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誘拐計画
追跡
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エリューンが庭園へと戻り、迷路を離宮へと、ひた走り始めた頃。
レジィリアンスが消えた茂みの壁の中から、ラステルの声がした。
「…エウロペ殿が動き出したら、琥珀の札を宙に投げるよう、侍従に命じたのは貴方だ。
つまり貴方が、騎士らを騒ぎに掻き立て。
エウロペ殿の進路を防いだ事になる」
ラステルは気付け薬を嗅がされ、正気を取り戻しつつあるエドアルドに尋問していた。
けれどエドアルドは、朦朧としながら呟く。
「…私は何も知らない…」
「手間を省きましょう。
画策した者の名を言えば、貴方の罪は問わない」
エドアルドが
「…紅…蜥蜴」
と掠れた小声で、告げたと同時。
エリューンが駆け込み、ラステルとロットバルト、そしてテリュスをその場で見つけ、叫んだ。
「早急に水門を閉じよと!
エルデリオン王子の伝言です!」
ラステルは直ぐ、エリューンの横に、目立たないよう立っていた部下に怒鳴る。
「聞こえたな?!
それと馬を直ぐ!
庭園を抜けた場所に三騎、頼む!」
エリューンは横に立つ男が無言で駆け去るのを見、そして茂みの小部屋の、ラステルに叫んだ。
「三騎?!」
ラステルは気づくと
「…テリュス殿に同乗して下さい」
軽く肩を竦め、そう答えた。
ロットバルトは青冷め、俯いて顔を下げる。
「紅蜥蜴がずっと狙っていたのは、エルデリオン…。
なぜ、レジィリアンスをさらう?」
ラステルはもう、茂みを掻き分けエリューンの横を通り過ぎる。
「エルデリオンを、おびき出せるからでは?!」
一声叫び、駆け出す。
庭園を抜け、城の建物の一角に出ると、馬が二頭、側の草を食んでいて、一頭の鞍の上に、長い金髪の少年が俯せで馬の首に、もたれかかっていた。
ラステルは駆け寄り、直ぐ少年の顔を確かめる。
「デュッシェン公爵子息!
くそっ!」
珍しくラステルが口汚く罵るのを聞き、駆けつけたロットバルトはラステルを覗った。
ラステルは呪うように呟く。
「私が最高騎士部隊のパーティに行けなかったのは!
この子息が北の離宮で誘拐されたと緊急連絡が入り、駆り出されたためです!!!」
追いついたテリュスとエリューンは、呆然とした。
「…陽動…?」
呟くテリュスに、ラステルは頷く。
が直ぐ、ラステルは部下が三頭の馬を連れてくるのを見、手綱を取って飛び乗る。
ロットバルトも乗り込み、残り一頭にテリュスが乗り込む。
エリューンはデルデロッテが乗り捨てた馬の手綱を取ると、鐙に足をかけ、一気に飛び乗った。
先頭のラステルはかっ飛んで行き、ロットバルトが血相変えて後を追う。
エリューンとテリュスも後に続く。
が、乗馬が巧みで軽やかで小柄なテリュスが、あっさりロットバルトを抜き去り、ラステルの直ぐ後ろに迫った。
地下水路では、エルデリオンがランプの横で、曲がりくねった水路を先導し、叫ぶ。
「右!
直ぐ次は左!」
曲がる度、ボートは大きく揺れ、一時は石の天井に、頭が届きかけたほど。
けれどエウロペは巧みにオールを操り、少しも速度を緩めない。
大きく左に曲がった時。
エルデリオンは水路へと激しく体が持って行かれ、もう少しで落ちそうになって、舳先に決死でしがみつく。
それでもエウロペは構わず、猛烈に速度を上げる。
デルデロッテも一時も手を緩めず、エウロペの望む以上のスピードで、ボートを進ませた。
やがてやっと直線になり、天井の左右にくり抜かれた、明かり取りの小窓から、月の光が差し込み始めた頃。
かなり先に小さく。
ボートが進む様が見えた。
「…いた!!!
