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ゾーデドーロ(東の最果て)
白金の光に包まれた神聖騎士の長ダンザイン
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デルデロッテは金髪美貌のギュンターが
「オーガスタスは飛ばせるんだよな?
で、俺達は無理なのか?」
とぼやいてるのを聞き
「(…顔の割に…もしかしてかなり、喧嘩っ早いタイプ?)」
と懸念した。
ロットバルトはそれを聞いて、顔を下げる。
が、ラステルは
「そうですよ?
どうして飛ばせられないんです?」
と背後のエドウィンに聞いていた。
が、エドウィンは誰かと心話してるのか、答えず。
ローフィスの背後のラフィーレが、振り向いて代わりに説明した。
「この中で、人を飛ばせるのはシュアンだけです。
それも、ダンザイン殿の御力を借りて。
だから一人飛ばすだけで精一杯。
我々ですら、飛べません」
デルデロッテがどうしても疑問が拭えず、それでも問う。
「でもこの中で一番小柄な…ラステルの方が軽いのに。
一番重そうな人を飛ばすって、なんで?」
ローフィスが振り向いた。
「彼らは重量で運ばない。
その人に光が満ちてるかどうかで、軽くなったり重くなったりする。
ちなみに一番デカいオーガスタスは、日頃左将軍の補佐で左将軍の中に居る光竜ワーキュラスとしょっ中接しているので、この中で一番光を帯びてて、連中からしたら軽いんだ」
デルデロッテは納得して頷いた。
「そういう基準ですか」
ロットバルトも、頷きながら叫ぶ。
「では我々は、彼らからしたらたいそう重いんですな!」
後ろに座ってるシュアンは、にこにこして答える。
「エウロペって人、ものすごーーーく重くって。
ワーキュラスに“ここに運んで”って言われたけど、全然持ち上がらなかったら、ダンザインが助けてくれた」
デルデロッテはそれを聞いて、シュアンに振り向く。
「エウロペと…オーガスタス…?殿?
と、どっちが重たかった?」
シュアンはまた、にこにこ笑って言う。
「エウロペ」
皆は明らかにオーガスタスの方が体重が重いのに、シュアンの言葉を聞き、改めて基準が人間とは違うんだ。
と納得の頷きをした。
間もなく街中を抜け校外へと出ると、ラステル配下の二人がどこからともなく現れ、併走してラステルに囁く。
「案内は不要ですか?」
ラステルは先頭でオーガスタスの馬を駆る、ローフィスに叫ぶ。
「オーガスタス殿は道が分かると言ってたけど!」
そこまで聞いて、もうローフィスは意図を察し、振り向いて怒鳴る。
「道案内して貰ってくれ!」
ラステルは部下に
「…聞いたろう?」
と促すと、二人の配下は真被りの帽子を軽く下げて会釈し、一気に速度を上げて先頭に迫る。
ローフィスが馬を横に避けて二人を先に行かせるので、二人は陽気な笑顔をローフィスに向けて会釈し、先頭に躍り出た。
ローフィスは斜め後ろを走るラステルに振り向く。
「君の…部下だっけ?」
頷くラステルを見た後、ローフィスは前に顔を戻し、ぼそりと告げた。
「気に入った」
先頭のラステル配下の二人は、背しか見えなかったけど。
ローフィスの言葉を聞いて嬉しそうなのは、デルデロッテにもロットバルトにも、ギュンターにも分かった。
エウロペは言われたとおり、暗い石の通路の先の、明るい下り階段を見つける。
階段手前まで壁があり、壁際からチラとその向こうを覗いた。
部屋は広く、階段の向こう奥は分厚い敷物が敷かれ、寝台があって…。
その周囲を慌ただしく、人が動き回っていた。
身分高そうな、高価な碧緑色の光沢ある上着を着た明るい栗毛の男が、怒鳴ってる。
「どうして目を覚まさない!
微かに息があるだけで、死人のようだ!」
が、返答する者は居ない。
エウロペは告げようと思った。
が、ワーキュラスの荘厳な声が響く。
“彼の、本体か?”
