森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

レジィと地震と駆けつけるエウロペと飛行船

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 レジィはシャーレに導かれるように、歩き始めた。
シャーレは眠ってるはずなのに…頭で点滅する光を送って来る。

角をどっちに曲がろうか。
迷って右を見るといっぱい点滅し、左だと…点滅しない。
左へ行こうとすると…引っ張られるみたいに足が止まる。

“右…って事?”
聞くと、点滅する。

仕方無くレジィは右を曲がる。
けれど靴音が響き、レジィは慌てて横の扉を開け、室内に隠れた。

そこは薄暗く、服がたくさん吊されていて、衣装部屋のようだった。

“そこ…奥の扉…ちょっとだけ開けて、覗いてみて”

シャーレの声が脳裏に響く。
彼は疲れていて…もうさっきみたいに、体を乗っ取って動かす元気は無いみたいに感じ、レジィは奥へ行って、横の扉を少しだけ開けて見る。

「ぁあっ!」

喘ぎ声がして、レジィはどきん!とした。
顔を動かし、細い扉の隙間から、声の方へと視線を移す。

寝台の上には目元に黒い仮面を付けた、複数の裸の男がいて…。
銀髪の…雪のように色白の美少年が四つん這いで手を付き、背後から男に挿入されていた。

男達はまだ少年の華奢な体に群がるように、体のあちこちに手や唇を這わせてる。

レジィは顔を背けた。
自分がされた時を思い出して。

けれどシャーレは頭の中に響く声で囁く。
“僕も…あれされた…。
いっぱい…。
いっぱい………。
僕…がなにされても動かなくなったら…。
あいつにだけになった。
僕…にするの”

レジィリアンスは“あいつ”が、さっきシャーレが首を絞めた男だと感じた。

けれど…銀髪の美少年は両腕持ち上げられ、正面から男に無理矢理口づけられていて…それでも背後から突かれ続け、首を振ってもがき、嫌がってた。

別の男は滑らかな白い背に口づけながら…少年の男の印を手に握り込んで…。
別の一人は乳首を吸っている。

「ぅんっ…んんっ…」

少年の、すすり泣くような声が響く。
シャーレは少年と同調し、怒りで力を…見えない力を、引き寄せようとしてるように、レジィには思えた。

その時。
屋敷が揺れた。
最初は小さく。
けれど次第に大きく。

ガタガタ…ガタガタガタッ!!!

「…な…なんだ?!」
「地震?!」

仮面を付けた男達は、一斉に少年を放す。
そしてまだ大きく揺れまくる室内に怯え、一斉に扉を開け、逃げ出して行った。

レジィは銀髪の少年を助けようと…駆け出そうとしたけど。
くらっ!!!と酷い目眩に襲われ、そこにへたり込む。

“シャーレ?!
今の…君がしたの?!
…シャー………”

頭の中で呼んでみるけど…シャーレは力を使い切って疲れ切り…そして…死にかけてるみたいに気配が微かになって、レジィリアンスは焦った。

“シャーレ?!
返事して!!!
シャーレっ!!!”

けれど手も足も、ぐったりしきって力が入らなくって…意識が薄らいで行く。
その時、息も絶え絶えの、シャーレの微かな声が聞こえた。

“道連…れにし…てごめ…ん………”

レジィリアンスはその声が聞こえた途端、全身から力が抜けきって、気を失った。


エウロペは着替えて廊下に出た途端、突然微かに揺れ始め、次に大きく揺れて、壁に手を付き身を支える。

その時、ワーキュラスが脳裏で激しく虹色の光を点滅させた。
ディアスの声が響く。
“上だエウロペ!!!
レジィリアンスとシャーレがいる!!!”

エウロペはまだ大きく揺れる廊下を、駆け出した。

玄関ホールに出る。
右に幅広の赤絨毯が敷かれた優美な階段。
そちらを見ると、虹色の点滅。

エウロペは即座に駆け上がる。
上から裸で仮面を付けた男二人が、駆け下りて来た。
ぶつかりそうになるすれすれで避けながら、少しも速度を落とさず駆け上がって、右に虹色の点滅を見つけ、右の廊下を駆け抜ける。

ずらりと並ぶ扉、その一つの前で、点滅する光が導くように瞬く。
エウロペは一気に駆け寄って扉を開ける。

衣服の吊された…さ程広くない暗い室内の奥の床に、レジィが透けたガウンを身に付け、目を閉じ倒れていた。

エウロペは駆け寄って屈み込むと、両手でレジィを抱き上げる。

“外だエウロペ!!!
オーガスタスが上空に来てる!”
咄嗟、エウロペは叫び返す。
“方角は?!”
“玄関ホールから外へ出ろ!!!
出たらその時指示する!”

