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エルデリオンの辛い毎日
デルデロッテの初恋
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エウロペはデルデの様子を見、ため息を吐くと、布で自身の一物を拭き、エルデリオンの口の端に垂れてる液も拭って身じまいする。
そしてエルデリオンの、腕の戒めを解いた。
デルデロッテはそんなエウロペを見つめ、囁く。
「お終いにするのか?」
エウロペは問われて肩を竦めた。
「…やはりどう考えても、君のせいだ。
これ以上続けても、彼は喜ぶだけ」
デルデロッテは急いで自身の一物を衣服にしまい、去ろうとするエウロペの肩を掴む。
「…どこが私のせいなんだ?」
エウロペは、両手床に付いて顔を俯けてる、今や艶を纏った裸のエルデリオンをチラと見ると、デルデロッテの腕を掴み、引いて声の聞こえないところまで引っ張って行く。
小声で声を潜め、素早く言い切った。
「いい加減、言っちまったらどうだ?」
「何を?」
「君の本心だ!」
デルデロッテは言われ…エウロペを真顔で見つめ返した。
エウロペは声を落として尚も囁く。
「エルデリオンには分かってる。
それが嬉しいと、体で示してる。
心は…まだ付いて来てないかもしれない。
が」
「君の巨砲が効いてるんじゃ無いのか?」
デルデに言葉を遮られ、エウロペはデルデロッテの腕を、言い聞かすように引いて言った。
「それは無いとは言わない!
だが明らかに、君だ!」
デルデロッテがまだ、見つめ返すのでエウロペは小声できっぱり言い切った。
「…惚れてなきゃ…彼があんな反応示すか?」
デルデロッテはその時、ようやくきつい濃紺の瞳を、エウロペに向けた。
それでエウロペは、言葉を足す。
「…ラザフォード…だっけ?
その男がエルデリオンが年頃になった頃、君を遠ざけた理由は、それだろう?」
デルデロッテの濃紺の瞳が、鋭く輝く。
エウロペは尚も囁いた。
「いずれ年頃になったら。
君は彼を抱く。
彼もそれに逆らわない。
ラザフォードはそれを、阻止したかったんだ」
デルデロッテは嫌味な口調で尋ね返す。
「君が彼の立場なら、そうしたから?」
エウロペはさらりと言って退けた。
「お互いが好き合ってるなら。
引き離したりしない」
デルデロッテが瞳からきつさを消さないので、エウロペは更に畳みかける。
「…エルデリオンは君を、恋しがってる。
だから例え虐められても!
君に抱かれるのが嬉しいんだ」
デルデロッテはその時、ようやく視線をエウロペから外し、顔を下げた。
「君も、そうなんだろう?
彼が王子だから。
諦めた。
違うか?」
デルデは視線を下げたまま、ぼそり…と囁く。
「…どうしてそう思う?」
「君が怒ってたのは。
断腸の思いで彼を諦めたのに。
自らの体を私に委ねたから。
更にその理由はレジィリアンス。
嫉妬で気が狂いそうなぐらい、怒ってた。
…違うか?!
が、いざ君が抱くと。
…彼は喜んでる。
君に距離を取られ…ずっと彼は寂しがってた。
そうなんだろう?
恋と、意識すら無く君を欲してた。
君がずっと彼から引き、周囲には花嫁を。
と勧められるまま…彼は突き進むしか無かった」
デルデは顔を下げたまま、首を振って嫌味に囁く。
「彼の事が、彼より分かってるんだな?」
「あれ程プライドの高い男が!
君相手だと女に成り下がっても受け入れる。
あれを見れば、誰にだって分かる!」
デルデはまだ、躊躇ってるように小声で囁き返す。
「…つまりさっき話してた…。
私が不逞の輩から必死に護ったって言うあの話が…効いてるって事か?」
「デルデロッテ。
私はレジィリアンスに、恋してない。
ただ彼の事が、自分の…息子か年の一番下の弟のように、可愛くて大切だ。
が、君のは恋だろう?