エウロペは暫く“彼“が誰を意味するのか、考えあぐねた。
が、直ぐワーキュラスの声。
“シャーレ…。
我らが探してる者だ。
君が見た寝台に眠る者から、意識をまるで感じない…。
出来れば、近寄って欲しいんだが”
エウロペはざっと周囲に詰めてる者の数を数えた。
薬師らしく、戦えそうに無い者が三人。
一人が寝台に居る者に何か飲ませ、もう一人はテーブルの上で薬を練り、もう一人は二人の間を行き来し、次々薬を試しているように見えた。
そして身分の高そうな、高飛車な若者。
が、寝台の右横に開いた扉があり、チラと…見張りの姿が見えた。
つまり突入し、三人の薬師を眠らせたとして…。
よほど素早くやらないと、戸口の見張りが直ぐ、駆け込んで来る。
けれどその時、白金の光に包まれた、人影が見える。
“…一刻を争います。
寝台の者はじき、呼吸が止まる”
が、ワーキュラスが囁く。
“あの者の体に意識が無いから、通路が確保出来ない。
今見てる者を通路の拠点として使えば、彼の神経は間違いなく焼き切れる”
エウロペは彼らの相談話を聞き、直感的に理解し呻く。
“彼を助けたいが為、私を殺す?”
直ぐ、ワーキュラスの返答が聞こえた。
“いや。
誰か軽い者を君の場所に飛ばす。
そこで待機していてくれ”
待つと思った。
が、直ぐ横に金の光に包まれた、真っ直ぐの金髪の少年が姿を現す。
“エドウィン。
悪いが時間が押し迫ってる。
キツイとは思う。
が、私が飛ぶため、通路を確保して欲しい”
エウロペはその声が、白金の光纏った人だと感じた。
エドウィンが頷く間もなく。
あっと言う間に壁の向こうの寝台の上は白金の光に包まれ、眩いばかりの光から、白地に金の飾り模様の衣服を着けた、騎士が降り立つ。
エウロペですら、あまりに神々しいその騎士に目を見開いた。
が、三人の薬師と身分高い高飛車な青年は、腰を抜かさんばかり。
呆けて空間から現れた、白金の光纏った騎士を見つめてる。
騎士は床に降り立ち、寝台に屈む。
その背はとても高く、真っ直ぐな銀に近い金髪をさらりと滑らせ、腕の中に目を閉じる…レジィにとても良く似た美少年を抱き上げ、光で包み込む。
“直ぐ…運ぶ”
騎士の声が響いた。
が、エウロペは横のエドウィンが、苦渋の表情で頷くのを見た。
瞬間、白金の光は一際強く輝き…輝きが薄れた時、そこに二人の姿は無く、エウロペはエドウィンが、くらっ!と目眩で足元をふらつかせるのを見る。
次に、がくっ!と膝を折るのを見、慌てて腕を伸ばして抱き止めた。
暫く後、ワーキュラスの荘厳な声が響く。
“ダンザインが飛ぶのに通路を確保したため、エドウィンは疲労しきっていて、暫くは目を覚まさない。
すまないが…”
エウロペは直ぐ、心の中で言葉を返した。
“世話をする”
“すまない。
他の者らも暫く、心話も出来ない程疲労している”
エウロペはそれを聞いて、懸念した。
“つまり誰からも、情報は来ない?
もうシャーレを探し出したから。
この後君らは引き上げるのか?”
ワーキュラスは直ぐ虹色の光を瞬かせ、言葉を返した。
“…あれは入れ物で抜け殻。
意識は君の王子の中にある。
だから君の王子を探し出さなければ…”
エウロペは、ほっとした。
“さっきのように、レジィリアンスも探し出せたら、一瞬で運べるのか?”
