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誘拐されたレジィリアンス
辿り着いた隠れ場所
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レジィをさらった黒髪の男…レガートは、背後で柵が落ちた音を聞き、はっ!と背後を覗った。
が、追跡者が柵に阻まれたのを知り、速度を速める。
“エウロペか…!”
どこまでもしつこい猟犬。
一度レジィリアンスをさらおうと、シュテフザインの大公の手の者に同行した時。
森の中で奴を見た。
レジィリアンスの姿は見えず、エウロペと年若い少年が凄まじく剣を振り、大公の暗殺者五人をあっという間に倒した。
横で覗っていた大公の手の者は、仲間を加勢しようと飛び出して行った。
が、ものの数分で打ち倒される。
血糊の付いたエウロペの剣が、ギラリ…!と銀に光るのに、ぞっとした記憶がある。
が、あの男は顔色も変えず、草で拭き取り…。
その後、もう他に敵はいないか。
と、大木の後ろに隠れてるこちらに、視線を向ける。
一瞬。
マトモに見た。
剣よりも鋭く、ギラリと光って見えた…凄まじい緑の瞳。
…まるで凶悪な、肉食獣のように恐ろしかった。
その後。
どれだけ腕自慢の刺客を送り続けた事か。
が、誰もが返り討ちにされ、あの男はすました顔でレジィリアンスの警護をし続ける。
だがこのオーデ・フォールでは!
自分に、地の利がある…!
地上の屋敷に続く階段を駆け上がる。
上がった先は、石の天井。
頭を屈める程低い天井の、蓋のように塞いでる鋼鉄の戸板を、調子を変えて五回叩く。
間もなく戸板は開けられ、レガートはレジィを先に上の者に手渡し、開いた四角の穴をよじ登る。
床に足を着くと、見張りの者からレジィリアンスを受け取り、再び板を塞ぐよう、見張りに頷く。
その後レガートは階段を上がり、扉を開けて屋敷の廊下へと出る。
廊下の角を幾度も曲がり、複雑なルートでようやく辿り付ける、奥まった半地下の書斎へと飛び込んだ。
その部屋の本棚の後ろの隠し扉を開き、中の部屋へと飛び込む。
やがて幾つもある、隠し扉を開く装置の一つを下げ、床板を開ける。
床板から下へ、気絶したレジィリアンスを抱いたまま飛び込み、板を閉じる。
横の留め具を下げると、滑車で床板は、下へと沈んだ。
ガラガラガラガラ…。
縦の空洞を、床ごと滑り落ちて行く。
ガタン…。
床板の下の大きなバネが、地に着くショックを和らげた。
「う…ん…」
腕の中のレジィリアンスが呻く。
“目を覚ます前に…!”
レガートはレジィリアンスを抱いたまま、目前のトロッコに乗り込む。
留め具のレバーを押すと、一気にトロッコは傾斜の緩い坂を下り始めた。
が速度が上がると、直ぐ平坦になる。
三つある屋敷から、別の屋敷に続く通路は五つある。
このトロッコは、三つの屋敷から少し離れた場所にある廃墟同然の、崩れかけた石の塔の地下に続いてた。
石の塔は天井が崩れ、半分が瓦礫に埋もれ、誰も入れない程崩れていたので、ノーマーク。
けれど地下からは。
塔の内部の、部屋へと続く階段があり…。
そこは外から、簡単に入れない。
崩れた石をどれだけでも掻き分けたとしても、部屋の入り口に辿り着くのは容易じゃ無いから。
今度は緩い坂を上がり始める。
やがて…。
ガタン!
と大きく揺れ、トロッコは塔の地下に辿り着いた。
周囲はほぼ暗闇。
が、その先は光蘚がそこら中に植え付けられた、石の螺旋階段があり、階段は塔へと伸びていた。
石で組まれた円筒形の、上に伸びる筒のかなり上から、僅かな光が差し込んでいる。
レガートはレジィリアンスを抱いて、塔に続く石の階段を駆け上がった。
レジィリアンスが目を覚ました時。
そこは暗い部屋で、壁をくり抜かれた四角の穴に、蝋の垂れた、短い蝋燭の炎が揺れているだけ。
石の床に腰を下ろしていたけれど、腕は上がったまま。
引いても、下げられない…。
気づくと、両手首には枷が嵌められ、鎖で上へ、吊り上げられていた。
一瞬で、ぞっ…とする。
捕らえられて、拘束されてる…!
