森と花の国の王子

あーす。

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誘拐計画

アッハ・ドルネスのパーティ 1

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 レジィがロットバルトとエウロペと共に、共同の居間に顔を出すと。
エリューンもテリュスも、デルデロッテもがとっくに着替え、一斉に振り向く。

エウロペが、その中にラステルの姿が無いの気づき、目を見開いてると。
その様子を見たロットバルトが、代わって尋ねる。
「…ラステルは?」

エリューンもテリュスも、そして二人に見つめられたデルデロッテまでもが、首を横に振る。

ロットバルトは思わず
「折角エウロペ殿が、仲直りをしようとしてたのに…。
タイミング、悪いな」
とぼやき、デルデロッテが真っ直ぐエウロペを見た。

「…では、もう味方?」
エウロペはしぶしぶ、頷いてつぶやく。
「…別に君を敵とは、思ってない」
「けど私は、貴方がラステルと真剣にことを構えたら。
ラステルに付きますよ?」

デルデロッテの返答に、テリュスも頷く。
「そうなったら俺は当然、エウロペに付く」
エリューンも頷く。
「当然ですよね」

ロットバルトがとうとう、両手を振り上げた。
「まだ、そうなってないから!
そうなった時、敵対したまえ!」
レジィはロットバルトの横で、大いに頷いた。

ガチャ。
扉が開いて、エルデリオンがクリーム色に金刺繍の、洒落た出で立ちでボタンを止めながら、部屋から出てくる。

「何か、騒動が起きてる?」

デルデロッテを始め、テリュスもエリューンもが。
首をぶんぶん、横に振った。

デルデロッテが代表で尋ねる。
「ラステルは、君の部屋に居る?」

エルデリオンは顔を上げると、尋ねたデルデロッテのみならず、テリュスとエリューン。
それに、ロットバルト、レジィリアンスにまで見つめられ、口ごもったけど、言い切った。

「…私の着替えの途中、使者から何か報告を受け取ったみたいで…出て行ったけど?」

皆、一斉にため息吐き、出口の扉にぞろぞろ歩き始める。

エルデリオンはデルデロッテの横に並ぶと、こっそり尋ねた。
「…ラステルが居ないと、不都合?」
長身のデルデロッテは、横のエルデリオンを見下ろしながら、頷いた。
「エウロペ殿が、やっとラステルと仲直りしようと決意された、矢先なので」

エルデリオンがそれを聞いて、レジィリアンスと共に先を歩く、エメラルド色の上着を着た颯爽として姿勢の良い、エウロペの背をこっそり盗み見た。

「…ああ見えて、けっこう寛容?」
エルデリオンの問いに、横にやって来たロットバルトが、首を横に振る。
「レジィ殿に説得された格好ですな。
海千のエウロペ殿には、ラステルの策略は透けて見える。
が、純真なレジィリアンス殿は、ラステルの気配りに、大変好意を持ってる」

エルデリオンもそれを聞いて、顔を下げた。
「…いつもあれだけ愛想が良いと。
普通の人間は、簡単に心を開いてしまいがちだ。
…私は逆に、ラステルを警戒できる、エウロペ殿が凄いと思う」

背後からその見解が聞こえて来たエウロペが、思わず振り向くと。
両横のデルデロッテ、ロットバルトまでもが神妙に顔を下げ、エルデリオンの意見に頷いているのを見て、心底呆れた。

パーティは、南庭園の端の離宮で行われていた。
遠目からは小さな離宮に見えたけど。
中に入ってみると、左右南北に部屋が突き出ていて、かなり広い。

あちこちにテーブルとソファが置かれ、数人が談笑できる場所が、そこら中にあった。
中央には食べ物と飲み物が所狭しと置かれた、広いテーブルがあって。
テーブルの向こう側に立つ召使い達が、取りに来た騎士らに、指示された飲み物や食べ物を手渡している。

デルデロッテとエルデリオンが姿を現すと、かなりの体格良い、面構えもいい騎士らが、びしっ!と背筋伸ばして直立不動で立ち、一斉に見つめるので。

エルデリオンは手を軽く上げ
「儀礼は省こう。
無礼講で良い」
と告げる。

皆、一斉に姿勢を崩すと、談笑に戻った。

試合で勝った新規隊員らは、数人の騎士らに取り囲まれ、既に話し込んでいて、レジィリアンスはそのざっくばらんな雰囲気に、思わずキョロキョロと周囲を見回した。

皆、格好いい騎士ばかり。
けれどデルデロッテはその中でも一際長身で、年長の騎士らが彼を、マークしたように鋭い眼差しで見つめてる。

皆、知り合いのようで、ロットバルトは直ぐ、知った顔に声かけられ、場から外れた。

デルデロッテは、こちらに来たそうだったけれど。
戸口付近で若手騎士の一団に捕まり、取り囲まれて。
しきりに話しかけられ、無理だった。

エルデリオンが遠慮がちに、レジィの横に来ると
「食べ物をお持ちしましょうか?
…皆、顔なじみばかりなので、他国の貴方にとって、居心地はさぼど良くないかもしれません。
そちらのテーブルに腰掛け、待って頂ければ、お届けします」
と尋ねた。

レジィは頷き、テリュスとエリューンと共に、窓辺の人の居ないテーブルの、一人掛け用ソファに腰掛ける。
テリュスとエリューンは、その両脇に腰掛けた。

エウロペはエルデリオンと共に、食事を調達できる中央の長テーブルへと歩き出し、問う。
「王子の貴方なら。
召使いに声をかければ、テーブルに運ばせられるのでは?」

けれどエルデリオンは、ちょっと恐縮したように、エウロペを見つめた。
「…彼らはいざという時、王や私の直属の配下。
こういう場では、王ですら召使いに命じず、彼ら同様自分で運びます」

エウロペはそれを聞いて、周囲にちらと、視線を走らせた。
「…つまり身分差を、彼らに意識させないために?」

エルデリオンは頷いて、囁いた。
「…彼らが寛げるよう、振る舞います」

エウロペは大国のその習慣に、思わずため息を吐き出した。
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