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誘拐されたレジィリアンス
地上の屋敷
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カンカンカン…!
微かに聞こえる遠ざかる足音に狙いを定め、エウロペは地下洞窟を駆け続ける。
エウロペはつま先だけを地に着け、足音を消していたから。
敵には付けている事が、気づかれてないはず。
が、突然
ガガン!!!
凄まじい勢いで、上から木の柵が降りて来る。
エウロペが咄嗟、背後に身を泳がせた瞬間。
ガンッ!!!
柵が落ちきり、行く手を阻んだ。
カッ…。
微かに聞こえていた、足音が止まる。
その後、慌てたように足早に駆け始め、エウロペは横の土壁を必死に探った。
“追っている事に、気づかれた…!”
けれど右の壁をひと通り手で探り、何も見つからず。
左の壁に手を這わせた時。
木の棒に触れる。
思いっきり引き倒すと
ガラガラガラ…と鎖の引きずる音と共に、柵が上がって行った。
が、靴音は幾つか角を曲がり、どんどん消え去ろうとしている。
エウロペは柵がゆっくり上がるのを、じりじりして待った。
やっと下に隙間が出来、身を屈めた時。
背後から、おぶさり止める賊!
どさっ!
どっ!!!
瞬時にエウロペは身を捻り、背後に肘を突き出す。
「ぐっ!」
賊は腹を思い切り突かれ、呻いてぐったりし、エウロペは脱ぎ捨てるように背の賊を払い落とすと同時、身を低く屈め、柵の下を潜り抜けた。
「敵だ!
敵の侵入だ!」
後からやって来た賊は叫ぶ。
が、駆けつけてくる仲間の靴音は響かない。
エウロペはさっと立ち上がると、消えて行こうとする靴音を追った。
カン…カンカン…!
“音が、変わった…!
ハシゴを登ってる…?”
エウロペは覚えた靴音の変化を辿り、洞窟の道を右。
次に左。
そして右。
更にまた右へと、素早く曲がる。
とうとう上へと繋がる、梯子へと辿り着いた。
が、上がった先は石壁の寂れた地下室。
鋼鉄の、扉が二つ。
素早く近寄る。
一つは開かない。
外から鍵が、かけられてた。
もう一つに駆け寄る。
カチ…。
わずかに開き、音を殺して扉を開ける。
追跡で大事なのは、付けている事を気づかれない事。
油断が生まれ、時間差も埋まる。
が、出た先。
石の廊下のその先の、天井から月光が差し込むのを見、とうとう地上に近づいてると察した。
月明かりの見える、天井の明かり取りの下に立つ。
正面の、外へと続く石階段。
そして右に鋼鉄の扉。
エウロペは迷わず扉を開ける。
その先は、屋敷へと続く石階段。
エウロペは一瞬、迷った。
出たらまた、罠が仕掛けられているか、見張りがいる可能性が高い。
エウロペは外へと続く、石の階段を駆け上がる。
上がると同時身を屈めたが、やはり庭園に続くこの場所に、見張りは配置されていなかった。
エウロペは廃れた枯れ木だらけの庭園から建物沿いへと、身を屈めながら進む。
窓の下に身を潜め、腰を浮かせて室内が無人なのを確認し、窓をそっと押し上げ、中へ身を、滑り込ませた。
けれど背後に気配を感じ、振り向くと。
自分の入って来た窓から、入って来る人影を見つける。
「…エウロペ殿ですか?」
小声で囁かれ、エウロペは警戒を解く。
「…ラステル配下の者か?」
男は窓を潜り、室内に着地し、頷く。
「…この屋敷のだいたいの配置は理解してます。
お役に立てる」
エウロペは頷く。
「地下からここに続く通路は分かるか?
賊の話では、ここか…他の屋敷のどこかに、別の…第四の屋敷に続く、地下道があるらしい」
男はそれを聞き、はっ!と顔を上げる。
「…それは…知りませんでした」
エウロペは頷く。
「では見当も付かない?」
「他の二つの屋敷に続く、地下道は知ってます。
どの屋敷から…その地下道に出られるのか。
大至急調べねば…」
エウロペは頷く。
「行って仲間に知らせ、調べ始めてくれ。
が、君たちが動き始めると、敵は察知し、追い詰められてますます見つけにくい場所に潜る」
ラステル配下は頷き返す。
「…地下道は厄介なので。
全封鎖し、中の賊を捕らえる予定ではいます。
屋敷に入る者らには、そっと探るように告げます」
エウロペは素早く尋ねる。
「…地図があるか?」
男はポケットから、布に描かれた屋敷の見取り図を取り出し、手渡す。
エウロペはその地図に、他の屋敷と繋がる地下道も描かれてるのを素早く確認しながら、囁く。
「…私は探索を続けるから、仲間に知らせに行け」
男は頷き、顔を上げた時。
もう部屋の扉を音も立てず開き、その姿を消し去るエウロペの素早さに、舌を巻いた。
微かに聞こえる遠ざかる足音に狙いを定め、エウロペは地下洞窟を駆け続ける。
エウロペはつま先だけを地に着け、足音を消していたから。
敵には付けている事が、気づかれてないはず。
が、突然
ガガン!!!
