなることは、自然なことなの。
興奮するのも、普通のことなの。
どうせするなら、ヘタで嫌な相手にされるより、上手で蕩けそうな相手にされる方が、絶対イイって。
分かるから!”

エディエルゼは焚きつけるレジィを、睨もうかと思った。
けれど金に光るシルエットの笑顔のレジィに。
ミラーシェンは微笑みかけた。

“うん…。
やってみる!”

エディエルゼはそれを聞くなり、がっくり首を下げた。
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