森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
上 下
358 / 418
激突

戦闘終結?

しおりを挟む
 ドーリオ男爵の声が響き渡った時。
オーガスタスは剣を振ろうとした相手が、咄嗟身を屈め、背後に引き始めるのを見た。

敵二人の激しい剣を交互に受けてたノルデュラス公爵は、一人が剣を下げ、声の方に振り向くのを視界の隅で見たものの。
もう一人の降って来た剣を、がちっ!!!とハデな音散らし、受け止めた。

横のエリューンが咄嗟、真っ直ぐの栗毛散らし身をひるがえし、剣を引く。
一気にノルデュラス公爵と剣を合わせてる敵の腹に突き出した。
が、敵は背後から首根っこ掴まれ、後ろに引きずられ、間一髪難を逃れた。

ギュンターは向かって来ようとする敵が、背後に振り向いたかと思うと。
咄嗟、走り去って行くのに気づき、その時一斉に敵が、エウロペらの居る方向へ引いて行くのを目にした。

剣を下げ、背後のエルデリオンに振り向くと、頷く。

エルデリオンはギュンターの深い紫の瞳の、粋な美貌が微笑混じりなのを見、こみ上げて来る感情を抑えきれず、腕に支えるデルデロッテの胸に顔を伏せた。

ラステルはため息を吐き、斜め前のローフィスが、無言で顔を下げるのを見る。
「…尽きかけてた?」
尋ねると、ローフィスは無言で頷き、革袋を指で探る。
二つ重ねて手の上に乗せられてた革袋の、上一つは空となってひしゃげ、もう一つも僅か数本、残るのみ。

思わずローフィスは、反対横のゼイブンに振り向く。
が、ゼイブンも首を横に振る。
「こっちも残り五本」

言った後、ゼイブンは背後の、テリュスに振り向く。
ゼイブンとローフィスに見つめられたテリュスは、気づいて軽く自分の身を見回すと
「20本は残ってる」
と告げた後。
「…この後、大軍が押し寄せて来たらヤバいかな?
今の内に、倒れてる敵から回収したら?」
と提案した。

ノルデュラス公爵は敵が消え、横のスフォルツァが身を前に折り、膝に両手付き、くたびれきって荒い息を整えてるのを見た。
自分もため息を一つつくと、豪華な衣装がそこら中切り裂かれ、傷だらけなのに眉を寄せ、一番出血の多い右腕に、ハンケチを取り出し、巻き付け止血し始める。
エリューンが直ぐ寄り来ると、公爵の手からハンケチを受け取り、きつく結び始めた。

公爵は会釈し、エリューンに礼を言おうとして…。
エリューンもが、左の二の腕から血を滴らせてるのを目にし、もう一枚ハンケチを胸の内ポケットから取り出すと、エリューンの腕の傷口に当て、縛り始めた。

縛り終えて二人は、ほぼ同時にスフォルツァに振り向く。
が、スフォルツァはまだ荒い息に肩を上下させ、顔を上げない。

ローフィスはテリュスの提案に従い、倒れた敵へと屈み、短剣を引き抜き始める。
レジィは周囲の誰もが、疲れ切った表情をしてるのを見た後、
「ボクも手伝う!!!」
と叫んで進み出た。
ロットバルトはレジィの横に付くと、ガードの役目を果たす。
ミラーシェンも直ぐ、レジィの背後から駆けつけ、二人は転がる死体から、短剣を引き抜き始めた。

オーガスタスは自分の正面の敵が、遠巻きにローフィスの居る側を伝い、引いて行くのを目にした後。
背後のラフォーレンに
「見張っててくれ」
と告げ、剣を下げたままギュンターの元に歩を運ぶと、頷くギュンターと共に、エウロペとエディエルゼを迎えに行く。

エウロペはドーリオ男爵の首に腕を回し、剣を喉に当てて引っ立て。
エディエルゼは背後を急襲されないよう、横に付いて見張りながら横に並び歩く。

一人が咄嗟、背後から襲いかかる。
が、エディエルゼは振り向きもせず身を下げ、華麗に背後に剣を振り切った。

「ぅぎゃっ!!!」

剣を振り被った敵は腿を深く斬られ、腿に手を当て、その場に崩れ落ちた。

引いた敵兵は続々ドーリオ男爵を引っ立てる、エウロペとエディエルゼを、距離を置いて取り囲み始める。

ギュンターはそれを見て走り出し、オーガスタスも併走した。

数は、圧倒的に敵が有利。
皆、二人の隙を狙い、男爵を取り戻そうと殺気を飛ばす中。
エウロペは幾度も鋭い視線を送り、応酬する。
が、男爵を引っ立てるその姿は、慌てる様子は微塵も無い。

