森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

トラーテルでの一コマ

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 昼食後、レジィは暖炉のある居間で。
エリューンやテリュスと、思い出したばかりの昔話を楽しんでいた。

が、やはり突然、頬を真っ赤に染める。

テリュスは直ぐ気づき、エリューンは戸惑う。
「待ってろ!」
テリュスは告げて、庭のテーブルで話してるデルデロッテとエウロペの元へ、飛んで行く。

デルデロッテはエウロペに、今後の事を話し合いたいと告げられ、庭で座って話をしていた。
が、正直、十分な初心者対応が出来ていなかったので
『レジィリアンスを、あまり色っぽくするな』
と怒られないか、ひやひやしてたから、テリュスの到来は渡りに船。

まだ話の始めで、エウロペに
「君には迷惑かけるが、正直レジィリアンスの様子は好ましい。
記憶も順調に戻ってるし、何より明るくなって良く笑う。
それは本当に、感謝したい」
と、言われたばかり。

この後に
『だが…』
と、続きそうな予感がしたが、その“だが”をエウロペが言う前に、テリュスが来たのだ。

「デルデロッテ!
レジィがまた…!」

デルデロッテは頷いて、立ち上がろうとした。

エウロペは長身のデルデを見上げ、声かける。
「君が気づき、応えてくれるようなら、いつでも我々は場を外すから。
二人きりになってくれて、構わない」

デルデロッテは立ち上がったまま、目を見開いた。
「…それは…大層な対応だ」

エウロペは頷く。
「当然、本意では無いし、相手は女性が好ましい。が。
この状況では無理だろう?
けど君だって早々、ずっと相手してるのも大変な時があるだろうから…。
その時は、言ってくれ。
こちらで何とかする」

デルデロッテは暫く言い淀む。
突然、すとん!と再び腰掛けると、エウロペに顔を向けた。
「…ちょっと待ってくれ。
つまり、私が相手しなくても、テがあるのか?」
エウロペは頷く。
「薬草を使って眠らせたり。
薬草を使って、興奮を鎮めたり」

「………………………………どうして今、そのテを使わないんだ?」

エウロペはため息を吐いて、デルデを見る。
「レジィは記憶が無くとも、強姦された恐怖を持ち続けてる。
無理矢理されてるんだ。
本来なら、抱き合う事すら本心は怖いと思う。
行為にだって、嫌悪感があるに違いない。
けれど衝動で、どうしても必要になってる」

デルデはまだ、腑に落ちないように首を傾げ、尋ねる。
「…だから?」

エウロペは真っ直ぐ、デルデを見た。
「相手の君が、男なのは。
さっき言ったように、不本意だが。
レジィには抱き合う事は幸福なことなんだと、知って欲しい。
決して無理強いされ、辛い事だなんて、思って欲しくないんだ。
…私が出来れば、そうする。
が、私が抱けば…今後彼の護衛が出来なくなるほど…彼は私を意識する。
ヘタをすれば、その後レジィの縁談にも、差し障りが出る」

デルデはまだ考え込むような表情で、尋ねる。
「…つまり、私なら。
彼を抱いてもいいって事か?
抱き合う事は幸福だと…教えられる?」

エウロペは目を見開く。
「そう言ったつもりだが?」

デルデはまだ、腑に落ちない表情で、立ち上がろうとする。
それでエウロペは言った。

「私もラステルと同感。
君は非常に知能が高いと思うが…この件については、頭が付いていかないようだから、言うが。
君がレジィと過ごすと、大変好ましい状態になってる」

デルデはまだ、行こうとしながらもエウロペに顔を向ける。
結局足を止めて、エウロペに尋ねた。

「…つまり…」
「君は、上出来だ」
「それは褒めてるのか?」

エウロペは、変な顔をした。
「…そうだが?
なぜ?」

デルデは
“怒られることを覚悟してたから、凄く意外だ”
と言いかけ…。
自分が十分初心者対応に、徹し切れてないことがまだ、バレてないから、やぶ蛇だ。
と思いつつ
「別に…」
と、誤魔化して背を向けた。

エウロペは
「?」
と首捻り、デルデロッテの背を見送った。

テリュスは戸口で
「早く!」
と、デルデを室内に促す。
デルデロッテは頷いて、出来るだけ足早にその場を後にした。


「レジィ?」
デルデが声かけると、内股で真っ赤に頬染めたレジィリアンスが、顔を上げる。
横に付いてたエリューンは困り切っていて、テリュスは
『早く何とかしろ!』
と言う顔で、頬を真っ赤にし、恥じらってるレジィとデルデの顔を、交互に見る。

「…レジィ。
エリューンだってテリュスだって経験してるから。
そんな、恥ずかしがると…二人の方が。
どうしていいか分からず、困ってる」

デルデの言葉に、レジィは恥ずかしがるのを止め、エリューンとテリュスを見た。
エリューンはレジィを眉下げて覗っていたけど。
見つめられ、思わず顔を背け、誤魔化し。
テリュスはレジィに見つめられ
「えー…と………」
と、言葉を途切れさせた。

「…そうなの?」
レジィに尋ねられ、エリューンは困って顔をレジィに戻すと、小声で囁く。
「…私はたいてい、ガッカの女将さんを思い出すと、落ち着く」

レジィは呆け…ガッカの、凄く太って赤ら顔で。
怪獣みたいな凄まじい顔のおばさんを思い浮かべ、ぷっ!と吹き出す。

エリューンはレジィに笑われ、ため息交じりにテリュスを見る。
「…テリュスは?」

「………………………………」

問われても、テリュスは返事出来ず固まった後。
いきなり身をしゃんと、背筋伸ばして立つと、言って退ける。

「…ここ、言わなきゃダメな場面?」

横のデルデに頷かれ、エリューンにも頷かれ。
レジィにまでこっくりと頷かれて、テリュスは額に手を当て、首を横に振る。
「俺、我慢苦手だし、早いし。
だから…」

エリューンは直ぐ、気づいた。
「用を足すと言って姿消す、あれ?」

テリュスは頷いて言った。
「それ」

ぷっ!
今度はデルデが吹き出し、テリュスは同い年で長身の色男を、見上げて睨む。

けれどレジィリアンスが
「デルデは、エリューンとおんなじで。
色っぽくナイ事を考えるんだって」
とバラし、エリューンに
「やっぱり年頃って、誰でも一緒ですねぇ…」
とため息を吐かれた。

テリュスはけれど、デルデに
「レジィの場合は薬が効いてる。
さっさと処理してやってくれ」
と告げ、デルデの背を主寝室に押し、振り向いてエリューンにも、首振って促す。

エリューンはレジィを見下ろし、尋ねた。

「自分で、寝室に行ける?
それとも背を押さなきゃ、ダメ?」
と尋ね、レジィに
「自分で行ける」
と答えられ、ほっとした。
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