光の国の神とも呼べる光竜は、悲しげに囁いた。
“いや…。
あれは出来うる限度、ギリギリの荒技。
二度は出来ない。
神聖神殿隊付き連隊騎士。
出来れば二人。
オーガスタス。
そしてル・シャレファの二人とシュアンが揃った時。
再びダンザインを呼べる。
が…言ったように、エドウィン一人では…とても意識が保たない”
エウロペは愕然として腕の中の美少年を見た。
つまり彼は…暫くはこのままで休眠状態。
さらに美少年だから、見つかれば囚われる。
どこか見つかりにくい場所に隠し、レジィリアンスを探すしか無い…。
ワーキュラスはまた、瞬いた。
“君の今居る場所に、良い隠し場所は見つからない…。
人が来れば教える。
が、君の居る場所は、人に普段使われている”
エウロペは頷くと、エドウィンを抱えたまま石の通路の奥へと進み始めた。
間もなく角を曲がると下り階段が見える。
今のままでは一本道。
人が来れば、両腕塞がってる自分は不利。
エウロペは一刻もその場を抜けようと、階段を駆け下りながら尋ねた。
“君がまだ私と話してると言うことは、君らで言うところの“通路”は繋がってるんじゃ無いのか?”
“話す程度は大して光を消耗しない。
が、ダンザインをここに運ぶとなると大量の光が必要で、それに耐える頑丈な通路が無ければ…”
エウロペは崖の間を渡るロープを思い浮かべた。
ワーキュラスは頷く。
“通話は、軽い物を渡す程度。
が、ダンザインを運ぶ場合、大岩をそのロープで渡すことに匹敵する。
エドウィンはそこそこ太いロープ。
君は…”
ワーキュラスがかなり細いロープのイメージを送ってくるので、エウロペはぞっとした。
つまりそのロープの細さは、自分の神経回路。
重量ある者を運び、その細いロープが千切れるイメージが浮かんだ時。
エウロペは理解し、ワーキュラスに囁いた。
“やろうと思えば出来たのに…しなかった?”
ワーキュラスの声に寄り添うように…人間の、はっきりした声が聞こえた。
低音の美声。
“彼は人を殺さない。
とても大きな彼は、やろうと思わなくとも簡単に小さな人を殺せてしまう。
けれどそれをすれば、彼は悲しむ”
エウロペはその美声の持ち主が、眩く神々しい光に包まれ、とても大きく美しい神の如くの光竜に、寄り添い労る姿を、イメージとして見た。
感動的な映像だった。
が、階段を降りた先の広い通路で靴音が響き渡り、危険な現実が押し迫るのをひしひしと感じ、感動してる場合じゃ無かった。
「オーガスタスは飛ばせるんだよな?
で、俺達は無理なのか?」
とぼやいてるのを聞き
「(…顔の割に…もしかしてかなり、喧嘩っ早いタイプ?)」
と懸念した。
ロットバルトはそれを聞いて、顔を下げる。
が、ラステルは
「そうですよ?
どうして飛ばせられないんです?」
と背後のエドウィンに聞いていた。
が、エドウィンは誰かと心話してるのか、答えず。
ローフィスの背後のラフィーレが、振り向いて代わりに説明した。
「この中で、人を飛ばせるのはシュアンだけです。
それも、ダンザイン殿の御力を借りて。
だから一人飛ばすだけで精一杯。
我々ですら、飛べません」
デルデロッテがどうしても疑問が拭えず、それでも問う。
「でもこの中で一番小柄な…ラステルの方が軽いのに。
一番重そうな人を飛ばすって、なんで?」
ローフィスが振り向いた。
「彼らは重量で運ばない。
その人に光が満ちてるかどうかで、軽くなったり重くなったりする。
ちなみに一番デカいオーガスタスは、日頃左将軍の補佐で左将軍の中に居る光竜ワーキュラスとしょっ中接しているので、この中で一番光を帯びてて、連中からしたら軽いんだ」
デルデロッテは納得して頷いた。
「そういう基準ですか」
ロットバルトも、頷きながら叫ぶ。
「では我々は、彼らからしたらたいそう重いんですな!」
後ろに座ってるシュアンは、にこにこして答える。
「エウロペって人、ものすごーーーく重くって。
ワーキュラスに“ここに運んで”って言われたけど、全然持ち上がらなかったら、ダンザインが助けてくれた」
デルデロッテはそれを聞いて、シュアンに振り向く。
「エウロペと…オーガスタス…?殿?
