森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの幸福な始まり

待望の再会

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 テリュスが窓から顔を出し、エリューンに一生懸命、丘を指し示す。

エリューンは気づくと、視線を丘に向ける。
その隙にレジィリアンスは斬りかかる!

が、カン!
よそ見してるエリューンに、打ちかかる剣を簡単に弾かれ、レジィはとうとうキレた。

「どーして見てないのに、当てられるのっ?!」
エリューンは丘を見つめたまま、返事する。
「気配で」

その後、また剣を構えて上から叩き斬る勢いのレジィに、避けもせず言って退ける。
「もうエルデリオンが来てますよ?」
けどレジィは頬を真っ赤にし、剣を振り下ろした。

カン!

斜めから剣を当てられ、また弾かれて必死に剣を飛ばすまいと、柄を握り込むレジィに。
エリューンは呟く。
「少し体を拭かないと。
予定より早い到着ですから」

テリュスとロットバルトはそれを見て、結局エリューンが手加減止めて本気出すと、レジィはまるで歯が立たないのを見せつけられ、二人揃って顔を下げた。


レジィは庭から主寝室に、エリューンに連れ込まれた。
エリューンは水差しから陶器に移した水に布を浸し、レジィのシャツをはだけ、体を拭き上げる。
けれどレジィは簡単にさばかれて悔しくって真っ赤な頬で、エリューンに尋ねた。
「どうしてそんなに強いの?!」
「殺そうと剣振ってくる大人と。
いつも戦ってたら、死にたくない一心で強くなれます」
と言いつつ、肩や胸、背中を拭く。

レジィは長い豪奢な金の髪を束ねて持ち上げられ、首筋を後ろからエリューンに拭かれ、呟く。
「…僕もうんと、強くなりたい…。
もう…好きにされないぐらい…」

エリューンはため息吐く。
捕らえられ…否応なしにエルデリオンや誘拐犯に嬲られた事が、火を付けてる。
と分かったけど…。
その時、どれほど嫌で不安だったか。
それが分かって。

「…エルデリオンは…思い出したんですよね?」
エリューンに尋ねられ、レジィは頬を染めて頷く。

「…うん」
「怖かった?」
エリューンに聞かれ、レジィは暫く沈黙した後、言った。
「…凄く…」

けれどその時、テリュスが扉を開ける。
「来た!」

背後、玄関口でエウロペが
「“いらした”だろう?」
と訂正していた。

レジィが背後のエウロペに振り向いてる、テリュスに尋ねる。
「シャツのままでも、いい?」

テリュスは顔をレジィに戻すと、頷く。
「別に構わないだろう?」
言った後、背後に振り向く。
そして顔を戻し
「いいそうだ」
と言った。

エリューンに肩に手を置かれ、頷かれて言われる。
「じゃ、行きましょうか?」
レジィはエリューンの腰に腕を回し、寄り添う。
エリューンは不安なレジィの気持ちを汲み取り、肩に腕を回して囁いた。
「…ちゃんと離れず、横にいますから」

レジィは俯けた顔で、コクン、と頷いた。


ラステルとエウロペが先にトラーテルに入った後、エルデリオンは玄関の手前で歩を止める。
デルデロッテに見つめられ、エルデリオンは俯いた。

「…エウロペ殿に…馬車での再現で、私がレジィ殿の立場で…された時…。
とても、怖かった…。
抵抗出来なくて、初めての事を強要されて」

デルデは目を見開く。
「どんな風に?」

エルデリオンは頬染めて、背の高いデルデを見上げた。
「…だから…上着を肘まで下ろし、ズボンを足首まで…。
エウロペ殿に、手足を拘束したも同じ。
って言われて…更にソファに押し倒されて…逃げ場が無くって」
「じゃなくて、どこが初めてで強要されたんですか?!」

エルデリオンは頬染めて俯く。
「…だから…私は大人の男とキスするのは…初めてだったし。
乳首に愛撫されるのも…蕾に指を挿入れられるのだって…。
ともかく少年で無く、大人の男にされるのが…何されても初めてで…」

そこまで言って、エルデリオンはふ…と気づく。
「…デルデ…怒ってる?」
デルデロッテは眉間に皺を寄せてたけど。
エルデリオンを見つめ、呟く。
「…なんか凄くムカムカしたけど。
怒ってたせいか」
と気づく。

