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誘拐計画
アッハ・ドルネスのパーティ 4
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レジィの返答を聞いた後、エドアルドはにっこりと、妖艶に微笑んだ。
「…では出来るだけ、多くの相手としとねを過ごせば。
エルデリオン様の御行為に、戸惑う事も無くなります。
成熟した、力の強い男性相手では、最初は…不安で、怖く無いですか?」
問われてレジィは、エルデリオンとの初めての時を思い返し、こっくり頷く。
エドアルドは再び、美麗な顔で、にっこり微笑んだ。
「…私の侍従達は、皆あなたと年の近い少年ばかり。
けれどこの国の風習に染まっておりますから。
男性を相手にする事に、躊躇いません。
庭に待たせてありますから、よろしければお会いになりませんか?」
そう告げて、椅子から立ち上がると、レジィに手を差し伸べ、夜のとばりが覆い始めた、庭園へと誘う。
窓辺のテーブルだったから、庭園に続く掃き出し窓は直ぐ横にあって、少し歩いただけで、出て行けた。
レジィはチラ…と、奥のテーブルのエウロペを覗う。
エウロペはもう、席を立ち上がり始めていた。
レジィは頷くと、先に立ち上がって待つエドアルドに頷き、立ち上がると庭園へと続く、掃き出し窓を潜った。
庭園へと出ると、茂みが迷路のように覆われていて、最初の入り口に入ると、四方八方至るところ、茂みの壁。
最初の分かれ道を右へと曲がり、次に左。
次々に曲がり行くエドアルドに付いていくものの、レジィはその順番を、覚えていられるか、不安になって背後に振り向く。
エウロペの姿はそこには無く、茂みの壁があるだけ。
けれどエドアルドは、にっこり微笑んだ。
「私は幾度も来ていますから。
迷う事はありませんので、ご安心下さい。
この茂みの迷路の、あちこちに…。
秘密裏に逢い引きできる、茂みに囲まれた、周囲からは見えない隠し場所があるんです」
エドアルドは次の角を曲がった後、茂みの壁を軽く掻き分け、中へとレジィを導いた。
エウロペが掃き出し窓へと素早く歩を進めた矢先。
騎士らが大いに沸き立ち、空へと投げられた、幾多の琥珀の札の一つを求めて、大騒ぎが始まる。
皆、札を取るのに夢中で、手を伸ばしたり落ちてきた一つを奪い合ったりし、エウロペの進路を阻んだ。
エウロペは咄嗟、立ち塞がる大きな男達の体を強引に押し退け、レジィの消えた掃き出し窓へと駆ける。
が、再び札が宙を舞い、騎士らは札に夢中で、落ちてきた札の一つを取ろうとし、エウロペの進路を防いだ。
「…!」
デルデロッテがまず、気づいて目前で話してる騎士の一人を押し退け、なんとか前へ進もうとする、エウロペの背に向かって駆ける。
次にエルデリオンとロットバルトが、ほぼ同時。
必死に庭園に続く掃き出し窓へと、前を塞ぐ男らを押し退け、向かうエウロペの姿に異変を感じ、それぞれ話してる相手に
「失礼」
と告げ、エウロペの方へと歩み始める。
テリュスとエリューンはとっくに椅子を立ち、エウロペを先に行かせようと、進路を防ぎ大騒ぎしてる体格良い騎士らを、必死に押し退けていた。
エウロペが庭園へ出た時。
立ち塞がる茂みの迷路に入り、左右に道の分かれる場所に立つと、どちらに進もうか。
首を振って見回す。
騎士に体当たりして押し退けてる、テリュスとエリューンが開けた道を。
デルデロッテがすり抜け、エウロペの後に続く。
エルデリオンが駆けつけた時。
ようやく騎士らは馬鹿騒ぎを止め、静まって道を空けた。
エルデリオンが空けられた道を進み始めると、その後からロットバルトが。
そして狂瀾から正気に戻った騎士を、もう押さなくて良い、テリュスとエリューンが続いた。
エドアルドは口に布を当てられ、気絶し腕に抱えられたレジィリアンスを見下ろす。
「…では貴方も」
黒髪の男に、嗅ぎ薬の塗られた布を手渡され、エドアルドは不安に陥った。
“…これを嗅いで気絶したら、自分もさらわれるのでは?”と。
けれど黒髪の男は微笑む。
「少しだけ嗅いで、ふらふらにくらいは、なって頂かないと。
あまり早く、人の前に出て行かないように」
素早く告げると、軽いレジィを抱き抱え、黒いマントの中に隠し、身を翻して壁の茂みの中へ、一気に消え去る。
エドアルドはその素早さに呆然とし、元に戻った茂みの壁を暫く眺めた、後。
手渡された布を、そっ…と口に当てた。
直ぐ、くらくらと目眩がして、気を失いそうに成りながらも踏みとどまり、布を下に落として地面に膝を折り、崩れ落ちた。
間もなく
「レジィリアンス様!」
雄々しく叫ぶ、エルデリオンの声が遠くで聞こえた、その数秒後。
がさっ!!!
