森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

城内三階での戦闘

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 エウロペは脳裏でワーキュラスに怒鳴っていた。
“レジィリアンスの居場所を!!!”

ワーキュラスは瞬くと、透けた見取り図を送る。
レジィの居る場は金の点滅。
直ぐ側のエリューンを綺麗なブルー。
ラフィーレを紫に光らせていた。

けれど黒い三つの点滅が廊下を抜け、三人の居場所に向かってる。
自分の居場所は…広い部屋を三つ挟んだ手前。

部屋を抜けて廊下に出ても…その廊下は部屋に添って曲がりくねっていて、賊が向かってる廊下と直接繋がってない。
ぐるっと回ってレジィリアンス達の居る隣部屋に入り、特別な隠し扉を開けないことには。

隠し扉は緑と赤が重なり、その横に隠しレバーの場所が真っ赤に点滅してる。

「エウロペ!!!」
背後から怒鳴られ、横からの敵の気配に、エウロペは一瞬で身を下に沈めた。

ズガッ!!!

殴りかかって来た賊の拳を避け様、背後からテリュスが弓を打ち込み、賊は崩れ落ちる。

掃き出し窓から室内に入ったばかりのテリュスが、弓を下げた時。
エウロペは歩を止めず沈めた身を直ぐ上げ、扉を蹴立てて室内から出て行った。

テリュスはその背を、直ぐ追う。

途中、自分が弓で倒した男が倒れてる上を飛び越えようとした時。
ざっっっ!!!
再び横から賊が飛び出して来る。
横に振り向く一瞬で、賊が剣を突き刺そうと腕を伸ばす様子が、視界に飛び込む。
反射的に剣を避け、横に身を泳がせかけた時。
「ぐっっっ!!!」

賊の剣は伸びず、前に屈む様を見、テリュスは咄嗟、背後に振り向く。
ローフィスとギュンターが掃き出し窓から室内に入ったばかり。
どちらが投げたのか、分からなかった。
けど、ギュンターより小柄なローフィスの、射るような青い瞳を見た時。
彼が投げたと確信出来た。

賊は剣を握る肩に突き刺さった短剣に、反対側の手を添えようとし、眉間を寄せ、剣をだらんと下げてる。

テリュスはローフィスに軽く頷くと、一気に倒れてる男を飛び越え、消えたエウロペの背を追った。

チラ…と賊らが飛び出して来た方を伺うと、クローゼットの開いた扉で隠された戸口が見える。
人影は見えない。
誰も隠れてない、確信は無かったが。

ギュンターはローフィスと併走し、剣を抜く。
肩を押さえ、それでも剣を構える賊を、横を通り過ぎ様思いっきり剣を振って吹っ飛ばし、テリュスの背を追った。

「ぅがっ!!!」

背後で呻き声が聞こえても、ギュンターもローフィスも振り向きもせず、扉を抜けて消えて行くテリュスの背に続く。

廊下に出た途端、黒い煙が漂い、目と喉に痛みを感じた。
横の部屋の扉は開いていて、室内では仲間だろうか。
ラステル配下ららしき男達が、決死で突っ込んだ大木がカーテンを絨毯を。
燃やし尽くすのを、水に浸けた布を被せ消火してる真っ最中。

廊下の反対側から次々、水を入れた桶を運び込む男達が目前を行き来してた。

大開きの扉を真横から見ると、火は天蓋付き寝台に燃え広がり天井まで達し、大勢が必死に燃えている寝台を倒そうと、押していた。

エウロペとテリュスはとっくに煙の向こうに姿を消し、ローフィスは思わず脳裏で怒鳴ろうとした時。

壊された窓から螺旋吹雪が舞い来て、炎に被さり始める。

やがて窓の外に銀髪の神聖神殿隊騎士が宙に浮いて姿を現すと、火が燃え移って背の衣服を燃やし身をくねらす男へ、水に浸けた布を被せようとオタついてる男に怒鳴った。

「退け!!!」

水を浸した布を手に持つ男は、宙に浮く銀髪の神聖神殿隊騎士を見、一瞬で固まる中。
螺旋吹雪は背に火を付けた男の炎に絡みつき、炎を消し去った。

「加減したつもりだが、しもやけにならない前に傷を見てやれ」

銀髪の神聖神殿隊騎士に言われ、寝台を倒そうとしてた男が一人、今度は背が氷ってる男に駆け寄る。

銀髪の神聖神殿隊騎士は寝台のカーテンを伝い天井に燃え広がる炎に、両手広げ吹雪きを吹き始め、怒鳴る。

「いいから全員、退いてろ!!!
とばっちり食って、氷っても知らないぞ!!!」

消火してた皆は、目を見開くと大慌てで燃えてない部屋の隅に飛び込み、全員身を寄せ合って固まった。

室内は先ほど充満してた炎と黒い煙とはうって変わって、白い螺旋吹雪で満たされる。
一人の男は、自分の運んできた水の入った木桶の水が凍り付くのを見、ごくり…と唾を飲み込んだ。

