森と花の国の王子

あーす。

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激突

戦い甲斐のない敵

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 オーガスタスは蜘蛛の子散らすように逃げ出す敵を見、思わず歩を止めた。

背後では置いてけぼり喰らったノルデュラス公爵の父親大公を、テリュスがまだ蹴って、その周囲にノルデュラス公爵、ラウール、エディエルゼ、ギュンターが取り囲み、見つめてる。

思わず背後にやって来る、ラステルとローフィスに振り向き、オーガスタスがぼやく。
「…戦わずに済みそうだ」

ローフィスは拍子抜けしてるオーガスタスの顔を見、ため息交じりに頷く。
ラステルは背後にスタスタ歩き出すと、大公を取り囲む一同の後ろから様子を伺った。
命を告げようと声を上げかけたが、蹴ってるテリュスが横のミラーシェンに
「いいか?
シュテフザイン森と花の王国でこういう輩は、全員が決まって一物蹴り潰す!
こう!」

がっっっつん!
「ぎぃやっ!!!」
大公が股間を蹴られ、仰け反り呻く。

テリュスがミラーシェンを促し、ミラーシェンも大公の股間を蹴り上げた。

がっ!!!
「う…ぐっ…」

テリュスはため息吐くと、ミラーシェンに言って聞かせてる。
「優しすぎ。
害虫がいて、そいつがいると大勢が迷惑する。
そしたらどうする?
踏み潰すだろう?」

ミラーシェンが頷き、また足を振り上げ、蹴りつけた。
がっっ!!!
「う゛ぐっ!!!」

テリュスがまた口を開こうとした時、とうとうギュンターがさっと出て、一気に靴底を大公の股間めがけ、踏み下ろした。

どがっ!!!
「ぎぃ……」

大公は白目剥き、口からは泡吹いて気絶した。

テリュスとミラーシェンが見上げる中。
長身で金髪、冴えた美貌のギュンターは、真顔で言い諭す。
「これで、めでたく潰れた。
一応、戦闘中だ。
拷問なら、もっと暇な時にやれ」

ミラーシェンは思わずテリュスの顔を見たけど、テリュスもミラーシェンを、目を見開いて見つめてた。

「…拷問?」
テリュスの異論に、説明する声が響く。
「激しく蹴られて傷付いてるとこ、中途に痛めつけられたら…。
間違いなく拷問ですね」

背後でそう呟くラステルを、全員が一斉に振り向いて、見つめた。

が、その時。
ざっっっ!!!
と剣で斬りつける音がし、振り向くと最後尾近くのラフォーレンが、エドウィンを担いで逃げ回り、スフォルツァが捕まえようとする敵に、剣を振り切ってた。

ギュンターも咄嗟振り向くと、横の木々の間から飛び出して来る敵、数人が、ミラーシェンやテリュスを奪おうと向かい来るのに、剣を抜いて身構える。

エディエルゼもギュンターの横に並ぶと、ミラーシェンとテリュスを背後に庇い、剣を抜いて突進して行く。

ラウールも剣を抜き、ノルデュラス公爵も剣を抜いて身構える。

反対横ではゼイブンが、ラフィーレをおんぶ紐で担ぎながら。
向かい来る敵に、空いた両手で短剣投げつけながら叫ぶ。
「誰か俺を守ってくれるとか、言ってなかったか?!
助けろ!!!」

オーガスタスは顔を下げると
「俺からは逃げたのに…!」
と呟くと、かっ!と目を見開き、剣を持ち上げ振り向く。

ゼイブンへ、わらわら寄り来る敵に突進していくと、思いっきり二本の剣を時間差で振り回した。

「ぎゃっ!」
「うわぁああっ!」

素早く身を屈めた二人を除き、四人が一気に大車輪のような剣の餌食になる。

ローフィスも、逃げ回るラフォーレンを追う敵の数が増えるのを見、短剣投げてスフォルツァを助けた。

テリュスは小弓を構え、目前に立ち塞がるギュンターの背を見て、ぼやく。
「俺、庇って貰わなくても平気なんだけど…」
横にやって来たロットバルトは、背のシュアンを揺すって担ぎ直し
「ここは安全みたいですな」
と笑顔で告げた。

