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記憶を無くしたレジィリアンス
すれ違い
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エウロペはラステル配下に案内され、シュエッセン伯爵邸へと向かっていた。
そのエウロペを追う、テリュスとエリューンは。
案内役のラステル配下が馬に乗る前、鳩を飛ばすのを見る。
騎乗し、走り出した後。
テリュスが併走するラステル配下に尋ねた。
「連絡出来るのか?」
ラステル配下は陽気に笑った。
「多分。
コルテラフォール侯爵宅へ続く道で、待ちます」
「本当に、来るかな?」
エリューンに聞かれ、ラステル配下は首捻る。
「そうですねぇ…。
鳩を飛ばし、待ち合わせの場所に来なかった事は…」
テリュスとエリューンは、真ん中を走ってるラステル配下の、返答を待つ。
ラステル配下は考え込んだ後、顔を上げて言う。
「…一度も、ナイですね」
テリュスとエリューンは、それを聞いてほっとした。
シュエッセン伯邸とコルテラフォール侯爵宅に続く道の分岐点は、屋敷からかなり離れた場所にあり、あれ程見かけたラステル配下達の姿もほとんど見えず、人通りも僅か。
タマに馬車が通るが、大抵は身分高い人が乗っていて、騎乗したままその場に佇むエリューンやテリュスを見、馬車の中の着飾った貴婦人は、通り過ぎ様微笑んで会釈した。
間もなく、鳩の伝令に気づいてラステル配下とエウロペの騎乗した姿が見えた。
二人は三騎の前で手綱引き、止まる。
「…つまりあの男は。
嘘をついたのか?」
エウロペに問われ、テリュスらと同行した配下は頷く。
「いえシュエッセン伯は、一味の仲間なのは確か。
が、切り捨てられる下っ端。
ラステル様が、検問に引っかかったコルテラフォール侯爵の、馬車の中で眠っていた姪がそうではないかと」
テリュスが、気落ちして呟く。
「…つまり、レジィ?」
エウロペは気遣うように、優しく頷いた。
自分のみならず、レジィと兄弟のように仲の良いテリュスは気落ちしてる。
エリューンの内心は、心配でいてもたってもいられない様子。
が、決して顔には出さず、冷静さを装ってる。
自分とてそうだ。
が、年若い二人の前で、取り乱す事は出来ない。
ラステル配下の二人は、情報交換していた。
エウロペは横から口挟む。
「コルテラフォール侯爵について、聞きたい」
会話してたラステル配下らは、顔を上げる。
一人が、口を開いた。
「在住は、エルドシュヴァン。
彼の母親の再婚先で、当時少年だった彼は母に付いてあちらへ。
が、この国に、彼の母親の実家がある」
エウロペは眉を寄せる。
「エルドシュヴァンに、紅蜥蜴の勢力はまだ、及んでいないんだろう?」
ラステル配下は頷く。
「陸続きとはいえ、起伏の激しい荒野と、低い山脈の向こうに広がる大国。
行き来には、結構苦労する。
紅蜥蜴は主に、南の樹海の、周辺国が活動範囲ですから」
もう一人が、言葉を足す。
「現在、26才。
結婚はまだ。
デルデロッテ殿ほどではないが…。
ああ、貴方程の長身。
黒に近い栗毛の、甘いマスクのなかなかの美男。
一年に一度はこちらにやって来る。
が、交際範囲は広い。
だから…紅蜥蜴とも、交流があるかもしれない」
エウロペは思い当たり、同行したラステル配下を見る。
ラステル配下も、振り向いて頷く。
「…途中、サガン方面に向かう馬車とすれ違ったが…。
乗っていた男。
確かに、似てますね」
テリュスらと同行してたラステル配下は、首を傾げる。
「サガン方面では…彼の自宅と反対方向だ」
「…検問に引っかかって…大人しく自宅に向かうかな?」
エウロペに問われた途端。
テリュスらと同行してたラステル配下は、手綱を繰り、馬を急かせ叫ぶ。
「ラステル様に報告に行く!」
エウロペと同行してた配下は、直ぐ頷く。
「俺はエウロペ殿と、サガン地域を探す」
「詳しい者を寄越す!」
ラステル配下は叫ぶと、拍車をかけ、一気にかっ飛んで去った。
「…つまりあの馬車に。
レジィが居たのかもしれない」
エウロペの言葉に、ラステル配下は頷く。
「…が。
遠目でしたし。
確かに、馬を飛ばせば、あちらは馬車。
追いつけましたが…」
エウロペは頷くと、拍車をかけ、走り出す。
結局エウロペは、シュエッセン伯の自宅方面と、サガン地域の分かれ道まで。
戻る事となった。
背後から、テリュスとエリューンも無言で追随する。
ラステル配下はかなりの速度で飛ばしながらも、併走するエウロペに説明した。
「…サガン地域は、身分高い者らの避暑地で。
別宅やコテージがたくさんある」
「コルテラフォール侯爵も、持ってるんじゃ無いか?」
「彼の所有では無く。
多分、彼の亡くなった父親か母親名義の、別宅かコテージでしょうね」
エウロペはため息を吐く。
「厄介だな」
が、ラステル配下は請け負った。
「上を見て下さい。
鳩が飛んでる。
サガン地域に居る仲間に、連絡してくれてるから。
着いたら仲間が合流し、直ぐ案内してくれる」
エウロペはその言葉に、目を見開いた。
「…君らはホントに、手回しが良いな」
ラステル配下はエウロペほどの優秀な人物に感心され、嬉しそうに笑った。
「我々はあらゆる地域に通じるよう、どんな場所にも仲間が居て、どんな情報をも、手に入れるのが普段の業務ですから」