エルデリオンに恋したから…何としても彼の側に居たかった。
どんな大変だろうが。
エルデリオンは無意識に君を、ずっと受け入れてきた。
なのに年頃になったら君は彼を諦め…女を渡り歩いて彼を振った」
「…つまりレジィリアンス殿があんな目に遭ったのは…。
私がさっさとエルデリオンに告らなかったからって…言いたいのか?」
エウロペはその時、労るようにデルデの肩に、手を置いた。
「男の王子に男の君が、真剣に惚れ込んで思いを成就する。
なんて…もっと若かった君には、大変な重圧だったろう。
それだけは…国王だって、首を縦には振らない。
だが今なら。
周囲が全部、安心する。
あの…そんな習慣など微塵も知らぬレジィリアンスが、これ以上辛い目に遭わず、エルデリオンがレジィを思い切れば」
デルデはエウロペを見つめ返した。
「…つまり私が。
責任取ってレジィを今の立場から…救い出せと?」
エウロペは言い捨てた。
「責任感じてるんなら、そうすべきだ」
デルデはまだ、躊躇う表情をするので、エウロペはきっぱり言った。
「…エルデリオンが媚薬も使わず、あれ程悦んでる様子を見なけりゃ。
こんな提言はしない」
デルデはエウロペを見た。
「あんたの見立ては、どれ程確かだ?」
とうとう、エウロペはデルデの胸ぐら掴んだ。
「…君はソノ気になれば、どんな相手も垂らせる!
が、エルデリオン相手に垂らすつもりで抱いてないのに、あの反応だ!」
胸ぐら離すと、言い捨てる。
「…少しは彼の気持ちも、考えてやれ」
そして、ダメ押しした。
「いいか。
どのみち惚れたら告って、相手に受け入れられるか、振られるか。
それしか道は無いんだ。
いい加減、腹括れ!」
デルデロッテが苦虫噛みつぶしたような表情で、その美貌の鋭い濃紺の瞳を、エウロペに向けるので、エウロペは笑った。
「二人きりにしてやるから、後は好きなようにやれ。
もし振られたら。
ヤケ酒、付き合ってやるから」
「…嬉しくも無い申し出だ」
「だ、ろうな」
それだけ言うと、エウロペは背を向け、部屋を出て行った。
デルデロッテはため息吐くと、床に裸で座って振り向く、エルデリオンを見た。
城の中で最初出会った時。
とても利発で大人しそうで…綺麗な子供だと…そう思って…。
声をかけたら嬉しそうで…。
はにかんだ笑顔が、可愛くて…。
彼を笑顔にするためなら、何でもやった。
どれだけ…馬鹿なことだろうが。
牢にも入ったし、死にかけた…。
いい加減、そこで止めたら。
と母に呆れられた。
…が、従者になる機会をエルデリオンが必死に…大人達に逆らって、作ってくれた。
「お前、どれだけバカだ?
剣豪と呼ばれるにはそれに相応しい戦いを、戦場でしてる剛の者だぞ?
それを…三人?
殺されないだけ、ありがたいと思え!」
父に馬鹿にされた。
が、言い切った。
「いいから私でも勝てる秘策を、教えてくれ」
父は以前は、国で一番の剣士と呼ばれたこともあったから…。
「…不可能に挑戦するのは、バカか私ぐらいのもんだ。
お前はその息子だから、仕方無いのかもな」
と言って…剣の相手をしてくれた。
…勝って…。
またずっと一緒に居られて、嬉しくて…。
なのにエルデリオンは“怪我しなくて良かった”
と泣くから…。
もう愛おしくって…。
その時、自覚した。
大好きで…恋してると。
ラザフォードはどれだけ知っていたんだろう?