ロットバルトの背後では、エリューンがレジィリアンスを横にして剣を抜き、エウロペが正面からやって来る敵に突進し、素早く剣を振り回し、あっと言う間に二人を斬り殺す。

ミラーシェンは横に並ぶテリュスが、隙あらば弓を放とうとするのを見つめ、尋ねた。
「…それで…敵を倒せる?」
テリュスは頷く。
そして男達に好きに体を嬲られ、おもちゃにされて不安げな、ミラーシェンを見つめて告げた。
「この先、お前に酷いことした男を見かけたら、きっちり一物潰してやれ。
そうすればこの先、新しい被害者は出ない。
…殺せたら楽だから、殺せる男はさっさと殺せ」

ミラーシェンは綺麗系可愛い子ちゃん顔した、自分より少しだけしか背の高くないテリュスが、何でもないように“殺せ”とか“潰せ”とか言うのを聞いて目を見開き…けれどその後、こっくりと頷いた。

ラステルはエルデリオンが剣を抜き、少し前に出て向かい来る敵に剣を振ってるデルデを助けようと、横に並ぶのを見た。

デルデロッテはエルデリオンを奪おうとする敵が、四方から来ないか。
周囲に気を配りながらも正面の敵に剣を振り切る。
並ぶエルデリオンも華麗な剣捌きで、自分に腕を伸ばす、その腕を一気に斬りつける。

「ぎゃあっ!」

深々と腕に傷を作った敵は、血を撒き散らしながら引いて行く。


ゼイブンは叫んだ途端駆けつけてくれた、オーガスタスの勇姿を見た。
長身から放たれる、大車輪のような剣捌きで一気に四人を沈めた途端、敵は蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


「ゼイブン!」
かなり遠いローフィスに振り向かれて叫ばれ、ゼイブンは咄嗟振り向くと、ラフォーレンの後ろから、エドウィンを捕まえ、引っ張る敵がいた。

「これだけ大勢標的が居るんだ!!!
一人ぐらい拉致しないと、採算合わないぞ!」

かなり遠くから、焚きつける声が飛ぶ。
敵は必死に、弱そうな幼い美少年らを狙ってた。

ゼイブンまでも紐でくくりつけてるラフィーレを背後から引っ張られ、後ろに引かれて長剣を抜く。
振り向き様至近距離で、下から腹をぶっ刺す。
敵は盗賊上がりか騎士崩れらしく、避ける、逃げるに長けてる男のようで、さっとラフィーレを手放し、背を向けて逃げ出した。

「…させるか!」
しゅっ!
ゼイブンが左手で短剣投げるが、男はそれも避けた。

しかもあろう事か、歩を止め左右に蛇行しながら、戻って来る。
ゼイブンはムカついて、それから二度。
短剣を投げたにも関わらず、男は二度とも横に避けて尚も向かって来る。

「どれだけ投げても無駄だ!
俺に短剣は、効かないからな!
全部、避けてやる!!!」
笑いながら言う敵に、かなり近くまで距離を詰められ、ゼイブンは仕方無く長剣を振り上げようとした、その時。

いきなり横から、大車輪が飛ぶ。
ざっしゅっ!!!
「ぅぎゃぁっ!!!」

敵は背を斬られ、血を吹き出してその場に崩れ落ちた。

真っ赤な長髪を散らし、気迫籠もるオーガスタスの野性味溢れ、闇に光る黄金の瞳を。
ゼイブンは見つめ、呆けた。

「…お前に気を取られて俺の射程距離に入るなんて、馬鹿なヤツだ」

オーガスタスの言い切りに、ゼイブンは両手に剣を握るオーガスタスの、あまりのど・迫力に目を見開き、こっくり頷いた。
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