森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

奇襲されるノルデュラス公爵の城、スワシャレ

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 美しい白亜の城の周囲に張り巡らされた、銀に塗られた鋼鉄の高い柵。
よじ登ろうにも、柵のてっぺんは鋭い矢のように尖り、乗り越えようとすると体が突き刺ささる。

が、巨大な木を括り付けた荷車が引かれてきて、大勢が荷車を後から押し、木を鉄柵にぶち当て始めた。

ガガン!!!

荷車はぶつかって跳ね返され…けれどまた、賊は荷車を押し、太い木は派手な音立てて柵にぶつかる。
ズガガガガガン!!!

柵は少しずつ、巨大な木にぶつけられ、曲がり始めた。

ラステルが窓にすっ飛んでそれを見下ろし
「来やがった!!!」
と叫ぶので、オーガスタスも公爵も。
デルデロッテもエルデリオンもがその言葉使いに、目を見開いた。

「ラウール!
ミラーシェンを担いで!
デルデ、君はエルデリオンを!
公爵、屋上に道案内を!」

ラステルが素早く指示を出し、デルデは直ぐ立ち上がると、エルデリオンを肩に担いだ。
ラウールは直ぐ様寝室に飛び込み、ミラーシェンを抱き上げ、公爵は廊下に続く扉を開け、大声で叫んだ。
「敵が突入の際、全員身を隠せ!!!」

あちこちから、ピュゥゥ!!!ピュウッ!!!
と、返事の指笛や口笛が聞こえる。

公爵の直ぐ後にオーガスタスが続き、エディエルゼはミラーシェンを抱き上げる、ラウールの横に並び歩く。
ラステルはエルデリオンを肩に担ぐデルデロッテの背後から、部屋を後にした。

廊下を進んでると、間もなく
ドォォォォォォン!!!
と大音響が轟き、その後大勢の、庭を駆け来る足音が響く。

公爵が階段を駆け上がり、廊下の先の行き止まりの隠し扉を開け、皆を中に通す。
一斉に駆け込んで、先の階段を登って行く。
公爵は最後に扉を閉めると、中から閂をかけた。

螺旋階段を駆け昇ってると、下の方からまた、ドォォォォンッ!!!
と、正面扉を破る大音響。
今や最後尾にいた公爵は
「手の込んだ高い扉だったのに…」
と愚痴っていた。

屋上に出ると、風が吹きすさぶ広い屋根。
公爵も最後尾からやって来ると
「ここにどうやって?」
と尋ねる。

オーガスタスが脳裏でディアスに頼み、その途端皆の脳裏に、こちらに向かう空飛ぶ飛行船が見えた。

「………あれ、ここの全員が乗れるほど大きい?」
公爵の呟きに、デルデロッテが振り向いて怒鳴りつける。
「この屋根ほどデカいから、安心しろ!!!」

公爵は横の羽目板を蹴ると、剥がれた板の奥に、隠されてた武器を示す。
「お好きなのをどうぞ」

皆駆け寄ると、剣や短剣を掴み、ベルトに差した。

ラステルは下から屋根を見上げ
「上だ!!!」
「上に居るぞ!!!」
と叫ぶ賊らを見
「もっと上に行けるでしょう?!」
と、公爵を急かす。
公爵は頷くと、屋上にある二つの塔に渡された、空中廊下を目で指し示した。

「もっと高いけど…逃げ場はどこにも無くなる」

ラステルが、怒鳴った。
「ここよりマシだ!
両側を護り、真ん中にエルデリオンとミラーシェンを!!!」

オーガスタスが真っ先に塔を駆け昇ると、ミラーシェンを抱いたラウールが続く。
エディエルゼは反対側の塔の入り口へと走るので、ラステルは焦った。
「たった一人で、入り口を守る気ですか?!」

デルデロッテはエルデリオンを肩に担いだまま走り出そうとした。
が、エルデリオンは
「私も戦う…!」
と呟いて降りようとするので、胴の衣服を握り掴みデルデが怒鳴る。
「まだ無理だ!
頼むから…足手まといにだけはならないで!」

デルデの叫びを聞き、エルデリオンはピタ!と動きを止め、デルデはほっとしてエルデリオンを担いだまま、ラウールの背を追って階段を駆け登る。

間もなく、屋上横の階段から賊が駆け上がって来る。
ラステルはエディエルゼの横に立つと
「お願いですから上へ上がって下さい」
と懇願した。

が、エディエルゼは銀のまっすぐな髪を振って、怒鳴り返す。
「どうせそうなる!
貴方は先に上へ。
最後は空中廊下で戦う事になる…!」

ラステルが振り向くと、反対側…デルデが駆け登った塔の前では、公爵が敵を迎え討っていた。

既に長剣を振り回し、ずばっ!と先頭の敵を斬り殺し始めてる。

階段から続々と敵は押し寄せ始め、ラステルはエディエルゼに手で後ろに退けられ、彼が剣を振るのを見た。

最初の一人を通り過ぎ様斬り捨て、刀を返して真横の敵に突き刺し、そのまま突っ込んで、突っ込んで来る三人目の剣を首下げて避け、すれ違い様見事に斬り捨てた。

ズバッ!