生意気なガキだと、ずっと私を嫌ってた。
当時の従者長は、大臣のポストを打診され…そっちにずっと気を持って行かれてたから、後継者のラザフォードに任せっきり…。
ロクに近づく事も…出来なかった。
気持ちは募るばかり。
どれ程…苦しかったか。
だが同時に…他の従者らが、必死に彼を王子たらんと…護り、仕えてる姿も見た。
自分一人のものに…出来るはずも無いと…。
諦めようと思わなくとも、自然に悟った。
餓鬼の恋で…彼らの決死の思いを無駄には出来ない。と。
デルデは自然と…エルデリオンに歩み寄っていた。
石の床に座る彼に、手を差し伸べる。
瞬間、エルデリオンは首に両腕回し、抱きついて…縋り付いて言った。
「…どれだけ…虐められてもいい…。
君が相手なら!」
それでデルデは、降参した。
そしてエルデリオンの、腕の戒めを解いた。
デルデロッテはそんなエウロペを見つめ、囁く。
「お終いにするのか?」
エウロペは問われて肩を竦めた。
「…やはりどう考えても、君のせいだ。
これ以上続けても、彼は喜ぶだけ」
デルデロッテは急いで自身の一物を衣服にしまい、去ろうとするエウロペの肩を掴む。
「…どこが私のせいなんだ?」
エウロペは、両手床に付いて顔を俯けてる、今や艶を纏った裸のエルデリオンをチラと見ると、デルデロッテの腕を掴み、引いて声の聞こえないところまで引っ張って行く。
小声で声を潜め、素早く言い切った。
「いい加減、言っちまったらどうだ?」
「何を?」
「君の本心だ!」
デルデロッテは言われ…エウロペを真顔で見つめ返した。
エウロペは声を落として尚も囁く。
「エルデリオンには分かってる。
それが嬉しいと、体で示してる。
心は…まだ付いて来てないかもしれない。
が」
「君の巨砲が効いてるんじゃ無いのか?」
デルデに言葉を遮られ、エウロペはデルデロッテの腕を、言い聞かすように引いて言った。
「それは無いとは言わない!
だが明らかに、君だ!」
デルデロッテがまだ、見つめ返すのでエウロペは小声できっぱり言い切った。
「…惚れてなきゃ…彼があんな反応示すか?」
デルデロッテはその時、ようやくきつい濃紺の瞳を、エウロペに向けた。
それでエウロペは、言葉を足す。
「…ラザフォード…だっけ?
その男がエルデリオンが年頃になった頃、君を遠ざけた理由は、それだろう?」
デルデロッテの濃紺の瞳が、鋭く輝く。
エウロペは尚も囁いた。
「いずれ年頃になったら。
君は彼を抱く。
彼もそれに逆らわない。
ラザフォードはそれを、阻止したかったんだ」
デルデロッテは嫌味な口調で尋ね返す。
「君が彼の立場なら、そうしたから?」
エウロペはさらりと言って退けた。
「お互いが好き合ってるなら。
引き離したりしない」
デルデロッテが瞳からきつさを消さないので、エウロペは更に畳みかける。
「…エルデリオンは君を、恋しがってる。
だから例え虐められても!
君に抱かれるのが嬉しいんだ」
デルデロッテはその時、ようやく視線をエウロペから外し、顔を下げた。
「君も、そうなんだろう?
彼が王子だから。
諦めた。
違うか?」
デルデは視線を下げたまま、ぼそり…と囁く。
「…どうしてそう思う?」
「君が怒ってたのは。
断腸の思いで彼を諦めたのに。
自らの体を私に委ねたから。
更にその理由はレジィリアンス。
嫉妬で気が狂いそうなぐらい、怒ってた。
…違うか?!
が、いざ君が抱くと。
…彼は喜んでる。
君に距離を取られ…ずっと彼は寂しがってた。
そうなんだろう?
恋と、意識すら無く君を欲してた。
君がずっと彼から引き、周囲には花嫁を。
と勧められるまま…彼は突き進むしか無かった」
デルデは顔を下げたまま、首を振って嫌味に囁く。
「彼の事が、彼より分かってるんだな?」
「あれ程プライドの高い男が!
君相手だと女に成り下がっても受け入れる。
あれを見れば、誰にだって分かる!」
デルデはまだ、躊躇ってるように小声で囁き返す。
「…つまりさっき話してた…。
私が不逞の輩から必死に護ったって言うあの話が…効いてるって事か?」
「デルデロッテ。
私はレジィリアンスに、恋してない。
ただ彼の事が、自分の…息子か年の一番下の弟のように、可愛くて大切だ。
が、君のは恋だろう?
