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エルデリオンの幸福な始まり
四天王の緊急訪問
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けれどその時、玄関にデュバッセン大公、アッカマン侯爵、レクトール男爵の三人が来ていて。
シュテフザインの皆と王子、そして従者らと笑って逃げ回るラステルを見、目を見開く。
ラステルは気づくと、玄関に出向く。
そして三人に囁く。
「とりあえず、入って」
皆、一斉に追うのを止めてラステルを見つめる中。
エウロペがすかさずラステルに尋ねた。
「緊急事態?」
ラステルが頷くので
「お開きです」
と顔を小柄なレジィに向け、告げた。
エルデリオンはグリーィになったばかりだったので、ほっとしたけど。
レジィががっかりしてないか。
そう心配になって、様子を伺う。
けれどレジィはテリュスとエリューンに纏わり付いて
「久しぶりで、楽しかった!」
と笑顔を向けてる。
テリュスは
「お前ホントに記憶、戻ったのか?
記憶朧だった時みたいに、5歳児になってたぞ?」
と聞いていて、エルデリオンはその時ようやく…テリュスをマトモに見た。
「…テリュス…髭剃った?」
ロットバルトに
「今頃ですか?!」
と叫ばれ、エルデリオンは頬染めて俯く。
「…だってデルデロッテが、暴かなくていい事情、暴きまくるし。
やっとレジィリアンスを近くで見られたと思ったら…いきなりセバスカッチだし…」
けれどデュバッセン大公、レクトール男爵、アッカマン侯爵は、真っ直ぐエルデリオンの前に進み出ると、三人同時に頭を垂れ、右手を握って胸に当て、左腕は後ろに引いて、高等の礼を取った。
身を起こした後
「セバスカッチですか?
懐かしいですな!」
と一番年上で立派なレクトール男爵が笑顔で陽気に告げ。
絹糸のような栗毛を肩にながす美青年のアッカマン侯爵は呆れ、黒髪の美少年風デュバッセン大公は、口に手を当て眉を寄せて囁く。
「…言葉もありません…。
無邪気と言えば言葉はいいけど」
と批判した。
くりくり巻き毛のレクトール男爵は、陽気な笑顔でエウロペに近寄ると、声かける。
「貴方の王子をご紹介頂けますか?」
エウロペは感じ良く微笑んで頷く。
「レジィリアンス。
こちらはラステルの部下のレクトール男爵」
そう言うと、レクトール男爵は優雅に頭を下げ、左足を後ろに引いて腰を屈め、右手を胸に当てて左手を後ろに下げる。
その礼が、大袈裟で少しおどけて見えて、レジィリアンスは微笑んだ。
エウロペは横の美青年に視線を向け、紹介する。
「アッカマン侯爵」
侯爵は立ったまま頭を垂れ、右手を胸、左手を後ろに下げ、粋に挨拶した。
紺がかった青い瞳は美しく、凄く洗練されて品良く見え、レジィリアンスは頬染め見とれた。
「デュバッセン大公」
真っ直ぐな黒髪の美少年風大公は、嫌味なほど丁寧に頭を垂れた礼を取り、頭を上げてレジィリアンスをじっ…と見つめ
「噂通りの、凄い美少年ですね…」
と呟いた。
けれどレジィは、碧緑色の瞳が宝石みたいに綺麗で、色白で真っ直ぐな黒髪の大公があんまり綺麗に見えて、首を横に振る。
「それは貴方でしょう?」
と小声で囁いた。
デュバッセン大公は妖艶に微笑むと、視線をレジィの背後。
テリュスとエリューンに向け、エウロペに
「貴方のお国には美少年趣味は無いと聞きましたけれど。
…でも貴方が選ぶ部下は、美形揃いなのは偶然?」
と聞いた。
エウロペは苦笑する。
「王子が二人を気に入ったんです。
私が選んだ配下は、皆体格良くゴツいので、王子は怖がって」
デュバッセン大公は、呆れてレジィを見た。
「つまり王子が、美少年趣味?」
聞かれてレジィは首捻る。
「…二人を特別綺麗だとかは、思った事無いけど。
だって他はみんな、大人で大きくって…」
デュバッセン大公は納得して頷いた。
「選択の余地が無かったんですね。
つまりやっぱり、エウロペ殿が美少年趣味?」
美少年趣味を連呼され、テリュスとエリューンは顔を見合わせた。
「部下の若手で一番腕が立つのが、偶然見目も良かっただけですよ」
とうとうラステルがデュバッセン大公の肩に手を置き
「エウロペ殿を虐めるの、いい加減になさい。
二人は貴方の恋敵じゃありませんから」
と言うので、デュバッセン大公は仕方無く頷く。
ラステルに連れられ、テーブルへと去るデュバッセン大公を見送ったテリュスとエリューンは、揃ってレジィの横に立つエウロペを見る。
テリュスが
「俺達、あんたを挟んで恋敵と間違われたの?」