…この場を隠してる茂みが掻き分けられ、鋭い緑の瞳の青年が、姿を見せる。
エドアルドはその彼に向かって、しなだれかかるように倒れ込むと、ほとんどの意識を失った。
けれど強く揺さぶられ、目を開ける。
間近に見えた、印象的な緑の瞳の青年の表情は厳しく、低く鋭い声で脅すように尋ねる。
「レジィリアンスは?!」
エドアルドはくらくらして意識を奪われかけ、けれどまた強く揺さぶられ、呻く。
「…わから…な…い。
いな…い?」
美麗な長身のデルデロッテが屈み、布を持ち上げ、くん。
と匂いを嗅いでいた。
「…さらわれた?!」
エルデリオンのひきつるような声が聞こえたと同時。
エドアルドは土の地面へ投げ捨てられ、緑の瞳の青年が、茂みの壁を両手で探ったかと思うと、直ぐ黒髪の男の消えた茂みを手で掻き分け、出て行くのが見えた。
その後、駆けつけた幾人の男達は彼を追って行き、エドアルドは土の地面に倒れ込んだまま、放って置かれた。
「…では出来るだけ、多くの相手としとねを過ごせば。
エルデリオン様の御行為に、戸惑う事も無くなります。
成熟した、力の強い男性相手では、最初は…不安で、怖く無いですか?」
問われてレジィは、エルデリオンとの初めての時を思い返し、こっくり頷く。
エドアルドは再び、美麗な顔で、にっこり微笑んだ。
「…私の侍従達は、皆あなたと年の近い少年ばかり。
けれどこの国の風習に染まっておりますから。
男性を相手にする事に、躊躇いません。
庭に待たせてありますから、よろしければお会いになりませんか?」
そう告げて、椅子から立ち上がると、レジィに手を差し伸べ、夜のとばりが覆い始めた、庭園へと誘う。
窓辺のテーブルだったから、庭園に続く掃き出し窓は直ぐ横にあって、少し歩いただけで、出て行けた。
レジィはチラ…と、奥のテーブルのエウロペを覗う。
エウロペはもう、席を立ち上がり始めていた。
レジィは頷くと、先に立ち上がって待つエドアルドに頷き、立ち上がると庭園へと続く、掃き出し窓を潜った。
庭園へと出ると、茂みが迷路のように覆われていて、最初の入り口に入ると、四方八方至るところ、茂みの壁。
最初の分かれ道を右へと曲がり、次に左。
次々に曲がり行くエドアルドに付いていくものの、レジィはその順番を、覚えていられるか、不安になって背後に振り向く。
エウロペの姿はそこには無く、茂みの壁があるだけ。
けれどエドアルドは、にっこり微笑んだ。
「私は幾度も来ていますから。
迷う事はありませんので、ご安心下さい。
この茂みの迷路の、あちこちに…。
秘密裏に逢い引きできる、茂みに囲まれた、周囲からは見えない隠し場所があるんです」
エドアルドは次の角を曲がった後、茂みの壁を軽く掻き分け、中へとレジィを導いた。
エウロペが掃き出し窓へと素早く歩を進めた矢先。
騎士らが大いに沸き立ち、空へと投げられた、幾多の琥珀の札の一つを求めて、大騒ぎが始まる。
皆、札を取るのに夢中で、手を伸ばしたり落ちてきた一つを奪い合ったりし、エウロペの進路を阻んだ。
エウロペは咄嗟、立ち塞がる大きな男達の体を強引に押し退け、レジィの消えた掃き出し窓へと駆ける。
が、再び札が宙を舞い、騎士らは札に夢中で、落ちてきた札の一つを取ろうとし、エウロペの進路を防いだ。