「……………」
押し寄せる敵をものともせず突っ込んで行く、まるで鬼神のようなエディエルゼの戦い振りに、ラステルは言葉を無くし、唾を飲み込んだ。

空中廊下の真ん中で、オーガスタスが怒鳴る。
「いいから上がってきてくれ!
ラステル、あんた短剣使うんだろう?!
援護を頼む!」

公爵も三人を斬り殺した後、階段を駆け登り廊下へと出、やって来る敵を、デルデと並んで迎え討ち、斬り殺し始めた。

オーガスタスは廊下の上から、エディエルゼが賊の群れにたった一人で突っ込み、次から次へと素早く身を返し、飛び、身を屈めながらも敵の剣を華麗に避けながら、敵を斬り殺していく戦い様を見る。

ラステルは階段を駆け上がると、オーガスタスの横を通り過ぎて戦う公爵とデルデの背後に付き、塔から廊下に向かって来る敵に、短剣投げつけて数を減らす。

けれど戦うエディエルゼを迂回し、塔の入り口に辿り着いて登って来る賊がやって来ると。
オーガスタスは階段上から長い足で、先頭をどかっ!と蹴り倒し、その背後から階段登って来た三名ごと全員、階段の下に転げ落とした。

どさどさどさっっ!!!

エディエルゼは剣を握り賊に背を向け、背後から斬ろうとする敵に振り向き様剣を振りながらも塔の階段へと駆けつける。

が、階段を転げ落ちて来た賊らを、目を見開いて見つめた。
一瞬のことで、直ぐ転げた賊の上を、剣で突き刺しながら踏みつけ、登って行く。

「ぐぇっ!」
「う゛ぐっ!」
「ぐぅっ!」

転げたところを上から剣で刺され、賊は死体となって階段に転がる。

エディエルゼが風のように階段から姿を現すと、オーガスタスは蹴ろうと持ち上げた靴底を、ピタリ!と止めた。
「私は蹴らないで頂きたい」
オーガスタスは横に飛び込む銀髪の剣豪に、一つ頷く。
「俺が剣を振る時は、離れてろ」

言って、横に飛び込むエディエルゼが頷く前に。
塔から渡り廊下へとやって来る賊に、豪快に剣を振り回し始めた。

エディエルゼは並外れて長身なその男が、二本の剣を車輪のように振り回し、時間差で振り下ろして二人を一気に叩っ斬るのを、目を見開いて見た。

オーガスタスは器用に二本の剣をぶん回しながら、突っ込みたくとも怯む賊を睨めつける。
「どうした!
後ろがつかえてるぞ?!」

けれど賊は、まるで鎌鼬のような大車輪に恐れ、向かって来ない。

ラステルは振り向いてそれを見ると
「流石…!」
と呻いた。

空中廊下の幅は割と広く、ラウールはミラーシェンを抱いて両側から守られ、ほっとしていた。
けれど、横の手すりに掴まって下を見下ろしてるエルデリオンに
「上がって来るぞ!」
と叫ばれ、ぎくっ!と下を見た。

鍵縄を放り、手すりに引っかけ、ロープ伝いに登って来る。

ラステルがやって来て、下を覗くと。
エルデリオンに短剣を渡し、さっさと手すりに引っかかってるロープを、切り落とし始める。

ざっ!
どさっ!
「うわっ!」

ひゅん!
ひゅん!と次々鍵縄が放られる。
が、エディエルゼは鍵が廊下の手すりに引っかかる前に、剣を振って鍵部分を斬り落とし、ロープはどこにも引っかからず、落ちて行く。

エルデリオンも既に引っかかった鍵縄を、切り始める。

どさっ!
どさっ!
「うわわっ!」

ロープがたわみ、次々落ちて行くので、つい横で切ってるラステルに
「これ、結構楽しい」
と感想を述べ、振り向く笑顔のラステルに
「私もです」
と言われ、喜んで切り続けた。

が、今や空中廊下の下の屋上は、真っ黒なぐらい賊だらけ。

オーガスタスは大車輪のような剣に突っ込む賊を、尽く跳ね返して吹っ飛ばせ、公爵とデルデロッテはやって来る賊を、剣を振って切り続ける。

「行け!行け!
奴らもじき、疲れ切る!」

下から、叫ぶ隊長らしき男が見え、ラステルはつい懐に手をやると、短剣をしゅっ!と投げ、喉に命中させて黙らせた。
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