森と花の国の王子

あーす。

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誘拐されたレジィリアンス

侵入したエウロペと、周囲を包囲するラステル配下達

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 地下道に入ったエウロペはほんの微かに香る、レジィの香りを辿る。
水に浸かったため、香りは殆ど消えていた。

角を曲がった途端、出会いがしらに賊と出会わす。
襲いかかって喉を狙い、手刀で一気に倒す。

背後を意識する。
ラステル配下がやがてこの男の後始末をしてくれると信じ、エウロペは先に進んだ。
他の通路から駆け抜ける足音や男達の声が、空洞に響き渡る。

「こっちもダメだ…」
「この先にも、見張りが居る!」

エウロペはラステル配下が着実に、出入り口を塞ぎ始めたと感じた。
後は男らが安全だと思い、逃げ込む先。
その、どこかに必ずレジィは居る。

男が駆け戻る方向に狙いを定め、賊に出会う危険が増すにも関わらず、エウロペは進み続けた。

三人の賊が
「こっちは?!
まだ最近だから、知られてないはずだ!」
と叫び、駆け出して来る靴音を聞き。
横道に姿を隠し、やり過ごす。
けれど次の二股の道を、左右どちらに進むべきか。
思案していた時
バタン!
と大きな扉を閉める音に、はっ!と振り向く。

扉…!
つまりようやく、隠し部屋のある場所が近い!

エウロペはその先に進むものの、音のした方向は土壁で覆われてる。
少し先へ進み、音のした方に横道を見つけ、横道へと入ると。
横に広々とした穴を見つけ、音のした方向へと進む。

扉は閉まりかけ、エウロペはがっ!とブーツの先を入れ込んで咄嗟とっさ止める。
扉を一気に開け、驚いてる賊の腕を掴んで引き、背後に回って首を締め上げ、耳元で告げる。
「…王子は、どこだ?」

賊は首を絞めるエウロペの腕を両手で握り掴み、引き剥がそうとしながら呻く。
「し…知らねぇ…!
俺はし…」

が、エウロペはきつく喉を締め上げ、男が窒息しかけた途端緩めた。
「…俺を甘く見るな。
知ってる筈だ」

男が返答する前に。
エウロペは再び窒息しかけるほど強く、締め上げた。

緩めた時。
男はけほん!けほんと咳き込み始め…。
けれどエウロペが再び絞め始めると、とうとう叫んだ。
「地上だ!
屋敷に行った!」
「屋敷も所在は割れてるだろう?」
「…ここ…と…は違う地下道が、屋敷と…所在の割れてない別の屋敷に繋がってる!」

“ラステルの、包囲範囲外か!”

エウロペは一瞬で理解し、賊の首を放し、くるりと自分に正面向かせると、みぞおちに拳を叩き込み賊を気絶させた。

耳を澄ますと
カンカンカン!
と上品な靴音の遠ざかって行く音が微かに聞こえ、そちらの方向へ。
ひたすら走り始めた。


ラステルの指示で、続々詰めかけるラステル配下らは散って行く。
ラステルは配下らに怒鳴っていた。

「信頼出来る男を集めろ!
出来るだけ大勢駆り出せ!」

ロットバルトがそれを聞き、とうとう口挟む。
「…どうして騎兵を使わない?」

ラステルはロットバルトに振り向く。
「戦闘じゃない。
目端のき、機転が利く者じゃないと。
巧妙に隠れられ、逃げられる」

ロットバルトは額を掻いて、引き下がった。

「…レジィリアンスは…見つけられると思うか?」
エルデリオンに不安げに尋ねられ、デルデロッテは頷く。
「エウロペはまだ、消えたまま。
彼はきっとレジィリアンス殿に迫ってる」

地下道の地図を広げたテーブルに、ラステル配下に混じって地図を見入るテリュスとエリューンに、エルデリオンは振り向き視線を送る。

二人は真剣に、地下道の地図を見つめていた。

次々に男達はペンを取ると、新たな知ってる出入り口と地下通路を地図に書き込む。
その上には、三つの屋敷。
ほぼ真ん中に地下墓地。

今のこの場所は、地下墓地のかなり外れにあった。

が、墓地も木々の向こうに見える屋敷の屋根も。
随分くたびれた廃墟のよう。

「君はこの辺りに詳しい?」
エルデリオンに問われ、デルデロッテは無言で首を横に振る。
ロットバルトはやって来ると、説明し始めた。

「ここは反逆罪として追放された、ザダン公の元領地。
追放される直前に離婚した夫人が名義人。
城に近いので、警備のためにも王が高値で買い取りたいと…幾ら申し出ても。
がんと首を横に振らない。
荘園も持って無く、金も無いので…。
三つある屋敷もすたれる一方の、どれもすさんだ屋敷です」

デルデロッテは顔を下げる。
紅蜥蜴ラ・ベッタの一味が…復讐を囁き、それに応えそうな状況だな」
ロットバルトも頷く。
「王が憎けりゃ、王子も憎い。
エルデリオンを苦しめられれば、彼らの溜飲は下がるでしょうな…」

エルデリオンは顔を上げる。
「…でも、ラステルはそれだからここを…マークしてたろう?」

間もなくかなりの数の、地味で質素な出で立ちの男らが続々姿を見せると。
ラステルは叫んだ。
「突入し、地下道を埋め尽くせ!」

男達は皆、無言でしっかり頷き、散って行く。

静かだったが、妙に頼もしく目に映った。
テリュスとエリューンもがエウロペが消えた地下通路へと、他の男らと一緒に降りて行く。

エルデリオンも続こうとする。
が、デルデロッテがその肩を握り止めた。
「…相手が悪い」

一声囁くと、身を翻し立てかけてあった質素な剣を握り、素早くテリュスとエリューンの消えた地下道へと駆け去る。

ロットバルトもエルデリオンの腕を握り、引き留め囁く。
「…貴方まで誘拐されたら我々は進退きわまり、レジィ殿を奪還だっかん出来ない」

エルデリオンはそれでも行こうとした。
ロットバルトは強く引き戻し、告げる。
「相手は紅蜥蜴ラ・ベッタ
貴方が消えれば追放された公が戻り、王国を乗っ取る!!!」

エルデリオンは厳しいロットバルトの、その言葉にようやく抗うのを止め、項垂れて頷いた。
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