その後、言葉に怒りを滲ませ、文句垂れた。
「エウロペ殿が悪くないと、分かっていても…。
初めての貴方にあれやこれやするなんて、美味しい役目を……」

エルデリオンは顔を下げ、真っ赤になった。
「…デルデ、あの…美味しい役目?」

デルデは真顔で頷く。
「私を始め、どれだけの男が貴方に悪さしたいと思ってたと思うんです?!
誰だって…ナニも知らなかった貴方に、悪戯したい。
と、熱望してたのに!
それを…一番望まぬ相手に、させるなんて…!」

その時、エルデリオンは真っ赤になってデルデに釘刺した。
「声が、大きい…!」

その時、目前の玄関に。
立ち止まったままちっとも入って来ないデルデロッテとエルデリオンに業を煮やし、エウロペもテリュスもロットバルトも、更にその後ろに、エリューンとレジィリアンスまで来ていて。
揃って会話を聞いていた。

レジィは前で背を向けてる、エウロペに尋ねる。
「…エウロペ、エルデリオン様に…した…の?」

エリューンもエウロペの背を見つめ、エウロペの少し後ろの両横にいた、ロットバルトとテリュスまでも。
エウロペの顔を覗き込む。

ラステルだけが室内で、額に手を当て、沈黙した。

エウロペが顔を下げて沈黙してるので。
デルデロッテはさっさと近寄ると、エウロペの少し離れた後ろで、目を見開いてるレジィに告げる。

「そう。
エルデリオンは君に酷いことをしたと、反省し。
エウロペ殿に君の仕返しをして良い。
と許可を出した。
エウロペ殿は大変困ったけど。
エルデリオンは言い出したら引かないから。
仕方無くエルデリオンに
『やっぱり止めましょうか』
と言わせるため、うんと怖がるように、わざと酷くしたんだ」

ラステルはきっぱり言い切るデルデを、その時救世主のように見つめた。
「(…こんな状況、幾ら私でも、絶対フォローしたくなかったけど。
ちゃんと自分の失態を。
彼は自分で収拾付けて、偉い)」

レジィはそれを聞くと、感激してエウロペの背に突進し、抱きつく。
「エウロペ、大好き!」

けれどテリュスとロットバルトは。
エウロペが凄く複雑な表情して見せるのを、間近で伺った。

デルデはまだ眉間に皺寄せたまま、きっぱり言い切った。
「エルデリオンはエウロペのお陰で、レジィ、君がどれだけ怖かったか。
思い知って…本当に済まないと思ってる」

けれどレジィはエウロペの背から顔を上げると、デルデに尋ねた。
「でもナニも知らないエルデリオンに、あれやこれや、したかったって…。
エルデリオンも、私が何も知らなかったから…したかったの?」

エルデリオンはデルデの横で頬を真っ赤に染め、どんどんその顔を下げて行くのを。
ロットバルトとテリュス、そしてエウロペは見た。

デルデは質問に、きっぱり返答する。
「そりゃあ、それもあったでしょうが。
エルデリオンは貴方と一緒に過ごしたいと、一途に頑張り抜いて、頑張りすぎて欲求不満になってたから。
抑えが効かず、襲っちゃったんです。
普段の彼なら、あんな馬鹿なマネはしないんですけど」

レジィはじっ…とデルデと、その横のエルデリオンを見た。
「…そう…なんだ…………」

エルデリオンは決意したように、真っ赤な頬の、顔を上げてレジィに告げる。
「本当に…私のせい…で………。
謝罪できるのなら、何でも致します!」
と頭を下げた。

「じゃ、剣を教えて下さい。
…きっと貴方も、エリューン同様すっごく、強いから…。
私なんて初心者過ぎて、相手にも成らないと思いますけど。
闘技場の貴方は、本当にとっても、格好良かったので憧れます」

エルデリオンは顔を上げ、レジィリアンスを見た。
「…幾らでも…どれだけでも、お相手いたします…。
あの…私…を………許して下さってます?」

レジィはこくん。と頷く。
「起きてしまったことを、元に戻せませんから。
それにデルデにお尻に挿入れてもらって、気持ちいいなら…。
もう私にしたいって、思ってないんでしょう?」

「あ…え…あ…の?」
エルデリオンは、その直接話法に頬を真っ赤に染め、あれ程情事に恥ずかしがってたレジィリアンスの言葉と思えず、横のデルデを見上げた。

「…………恥ずかしい事じゃないって、散々教えたから。
猥談、平気になってますね」

レジィはそう言った、デルデを真顔で見る。
「…どこが、猥談?」

その天然の質問に、テリュスもロットバルトも、エウロペですら顔を背け、エリューンはレジィの横で、大きなため息を吐いた。
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