ディアスの力強い声に押されるように、エウロペはレジィを抱きかかえ、扉を蹴立てて廊下を駆け抜けた。

階段を駆け下りると、広々とした豪華な柱の立ち並ぶ玄関ホールで、さっきの裸の仮面男らが使用人を捕まえ、子細を聞いていた。

使用人達は皆黒服で隙の無さそうな風情で。
エウロペはチラ見しながらレジィを抱いたまま駆け抜け、開いた大きな玄関扉を抜け、外階段を駆け下りる。

“右の茂み!”

ディアスの声と共に右に視線を送ると、斜め前の茂みが点滅する。

エウロペは凄い速さで茂みへと突っ込んで行った。
背後から
「おい!
どこへ行く?!」
と叫び声が聞こえ、エウロペはますます走る速度を上げ、木もまばらな林を駆け抜けた。

暫く走り続けると、小屋が見えて来る。
小屋の外に、長梯子ながばしごが横たえてあった。

“レジィを抱え、梯子を持って走れるか?!”
ディアスに聞かれ、エウロペは普通の長さよりもかなり長い梯子を見、口に出して唸った。
「やるしか、無いんだろう?!
空?!」

けれど少しも歩を緩めず小屋前に駆け込むと、レジィを肩に担ぎ、梯子を小脇に抱え上げた。

梯子は建物二階分、ゆうにある高さだったから、力を抜くと後ろ端か前端は地面に突き刺さり、つんのめる。

必死でバランスを取りながら、梯子を抱え走った。
が、背後から追っ手の駆け来る、茂みの葉を叩く音。

ざざざざざっ!!!

エウロペは木々が消え、広場のような草地を速度を上げて駆け続けた。

目前に、鉄柵の囲いが立ちはだかる。
けれどエウロペは直ぐそれを乗り越えるためだと理解し、梯子を抱えレジィを肩に担いだまま、鉄柵に駆け寄る。

間もなく林から追っ手が姿を見せ、エウロペは梯子を高い鉄柵に立てかけると、肩に担いだレジィに手を添え、梯子を登り始めた。


オーガスタスは脳裏に点滅する光が、ワーキュラスからの緊急信号だと知っていたので、気が気じゃ無かった。

左の草地へ向かい始める飛行船の方角を見つめ
「曲がるな!!!
もっと先!!!
真っ直ぐ先に行け!!!」
と大声で吠える。

髭もじゃ丸眼鏡男は、鬼気迫る表情でオーガスタスに怒鳴られたものの。
焦りまくって喚く。
「ち…着陸地点はもっと左…。
先は崖だらけで、とっても降りられない…」
「いいから、行け!!!」

目が黄金に光り、真っ赤な髪を散らすライオンのようなオーガスタスの、迫力全開の咆吼にびびりまくり、舵を戻す。

テリュスとエリューンが人で無くなるアースルーリンドの大男の大迫力に、顔を見合わす中。
当のオーガスタスは
「もっと早く!!!」
と吠えて急き立てた。

髭もじゃ丸眼鏡は、足でペダルを踏んで空気を送り、上の石炭をもっと燃やす。
少しだけ、速度は上がるものの、すでに下は崖。
下から風が舞い上がり、向かい風で速度は落ちる。

テリュスは左ふち
エリューンは右縁のへり掴まり、底の見えない深い渓谷と断崖絶壁な景色に、無言で肝を冷やした。
「…こんなとこ、絶対落ちたくない…」

テリュスの言葉に、反対側から下を伺ってたエリューンも無言で頷く。

突然、オーガスタスが怒鳴った。
「無理だワーキュラス!!!
そんな点滅させたって…」

その時、突然。
船の縁に一人。
反対縁にもう一人。
ラフな格好の…けれど二メートルを超す長身の男が、空間から現れた。

テリュスは船の縁の上に立ってる二人を見、ぎょっ!として目を見開く。
一歩下がれば断崖絶壁の下へと真っ逆さまなのに、オーガスタスを超える長身の大男達は笑ってる。

「神聖神殿隊騎士?!」

オーガスタスが叫ぶと、二人は野性味たっぷりに笑い、頷く。
「こんなほっそい通路じゃ。
俺らくらいしか通れないからな!」
真っ赤な髪の男がそう叫び、銀の真っ直ぐの髪を靡かせたもう一人も叫ぶ。
「安心しろ!
この船を目的地に運ぶくらいは、出来る!」

二人は手を広げ、風から船を守るように白い光で包み込む。
向かい風で進む事を阻まれた船は、ゆっくり前へと進み始め、次第にその速度は上がって行く。

「…は…早いんだけど!」
テリュスが、いきなり後ろに流れてく景色に目を見開き叫ぶと、赤毛の男が怒鳴った。
「エウロペってヤツを拾わないと!!!」

エウロペの名を聞いた途端、テリュスとエリューンは同じ側の縁のへりに揃って張り付き、下を伺う。

髭もじゃ丸眼鏡は船が傾き、怒鳴った。
「ダメっ!!!
おんなじ側に体重かけちゃ!!!」

セリフは可愛いけど、人相の全く可愛くない髭もじゃの言葉に、オーガスタスは顔を下げて沈黙した。

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