カタン…。
部屋の隅の暗闇に、椅子に腰掛けてた真っ直ぐの黒髪の男が、立ち上がる。
「…さて。
目覚めてくれた様子。
始めようか?」
レジィリアンスは目を、見開いた。
が、追跡者が柵に阻まれたのを知り、速度を速める。
“エウロペか…!”
どこまでもしつこい猟犬。
一度レジィリアンスをさらおうと、シュテフザインの大公の手の者に同行した時。
森の中で奴を見た。
レジィリアンスの姿は見えず、エウロペと年若い少年が凄まじく剣を振り、大公の暗殺者五人をあっという間に倒した。
横で覗っていた大公の手の者は、仲間を加勢しようと飛び出して行った。
が、ものの数分で打ち倒される。
血糊の付いたエウロペの剣が、ギラリ…!と銀に光るのに、ぞっとした記憶がある。
が、あの男は顔色も変えず、草で拭き取り…。
その後、もう他に敵はいないか。
と、大木の後ろに隠れてるこちらに、視線を向ける。
一瞬。
マトモに見た。
剣よりも鋭く、ギラリと光って見えた…凄まじい緑の瞳。
…まるで凶悪な、肉食獣のように恐ろしかった。
その後。
どれだけ腕自慢の刺客を送り続けた事か。
が、誰もが返り討ちにされ、あの男はすました顔でレジィリアンスの警護をし続ける。
だがこのオーデ・フォールでは!
自分に、地の利がある…!
地上の屋敷に続く階段を駆け上がる。
上がった先は、石の天井。
頭を屈める程低い天井の、蓋のように塞いでる鋼鉄の戸板を、調子を変えて五回叩く。
間もなく戸板は開けられ、レガートはレジィを先に上の者に手渡し、開いた四角の穴をよじ登る。
床に足を着くと、見張りの者からレジィリアンスを受け取り、再び板を塞ぐよう、見張りに頷く。
その後レガートは階段を上がり、扉を開けて屋敷の廊下へと出る。
廊下の角を幾度も曲がり、複雑なルートでようやく辿り付ける、奥まった半地下の書斎へと飛び込んだ。
その部屋の本棚の後ろの隠し扉を開き、中の部屋へと飛び込む。
やがて幾つもある、隠し扉を開く装置の一つを下げ、床板を開ける。
床板から下へ、気絶したレジィリアンスを抱いたまま飛び込み、板を閉じる。
横の留め具を下げると、滑車で床板は、下へと沈んだ。
ガラガラガラガラ…。
縦の空洞を、床ごと滑り落ちて行く。
ガタン…。
床板の下の大きなバネが、地に着くショックを和らげた。
「う…ん…」
腕の中のレジィリアンスが呻く。
“目を覚ます前に…!”
レガートはレジィリアンスを抱いたまま、目前のトロッコに乗り込む。
留め具のレバーを押すと、一気にトロッコは傾斜の緩い坂を下り始めた。
が速度が上がると、直ぐ平坦になる。
三つある屋敷から、別の屋敷に続く通路は五つある。
このトロッコは、三つの屋敷から少し離れた場所にある廃墟同然の、崩れかけた石の塔の地下に続いてた。
石の塔は天井が崩れ、半分が瓦礫に埋もれ、誰も入れない程崩れていたので、ノーマーク。
けれど地下からは。
塔の内部の、部屋へと続く階段があり…。
そこは外から、簡単に入れない。
崩れた石をどれだけでも掻き分けたとしても、部屋の入り口に辿り着くのは容易じゃ無いから。
今度は緩い坂を上がり始める。
やがて…。
ガタン!
と大きく揺れ、トロッコは塔の地下に辿り着いた。
周囲はほぼ暗闇。
が、その先は光蘚がそこら中に植え付けられた、石の螺旋階段があり、階段は塔へと伸びていた。
石で組まれた円筒形の、上に伸びる筒のかなり上から、僅かな光が差し込んでいる。
レガートはレジィリアンスを抱いて、塔に続く石の階段を駆け上がった。
レジィリアンスが目を覚ました時。
そこは暗い部屋で、壁をくり抜かれた四角の穴に、蝋の垂れた、短い蝋燭の炎が揺れているだけ。
石の床に腰を下ろしていたけれど、腕は上がったまま。
引いても、下げられない…。
気づくと、両手首には枷が嵌められ、鎖で上へ、吊り上げられていた。
一瞬で、ぞっ…とする。
捕らえられて、拘束されてる…!
カタン…。
部屋の隅の暗闇に、椅子に腰掛けてた真っ直ぐの黒髪の男が、立ち上がる。
「…さて。
目覚めてくれた様子。
始めようか?」
レジィリアンスは目を、見開いた。
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