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ゾーデドーロ(東の最果て)
飛ばされた先の一触即発
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オーガスタスが突然その部屋に飛ばされ、まず目にしたのは目前のデカい天蓋付き寝台。
その上に、ぐったりした肩までの明るいさらりとした栗毛で白い肌の美青年が、グレーがかった長髪巻き毛の素晴らしい美丈夫の腕に、抱かれているのをにし、嫌な予感に包まれる。
横にラステルが目を見開いていて同様の景色を目撃し、反対横、ギュンターほどの長身のデルデロッテは、見るなり拳を握り込み、つかつかと歩き出す。
ラステルに顎をしゃくられ、オーガスタスはその長い腕で、歩き去るデルデロッテの肩を掴んだ。
咄嗟怒り狂ってるデルデロッテは、手を外そうと肩を下げる。
オーガスタスは習慣に習い、一瞬で踏み出すとデルデロッテの胴に腕を回し、自分の胸に引き寄せた。
デルデロッテは止められたら条件反射で拳振ろうと腕を持ち上げたのに、胴に腕が回って凄い力で後ろに引きずられ、目を見開いた。
その時。
がらがらがら…と音がし、オーガスタスとその背に抱き寄せにれたデルデロッテが、二人同時に音のする上を見ると。
ガッシャン!!!
と音立て、四方を囲う鉄格子の中に閉じ込められ、二人とも沈黙し、固まった。
ラステルだけが、素早く鉄格子が落ちて来る前、横に避けて鉄格子の外に出る。
オーガスタスが腕を放すと、デルデロッテは鉄格子を握り込み、歯を剥いた。
「貴様!!!」
ラステルはにこやかに、咄嗟に湧いて出たデルデロッテに見られ羞恥に染まるエルデリオンを腕に抱き、もう片手で上から垂れる太い紐を握ってる、ノルデュラス公爵に近寄る。
「…それで…」
けれどその間にも、デルデロッテは喚きまくる。
「何しやがった!!!
リングで射精抑制して自分の意のままにしようなんざ、最低腐れ男のする事だ!!!」
「…君だってしたろう?」
公爵に言い返され、デルデロッテは真っ赤に頬染めて俯くエルデリオンに視線を振る。
「喋ったのか?!」
エルデリオンは真っ赤な顔を少し上げると
「…どうして突然空間から湧いて出るんだ?」
と蚊の泣くような声で尋ねた。
デルデロッテもラステルも同時に、後ろで鉄格子に背をもたせかけ、腕組みしてる長身赤毛の風格の塊の大男、オーガスタスを指さす。
「…え?」
エルデリオンは目を見開いた。
が、ノルデュラス公爵は、思い当たって頷く。
「…アースルーリンド?」
ラステルは、頷く。
「それで公爵…」
「いい加減、エルデリオンを離せ!!!」
「デルデ悪いけど。
少し黙っててくれない?」
ラステルに言われても、聞いていないデルデはまだ怒鳴る。
「だいたい卑怯だぞ?!
なんだこの動物扱いの鉄格子は!!!」
「…君みたいな無礼者がいるので。
私も備えが必要だ」
その大人の余裕が気に入らず、デルデはかっかしてる。
オーガスタスは心話で
“出た先で閉じ込められるって、どうなんだ?”
と尋ねてみた。
が、ディアヴォロスが代わって囁く。
“こちらとしては、ル・シャレファが疲れ切ってるから、もう助ける手立てが無い。
回復しても船を運ぶ神聖神殿隊騎士に光を送らないとだし。
君らで何とかして貰うしか…”
オーガスタスはディアスの回答に、腕組みしたまま無言で頷いた。
ラステルには聞こえてて、ぎくしゃくした笑顔でオーガスタスに告げる。
「いやとても、助かってる。
デルデが殴りかかる・前に止められるなんて。
流石に凄い」
オーガスタスはふてきって呻いた。
「褒められても、この状態じゃ。
全然嬉しくない」
「そうだろうね。
公爵、デルデはともかく、アースルーリンドからの客人は出して貰えないかな?」
ノルデュラス公爵はラステルに視線を向けると、真顔で言った。
「あの体格の男を?