凄まじい勢いで、上から木の柵が降りて来る。
エウロペが咄嗟、背後に身を泳がせた瞬間。
ガンッ!!!
柵が落ちきり、行く手を阻んだ。
カッ…。
微かに聞こえていた、足音が止まる。
その後、慌てたように足早に駆け始め、エウロペは横の土壁を必死に探った。
“追っている事に、気づかれた…!”
けれど右の壁をひと通り手で探り、何も見つからず。
左の壁に手を這わせた時。
木の棒に触れる。
思いっきり引き倒すと
ガラガラガラ…と鎖の引きずる音と共に、柵が上がって行った。
が、靴音は幾つか角を曲がり、どんどん消え去ろうとしている。
エウロペは柵がゆっくり上がるのを、じりじりして待った。
やっと下に隙間が出来、身を屈めた時。
背後から、おぶさり止める賊!
どさっ!
どっ!!!
瞬時にエウロペは身を捻り、背後に肘を突き出す。
「ぐっ!」
賊は腹を思い切り突かれ、呻いてぐったりし、エウロペは脱ぎ捨てるように背の賊を払い落とすと同時、身を低く屈め、柵の下を潜り抜けた。
「敵だ!
敵の侵入だ!」
後からやって来た賊は叫ぶ。
が、駆けつけてくる仲間の靴音は響かない。
エウロペはさっと立ち上がると、消えて行こうとする靴音を追った。
カン…カンカン…!
“音が、変わった…!
ハシゴを登ってる…?”
エウロペは覚えた靴音の変化を辿り、洞窟の道を右。
次に左。
そして右。
更にまた右へと、素早く曲がる。
とうとう上へと繋がる、梯子へと辿り着いた。
が、上がった先は石壁の寂れた地下室。
鋼鉄の、扉が二つ。
素早く近寄る。
一つは開かない。
外から鍵が、かけられてた。
もう一つに駆け寄る。
カチ…。
わずかに開き、音を殺して扉を開ける。
追跡で大事なのは、付けている事を気づかれない事。
油断が生まれ、時間差も埋まる。
が、出た先。
石の廊下のその先の、天井から月光が差し込むのを見、とうとう地上に近づいてると察した。
月明かりの見える、天井の明かり取りの下に立つ。
正面の、外へと続く石階段。
そして右に鋼鉄の扉。
エウロペは迷わず扉を開ける。
その先は、屋敷へと続く石階段。
エウロペは一瞬、迷った。
出たらまた、罠が仕掛けられているか、見張りがいる可能性が高い。
エウロペは外へと続く、石の階段を駆け上がる。
上がると同時身を屈めたが、やはり庭園に続くこの場所に、見張りは配置されていなかった。
エウロペは廃れた枯れ木だらけの庭園から建物沿いへと、身を屈めながら進む。
窓の下に身を潜め、腰を浮かせて室内が無人なのを確認し、窓をそっと押し上げ、中へ身を、滑り込ませた。
けれど背後に気配を感じ、振り向くと。
自分の入って来た窓から、入って来る人影を見つける。
「…エウロペ殿ですか?」
小声で囁かれ、エウロペは警戒を解く。
「…ラステル配下の者か?」
男は窓を潜り、室内に着地し、頷く。
「…この屋敷のだいたいの配置は理解してます。
お役に立てる」
エウロペは頷く。
「地下からここに続く通路は分かるか?
賊の話では、ここか…他の屋敷のどこかに、別の…第四の屋敷に続く、地下道があるらしい」
男はそれを聞き、はっ!と顔を上げる。
「…それは…知りませんでした」
エウロペは頷く。
「では見当も付かない?」
「他の二つの屋敷に続く、地下道は知ってます。
どの屋敷から…その地下道に出られるのか。
大至急調べねば…」
エウロペは頷く。
「行って仲間に知らせ、調べ始めてくれ。
が、君たちが動き始めると、敵は察知し、追い詰められてますます見つけにくい場所に潜る」
ラステル配下は頷き返す。
「…地下道は厄介なので。
全封鎖し、中の賊を捕らえる予定ではいます。
屋敷に入る者らには、そっと探るように告げます」
エウロペは素早く尋ねる。
「…地図があるか?」
男はポケットから、布に描かれた屋敷の見取り図を取り出し、手渡す。
エウロペはその地図に、他の屋敷と繋がる地下道も描かれてるのを素早く確認しながら、囁く。
「…私は探索を続けるから、仲間に知らせに行け」
男は頷き、顔を上げた時。
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