ギュンターは目前を塞ぐ敵の背を、手でど突いて退かせ、吠える。
「退け!!!」

エウロペとエディエルゼの、正面を塞ごうと寄り来た敵騎士らは。
背後からギュンターとオーガスタスがやって来る姿を見、慌てて左右に避け、道を開けた。

男爵は、首をエウロペの腕で締め付けられながらも
「手を出すな!
止めろ!
こいつらは躊躇無く私を殺すからな!」
と情けない声で呻き続けていた。

ギュンターは二人がやって来るのを見つめながら、引っ立てられる男爵の呻き声を聞き、自分とオーガスタスの左右に避けた敵騎士らを見回すと
「…よくこんな情けない男に、忠誠が誓えるな…」
と、ぼやいた。

エウロペがやって来ると、オーガスタスは微笑を浮かべ、一つ頷くと、横に避けて道を空ける。
エウロペも頷き返し、オーガスタスの横を、男爵を引っ立てながら通り過ぎた。

エウロペとエディエルゼが横を過ぎると、オーガスタスはまだそこに立って、自身の身で敵騎士らをその場に足止めする。

エディエルゼは横に背を向け、やって来るギュンターに
「かたじけない」
と声をかけた。
ギュンターは背を向けながらも、言葉を返す。
「…礼を言うのは、こっちの方だ」

エウロペが、笑顔で迎えるテリュスの元へと歩き始め、ほぼ正面に辿り着くと。
ギュンターはオーガスタスへと振り向き、頷いて合図を送る。

オーガスタスはそれを受け、足止めしてる敵騎士らをたっぷり睨めつけた後。
笑顔を見せ、背を向けた。

その悠々とした大きな背を見つめ、敵騎士らは唾を飲み込み、無言で見送った。

エウロペが、テリュスの横に男爵を引っ立て戻る。
オーガスタスとギュンターが、後数歩で皆の元に辿り着く、その時。

吠える声が暗い森に轟いた。

「ここか!!!
我らを謀って、自分らが王子らを独り占めする気で先に駆けつけ、このザマか!!!
たった数名に、これだけの死者か?!
が、ありがたい。
敵は随分、疲弊してる様子だからな!!!」

ラフォーレンは目前の暗い森に、多数が蠢く気配を感じ取り、振り向き叫ぶ。

「敵です!!!」

ロットバルトは直ぐ、レジィとミラーシェンの手を左右の手で握り込むと、一気に二人を促し、テリュスの背後へと駆け込み始める。

エルデリオンは抱きしめたデルデロッテの胸から、咄嗟顔を上げた。

ローフィスも自分の顔が、新たな緊迫感に歪むのを感じた。
が、斜め横のラステルが
“万事休す!!!”
と、余裕の無い表情を見せるのを見た時。

初めて悪寒に包まれた。

ラフォーレンはオーガスタスが、背後に振り向くのを見た。
オーガスタスのかなり背後。
その場で足止めされてる敵騎士は、動かなかった。
彼らは、味方が現れたとは、思ってない様子。

思わずラフォーレンは、レジィとミラーシェンを左右に引き連れ、走るロットバルトの背を見る。

シュアンはまだ、眠ってる!
ゼイブンの背に居る、ラフィーレさえも。
そして自分の背後の、エドウィンですら。
これだけの戦いにも関わらず、人形のようにまるで動かない。

レジィはロットバルトに手を引かれ、テリュスの背後に駆け込みながら。
咄嗟、ラフォーレンに視線を向けた。

無意識だったけど…分かった。

森の中に蠢き、取り巻き始める敵の数の多さ。
ノルデュラス公爵が、叫ぶ声の主が思い当たるように振り向くのも目にする。

ローフィスは自分の正面方向から、大軍が押し寄せ来る気配に、思わず革袋を握りしめた。
回収出来たのは、10本程度。

まるで、足りない…。

レジィはどっくん!と心臓が鳴ると同時、中で眠っていたシャーレが、白い光に包まれ、身を起こすイメージが脳裏に浮かび、同時に皆の様子が見えた。

エディエルゼは男爵に
「お前の仲間じゃないのか?!」
と怒鳴りつけていて…。

エウロペが、覚悟を決めるようにきつい視線を、ローフィスの正面から来る敵に送るのが、透けて見えた。

ノルデュラス公爵が心の中で
“アッハバクティス!!!”
と叫ぶのを聞き、シャーレが慟哭するのを感じる。

その名で、シャーレは身悶えるような苦悩に包まれるのを、レジィは感じた。
途端、お尻に男根を挿入された生々しい感覚と共に、千切れそうに痛む、掴まれた両乳首。
腸を破る勢いで、押し込まれ続ける太い男根。

