森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
上 下
135 / 418
誘拐されたレジィリアンス

辿り着いた隠れ場所

しおりを挟む
 レジィをさらった黒髪の男…レガートは、背後で柵が落ちた音を聞き、はっ!と背後を覗った。
が、追跡者が柵に阻まれたのを知り、速度を速める。

“エウロペか…!”

どこまでもしつこい猟犬。
一度レジィリアンスをさらおうと、シュテフザイン森と花の王国の大公の手の者に同行した時。
森の中で奴を見た。

レジィリアンスの姿は見えず、エウロペと年若い少年が凄まじく剣を振り、大公の暗殺者五人をあっという間に倒した。

横で覗っていた大公の手の者は、仲間を加勢しようと飛び出して行った。
が、ものの数分で打ち倒される。

血糊の付いたエウロペの剣が、ギラリ…!と銀に光るのに、ぞっとした記憶がある。
が、あの男は顔色も変えず、草で拭き取り…。
その後、もう他に敵はいないか。
と、大木の後ろに隠れてるこちらに、視線を向ける。

一瞬。
マトモに見た。
剣よりも鋭く、ギラリと光って見えた…凄まじい緑の瞳。

…まるで凶悪な、肉食獣のように恐ろしかった。

その後。
どれだけ腕自慢の刺客を送り続けた事か。
が、誰もが返り討ちにされ、あの男はすました顔でレジィリアンスの警護をし続ける。

だがこのオーデ・フォール中央王国では!
自分に、地の利がある…!

地上の屋敷に続く階段を駆け上がる。
上がった先は、石の天井。

頭を屈める程低い天井の、蓋のように塞いでる鋼鉄の戸板を、調子を変えて五回叩く。
間もなく戸板は開けられ、レガートはレジィを先に上の者に手渡し、開いた四角の穴をよじ登る。

床に足を着くと、見張りの者からレジィリアンスを受け取り、再び板を塞ぐよう、見張りに頷く。

その後レガートは階段を上がり、扉を開けて屋敷の廊下へと出る。
廊下の角を幾度も曲がり、複雑なルートでようやく辿り付ける、奥まった半地下の書斎へと飛び込んだ。

その部屋の本棚の後ろの隠し扉を開き、中の部屋へと飛び込む。
やがて幾つもある、隠し扉を開く装置の一つを下げ、床板を開ける。

床板から下へ、気絶したレジィリアンスを抱いたまま飛び込み、板を閉じる。
横の留め具を下げると、滑車で床板は、下へと沈んだ。

ガラガラガラガラ…。

縦の空洞を、床ごと滑り落ちて行く。

ガタン…。

床板の下の大きなバネが、地に着くショックを和らげた。

「う…ん…」

腕の中のレジィリアンスが呻く。
“目を覚ます前に…!”

レガートはレジィリアンスを抱いたまま、目前のトロッコに乗り込む。
留め具のレバーを押すと、一気にトロッコは傾斜の緩い坂を下り始めた。
が速度が上がると、直ぐ平坦になる。

三つある屋敷から、別の屋敷に続く通路は五つある。
このトロッコは、三つの屋敷から少し離れた場所にある廃墟同然の、崩れかけた石の塔の地下に続いてた。

石の塔は天井が崩れ、半分が瓦礫がれきに埋もれ、誰も入れない程崩れていたので、ノーマーク。
けれど地下からは。
塔の内部の、部屋へと続く階段があり…。
そこは外から、簡単に入れない。

崩れた石をどれだけでも掻き分けたとしても、部屋の入り口に辿り着くのは容易じゃ無いから。

今度は緩い坂を上がり始める。
やがて…。
ガタン!
と大きく揺れ、トロッコは塔の地下に辿り着いた。

周囲はほぼ暗闇。
が、その先は光蘚ひかりごけがそこら中に植え付けられた、石の螺旋らせん階段があり、階段は塔へと伸びていた。

石で組まれた円筒形の、上に伸びる筒のかなり上から、僅かな光が差し込んでいる。
レガートはレジィリアンスを抱いて、塔に続く石の階段を駆け上がった。


レジィリアンスが目を覚ました時。
そこは暗い部屋で、壁をくり抜かれた四角の穴に、蝋の垂れた、短い蝋燭の炎が揺れているだけ。

石の床に腰を下ろしていたけれど、腕は上がったまま。
引いても、下げられない…。

気づくと、両手首にはかせめられ、鎖で上へ、吊り上げられていた。

一瞬で、ぞっ…とする。

捕らえられて、拘束されてる…!

カタン…。

部屋の隅の暗闇に、椅子に腰掛けてた真っ直ぐの黒髪の男が、立ち上がる。

「…さて。
目覚めてくれた様子。
始めようか?」

レジィリアンスは目を、見開いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...