と問うと、エリューンも言った。
「すっごく、心外なんですが!」
エルデリオンが見てると、二人に叱られたエウロペは、笑顔で取りなす。
「オーデ・フォールの人は直ぐ、恋愛に結びつけるから」
が、デルデが皆の背後に来ると
「けれど彼、美少年風外見のわりに道徳観念爛れてますから。
絶対寝台で、裸のエウロペが裸のテリュスとエリューンに左右からすり寄られてるとこ、想像してましたよ」
そうぼそりと告げてテーブルに歩き去るので。
三人は、固まった。
テーブルではラステルが
「椅子が足りませんね」
と言い、暖炉の前の椅子を移動させていて、ロットバルトも手伝い、アッカマン侯爵とレクトール男爵も途中から椅子を受け取って、テーブル周りに据えていた。
デルデはデュバッセン大公に目前に立たれ
「…凄い垂らしだとは思ってたけど。
まさか王子を垂らすとは」
といちゃもん付けられ、足を止めていた。
椅子が整うと、皆が腰掛ける。
エルデリオン、ラステル、ロットバルトと横並び。
向かいにレクトール男爵、アッカマン侯爵、デュバッセン大公が座り、デルデはその横に仕方無く腰掛け
「…君、王子が今まで味わったこと無い事を散々寝室でし、体ごと絡め取ったんでしょう?」
とまだデュバッセン大公に言いががりを付けられてた。
デルデの横にエウロペ、レジィリアンス、エリューン、テリュスが入り、テーブル周りはかなりぎゅう詰め。
テリュスは角を挟んでまたロットバルトと隣になり
「…バリバリに、あっち系?」
とデュバッセン大公を指さし、尋ねる。
ロットバルトは無言で頷いた。
ラステルが笑顔でフォローする。
「どうやらエウロペ殿に、一目惚れらしい」
けれどそれを聞くなり、テリュスもエリューンも。
レジィリアンスまで目を見開いた後。
一斉に首振って、エウロペに振り向いた。
レクトール男爵が、まず口を開く。
「ドナルドン公爵から連絡が入り…」
けれどデュバッセン大公はまだ、デルデに言いがかり付けてる。
「幾ら年頃だろうが、節制なさ過ぎじゃ無いですか?
貴方厚顔無恥だから。
どうせ寝室で王子にしたい放題して蕩かし、自分の言いなりにしてるんでしょう?」
とうとうレクトール男爵は口を閉じ、デュバッセン大公とデルデを見るので。
皆も一斉に二人に注目した。
デルデロッテは突っかかるデュバッセン大公を、隙無い美貌で見つめ
「…貴方の誘いを断ったこと。
もの凄く、根に持ってます?」
とぼやく。
エウロペはくっ!と笑い、ラステルは苦笑い。
皆は
“振られた逆恨み?”
とデュバッセン大公を見つめる中、大公は言い放った。
「若造に舐められたら、普通憎むでしょう?」
「…憎んでます?」
大公は問われて、ふん!と顔を背けて言った。
「好かれたかったら、寝台で蕩かす以外、憎まれなくなる方法はありませんよ!」
と言うので、ラステルは眉下げて呟く。
「…でもデルデは直、エルデリオンの夫と成る身」
聞くなりデュバッセン大公は、腕組んで言い返す。
「だからまだ独身の今。
口説いてるんです!」
と言うので、テリュスが尋ねる。
「エウロペに一目惚れで…デルデも口説くのか?」
デュバッセン大公は頷く。
「エウロペ殿にはハートを持って行かれ、デルデロッテは一度は味わってみたい、ご馳走のようなものです。
宮廷中が“彼はいい”と褒めまくる評判聞いたら。
一度は食べてみたいと思うじゃないですか」
と言い放つので、とうとうレクトール男爵は笑いこけた。
アッカマン侯爵が、デュバッセン大公に顔向けて言い諭す。
「今、それどころじゃないからここまで来たの、忘れてない?」
ようやくデュバッセン大公はラステルに視線を戻し
「失礼」
と言った後
「これだけイイ男と美少年が居て、セバスカッチなんてしてるから、つい…」
と呟き
「皮肉りたくもなるでしょう?」
と言い放ち、テーブルの皆を見回した。
が、誰の同意も得られなかった。
シュテフザインの皆と王子、そして従者らと笑って逃げ回るラステルを見、目を見開く。
ラステルは気づくと、玄関に出向く。
そして三人に囁く。
「とりあえず、入って」
皆、一斉に追うのを止めてラステルを見つめる中。
エウロペがすかさずラステルに尋ねた。
「緊急事態?」
ラステルが頷くので
「お開きです」
と顔を小柄なレジィに向け、告げた。
エルデリオンはグリーィになったばかりだったので、ほっとしたけど。
レジィががっかりしてないか。
そう心配になって、様子を伺う。
けれどレジィはテリュスとエリューンに纏わり付いて
「久しぶりで、楽しかった!」
と笑顔を向けてる。
テリュスは
「お前ホントに記憶、戻ったのか?