と、どっちが重たかった?」
シュアンはまた、にこにこ笑って言う。
「エウロペ」
皆は明らかにオーガスタスの方が体重が重いのに、シュアンの言葉を聞き、改めて基準が人間とは違うんだ。
と納得の頷きをした。
間もなく街中を抜け校外へと出ると、ラステル配下の二人がどこからともなく現れ、併走してラステルに囁く。
「案内は不要ですか?」
ラステルは先頭でオーガスタスの馬を駆る、ローフィスに叫ぶ。
「オーガスタス殿は道が分かると言ってたけど!」
そこまで聞いて、もうローフィスは意図を察し、振り向いて怒鳴る。
「道案内して貰ってくれ!」
ラステルは部下に
「…聞いたろう?」
と促すと、二人の配下は真被りの帽子を軽く下げて会釈し、一気に速度を上げて先頭に迫る。
ローフィスが馬を横に避けて二人を先に行かせるので、二人は陽気な笑顔をローフィスに向けて会釈し、先頭に躍り出た。
ローフィスは斜め後ろを走るラステルに振り向く。
「君の…部下だっけ?」
頷くラステルを見た後、ローフィスは前に顔を戻し、ぼそりと告げた。
「気に入った」
先頭のラステル配下の二人は、背しか見えなかったけど。
ローフィスの言葉を聞いて嬉しそうなのは、デルデロッテにもロットバルトにも、ギュンターにも分かった。
エウロペは言われたとおり、暗い石の通路の先の、明るい下り階段を見つける。
階段手前まで壁があり、壁際からチラとその向こうを覗いた。
部屋は広く、階段の向こう奥は分厚い敷物が敷かれ、寝台があって…。
その周囲を慌ただしく、人が動き回っていた。
身分高そうな、高価な碧緑色の光沢ある上着を着た明るい栗毛の男が、怒鳴ってる。
「どうして目を覚まさない!
微かに息があるだけで、死人のようだ!」
が、返答する者は居ない。
エウロペは告げようと思った。
が、ワーキュラスの荘厳な声が響く。
“彼の、本体か?”
エウロペは暫く“彼“が誰を意味するのか、考えあぐねた。
が、直ぐワーキュラスの声。
“シャーレ…。
我らが探してる者だ。
君が見た寝台に眠る者から、意識をまるで感じない…。
出来れば、近寄って欲しいんだが”
エウロペはざっと周囲に詰めてる者の数を数えた。
薬師らしく、戦えそうに無い者が三人。
一人が寝台に居る者に何か飲ませ、もう一人はテーブルの上で薬を練り、もう一人は二人の間を行き来し、次々薬を試しているように見えた。
そして身分の高そうな、高飛車な若者。
が、寝台の右横に開いた扉があり、チラと…見張りの姿が見えた。
つまり突入し、三人の薬師を眠らせたとして…。
よほど素早くやらないと、戸口の見張りが直ぐ、駆け込んで来る。
けれどその時、白金の光に包まれた、人影が見える。
“…一刻を争います。
寝台の者はじき、呼吸が止まる”
が、ワーキュラスが囁く。
“あの者の体に意識が無いから、通路が確保出来ない。
今見てる者を通路の拠点として使えば、彼の神経は間違いなく焼き切れる”
エウロペは彼らの相談話を聞き、直感的に理解し呻く。
“彼を助けたいが為、私を殺す?”