大体、体格の割りに紳士的だと分かっても。
デルデロッテは残して彼だけ出すなんて、無理に決まってる」
デルデロッテは尚も唸る。
「出して男らしく、決着を付けろ!!!」
ノルデュラス公爵は片眉上げた。
「寝技で?
エルデリオンは四つのリングをはめたままでも、イきまくったぞ?」
ガタガタガタッ!!!
デルデロッテは怒りに任せ、鉄格子を揺すりまくる。
オーガスタスはとうとうため息交じりに屈むと、床に着いた鉄格子の端に、指が入るかどうかを試し始める。
デルデロッテは気づいて振り向く。
「…上げられる?」
オーガスタスは思わず怒鳴った。
「黙ってろ!!!
でなきゃ、手伝え!!!
死ぬ程重いんだ!!!」
デルデロッテは言われて思わず横に屈み、鉄格子と床の間に指を入れようとするオーガスタスのタメに、格子を掴んで上に持ち上げようとし始めた。
ラステルはやっと静かになったので、公爵に話しかける。
「貴方は、紅蜥蜴?」
「紅蜥蜴と繋がってる叔父から父へと連絡が入り、父からの命が下ったので手助けは一応してる。
連中とはあまり友達には成りたくないが、私に成り代わったあの色男に告げ口され、追放の憂き目に遭って、仕方無くね」
ラステルは鉄格子を持ち上げようと、二人して頑張ってるオーガスタスとデルデロッテと、ノルデュラス公爵を交互に見、とりあえず提案してみた。
「もし宜しければ、王子を返して頂けません?」
ノルデュラス公爵は微笑む。
「知ってるよ。
君は優男に見えるけど、私を簡単に眠らせられるって」
ラステルは笑顔のまま、囁く。
「まさか!
貴方だって騎士としては称号を持つ腕前。
そんな簡単には…」
ノルデュラス公爵は、艶やかに微笑む。
「君が実力行使に出ないのは、私が腕にエルデリオンを抱いてるから。
彼に危害を加えられたら困るからだろう?
ちなみにエルデリオンが、私の隙を狙って逃げ出さないのは。
散々ヌいて腰が抜けて足にも力が入らず、動けないほど疲れ切ってるから。
何度イったっけ?
エルデリオン」
微笑んで聞かれ、エルデリオンはチラ…と、鉄格子を上に持ち上げてるデルデロッテを見、もっと真っ赤になって顔を下げる。
デルデロッテが持ち上げてる鉄格子を離しそうで、オーガスタスは怒鳴りつける。
「出たかったら絶対離すな!!!」
デルデロッテは公爵を怒鳴りつけたかったけど。
ぐっ…と我慢し、格子を持ち上げ続けた。
ラステルは笑顔で頷く。
「状況は、よく分かりました。
では貴方は紅蜥蜴に、エルデリオンを渡す気は無いと?」
ノルデュラス公爵も、負けずに笑顔で言い返す。
「匿ってる」
「それはありがとう」
「けれど私の身の安全のために。
今は彼を、人質にしないとダメみたいだ」
「とんでもない!
紅蜥蜴から保護して頂いた時点で、貴方には恩赦が与えられます!
エルデリオンに手を出した件については、デルデロッテと個別に話合いを」
ノルデュラス公爵は微笑を崩さない。
「それがこの場の嘘で無いと、君は保証出来る?」
ラステルは真顔で言い放った。
「勿論です!
四つも一物に金のリングをはめようが。
勝手に国の宝である王子の乳首に穴なんて開け、宝石付きリングをはめようが。
恩赦の妨げには、一切なりません」
エルデリオンはそれを聞いて茹でダコみたいに真っ赤になって顔を下げる中。
公爵は微笑んで頷く。
「ではそれを公式文書にして、貴方と国王のサインを」
ラステルは微笑みながら告げる。
「ここから国王のサインを貰うのは、距離的に無理」
「でも王印は持ち歩いていらっしゃいますよね?