奴らだ!!!」
エルデリオンの叫びを聞き、エウロペとデルデロッテは更に力強く、オールを漕いで速度を上げる。
「先は小川?!」
エウロペの叫びに、エルデリオンは更に小さくなろうとする先のボートを、喰い入るように見つめながら、頷く。
「…奴らは間もなく、城を抜けて小川に出る!!!」
エウロペとデルデロッテはもっと、必死に漕いでボートの速度を上げた。
レジィリアンスが消えた茂みの壁の中から、ラステルの声がした。
「…エウロペ殿が動き出したら、琥珀の札を宙に投げるよう、侍従に命じたのは貴方だ。
つまり貴方が、騎士らを騒ぎに掻き立て。
エウロペ殿の進路を防いだ事になる」
ラステルは気付け薬を嗅がされ、正気を取り戻しつつあるエドアルドに尋問していた。
けれどエドアルドは、朦朧としながら呟く。
「…私は何も知らない…」
「手間を省きましょう。
画策した者の名を言えば、貴方の罪は問わない」
エドアルドが
「…紅…蜥蜴」
と掠れた小声で、告げたと同時。
エリューンが駆け込み、ラステルとロットバルト、そしてテリュスをその場で見つけ、叫んだ。
「早急に水門を閉じよと!
エルデリオン王子の伝言です!」
ラステルは直ぐ、エリューンの横に、目立たないよう立っていた部下に怒鳴る。
「聞こえたな?!
それと馬を直ぐ!
庭園を抜けた場所に三騎、頼む!」
エリューンは横に立つ男が無言で駆け去るのを見、そして茂みの小部屋の、ラステルに叫んだ。
「三騎?!」
ラステルは気づくと
「…テリュス殿に同乗して下さい」
軽く肩を竦め、そう答えた。
ロットバルトは青冷め、俯いて顔を下げる。
「紅蜥蜴がずっと狙っていたのは、エルデリオン…。
なぜ、レジィリアンスをさらう?」
ラステルはもう、茂みを掻き分けエリューンの横を通り過ぎる。
「エルデリオンを、おびき出せるからでは?!」
一声叫び、駆け出す。
庭園を抜け、城の建物の一角に出ると、馬が二頭、側の草を食んでいて、一頭の鞍の上に、長い金髪の少年が俯せで馬の首に、もたれかかっていた。
ラステルは駆け寄り、直ぐ少年の顔を確かめる。
「デュッシェン公爵子息!
くそっ!」
珍しくラステルが口汚く罵るのを聞き、駆けつけたロットバルトはラステルを覗った。
ラステルは呪うように呟く。
「私が最高騎士部隊のパーティに行けなかったのは!
この子息が北の離宮で誘拐されたと緊急連絡が入り、駆り出されたためです!!!」
追いついたテリュスとエリューンは、呆然とした。
「…陽動…?」
呟くテリュスに、ラステルは頷く。
が直ぐ、ラステルは部下が三頭の馬を連れてくるのを見、手綱を取って飛び乗る。
ロットバルトも乗り込み、残り一頭にテリュスが乗り込む。
エリューンはデルデロッテが乗り捨てた馬の手綱を取ると、鐙に足をかけ、一気に飛び乗った。
先頭のラステルはかっ飛んで行き、ロットバルトが血相変えて後を追う。
エリューンとテリュスも後に続く。
が、乗馬が巧みで軽やかで小柄なテリュスが、あっさりロットバルトを抜き去り、ラステルの直ぐ後ろに迫った。
地下水路では、エルデリオンがランプの横で、曲がりくねった水路を先導し、叫ぶ。
「右!
直ぐ次は左!」
曲がる度、ボートは大きく揺れ、一時は石の天井に、頭が届きかけたほど。
けれどエウロペは巧みにオールを操り、少しも速度を緩めない。
大きく左に曲がった時。
エルデリオンは水路へと激しく体が持って行かれ、もう少しで落ちそうになって、舳先に決死でしがみつく。
それでもエウロペは構わず、猛烈に速度を上げる。
デルデロッテも一時も手を緩めず、エウロペの望む以上のスピードで、ボートを進ませた。
やがてやっと直線になり、天井の左右にくり抜かれた、明かり取りの小窓から、月の光が差し込み始めた頃。
かなり先に小さく。
ボートが進む様が見えた。
「…いた!!!
奴らだ!!!」
エルデリオンの叫びを聞き、エウロペとデルデロッテは更に力強く、オールを漕いで速度を上げる。
「先は小川?!」
エウロペの叫びに、エルデリオンは更に小さくなろうとする先のボートを、喰い入るように見つめながら、頷く。
「…奴らは間もなく、城を抜けて小川に出る!!!」
エウロペとデルデロッテはもっと、必死に漕いでボートの速度を上げた。
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