記憶朧だった時みたいに、5歳児になってたぞ?」
と聞いていて、エルデリオンはその時ようやく…テリュスをマトモに見た。
「…テリュス…髭剃った?」
ロットバルトに
「今頃ですか?!」
と叫ばれ、エルデリオンは頬染めて俯く。
「…だってデルデロッテが、暴かなくていい事情、暴きまくるし。
やっとレジィリアンスを近くで見られたと思ったら…いきなりセバスカッチだし…」
けれどデュバッセン大公、レクトール男爵、アッカマン侯爵は、真っ直ぐエルデリオンの前に進み出ると、三人同時に頭を垂れ、右手を握って胸に当て、左腕は後ろに引いて、高等の礼を取った。
身を起こした後
「セバスカッチですか?
懐かしいですな!」
と一番年上で立派なレクトール男爵が笑顔で陽気に告げ。
絹糸のような栗毛を肩にながす美青年のアッカマン侯爵は呆れ、黒髪の美少年風デュバッセン大公は、口に手を当て眉を寄せて囁く。
「…言葉もありません…。
無邪気と言えば言葉はいいけど」
と批判した。
くりくり巻き毛のレクトール男爵は、陽気な笑顔でエウロペに近寄ると、声かける。
「貴方の王子をご紹介頂けますか?」
エウロペは感じ良く微笑んで頷く。
「レジィリアンス。
こちらはラステルの部下のレクトール男爵」
そう言うと、レクトール男爵は優雅に頭を下げ、左足を後ろに引いて腰を屈め、右手を胸に当てて左手を後ろに下げる。
その礼が、大袈裟で少しおどけて見えて、レジィリアンスは微笑んだ。
エウロペは横の美青年に視線を向け、紹介する。
「アッカマン侯爵」
侯爵は立ったまま頭を垂れ、右手を胸、左手を後ろに下げ、粋に挨拶した。
紺がかった青い瞳は美しく、凄く洗練されて品良く見え、レジィリアンスは頬染め見とれた。
「デュバッセン大公」
真っ直ぐな黒髪の美少年風大公は、嫌味なほど丁寧に頭を垂れた礼を取り、頭を上げてレジィリアンスをじっ…と見つめ
「噂通りの、凄い美少年ですね…」
と呟いた。
けれどレジィは、碧緑色の瞳が宝石みたいに綺麗で、色白で真っ直ぐな黒髪の大公があんまり綺麗に見えて、首を横に振る。
「それは貴方でしょう?」
と小声で囁いた。
デュバッセン大公は妖艶に微笑むと、視線をレジィの背後。
テリュスとエリューンに向け、エウロペに
「貴方のお国には美少年趣味は無いと聞きましたけれど。
…でも貴方が選ぶ部下は、美形揃いなのは偶然?」
と聞いた。
エウロペは苦笑する。
「王子が二人を気に入ったんです。
私が選んだ配下は、皆体格良くゴツいので、王子は怖がって」
デュバッセン大公は、呆れてレジィを見た。
「つまり王子が、美少年趣味?」
聞かれてレジィは首捻る。
「…二人を特別綺麗だとかは、思った事無いけど。
だって他はみんな、大人で大きくって…」
デュバッセン大公は納得して頷いた。
「選択の余地が無かったんですね。
つまりやっぱり、エウロペ殿が美少年趣味?」
美少年趣味を連呼され、テリュスとエリューンは顔を見合わせた。
「部下の若手で一番腕が立つのが、偶然見目も良かっただけですよ」
とうとうラステルがデュバッセン大公の肩に手を置き
「エウロペ殿を虐めるの、いい加減になさい。
二人は貴方の恋敵じゃありませんから」
と言うので、デュバッセン大公は仕方無く頷く。
ラステルに連れられ、テーブルへと去るデュバッセン大公を見送ったテリュスとエリューンは、揃ってレジィの横に立つエウロペを見る。
テリュスが
「俺達、あんたを挟んで恋敵と間違われたの?」
と問うと、エリューンも言った。
「すっごく、心外なんですが!」
エルデリオンが見てると、二人に叱られたエウロペは、笑顔で取りなす。
「オーデ・フォールの人は直ぐ、恋愛に結びつけるから」
が、デルデが皆の背後に来ると