この命令はどんな事があっても通すようにと、全門解除も同然の、絶対価値を生み出す王印です」
そう言って、横の書机を目で指し示す。
ラステルはしぶしぶ、羽根ペンと羊皮紙の置かれた書机の前に立ち、羽根ペンを持ち上げた。
その上に、ぐったりした肩までの明るいさらりとした栗毛で白い肌の美青年が、グレーがかった長髪巻き毛の素晴らしい美丈夫の腕に、抱かれているのをにし、嫌な予感に包まれる。
横にラステルが目を見開いていて同様の景色を目撃し、反対横、ギュンターほどの長身のデルデロッテは、見るなり拳を握り込み、つかつかと歩き出す。
ラステルに顎をしゃくられ、オーガスタスはその長い腕で、歩き去るデルデロッテの肩を掴んだ。
咄嗟怒り狂ってるデルデロッテは、手を外そうと肩を下げる。
オーガスタスは習慣に習い、一瞬で踏み出すとデルデロッテの胴に腕を回し、自分の胸に引き寄せた。
デルデロッテは止められたら条件反射で拳振ろうと腕を持ち上げたのに、胴に腕が回って凄い力で後ろに引きずられ、目を見開いた。
その時。
がらがらがら…と音がし、オーガスタスとその背に抱き寄せにれたデルデロッテが、二人同時に音のする上を見ると。
ガッシャン!!!
と音立て、四方を囲う鉄格子の中に閉じ込められ、二人とも沈黙し、固まった。
ラステルだけが、素早く鉄格子が落ちて来る前、横に避けて鉄格子の外に出る。
オーガスタスが腕を放すと、デルデロッテは鉄格子を握り込み、歯を剥いた。
「貴様!!!」
ラステルはにこやかに、咄嗟に湧いて出たデルデロッテに見られ羞恥に染まるエルデリオンを腕に抱き、もう片手で上から垂れる太い紐を握ってる、ノルデュラス公爵に近寄る。
「…それで…」
けれどその間にも、デルデロッテは喚きまくる。
「何しやがった!!!
リングで射精抑制して自分の意のままにしようなんざ、最低腐れ男のする事だ!!!」
「…君だってしたろう?」
公爵に言い返され、デルデロッテは真っ赤に頬染めて俯くエルデリオンに視線を振る。
「喋ったのか?!」
エルデリオンは真っ赤な顔を少し上げると
「…どうして突然空間から湧いて出るんだ?」
と蚊の泣くような声で尋ねた。
デルデロッテもラステルも同時に、後ろで鉄格子に背をもたせかけ、腕組みしてる長身赤毛の風格の塊の大男、オーガスタスを指さす。
「…え?」
エルデリオンは目を見開いた。
が、ノルデュラス公爵は、思い当たって頷く。
「…アースルーリンド?」
ラステルは、頷く。
「それで公爵…」
「いい加減、エルデリオンを離せ!!!」
「デルデ悪いけど。
少し黙っててくれない?」
ラステルに言われても、聞いていないデルデはまだ怒鳴る。
「だいたい卑怯だぞ?!
なんだこの動物扱いの鉄格子は!!!」
「…君みたいな無礼者がいるので。
私も備えが必要だ」
その大人の余裕が気に入らず、デルデはかっかしてる。
オーガスタスは心話で
“出た先で閉じ込められるって、どうなんだ?”
と尋ねてみた。
が、ディアヴォロスが代わって囁く。
“こちらとしては、ル・シャレファが疲れ切ってるから、もう助ける手立てが無い。
回復しても船を運ぶ神聖神殿隊騎士に光を送らないとだし。
君らで何とかして貰うしか…”
オーガスタスはディアスの回答に、腕組みしたまま無言で頷いた。
ラステルには聞こえてて、ぎくしゃくした笑顔でオーガスタスに告げる。
「いやとても、助かってる。
デルデが殴りかかる・前に止められるなんて。
流石に凄い」
オーガスタスはふてきって呻いた。
「褒められても、この状態じゃ。
全然嬉しくない」
「そうだろうね。
公爵、デルデはともかく、アースルーリンドからの客人は出して貰えないかな?」
ノルデュラス公爵はラステルに視線を向けると、真顔で言った。
「あの体格の男を?
