森と花の国の王子

あーす。

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記憶を取り戻したレジィ

テリュスに事情を話すエウロペ

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 テリュスは自室でエウロペから
「エリューンがデルデに代わって、レジィを抱く事を承諾した」
と聞いて、目を見開いた。

そして…扉に振り返り、今三人っきり。
と思い出し
「…もしかして…今?」
と尋ねる。

エウロペは暫く沈黙した後
「……かも」
と重い口を開いた。

テリュスはため息吐いた後、囁く。
「そりゃ…あのすっごい垂らしより。
エリューンのが何倍安心かしれない」
エウロペも頷く。
「…だから…二人が部屋に籠もりたい時は、察して場を外して…やれる?」
「全然、おっけー」

エウロペはその後、言いにくそうに口開く。
「で、昨夜からデルデがエリューンに。
挿入経験無いと、レジィの気持ちが分からないと言い続け…。
エリューンってホラ…物怖ものおじしないと言うか、怖い物知らずと言うか…」

テリュスはうんうん。と頷く。
「一見、慎重そうなのに…。
何度、平気です。とか言って、スタスタ進んで。
一度は泥沼にハマったし…一度は凍った池に落ちた。
まさか今回も?」

「今朝…デルデに呼ばれて行ったんだけど。
どっちも寝ぼけて、しちゃったらしくて。
エリューンは初めてで少し傷付いてて。
けどデルデに挿入された事、覚えて無いんだ」

「…朝なら…あり得るかも」

顔下げて呟くテリュスを見、エウロペは尋ねた。
「君も、覚えあるの?」
「……農家に泊まった時。朝まで寝過ごしちゃって…。
起こしに来たお姉さんに、寝ぼけて間違えて、キスして迫って頬張られた」

ぷっ…。

エウロペに吹き出され、テリュスは肩すくめる。
「かなり情事が好きなコで。
夜、散々シた後だったから、つい」

エウロペは笑い止んで思い出す。
「…私にもエリューンにも迫ってた…あの?」

テリュスは頷く。
「男の一物の数だけ、快感がある。
とのたまって、女将さんとお姉さんに頭はたかれてた妹」
「確かエリューンは
“誰でも良いってのは、その気になれないので”
と断ってたな。
君はその辺り、柔軟だよね?」

テリュスは真顔で言った。
「なんでそんな、叶ったりのコを断るのか、理解出来ない。
むしろ商売女の方が、苦手」

エウロペはテリュスの顔を、じっ…と見た。

逃亡生活の折、宿屋に泊まった時。
一階の酒場兼食堂で、今夜の食事のため、一生懸命男を誘ってる女がいた。

確かに胸は大きかったけど…身なりはかなり汚れていて、更に顔には赤い大きな痣があって。
どの男も首を横に振り、誘いに乗らない。

テリュスと自分は、二階の部屋で待つ、レジィとエリューンの夕食のトレイを手に、それを見てた。
いつの間にかテリュスは横から消えて…。
山盛りの食事の乗ったトレイを、女の前に差し出し、女が目を見開いてトレイを受け取ると。
更にポケットを探り、ありったけの金貨をトレイの上に乗せた。

そしてさっ!と背を向け、戻って来て言う。
「ごめん。
けど俺、今晩夕食抜くから」

そう言うから…エウロペは手にしたトレイをテリュスに渡し
「先に上がって」
と告げて行かせ、料理の追加注文をした。

振り向くと女は、開いたテーブルに座り、がっついて手づかみで、食べものを凄い勢いで口に掻き込んでいた。

それでエウロペは、女の横に行って、囁いた。
自分達の、部下らが詰める、一番近い詰め所の館の名前。
そして指輪をテーブルの上に置き
「…これは、売るな。
今言った場所にこれから出かけ、この指輪を見せれば…。
今夜泊まる場所も、この先の仕事もそこで見つけられる」

女は顔を上げ、うんうん。と頷く。
茶色の髪は長く櫛が入ってないみたいに固まっていて、顔も汚れてた。
頬に赤い痣がついていて、はだけた胸はとても豊満だったけれど…。
よく見ると、まだ幼い顔立ちをしてた。

