森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

エリューンの思惑、エルデリオンの回想

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 デルデロッテが寝台でまどろんでいると。
夕食を知らせる鐘の音がし、横で眠ってるレジィの肩を軽く揺する。

が、レジィは寝返りを打っただけで、また眠ってしまった。
それでデルデはガウンを羽織り寝台から出ると、腰紐を結びながら戸を開ける。

けれどテーブルには誰もいなくて、暖炉前のソファを見ると、テリュスがすっかり眠りこけていた。

寄って行って、肩を軽く揺する。
「夕飯だ」
「…ん…」

それっきり、テリュスは目を覚まさない。

デルデロッテは肩すくめ、ふと思いついて、庭に通じるガラス扉に歩み寄る。
開けると廊下。
ちょうど主寝室の横に廊下はあって、その先の扉を開けると庭に出た。

すっかり日の暮れた暗い庭に、白木のテーブルと椅子。
椅子の一つに、エリューンが座っていた。

「鐘、聞こえなかった?」
聞きながら、横に腰掛ける。

ふと気づいて視線を向けると、エリューンの向こうに主寝室の掃き出し窓が見え、開いていて…。
しかもランプの明かりで、寝台の上は丸見え。
裸で腰に布団を巻き付けたレジィが、眠っているのが見えた。

デルデは整いきったエリューンの綺麗な顔を見つめ、口開く。
けどその前に、エリューンは言った。
シュテフザイン森と花の王国では…この国で言う所の“美少年”って、どんな扱いを受けると思います?」

デルデが返事をする前に、またエリューンが呟く。
「“軟弱”“男の出来損ない”“男としては役に立たない“」

言って、エリューンはデルデを見る。
「“男もどき”
つまり男として、見られない。
だから女みたいな男の子が生まれたら、父親はまず、誰よりも強くしようと叩き込む。
狩りの仕方。戦い方。
男達に半人前扱いされる男は、女にだって相手にされない」

デルデはそこで、ようやく頷く。
「…それでテリュスも…君も。
人並み外れて腕が立つんだね?」

エリューンは頷く。
「我が家は代々王家に仕えていたので。
幼い頃から剣を習わされた。
男ばかりの五人兄弟の、四番目。
兄達が休めても、父はまだ私に、剣を振れと言う。
やがて弟が修行に加わる。
が、出来が悪くても弟は休め、私は…“もっと振れ”と言われる。
弟は貴方方の言う所の…“ブサイク”だから」

エリューンはデルデの顔を見て、まだ言った。
「公共の場所に行くと、兄や弟には普通に接する男らも、私の時だけわざと、ブツかる。
よろめくと、からかわれる。
“失礼、お嬢さん。
おおや違った!
男の持ちモノが付いてたっけ”
そして…大爆笑。
レジィがそういう扱いを受けなかったのは、母王妃は国民に大人気で。
そっくりの彼だけは、特別扱いされていたから。
テリュスに聞いても、多分私と同じ思いをしたと思います。
王宮であの髭は必須。
でないと…」

デルデは後を継いだ。
「…馬鹿にされる?」

エリューンは無言で頷く。
「私とテリュスが王子の護衛が出来たのも…。
年が若いという理由の他、この顔のせいで。
相手が、あなどってくれたお陰。
私やテリュスを見た途端、敵じゃ無い。簡単にひねれる。
そう、思ったらしく…。
だからいつも、隙が突けて勝てた」

デルデはずっと抱いてた疑問を、とうとう尋ねた。
「…さっきのずっと、ここから見てた?
もしかして」

エリューンは無言で頷く。
「もっと言うと、男に突っ込まれた男は、クズ扱いですよ」

デルデはエリューンの言わんとしたことが、なんとなく理解出来た。
「…つまりレジィは…王子としては、傷物?」

エリューンは頷く。
「大人になっても男を欲するようでしたら…エウロペもそうでしょうけど。
私も。
彼を軟弱と馬鹿にする男らから、護り通す覚悟です」

「………そう」

エリューンは頷いた後、言った。
「で、エウロペに。
今後貴方が、レジィの相手出来ない時。
私に貴方の代わりが出来るかを、打診された」

デルデは目を、見開いた。
「…それは…えっと…ご愁傷様。
それで、怒ってる?」
「…レジィってまるっと、女の子になってません?」

デルデはまた、暫く思考停止し、沈黙した。
後、重い口を開く。
「………いや?
この国の、男も相手出来る少年って、みんなあんな感じ」
「あっ、そう」

デルデはまた、こそっ…と、普段は寡黙な、若き凄腕剣士の綺麗な顔を伺った。
エリューンはデルデを見ると、はっきり言った。

「男の子の相手の仕方、教えて頂けません?」

デルデはしばらくの間、眉も動かさずそう言った、エリューンの整いきった顔を、凝視した。

その時、コテージの扉が開き、ロットバルトが顔を出す。
「おーい!
頼むから俺が見慣れるまで、テリュスと二人きりにしないでくれ!」

エリューンはため息交じりに椅子の手すりに手を乗せ、腰浮かすので。
デルデも無言で、立ち上がった。

エウロペより背の低いエリューンを見下ろし、扉に向かって歩きながら、デルデは
「あの…」
と口を開く。
けれど素早くエリューンに
「その話は食後に」
と、きっぱり言われ、無言で開いた扉を潜った。



エウロペが部屋を出て行ってしまった後。
エルデリオンは風呂で体を拭こうと思ってた。

けれど…蕾に入ってる布の張り型が、先ほどの裂けるような痛みを緩和してくれてる気がして…動けなかった。

ソファに横になると、エウロペの言葉が蘇る。
“寝る時は外せ”

理由は…よく寝た方が、感度が上がるから…。

エルデリオンはため息を吐く。
確かに昨夜は、挿入れたままで寝たお陰で…蕾の奥の異物が気になって、何度も目が覚めた。

公務の、父王と出席する大臣らの報告会も。
挿入れて行こうとした。
けれどラステルに腕を掴まれ、言われた。

「…とても出席出来る状態じゃ無い。
そんな…マトモに歩けないようなご様子では、王に私が叱られます。
欠席の知らせを入れましょうか?」

それで仕方無く…外すしか無かった。

歩いたりすると、どうしても…中の張り型が内壁に当たる。
特に、何かの拍子に、中で伸びる張り型が伸びて…感じる場所を突然抉られ…。
股間は勃ち上がるし、蕾の奥は擦れて痛み混じりに酷く感じ、身が震った。

だから…中の伸びる部分が突然飛び出して、奥を抉らないよう…。
ずっと慎重に、動かざるを得なかった…。

けどそのお陰か。
ずっと自分を責め続ける辛い思いは…今日はやって来なかった。

誘拐以来頭の隅でチラつき、突然視界を覆うほど見える幻覚…。
縛られ、男達に掴まれて、無理矢理強姦されるレジィリアンスの悲痛な姿が…浮かぶことは無かった。

体は辛かった。
けれど心は再び、初めて出会った頃の、初々しく瑞々しい…恋したあのお方の、愛らしく美しいお姿がふわっ…と浮かぶようになった。

金の…肩を背を覆う、長く美しい髪。
青く大きな瞳。
小さな…とても綺麗な顔立ち。
ぷるん…と赤い、愛らしい唇。
ほっそり華奢な体付き…。

抱きしめて…腕の中にずっととどめておきたいと…切望し続けたあのお方のお姿が。

ようやく…脳裏に戻って来た。

その時、レジィリアンスが誘拐され以来、初めて。
エルデリオンは自分が、疲れ切ってる。
そう感じた。

次の瞬間、意識が薄れ…深い眠りに落ちた。
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