「けれど彼、美少年風外見のわりに道徳観念爛れてますから。
絶対寝台で、裸のエウロペが裸のテリュスとエリューンに左右からすり寄られてるとこ、想像してましたよ」
そうぼそりと告げてテーブルに歩き去るので。
三人は、固まった。
テーブルではラステルが
「椅子が足りませんね」
と言い、暖炉の前の椅子を移動させていて、ロットバルトも手伝い、アッカマン侯爵とレクトール男爵も途中から椅子を受け取って、テーブル周りに据えていた。
デルデはデュバッセン大公に目前に立たれ
「…凄い垂らしだとは思ってたけど。
まさか王子を垂らすとは」
といちゃもん付けられ、足を止めていた。
椅子が整うと、皆が腰掛ける。
エルデリオン、ラステル、ロットバルトと横並び。
向かいにレクトール男爵、アッカマン侯爵、デュバッセン大公が座り、デルデはその横に仕方無く腰掛け
「…君、王子が今まで味わったこと無い事を散々寝室でし、体ごと絡め取ったんでしょう?」
とまだデュバッセン大公に言いががりを付けられてた。
デルデの横にエウロペ、レジィリアンス、エリューン、テリュスが入り、テーブル周りはかなりぎゅう詰め。
テリュスは角を挟んでまたロットバルトと隣になり
「…バリバリに、あっち系?」
とデュバッセン大公を指さし、尋ねる。
ロットバルトは無言で頷いた。
ラステルが笑顔でフォローする。
「どうやらエウロペ殿に、一目惚れらしい」
けれどそれを聞くなり、テリュスもエリューンも。
レジィリアンスまで目を見開いた後。
一斉に首振って、エウロペに振り向いた。
レクトール男爵が、まず口を開く。
「ドナルドン公爵から連絡が入り…」
けれどデュバッセン大公はまだ、デルデに言いがかり付けてる。
「幾ら年頃だろうが、節制なさ過ぎじゃ無いですか?
貴方厚顔無恥だから。
どうせ寝室で王子にしたい放題して蕩かし、自分の言いなりにしてるんでしょう?」
とうとうレクトール男爵は口を閉じ、デュバッセン大公とデルデを見るので。
皆も一斉に二人に注目した。
デルデロッテは突っかかるデュバッセン大公を、隙無い美貌で見つめ
「…貴方の誘いを断ったこと。
もの凄く、根に持ってます?」
とぼやく。
エウロペはくっ!と笑い、ラステルは苦笑い。
皆は
“振られた逆恨み?”
とデュバッセン大公を見つめる中、大公は言い放った。
「若造に舐められたら、普通憎むでしょう?」
「…憎んでます?」
大公は問われて、ふん!と顔を背けて言った。
「好かれたかったら、寝台で蕩かす以外、憎まれなくなる方法はありませんよ!」
と言うので、ラステルは眉下げて呟く。
「…でもデルデは直、エルデリオンの夫と成る身」
聞くなりデュバッセン大公は、腕組んで言い返す。
「だからまだ独身の今。
口説いてるんです!」
と言うので、テリュスが尋ねる。
「エウロペに一目惚れで…デルデも口説くのか?」
デュバッセン大公は頷く。
「エウロペ殿にはハートを持って行かれ、デルデロッテは一度は味わってみたい、ご馳走のようなものです。
宮廷中が“彼はいい”と褒めまくる評判聞いたら。
一度は食べてみたいと思うじゃないですか」
と言い放つので、とうとうレクトール男爵は笑いこけた。
アッカマン侯爵が、デュバッセン大公に顔向けて言い諭す。
「今、それどころじゃないからここまで来たの、忘れてない?」
ようやくデュバッセン大公はラステルに視線を戻し
「失礼」
と言った後
「これだけイイ男と美少年が居て、セバスカッチなんてしてるから、つい…」
と呟き
「皮肉りたくもなるでしょう?」
と言い放ち、テーブルの皆を見回した。
が、誰の同意も得られなかった。
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