エウロペは気の毒に思い、尋ねる。
「…幾つ?」
女は口いっぱいに食べ物を頬張り、汁を飛ばしながら言う。
「十五」

エウロペは注文した料理のトレイがカウンターに置かれたのに気づき、それを持って二階に上がり、部屋に戻るとテリュスに告げた。
「さっきの女、ヤッセン(詰め所)に送っていける?」

テリュスは目を見開き、即座に頷いた。

“腹ペコだ”
と言ってたのに…食事に手もつけず、扉に駆け出すから。
エウロペはテリュスの背の衣服を握り止め、ポケットにパンを幾つも押し込んで言った。
「途中、食べなさい」

テリュスの瞳は潤んでいて…頷いて、扉を開けて、出て行った。

その少し後、部屋を襲撃された。
廊下で大勢の靴音が、こちらに迫り来るのを聞き、直ぐ明かりの蝋燭を吹き消し、窓を開けてレジィの胴を掴む。

飛び降りようとした時、扉が破られ、エウロペは瞬間レジィを抱えたまま、二階の屋根に飛び乗って、そのまま地面に着地した。

直ぐ背後を伺ったが、エリューンの姿無く。
「(殺られたか?!)」
と案じた。
が、横の立木から、男が刃物を持って走り来るのを見、駆け出すと。
少し遅れてエリューンが付いて来てた。

夜の森の中を、レジィを抱えたまま追っ手に追われ、エリューンと一番近くの避難場所、詰め所ヤッセンへ向かって走った。
やがて目前にも賊は現れて道を塞がれ、とうとう剣を抜いて戦うしか無くなった時。

ひゅっ!
小弓の飛ぶ音と共に、一人。
また一人と首に矢を受け、敵が倒れ始めた。

追っ手らは首振って、どこから飛んで来るのか分からない矢におたつき、数名の豪胆な男らは寄って来て、レジィの命を奪おうと迫り来る。

エウロペは剣を振り、背に背を合わせたエリューンもが剣を抜き、レジィを庇って戦った…。

敵が全て転がった時。
がさ…と音がし、テリュスが姿を見せて言った。

「…ごめん…。
俺が目立つマネしたから…」

エウロペも。
そしてエリューンもが、笑顔でテリュスを見た。

レジィを庇いながら、二人だけで戦っていたら…圧倒的に不利な状況だったから。

レジィはそれを察したのか。
テリュスに抱きつき、縋り付いて言った。

「ありがと…!」

テリュスは困って囁いた。
「…俺のせいなのに?」

エウロペが笑顔でテリュスの背を、軽くポン!と叩くと。
エリューンも笑顔でテリュスの肩を抱き込んだ。

テリュスは謝りそびれ、バツが悪そうだったけど。
レジィもエリューンも。
そしてエウロペもが、笑顔だった。

それ以来、商売女に出会う度、テリュスは一度も相手を頼まず。
ありったけの金貨を毎度、渡してた…。

「で、エリューン。
デルデにホられても、覚えて無いって?」

テリュスに尋ねられ、過去の思い出の中にいたエウロペは、引き戻されて苦笑する。
「記憶は無くても…感覚とか感触は、蘇ると思うんだけど」

テリュスはため息吐いた。
「…デルデにホられるとかって、最悪…。
毎度思うけど。
あいつって、バカだよな?」
「…なんで、最悪?」

テリュスは言い淀み…けれど説明した。
「だって…デルデって凄い気持ち良くさせそうだろ?
痛かったら、二度とされたくない。
と思うけど。
気持ち良かったら…絶対またされたくなるだろ?」

エウロペも同意した。
「確かに、心配なんだよね…。
でもデルデがレジィをうんと気持ち良くしてるから。
強姦されたショックが、かなり緩和されてるのは確かだし」

「それは確かに…イイかもだけど。
ハマりまくってナイか?
俺が、初めて女とした後。
そればっか考えちゃってた頃に似てる」

「レジィもそんな、年頃だしね…」

二人は首を垂れ、揃ってため息を吐き出した。
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