直ぐ、ワーキュラスの返答が聞こえた。
“いや。
誰か軽い者を君の場所に飛ばす。
そこで待機していてくれ”
待つと思った。
が、直ぐ横に金の光に包まれた、真っ直ぐの金髪の少年が姿を現す。
“エドウィン。
悪いが時間が押し迫ってる。
キツイとは思う。
が、私が飛ぶため、通路を確保して欲しい”
エウロペはその声が、白金の光纏った人だと感じた。
エドウィンが頷く間もなく。
あっと言う間に壁の向こうの寝台の上は白金の光に包まれ、眩いばかりの光から、白地に金の飾り模様の衣服を着けた、騎士が降り立つ。
エウロペですら、あまりに神々しいその騎士に目を見開いた。
が、三人の薬師と身分高い高飛車な青年は、腰を抜かさんばかり。
呆けて空間から現れた、白金の光纏った騎士を見つめてる。
騎士は床に降り立ち、寝台に屈む。
その背はとても高く、真っ直ぐな銀に近い金髪をさらりと滑らせ、腕の中に目を閉じる…レジィにとても良く似た美少年を抱き上げ、光で包み込む。
“直ぐ…運ぶ”
騎士の声が響いた。
が、エウロペは横のエドウィンが、苦渋の表情で頷くのを見た。
瞬間、白金の光は一際強く輝き…輝きが薄れた時、そこに二人の姿は無く、エウロペはエドウィンが、くらっ!と目眩で足元をふらつかせるのを見る。
次に、がくっ!と膝を折るのを見、慌てて腕を伸ばして抱き止めた。
暫く後、ワーキュラスの荘厳な声が響く。
“ダンザインが飛ぶのに通路を確保したため、エドウィンは疲労しきっていて、暫くは目を覚まさない。
すまないが…”
エウロペは直ぐ、心の中で言葉を返した。
“世話をする”
“すまない。
他の者らも暫く、心話も出来ない程疲労している”
エウロペはそれを聞いて、懸念した。
“つまり誰からも、情報は来ない?
もうシャーレを探し出したから。
この後君らは引き上げるのか?”
ワーキュラスは直ぐ虹色の光を瞬かせ、言葉を返した。
“…あれは入れ物で抜け殻。
意識は君の王子の中にある。
だから君の王子を探し出さなければ…”
エウロペは、ほっとした。
“さっきのように、レジィリアンスも探し出せたら、一瞬で運べるのか?”
光の国の神とも呼べる光竜は、悲しげに囁いた。
“いや…。
あれは出来うる限度、ギリギリの荒技。
二度は出来ない。
神聖神殿隊付き連隊騎士。
出来れば二人。
オーガスタス。
そしてル・シャレファの二人とシュアンが揃った時。
再びダンザインを呼べる。
が…言ったように、エドウィン一人では…とても意識が保たない”
エウロペは愕然として腕の中の美少年を見た。
つまり彼は…暫くはこのままで休眠状態。
さらに美少年だから、見つかれば囚われる。
どこか見つかりにくい場所に隠し、レジィリアンスを探すしか無い…。
ワーキュラスはまた、瞬いた。
“君の今居る場所に、良い隠し場所は見つからない…。
人が来れば教える。
が、君の居る場所は、人に普段使われている”
エウロペは頷くと、エドウィンを抱えたまま石の通路の奥へと進み始めた。
間もなく角を曲がると下り階段が見える。
今のままでは一本道。
人が来れば、両腕塞がってる自分は不利。
エウロペは一刻もその場を抜けようと、階段を駆け下りながら尋ねた。
“君がまだ私と話してると言うことは、君らで言うところの“通路”は繋がってるんじゃ無いのか?”
“話す程度は大して光を消耗しない。
が、ダンザインをここに運ぶとなると大量の光が必要で、それに耐える頑丈な通路が無ければ…”
エウロペは崖の間を渡るロープを思い浮かべた。
ワーキュラスは頷く。
“通話は、軽い物を渡す程度。
が、ダンザインを運ぶ場合、大岩をそのロープで渡すことに匹敵する。
エドウィンはそこそこ太いロープ。
君は…”
ワーキュラスがかなり細いロープのイメージを送ってくるので、エウロペはぞっとした。
つまりそのロープの細さは、自分の神経回路。
重量ある者を運び、その細いロープが千切れるイメージが浮かんだ時。
エウロペは理解し、ワーキュラスに囁いた。
“やろうと思えば出来たのに…しなかった?”
ワーキュラスの声に寄り添うように…人間の、はっきりした声が聞こえた。
低音の美声。
“彼は人を殺さない。
とても大きな彼は、やろうと思わなくとも簡単に小さな人を殺せてしまう。
けれどそれをすれば、彼は悲しむ”
エウロペはその美声の持ち主が、眩く神々しい光に包まれ、とても大きく美しい神の如くの光竜に、寄り添い労る姿を、イメージとして見た。
感動的な映像だった。
が、階段を降りた先の広い通路で靴音が響き渡り、危険な現実が押し迫るのをひしひしと感じ、感動してる場合じゃ無かった。
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