背後から抱かれていて、顔は分からない。
レジィは必死でシャーレに語りかける。
心の中で。

“お願い、落ち着いて?!
シャーレ!!!
シャーレ、みんな居る!!!
みんな、護ってくれる!!!”

けれどシャーレの意識は、上空に飛ぶ。
その時、真っ暗な森の中なのに、明るくはっきりと、無数の敵が押し寄せて来るのが見え、レジィはその数の多さに言葉を無くした。

シャーレは更に上空に飛ぶ。

その時、耳に聞こえない声でシャーレは叫んだ。

“シィアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!”

その声は、あまりに大きく脳裏に響いて、レジィは思わず耳に手を当てたけど。
脳に轟くその声は、それから暫く、響き渡り続けた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

調教済み騎士団長さまのご帰還

ミツミチ
BL
敵国に囚われている間に、肉体の隅に至るまで躾けられた騎士団長を救出したあとの話です

制限生活

澄玲 月
BL
R18作品です。ほぼ全部。 監禁だったり、もうすべてエロいことしまくります。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

奴隷騎士のセックス修業

彩月野生
BL
魔族と手を組んだ闇の軍団に敗北した大国の騎士団。 その大国の騎士団長であるシュテオは、仲間の命を守る為、性奴隷になる事を受け入れる。 軍団の主力人物カールマーと、オークの戦士ドアルと共になぶられるシュテオ。 セックスが下手くそだと叱責され、仲間である副団長コンラウスにセックス指南を受けるようになるが、快楽に溺れていく。 主人公 シュテオ 大国の騎士団長、仲間と国を守るため性奴隷となる。 銀髪に青目。 敵勢力 カールマー 傭兵上がりの騎士。漆黒の髪に黒目、黒の鎧の男。 電撃系の攻撃魔術が使える。強欲で狡猾。 ドアル 横柄なオークの戦士。 シュテオの仲間 副団長コンラウス 金髪碧眼の騎士。女との噂が絶えない。 シュテオにセックスの指南をする。 (誤字脱字報告不要。時間が取れる際に定期的に見直してます。ご報告頂いても基本的に返答致しませんのでご理解ご了承下さいます様お願い致します。申し訳ありません)

旦那様、お仕置き、監禁

夜ト
BL
愛玩ペット販売店はなんと、孤児院だった。 まだ幼い子供が快感に耐えながら、ご主人様に・・・・。 色々な話あり、一話完結ぽく見てください 18禁です、18歳より下はみないでね。

【R18】奴隷に堕ちた騎士

蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。 ※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。 誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。 ※無事に完結しました!

ご主人様に調教される僕

猫又ササ
BL
借金のカタに買われた男の子がご主人様に調教されます。 調教 玩具 排泄管理 射精管理 等 なんでも許せる人向け

【※R-18】αXΩ 懐妊特別対策室

aika
BL
αXΩ 懐妊特別対策室 【※閲覧注意 マニアックな性的描写など多数出てくる予定です。男性しか存在しない世界。BL、複数プレイ、乱交、陵辱、治療行為など】独自設定多めです。 宇宙空間で起きた謎の大爆発の影響で、人類は滅亡の危機を迎えていた。 高度な文明を保持することに成功したコミュニティ「エピゾシティ」では、人類存続をかけて懐妊のための治療行為が日夜行われている。 大爆発の影響か人々は子孫を残すのが難しくなっていた。 人類滅亡の危機が訪れるまではひっそりと身を隠すように暮らしてきた特殊能力を持つラムダとミュー。 ラムダとは、アルファの生殖能力を高める能力を持ち、ミューはオメガの生殖能力を高める能力を持っている。 エピゾジティを運営する特別機関より、人類存続をかけて懐妊のための特別対策室が設置されることになった。 番であるαとΩを対象に、懐妊のための治療が開始される。

処理中です...