エウロペは、頷いて告げる。
「見事だ」
ラステル配下はますます嬉しそうに笑い、拍車かけると更に速度を上げた。
そのエウロペを追う、テリュスとエリューンは。
案内役のラステル配下が馬に乗る前、鳩を飛ばすのを見る。
騎乗し、走り出した後。
テリュスが併走するラステル配下に尋ねた。
「連絡出来るのか?」
ラステル配下は陽気に笑った。
「多分。
コルテラフォール侯爵宅へ続く道で、待ちます」
「本当に、来るかな?」
エリューンに聞かれ、ラステル配下は首捻る。
「そうですねぇ…。
鳩を飛ばし、待ち合わせの場所に来なかった事は…」
テリュスとエリューンは、真ん中を走ってるラステル配下の、返答を待つ。
ラステル配下は考え込んだ後、顔を上げて言う。
「…一度も、ナイですね」
テリュスとエリューンは、それを聞いてほっとした。
シュエッセン伯邸とコルテラフォール侯爵宅に続く道の分岐点は、屋敷からかなり離れた場所にあり、あれ程見かけたラステル配下達の姿もほとんど見えず、人通りも僅か。
タマに馬車が通るが、大抵は身分高い人が乗っていて、騎乗したままその場に佇むエリューンやテリュスを見、馬車の中の着飾った貴婦人は、通り過ぎ様微笑んで会釈した。
間もなく、鳩の伝令に気づいてラステル配下とエウロペの騎乗した姿が見えた。
二人は三騎の前で手綱引き、止まる。
「…つまりあの男は。
嘘をついたのか?」
エウロペに問われ、テリュスらと同行した配下は頷く。
「いえシュエッセン伯は、一味の仲間なのは確か。
が、切り捨てられる下っ端。
ラステル様が、検問に引っかかったコルテラフォール侯爵の、馬車の中で眠っていた姪がそうではないかと」
テリュスが、気落ちして呟く。
「…つまり、レジィ?」
エウロペは気遣うように、優しく頷いた。
自分のみならず、レジィと兄弟のように仲の良いテリュスは気落ちしてる。
エリューンの内心は、心配でいてもたってもいられない様子。
が、決して顔には出さず、冷静さを装ってる。
自分とてそうだ。
が、年若い二人の前で、取り乱す事は出来ない。
ラステル配下の二人は、情報交換していた。
エウロペは横から口挟む。
「コルテラフォール侯爵について、聞きたい」
会話してたラステル配下らは、顔を上げる。
一人が、口を開いた。
「在住は、エルドシュヴァン。
彼の母親の再婚先で、当時少年だった彼は母に付いてあちらへ。
が、この国に、彼の母親の実家がある」
エウロペは眉を寄せる。
「エルドシュヴァンに、紅蜥蜴の勢力はまだ、及んでいないんだろう?」
ラステル配下は頷く。
「陸続きとはいえ、起伏の激しい荒野と、低い山脈の向こうに広がる大国。
行き来には、結構苦労する。
紅蜥蜴は主に、南の樹海の、周辺国が活動範囲ですから」
もう一人が、言葉を足す。
「現在、26才。
結婚はまだ。
デルデロッテ殿ほどではないが…。
ああ、貴方程の長身。
黒に近い栗毛の、甘いマスクのなかなかの美男。
一年に一度はこちらにやって来る。
が、交際範囲は広い。
だから…紅蜥蜴とも、交流があるかもしれない」
エウロペは思い当たり、同行したラステル配下を見る。
ラステル配下も、振り向いて頷く。
「…途中、サガン方面に向かう馬車とすれ違ったが…。
乗っていた男。
確かに、似てますね」
テリュスらと同行してたラステル配下は、首を傾げる。
「サガン方面では…彼の自宅と反対方向だ」
「…検問に引っかかって…大人しく自宅に向かうかな?」
エウロペに問われた途端。
テリュスらと同行してたラステル配下は、手綱を繰り、馬を急かせ叫ぶ。
「ラステル様に報告に行く!」
エウロペと同行してた配下は、直ぐ頷く。
「俺はエウロペ殿と、サガン地域を探す」
「詳しい者を寄越す!」
ラステル配下は叫ぶと、拍車をかけ、一気にかっ飛んで去った。
「…つまりあの馬車に。
レジィが居たのかもしれない」
エウロペの言葉に、ラステル配下は頷く。
「…が。
遠目でしたし。
確かに、馬を飛ばせば、あちらは馬車。
追いつけましたが…」
エウロペは頷くと、拍車をかけ、走り出す。
結局エウロペは、シュエッセン伯の自宅方面と、サガン地域の分かれ道まで。
戻る事となった。
背後から、テリュスとエリューンも無言で追随する。
ラステル配下はかなりの速度で飛ばしながらも、併走するエウロペに説明した。
「…サガン地域は、身分高い者らの避暑地で。
別宅やコテージがたくさんある」
「コルテラフォール侯爵も、持ってるんじゃ無いか?」
「彼の所有では無く。
多分、彼の亡くなった父親か母親名義の、別宅かコテージでしょうね」
エウロペはため息を吐く。
「厄介だな」
が、ラステル配下は請け負った。
「上を見て下さい。
鳩が飛んでる。
サガン地域に居る仲間に、連絡してくれてるから。
着いたら仲間が合流し、直ぐ案内してくれる」
エウロペはその言葉に、目を見開いた。
「…君らはホントに、手回しが良いな」
ラステル配下はエウロペほどの優秀な人物に感心され、嬉しそうに笑った。
「我々はあらゆる地域に通じるよう、どんな場所にも仲間が居て、どんな情報をも、手に入れるのが普段の業務ですから」
エウロペは、頷いて告げる。
「見事だ」
ラステル配下はますます嬉しそうに笑い、拍車かけると更に速度を上げた。
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