「…!」
デルデロッテがまず、気づいて目前で話してる騎士の一人を押し退け、なんとか前へ進もうとする、エウロペの背に向かって駆ける。
次にエルデリオンとロットバルトが、ほぼ同時。
必死に庭園に続く掃き出し窓へと、前を塞ぐ男らを押し退け、向かうエウロペの姿に異変を感じ、それぞれ話してる相手に
「失礼」
と告げ、エウロペの方へと歩み始める。
テリュスとエリューンはとっくに椅子を立ち、エウロペを先に行かせようと、進路を防ぎ大騒ぎしてる体格良い騎士らを、必死に押し退けていた。
エウロペが庭園へ出た時。
立ち塞がる茂みの迷路に入り、左右に道の分かれる場所に立つと、どちらに進もうか。
首を振って見回す。
騎士に体当たりして押し退けてる、テリュスとエリューンが開けた道を。
デルデロッテがすり抜け、エウロペの後に続く。
エルデリオンが駆けつけた時。
ようやく騎士らは馬鹿騒ぎを止め、静まって道を空けた。
エルデリオンが空けられた道を進み始めると、その後からロットバルトが。
そして狂瀾から正気に戻った騎士を、もう押さなくて良い、テリュスとエリューンが続いた。
エドアルドは口に布を当てられ、気絶し腕に抱えられたレジィリアンスを見下ろす。
「…では貴方も」
黒髪の男に、嗅ぎ薬の塗られた布を手渡され、エドアルドは不安に陥った。
“…これを嗅いで気絶したら、自分もさらわれるのでは?”と。
けれど黒髪の男は微笑む。
「少しだけ嗅いで、ふらふらにくらいは、なって頂かないと。
あまり早く、人の前に出て行かないように」
素早く告げると、軽いレジィを抱き抱え、黒いマントの中に隠し、身を翻して壁の茂みの中へ、一気に消え去る。
エドアルドはその素早さに呆然とし、元に戻った茂みの壁を暫く眺めた、後。
手渡された布を、そっ…と口に当てた。
直ぐ、くらくらと目眩がして、気を失いそうに成りながらも踏みとどまり、布を下に落として地面に膝を折り、崩れ落ちた。
間もなく
「レジィリアンス様!」
雄々しく叫ぶ、エルデリオンの声が遠くで聞こえた、その数秒後。
がさっ!!!
…この場を隠してる茂みが掻き分けられ、鋭い緑の瞳の青年が、姿を見せる。
エドアルドはその彼に向かって、しなだれかかるように倒れ込むと、ほとんどの意識を失った。
けれど強く揺さぶられ、目を開ける。
間近に見えた、印象的な緑の瞳の青年の表情は厳しく、低く鋭い声で脅すように尋ねる。
「レジィリアンスは?!」
エドアルドはくらくらして意識を奪われかけ、けれどまた強く揺さぶられ、呻く。
「…わから…な…い。
いな…い?」
美麗な長身のデルデロッテが屈み、布を持ち上げ、くん。
と匂いを嗅いでいた。
「…さらわれた?!」
エルデリオンのひきつるような声が聞こえたと同時。
エドアルドは土の地面へ投げ捨てられ、緑の瞳の青年が、茂みの壁を両手で探ったかと思うと、直ぐ黒髪の男の消えた茂みを手で掻き分け、出て行くのが見えた。
その後、駆けつけた幾人の男達は彼を追って行き、エドアルドは土の地面に倒れ込んだまま、放って置かれた。
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