森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

襲撃されるシャスレ城

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 デルデロッテが通路を駆けてる間。
抱かれて運ばれてるエルデリオンは思わず懐かしいデルデの温もりに、安心しきって身を預ける。

いつも…いつも側に居て守ってくれていた。
どんな時でも。

間もなく広い通路へと出ると横に公爵が立っていて、最後尾のラステルが駆け込んだ後、壁の鉄の棒を倒す。

ガラガラガラガラ…ガッシャン!!!

それは大きな鉄の扉。
公爵はにっこり笑うと
「もう安全。
ファントール大公の地下の根城との、連絡通路は塞いだから。
陸路からここに来ようとすれば…たいそう大変だからね」

そして上から陽の降り注ぐ、白石の壁と階段を手で差し示す。
「上がれば、私の城だ」

先頭のオーガスタスは振り向き
「行っていいんだな?」
と確認取る。
ラステルは横の公爵に詰め寄ると
「ここからシャスレ城へ行くには?」
と尋ね、公爵に肩すくめられて言われた。
「うーん、かなり距離があるけど?」

皆が階段を登り切ると、そこは屋外で草原たなびく優美な庭園。
あちらこちにらに白石で出来たベンチや噴水、美しい裸婦の彫刻が立ち並ぶ。

白石の柵の向こうに見えるのは、遙か深い渓谷。
庭園の向こうは、そびえ立つ優美なノルデュラス公爵の白亜の居城。

城の背後に景色として見えるのは、深い渓谷を挟み、ファントール大公のグレーの頑健な巨城。

二つの城を繋ぐ尾根は険しく切り立っていて、巨石だらけの危険な道で馬では到底無理。

公爵は皆に手を振り、城へと誘う。
「ご招待する。
中で寛いでくれ」

オーガスタスは直ぐ白亜の城へと歩き出す。
銀髪巻き毛のラウールが後に続き、ラステルがエルデリオンを抱いてるデルデロッテを見る。
が、デルデロッテは公爵の背に唸った。
「私は貴殿に山程文句が言いたい!」

公爵は振り向かないまま、言葉を返す。
「王子の居る場でなら。
どれだけても文句を聞こう」

エルデリオンはデルデに抱かれて城へと運ばれながら、真っ赤になって言い訳た。
「…その…デルデ、あの…。
あんまり嫌じゃ無くって、最後は私の方から…」
デルデは直ぐ、噛みつくように言い返す。
「そう仕向けたに決まってるでしょう?!」

ラステルもデルデの横を歩きながら、口添えする。
「ノルデュラス公爵はデルデに並ぶ詐欺師ですから。
大勢の女性を渡り歩いても、他とも寝てると女性らに糾弾されず。
男達の嫉妬をどれだけ買おうが、高い身分と剣の腕で文句をねじ伏せてきた男です。
そりゃ経験不足の貴方じゃ渡り合えず、言いなりになって当たり前。
尿道に挿入なんてされた上、リングで射精の抑制なんてされたりしたら。
抗うなんて無理な話」

オーガスタスは話を漏れ聞き、ラステルと長身のデルデロッテに振り向く。
「…ここでは快感追求するのに、そこまでやるのか?」

ラステルは肩すくめて言い切った。
「デルデが有名な垂らしなので。
その上を行こうと、公爵が無茶をしたんです」

オーガスタスは納得して頷いた。
「なるほど」

けれど銀髪巻き毛の美青年ラウールが、腕に抱くさらわれた王子のミラーシェンを見つめ、呟いた。
紅蜥蜴ラ・ベッタはそれくらい、当たり前にやる」

オーガスタスは顔を下げた。
「…アースルーリンドに襲い来る盗賊らも、少年や少女をさらい紅蜥蜴ラ・ベッタに売る。
出来る事なら何でも手助けする」

皆がそう呟く、とても背の高いオーガスタスを見つめる中。
ラステルだけがにこにこ微笑って頷いた。
「大変、助かります。
この拠点を我々が潰せれば、奴らの勢力をごっそり削げる。
絶対、負けられないんです」

オーガスタスは、頷いた。


飛行船は、少しずつ速度を取り戻す。
エドウィンが心話で皆に告げた。
“エルデリオンはノルデュラス公爵の城に、無事保護されたみたいです。
さっきからラステルから…警告が聞こえるんだけど…。
意識が途切れて聞き取れ…ない”

けれどレジィリアンスの居る城に飛ばされたラフィーレから、悲鳴のような声が脳裏に響き渡る。
“賊が…!
賊が来てる!
僕…シャーレの様子をダンザイン様に送ってたから気づかなかったけど…!
もうここにも来る!!!”

エウロペが直ぐ、脳内で叫ぶ。
“エリューン!!!無事か?!”
“守備隊に、安全な場所に移るよう警告された!!!
不意打ちだそうで…止められる保証が無いと!!!”

デュバッセン大公が、大声で怒鳴った。
“ラクセス!!!”

ラフィーレが直ぐ大公の意識を辿り、名の男を探し出して言葉を送る。

“城の警護はどうなってる?!”
デュバッセン大公の問いに、ラクセスから返答が返って来る。
“鳩も鷹も撃ち落とされ、他と連絡を絶たれた状態で援軍が臨めない!!!
城の中の騎士と我らで対応するしか無い状態だが…敵の数が多い!!!
王子はシュテフザイン森と花の王国の護衛殿と、直ぐ安全な隠れ場所へ移動させました!
が、撃退出来ないと…今、城門守備の片翼、東の塔が燃え落ちた!!!
じき、奴らは雪崩れ込んで来る!!!
…で、この声って届いてます?”
“届いてる!!!
大至急我らも行くし、援軍を手配するから、何としてもレジィリアンス殿をお守りして持ち応えてくれ!!!”
“やるだけやりますよ!!!”

エウロペはそれを聞き、船からまだかなり先。
森を挟んだかなり向こうにそびえ立つ、塔が幾つもあるシャスレ城を見やる。
城の建物の向こう側に、僅かに炎が見えていた。
テリュスが、その距離をもどかしそうに、じりじりして船の舳先で見つめる。

“シュノートル!!!
ケッセン!!!
ラクトール!!!
大至急、シャスレ城にありったけの騎兵を送れ!!!
ヨランダ!!!
ノルデュラス公爵の城に警護を送れ!!!
エルデリオン王子が居る!!!”

デュバッセン大公の脳裏に響き渡る咆吼に、直ぐ返答が返って来る。
“今直ぐ手配します!!!”
“駆けつけます!!!”
“…騎兵を直ぐ出します!!!”

暫くしてヨランダから
“ファントール大公の根城に突入準備してる、全てをですか?!”
と尋ねる声。
“突入し始めてる?!”
“足がかりを作るため、既に先兵隊が侵入してます!”
“さらに突入させ、『掃除』を頼む。
腕の立つ一個小隊をノルデュラス公爵の城へ!”
“了解!
『掃除』を始めます!
突入隊は司令を待って待機。
二個小隊を、ノルデュラス公爵の城へ!!!”
“それでいい。
後を頼む!!!”
“お任せを”

ギュンターは脳裏に響く大声に、顔をしかめていたけれど…呻いた。
「…凄い機動力だな」
ローフィスは横で腕組みし、頷く。
「さすが、大国だけある」
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