森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

エリューンの決心

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 デルデロッテが居間に向かう廊下を歩いてると、ダミ声の合掌が聞こえ。
その中にまだ、少し高めの声も混じっていて、居間のテーブルを見るとやっぱり。

今やロットバルト、真ん中にテリュス、端にレジィが混ざり、三人は椅子に座ったまま肩組んで、何の曲かわからない歌を、それぞれの音程で、声張り上げ歌ってた。

向かいにラステルが座り、酒を飲んでいて…。
見ると、ロットバルトがグラスに酒を注ごうとした途端、さっ!と瓶を先に取り、代わりに水差しの水を注いでた。

背後からエウロペとエリューンもやって来るので、デルデは
「どうします?」
と、振り向いて聞く。

ラステルははまた、グラスを取ろうとしたテリュスのグラスに、さっ!と水を注いだ。

エウロペはデルデの背後から進み出ると、ラステルの前に油紙の小さな包みを放る。
ラステルが広げると、すりつぶした薬草。
ラステルはエウロペに笑顔を向け、それを水差しに入れた。

エウロペはその水差しを持ち上げると
「もっと飲め!」
と言い、レジィ、テリュス、ロットバルトのグラスになみなみと注ぐ。

三人はグラスを手渡された後、エウロペの
「カンパーイ!!!」
の叫びと同時。

一気に飲み干した。

途端、こてっ。
と三人はテーブルに突っ伏し、ダミ声の大合唱は、静寂に取って代わった。

ラステルがさっさと椅子を立つと
「レジィなら抱き上げられます」
と言い、エウロペがテリュスを、背後から抱き上げるのを見て。
デルデロッテは無言で二人に、一番重いロットバルトを押しつけられた知り。
しばらくの間、沈黙した。

エリューンが主寝室の扉を開けると、ラステルもエウロペも、担いだレジィとテリュスを運び込む。
デルデロッテは椅子にもたれかかる髭の強面が、口開けてだらしなく寝こける顔を見つつ、横に屈み。
ロットバルトの肩を肩に担ぎ、胸に垂れたロットバルトの腕を掴んで、立ち上がる。

肩に担ぎ上げてロットバルトの足を浮かせ、扉を開けてるエリューンの横を通り過ぎる。
エリューンは目を見開き
「流石ですね」
と感想を述べた。

褒められても全然嬉しくないデルデは、苦笑して寝台に、レジィ、テリュスを仰向けで転がす、ラステル、エウロペが横に避けるのを待って。
空いた隙間にロットバルトを転がした。

エウロペが
「これで朝まで静かに過ごせる」
とつぶやくと、ラステルが笑顔で言葉を返した。
「では今度は我々が。
静かに酒が飲める」

エウロペは頷いて
「その前に夕食だ」
と言い、ラステルの肩を押してテーブルに促す。

デルデロッテが、最早寝る場所のない主寝室を見、扉の横にまだ立ってるエリューンに
「テリュスの寝室って、どこ?」
と尋ねた。


デルデロッテが一番北側のテリュスの部屋の、扉を開けようとした時。
エリューンが腕に手を触れ、尋ねた。
「で、挿入せず女性の挿入体験するって、どうやるんです?」


結局、デルデロッテはエリューンの部屋に舞い戻った。
エリューンは寝台に、足組んで座り、向かい合ってる。

レジィと比べ、明らかに男っぽく、間違いなく青年。

癖の少ない栗毛を背まで伸ばし、卵形の顔の形。
整いきった目、鼻、口の配置。

よく見ると、琥珀色の瞳に流れるまつげは真っ直ぐで、とても長くかった。
「(カールしてナイだけで…まだ、男っぽいか…)」

唇は薄めで引き締まっていて、きゅっ!と閉じている。

エリューンが、自分が口開くのを待ってる風に見え、それでデルデは
「まず、服を脱がないと。
私が脱がしても良いけど…」
と言ってみた。

エリューンは直ぐ
「ああ」
と気づき、シャツを肩から滑り落とす。

肩や胸の横、腹に幾つも癒えた刀傷があり、つい自分も思い返す。
腕にかなり深い傷が今も残り、脇腹にも長い傷が残ってた。

「…下も?
全裸?」
と聞かれ、デルデは無言で頷く。

エリューンは立ち上がると、屈んでブーツの踵を掴んで脱ぐと放り。
もう片足もそれをした後、腰のボタンを外し、するっ…と滑り落とす。

腰に、布を巻き付けてるタイプの下着じゃなく、ズボンにパットを付けてるタイプで、脱ぐと直ぐ股間が剥き出しだった。

エリューンはレジィと違い、男にどうこうされた経験も無いので、恥ずかしがる様子は全く見せない。

ただ、眉を寄せた。
「私だけ、全裸ですか?」

デルデは寝台に座ったまま見ていたけれど。
そう尋ねられて肩を竦める。

「…だって私は挿入しないから…」
「ああ、なるほど」
エリューンは納得した後、尋ねる。
「で?」

デルデはあんまり色っぽい雰囲気が無く、これからナニするんだっけ。
と首捻った。

思い出して、聞く。
「蕾に挿入する訳だから。
まず挿入しやすいように…どれがいい?」

エリューンはデルデをマジ…と見る。
「どれって?」
「…横になるか、座ったままか」
「座ったままで、出来ます?」
「腰は浮かせて貰わないと。
じゃ…私に背を向けて、足開いて膝付いて、腰を上げて貰える?」

エリューンは難なくデルデに背を向け、寝台に乗り上がって膝を付き、腰を浮かせる。
見事に引き締まりきった小尻で、デルデは
「ちょっと待って」
と、寝台を立ち上がる。

「緩和オイルなら…そこの革袋に入ってます」

デルデはしらっとそう言う、背を向けたままのエリューンを見た。

エリューンの肩幅は広くなりかけ、背も筋肉で引き締まりきって。
もう二年もすればいっぱしの大人の男に体付きになると、容易に予想出来る、細身ながらも見事に鍛え抜いた肉体だった。

オイルの小瓶を持ち出し、寝台に戻る。

オイルを指に塗り、声かける。
「今から、指で挿入れてみるから」

そして手を下に下げる。
その時、どういう訳か指が微かに震え、心臓がバクついた。

「(…どうして挿入れようとしてる私が、ドキドキしてるんだ?)」

それでもデルデはばくばく言ってる自分の心臓の音を聞きつつ平静を装い、エリューンの蕾を探って指をめり込ませた。

エリューンは自制してるのか…声も上げない。
それでデルデは、言ってみた。
「恥ずかしくないから、感じたら声、出していいんだよ?」

けど素っ気ない返事が、戻って来た。
「今は別に感じてません。
シュテフザイン森と花の王国では高熱を出すと、尻の穴に薬草を突っ込むので。
初めてじゃ無いんです」

デルデは指でそっと奥を探りながら、内心呟いた。
「(…薬草入れるのとは全然、違うと思うんだけど…)」

けどなぜか緊張し、指を真っ直ぐ挿入れるだけで。
少しも…感じさせようと動かせなくって固まって。

自分が、薬師になった気分で、それではマズいと感じ、指をそっと出し入れしてみた。

「…ああそれが、男が挿入れた時にする動作ですね?」

エリューンに冷静に判断され、デルデはこそっと言った。

「…こんなもんじゃ、全然ナイけどね…」
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