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エルデリオンの幸福な始まり
ラステルとロットバルト、そしてデルデロッテの思惑
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王の居室を退室した後、エルデリオンは背後に振り向く。
ロットバルトがため息を吐きづめで、項垂れていたから。
振り向いて見つめるデルデロッテに、ラステルは視線を合わせ頷き、四人は広い廊下を通り、東棟に入ると王子居室へと入り、共同のたいそう豪華な居間に腰掛ける。
ロットバルトはエルデリオンが、心配そうに顔を見つめているのに気づき、顔を上げた。
「…つまり、二人はもう…」
デルデロッテだけは立ったまま、サイドテーブル上の四つの細長く、華奢な足の着いたグラスに口当たりの良い果実酒を注ぎ、一人用椅子に腰掛ける、ラステルに手渡す。
ラステルは受け取って横に座るロットバルトに手渡し、もう一つ、自分の分を受け取った。
デルデは椅子を引いて腰掛け、エルデリオンに手渡した後、グラスを煽る。
ラステルがロットバルトに
「…それを夕べ、エウロペ殿から聞き、私は一睡も眠れなかった」
と小声で囁いていて、ロットバルトは
「無理も無い」
と頷いた。
その後ロットバルトは
「レジィ殿始め、森と花の王国の皆さんには、朗報だ」
と気落ちした声で呟く。
デルデがロットバルトを、じっ…と見る。
「私が王族になって、身分が上になるのが、気にくわないとか?」
ラステルが即座に言った。
「そこじゃない。
ロットバルトは人形のように可愛らしく、綺麗な美少女と。
エルデリオンが式を挙げるのを夢見ていたから、ショックだったんだ」
デルデロッテはロットバルトをじっ…と見た。
「ならレジィ殿は」
ロットバルトが項垂れたまま、口開く。
「外見だけなら、理想に近かった。
彼が少年なのがネックだが」
「…つまり私だと…」
ロットバルトは下げた顔を上げ、長身のデルデロッテを見る。
そしてまた、項垂れた。
「…言葉は要らないな」
デルデロッテのぼやきに、ラステルも頷いた。
「分かりやすい反応だ」
が、ロットバルトは顔上げて問う。
「で、どうして一足飛びに、結婚だ?
夕べしこたま飲んでなきゃ、白目剥いてぶっ倒れてた。
酔いが残ってて、本当に良かった」
デルデロッテが、横に座るラステルを見る。
「私だって、今朝聞いたばかりだ。
エルデリオンなんて、びっくりし過ぎて最初言葉も出なくて…」
エルデリオンはまだ、両親に話した余韻に浸っていたけど、気づいて顔を上げる。
「…彼は動じて無かった」
と呟き、デルデロッテに振り向く。
ラステルが素早く言った。
「彼の神経は鋼鉄で出来てますから。
彼を驚かせることの出来るのは、貴方ぐらい」
エルデリオンが、目を見開く。
「私?
君じゃ無くて?」
問うた途端、ラステルも、ロットバルトも。
そしてデルデロッテでさえ、ため息吐いて一斉に顔を下げる。
三人に顔を下げられ、エルデリオンはキョロキョロと三人を見回した。
ラステルが、立ち直って顔を上げる。
「…けど今度からは!
王子がとんでもないことを、真剣に言い出しても!」
ロットバルトも、笑顔で顔上げる。
「デルデロッテが説得する!」
二人は光明を見いだしたように、笑い合った。
エルデリオンは横のデルデロッテに振り向き、問う。
「…何のことか、分かる?」
デルデロッテは腕組みし、二人の心底嬉しそうに笑ってるタヌキをじっ…と見、低い声で言い放つ。
「…要するに、二人とも厄介ごとを私に、押しつける腹なんです」
エルデリオンは笑顔で
「厄介ごと?」
と聞いた後、呆け。
顔を下げた後、自分を指さし、尋ねた。
「…厄介ごとっ…て…?」
デルデロッテはロットバルトとラステルの、満面の笑みを睨んだまま、おもむろに頷いた。
その後、ロットバルトとラステルはトラーテルに出向くと言い出す。
ラステルは
「昨夜は君らの事が気になって、そこら中の報告書に目を通していたから。
ドナルドン公爵に押しつけてしまって、エウロペ殿がもう戻ってるなら、様子を聞かないと」
と言い出し、ロットバルトは
「一刻も早く、森と花の王国の皆さんに朗報をお届けしたい!