大体、体格の割りに紳士的だと分かっても。
デルデロッテは残して彼だけ出すなんて、無理に決まってる」
デルデロッテは尚も唸る。
「出して男らしく、決着を付けろ!!!」
ノルデュラス公爵は片眉上げた。
「寝技で?
エルデリオンは四つのリングをはめたままでも、イきまくったぞ?」
ガタガタガタッ!!!
デルデロッテは怒りに任せ、鉄格子を揺すりまくる。
オーガスタスはとうとうため息交じりに屈むと、床に着いた鉄格子の端に、指が入るかどうかを試し始める。
デルデロッテは気づいて振り向く。
「…上げられる?」
オーガスタスは思わず怒鳴った。
「黙ってろ!!!
でなきゃ、手伝え!!!
死ぬ程重いんだ!!!」
デルデロッテは言われて思わず横に屈み、鉄格子と床の間に指を入れようとするオーガスタスのタメに、格子を掴んで上に持ち上げようとし始めた。
ラステルはやっと静かになったので、公爵に話しかける。
「貴方は、紅蜥蜴?」
「紅蜥蜴と繋がってる叔父から父へと連絡が入り、父からの命が下ったので手助けは一応してる。
連中とはあまり友達には成りたくないが、私に成り代わったあの色男に告げ口され、追放の憂き目に遭って、仕方無くね」
ラステルは鉄格子を持ち上げようと、二人して頑張ってるオーガスタスとデルデロッテと、ノルデュラス公爵を交互に見、とりあえず提案してみた。
「もし宜しければ、王子を返して頂けません?」
ノルデュラス公爵は微笑む。
「知ってるよ。
君は優男に見えるけど、私を簡単に眠らせられるって」
ラステルは笑顔のまま、囁く。
「まさか!
貴方だって騎士としては称号を持つ腕前。
そんな簡単には…」
ノルデュラス公爵は、艶やかに微笑む。
「君が実力行使に出ないのは、私が腕にエルデリオンを抱いてるから。
彼に危害を加えられたら困るからだろう?
ちなみにエルデリオンが、私の隙を狙って逃げ出さないのは。
散々ヌいて腰が抜けて足にも力が入らず、動けないほど疲れ切ってるから。
何度イったっけ?
エルデリオン」
微笑んで聞かれ、エルデリオンはチラ…と、鉄格子を上に持ち上げてるデルデロッテを見、もっと真っ赤になって顔を下げる。
デルデロッテが持ち上げてる鉄格子を離しそうで、オーガスタスは怒鳴りつける。
「出たかったら絶対離すな!!!」
デルデロッテは公爵を怒鳴りつけたかったけど。
ぐっ…と我慢し、格子を持ち上げ続けた。
ラステルは笑顔で頷く。
「状況は、よく分かりました。
では貴方は紅蜥蜴に、エルデリオンを渡す気は無いと?」
ノルデュラス公爵も、負けずに笑顔で言い返す。
「匿ってる」
「それはありがとう」
「けれど私の身の安全のために。
今は彼を、人質にしないとダメみたいだ」
「とんでもない!
紅蜥蜴から保護して頂いた時点で、貴方には恩赦が与えられます!
エルデリオンに手を出した件については、デルデロッテと個別に話合いを」
ノルデュラス公爵は微笑を崩さない。
「それがこの場の嘘で無いと、君は保証出来る?」
ラステルは真顔で言い放った。
「勿論です!
四つも一物に金のリングをはめようが。
勝手に国の宝である王子の乳首に穴なんて開け、宝石付きリングをはめようが。
恩赦の妨げには、一切なりません」
エルデリオンはそれを聞いて茹でダコみたいに真っ赤になって顔を下げる中。
公爵は微笑んで頷く。
「ではそれを公式文書にして、貴方と国王のサインを」
ラステルは微笑みながら告げる。
「ここから国王のサインを貰うのは、距離的に無理」
「でも王印は持ち歩いていらっしゃいますよね?
この命令はどんな事があっても通すようにと、全門解除も同然の、絶対価値を生み出す王印です」
そう言って、横の書机を目で指し示す。
ラステルはしぶしぶ、羽根ペンと羊皮紙の置かれた書机の前に立ち、羽根ペンを持ち上げた。
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