一人は広げた手の上に、小さな雪の粒が、舞い落ちるのを見る。

白い猛吹雪が消えた後。
アースルーリンドの魔法使いの姿も消え、同時に炎もすっかり消えて、炎の特に酷かったカーテンと寝台。
そして天井は氷っていて、その景色の違いに皆目を見開き、キョロキョロと室内を見回した。

ギュンターとローフィスは吹雪が舞い始めた頃、廊下を通り過ぎて角を曲がるテリュスの背に続く。
けれどその辺りも煙は充満し、振り向くと廊下の反対側の扉が開いて、黒装束の賊が松明でカーテンに火を付けてるのを見た。

“賊は侵入ついでに火を付けて回ってるのか?!”

ローフィスが脳裏で叫んだ途端、背後から螺旋吹雪が室内へと舞い込むと、男の松明を一気に氷らせた。


エウロペはとうとうワーキュラスが知らせてくれた、隠し扉の前に立ち、レバーを探す。
レバーは隠されてるらしく、書棚がそこにある。
本を一気に手で払い退けてる時。

いきなり
ドッガガンっ!!!

と派手な大音響が響く。

エウロペは本の後ろに隠されたレバーを握ると、一気に引き倒した。


ギュンターとローフィスは、角を曲がるテリュスに続こうとし、音に驚きテリュスとは反対方向の廊下に走る。

広い廊下が横に見え、そこには扉に大穴開け、今や室内へ突入する多数の賊を見つけた。

ギュンターが金の髪振り、剣を持ち突っ込んで行く。
ローフィスは懐に手をやると、ギュンターの後ろから室内へ雪崩れ込む賊の背後に突っ込んだ。

エウロペが室内に入った時。
壁際で意識の無いレジィリアンスを腕に抱くラフィーレが見えた。
エリューンが二人の前に立ち、剣を振り切り賊を一人、斬り捨てたところ。
エウロペは突進すると、続きエリューンに斬りかかろうとする一人の背後に素早く回り、首に腕を回し締め上げ、一気に横に捻る。

ぐぎっ!!!

背後から剣を振られ、殺した賊をくるりと斬りかかる賊に向け、男の遺体を投げつけた。

テリュスは戸口に背を押しつけ、小弓を構える。
エリューンがまた一人、斬り捨てたのを見、エリューンに斬りかかろうと突進する賊に弓を放つ。

立て続けに三人、弓で射殺し、弓を次の照準に移した時。
金の髪振ってギュンターが、賊の背に剣を振り被るのが見えた。
が、剣を振り下ろす前に賊に倒れられ…。
ギュンターはジロリ、とテリュスを紫の瞳で見返した。

次に飛び込んで来た賊は入るなり前に倒れる。
首の後ろに短剣を突っ立てて。

その直ぐ後からローフィスが飛び込んで来、テリュスはそれを見るなり弓を下ろした。

エリューンは黒装束で埋め尽くされた目前が、一気に片付いてエウロペと金髪のギュンター、ローフィスにとって代わり、エウロペに背後を目で指し示す。

エウロペは直ぐラフィーレに駆け寄り、自分より少し背の高い目を閉じるレジィリアンスの体を、必死で両腕で抱き支えてる、ラフィーレの腕から引き受ける。

ラフィーレはほっとした表情で
“ありがとう”
と心話で感謝を述べた。

エウロペはレジィリアンスを抱きながら、目を閉じたままなのを見、脳裏でワーキュラスに叫ぶ。

“どんな容態だ?!”

けれどディアスが代わって答えた。
“神聖騎士らに任せてある!!!
対処法を探ってる真っ最中だそうだ!!!
が、賊はまだその階にかなり入り込んで来てる!!!”

その時、飛行船に残ってるデュバッセン大公が、心話で怒鳴った。
“援軍が到着した!!!
彼らが三階に到着するまで!!!
倒して倒して、倒しまくってくれ!!!”

その声が響いた時。
ローフィスは直ぐ振り向くと、背後から突入して来る賊の一人に短剣を投げる。
戸口で弓を再び構え始めたテリュスは、目を見開いた。
「(投げたとこ、見えなかったぞ?)」

一瞬、手を軽く振り上げただけ。
手に持つ短剣すら拝んでない。

が、もうギュンターが長い金の髪を散らし、派手に剣を振り切り、飛び込んで来る賊の腹を切り捨てる。

ざっっっ!!!
「ぅぐっ!!!」

エリューンも剣を握り、咄嗟前へ出る。

エウロペはレジィリアンスを抱いたまま、ラフィーレに尋ねた。

“安全な隠れ場所は?”

ラフィーレは心話で答える。
“ここが一番、安全です”

ラフィーレは首振って、剣を振り戦うギュンターとエリューン。
そして戸口を睨み懐に手をやるローフィス。
隠し扉の戸口で、小弓を構えるテリュスに視線を振ると、エウロペに微笑んだ。
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