これで晴れてレジィ殿は、本物の国賓ですからな!」
と笑顔で叫ぶ。
デルデロッテはエルデリオンを見
「君も良ければ一緒に…」
と笑顔で声かけた。
が、エルデリオンはラステルとロットバルトの二人が、首を横に振ってるのを見る。
「レジィ殿の様子を見ないことには。
昨夜はずっと眠っていらっしゃって。
薬が抜けたし、安心したんでしょうな」
ロットバルトが呟くと、ラステルも頷く。
「今朝どうなってるのか…君も知らないんだろう?」
ロットバルトは顔を下げる。
「エウロペ殿は開いてる寝室に引っ込んだらしく。
居間のテーブルで、テリュス殿とエリューン殿と一緒に、急使に叩き起こされるまで、眠りこけていましたからな…」
デルデロッテはため息と共に、再びエルデリオンを笑顔で見つめる。
「では私は、貴方と一緒に…」
けれどエルデリオンは、即座に言った。
「デデデ・デルデも行ったら?」
デルデロッテにじっ…と見られ、エルデリオンは俯いた。
「…だって昨日…し過ぎて…。
明け方だって、朝だってしたし…。
両親に、会ったところだし、結婚の儀の話も進みそうだし…。
少し、休みたい………」
デルデロッテは、ジロ。
とエルデリオンを見た。
「つまり貴方と二人きりだと。
私はまた発情し、襲うと思ってるんですか?」
「だだだだ・だって…デルデに迫られたら私は簡単に…その………。
気づくともう組み敷かれてて、あの…」
それを聞くなり、ロットバルトとラステルは揃って立ち上がると、デルデの腕を引いて立たせ。
両脇から腕をがっし!と掴んで、否応なしに連行した。
ロットバルトがため息を吐きづめで、項垂れていたから。
振り向いて見つめるデルデロッテに、ラステルは視線を合わせ頷き、四人は広い廊下を通り、東棟に入ると王子居室へと入り、共同のたいそう豪華な居間に腰掛ける。
ロットバルトはエルデリオンが、心配そうに顔を見つめているのに気づき、顔を上げた。
「…つまり、二人はもう…」
デルデロッテだけは立ったまま、サイドテーブル上の四つの細長く、華奢な足の着いたグラスに口当たりの良い果実酒を注ぎ、一人用椅子に腰掛ける、ラステルに手渡す。
ラステルは受け取って横に座るロットバルトに手渡し、もう一つ、自分の分を受け取った。
デルデは椅子を引いて腰掛け、エルデリオンに手渡した後、グラスを煽る。
ラステルがロットバルトに
「…それを夕べ、エウロペ殿から聞き、私は一睡も眠れなかった」
と小声で囁いていて、ロットバルトは
「無理も無い」
と頷いた。
その後ロットバルトは
「レジィ殿始め、森と花の王国の皆さんには、朗報だ」
と気落ちした声で呟く。
デルデがロットバルトを、じっ…と見る。
「私が王族になって、身分が上になるのが、気にくわないとか?」
ラステルが即座に言った。
「そこじゃない。
ロットバルトは人形のように可愛らしく、綺麗な美少女と。
エルデリオンが式を挙げるのを夢見ていたから、ショックだったんだ」
デルデロッテはロットバルトをじっ…と見た。
「ならレジィ殿は」
ロットバルトが項垂れたまま、口開く。
「外見だけなら、理想に近かった。
彼が少年なのがネックだが」
「…つまり私だと…」
ロットバルトは下げた顔を上げ、長身のデルデロッテを見る。
そしてまた、項垂れた。
「…言葉は要らないな」
デルデロッテのぼやきに、ラステルも頷いた。
「分かりやすい反応だ」
が、ロットバルトは顔上げて問う。
「で、どうして一足飛びに、結婚だ?