エルデリオンに恋したから…何としても彼の側に居たかった。
どんな大変だろうが。
エルデリオンは無意識に君を、ずっと受け入れてきた。
なのに年頃になったら君は彼を諦め…女を渡り歩いて彼を振った」
「…つまりレジィリアンス殿があんな目に遭ったのは…。
私がさっさとエルデリオンに告らなかったからって…言いたいのか?」
エウロペはその時、労るようにデルデの肩に、手を置いた。
「男の王子に男の君が、真剣に惚れ込んで思いを成就する。
なんて…もっと若かった君には、大変な重圧だったろう。
それだけは…国王だって、首を縦には振らない。
だが今なら。
周囲が全部、安心する。
あの…そんな習慣など微塵も知らぬレジィリアンスが、これ以上辛い目に遭わず、エルデリオンがレジィを思い切れば」
デルデはエウロペを見つめ返した。
「…つまり私が。
責任取ってレジィを今の立場から…救い出せと?」
エウロペは言い捨てた。
「責任感じてるんなら、そうすべきだ」
デルデはまだ、躊躇う表情をするので、エウロペはきっぱり言った。
「…エルデリオンが媚薬も使わず、あれ程悦んでる様子を見なけりゃ。
こんな提言はしない」
デルデはエウロペを見た。
「あんたの見立ては、どれ程確かだ?」
とうとう、エウロペはデルデの胸ぐら掴んだ。
「…君はソノ気になれば、どんな相手も垂らせる!
が、エルデリオン相手に垂らすつもりで抱いてないのに、あの反応だ!」
胸ぐら離すと、言い捨てる。
「…少しは彼の気持ちも、考えてやれ」
そして、ダメ押しした。
「いいか。
どのみち惚れたら告って、相手に受け入れられるか、振られるか。
それしか道は無いんだ。
いい加減、腹括れ!」
デルデロッテが苦虫噛みつぶしたような表情で、その美貌の鋭い濃紺の瞳を、エウロペに向けるので、エウロペは笑った。
「二人きりにしてやるから、後は好きなようにやれ。
もし振られたら。
ヤケ酒、付き合ってやるから」
「…嬉しくも無い申し出だ」
「だ、ろうな」
それだけ言うと、エウロペは背を向け、部屋を出て行った。
デルデロッテはため息吐くと、床に裸で座って振り向く、エルデリオンを見た。
城の中で最初出会った時。
とても利発で大人しそうで…綺麗な子供だと…そう思って…。
声をかけたら嬉しそうで…。
はにかんだ笑顔が、可愛くて…。
彼を笑顔にするためなら、何でもやった。
どれだけ…馬鹿なことだろうが。
牢にも入ったし、死にかけた…。
いい加減、そこで止めたら。
と母に呆れられた。
…が、従者になる機会をエルデリオンが必死に…大人達に逆らって、作ってくれた。
「お前、どれだけバカだ?
剣豪と呼ばれるにはそれに相応しい戦いを、戦場でしてる剛の者だぞ?
それを…三人?
殺されないだけ、ありがたいと思え!」
父に馬鹿にされた。
が、言い切った。
「いいから私でも勝てる秘策を、教えてくれ」
父は以前は、国で一番の剣士と呼ばれたこともあったから…。
「…不可能に挑戦するのは、バカか私ぐらいのもんだ。
お前はその息子だから、仕方無いのかもな」
と言って…剣の相手をしてくれた。
…勝って…。
またずっと一緒に居られて、嬉しくて…。
なのにエルデリオンは“怪我しなくて良かった”
と泣くから…。
もう愛おしくって…。
その時、自覚した。
大好きで…恋してると。
ラザフォードはどれだけ知っていたんだろう?
生意気なガキだと、ずっと私を嫌ってた。
当時の従者長は、大臣のポストを打診され…そっちにずっと気を持って行かれてたから、後継者のラザフォードに任せっきり…。
ロクに近づく事も…出来なかった。
気持ちは募るばかり。
どれ程…苦しかったか。
だが同時に…他の従者らが、必死に彼を王子たらんと…護り、仕えてる姿も見た。
自分一人のものに…出来るはずも無いと…。
諦めようと思わなくとも、自然に悟った。
餓鬼の恋で…彼らの決死の思いを無駄には出来ない。と。
デルデは自然と…エルデリオンに歩み寄っていた。
石の床に座る彼に、手を差し伸べる。
瞬間、エルデリオンは首に両腕回し、抱きついて…縋り付いて言った。
「…どれだけ…虐められてもいい…。
君が相手なら!」
それでデルデは、降参した。
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