夕べしこたま飲んでなきゃ、白目剥いてぶっ倒れてた。
酔いが残ってて、本当に良かった」
デルデロッテが、横に座るラステルを見る。
「私だって、今朝聞いたばかりだ。
エルデリオンなんて、びっくりし過ぎて最初言葉も出なくて…」
エルデリオンはまだ、両親に話した余韻に浸っていたけど、気づいて顔を上げる。
「…彼は動じて無かった」
と呟き、デルデロッテに振り向く。
ラステルが素早く言った。
「彼の神経は鋼鉄で出来てますから。
彼を驚かせることの出来るのは、貴方ぐらい」
エルデリオンが、目を見開く。
「私?
君じゃ無くて?」
問うた途端、ラステルも、ロットバルトも。
そしてデルデロッテでさえ、ため息吐いて一斉に顔を下げる。
三人に顔を下げられ、エルデリオンはキョロキョロと三人を見回した。
ラステルが、立ち直って顔を上げる。
「…けど今度からは!
王子がとんでもないことを、真剣に言い出しても!」
ロットバルトも、笑顔で顔上げる。
「デルデロッテが説得する!」
二人は光明を見いだしたように、笑い合った。
エルデリオンは横のデルデロッテに振り向き、問う。
「…何のことか、分かる?」
デルデロッテは腕組みし、二人の心底嬉しそうに笑ってるタヌキをじっ…と見、低い声で言い放つ。
「…要するに、二人とも厄介ごとを私に、押しつける腹なんです」
エルデリオンは笑顔で
「厄介ごと?」
と聞いた後、呆け。
顔を下げた後、自分を指さし、尋ねた。
「…厄介ごとっ…て…?」
デルデロッテはロットバルトとラステルの、満面の笑みを睨んだまま、おもむろに頷いた。
その後、ロットバルトとラステルはトラーテルに出向くと言い出す。
ラステルは
「昨夜は君らの事が気になって、そこら中の報告書に目を通していたから。
ドナルドン公爵に押しつけてしまって、エウロペ殿がもう戻ってるなら、様子を聞かないと」
と言い出し、ロットバルトは
「一刻も早く、森と花の王国の皆さんに朗報をお届けしたい!
これで晴れてレジィ殿は、本物の国賓ですからな!」
と笑顔で叫ぶ。
デルデロッテはエルデリオンを見
「君も良ければ一緒に…」
と笑顔で声かけた。
が、エルデリオンはラステルとロットバルトの二人が、首を横に振ってるのを見る。
「レジィ殿の様子を見ないことには。
昨夜はずっと眠っていらっしゃって。
薬が抜けたし、安心したんでしょうな」
ロットバルトが呟くと、ラステルも頷く。
「今朝どうなってるのか…君も知らないんだろう?」
ロットバルトは顔を下げる。
「エウロペ殿は開いてる寝室に引っ込んだらしく。
居間のテーブルで、テリュス殿とエリューン殿と一緒に、急使に叩き起こされるまで、眠りこけていましたからな…」
デルデロッテはため息と共に、再びエルデリオンを笑顔で見つめる。
「では私は、貴方と一緒に…」
けれどエルデリオンは、即座に言った。
「デデデ・デルデも行ったら?」
デルデロッテにじっ…と見られ、エルデリオンは俯いた。
「…だって昨日…し過ぎて…。
明け方だって、朝だってしたし…。
両親に、会ったところだし、結婚の儀の話も進みそうだし…。
少し、休みたい………」
デルデロッテは、ジロ。
とエルデリオンを見た。
「つまり貴方と二人きりだと。
私はまた発情し、襲うと思ってるんですか?」
「だだだだ・だって…デルデに迫られたら私は簡単に…その………。
気づくともう組み敷かれてて、あの…」
それを聞くなり、ロットバルトとラステルは揃って立ち上がると、デルデの腕を引いて立たせ。
両脇から腕をがっし!と掴んで、否応なしに連行した。
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