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誘拐計画
着替えの部屋での説得
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結局一同は一度オレシニォンに戻るよう言われ、着替えをする羽目となった。
アッハ・ドルネスの、パーティ用に。
レジィリアンスはロットバルトが衣装部屋に来てくれて、どんな衣装を選べばいいのか。
教えてくれると聞いて、ほっとした。
「…あの…。
あまりパーティとかって、出た事が無いんですけど…」
そう告げると、ロットバルトは衣装箪笥を開き、ハンガーを掻き分けながら振り向く。
「最高騎士部隊の新人歓迎パーティは、男ばかりだし昼間。
野郎ばかりで無粋なパーティですよ」
そう言って、笑いながら言葉を付け足す。
「…けれど、荒事に慣れた騎士ばかり。
舐められないよう、せいぜい男らしく見せないと」
エウロペは背後で腕組みしつつ、その言葉を聞き、尋ねる。
「…女性はいないのか?」
ロットバルトは首を縦に振りながら、紺に近い青のかっちりしたベルベットの丈長上着を手に取り、レジィリアンスに差し出して、囁く。
「正式な最高騎士部隊の、夜の舞踏会は。
そりゃ騎士目当ての着飾ったお嬢さんが、たくさん来て華やかですが。
昼のパーティはどちらかと言えば、内輪。
作法も気にしなくていい。
気軽に振る舞って下さい。
…勿論話題はほぼ、剣術についてです」
その後、ロットバルトは衣装を腕に抱えるレジィに屈むと、こっそり耳打ちした。
「自慢したがりの男の話は、延々自慢話ですから。
始まったら、さっさと逃げ出すように」
レジィはその忠告に、くすくす笑った。
ロットバルトはその素直な愛らしさに、笑みを浮かべる。
エウロペはそんな愛情深いロットバルトの、レジィに向ける笑顔を見つめ、ぼそりと囁いた。
「…どうして貴方のような、まともな人が。
ラステルと付き合っていけるのか、不思議だ」
ロットバルトは振り向く。
「彼は人の機嫌を取るのが、とても上手い」
エウロペは納得し、頷いた。
「…貴方の機嫌を損ねたら、いつも酒の差し入れですか」
ロットバルトは、大いに頷く。
「しかも幻の超高級酒を差し入れてくれる。
滅多に手に入らない逸品を届けられると。
流石に文句も、引っ込みます」
エウロペは俯きながら、幾度も首を縦に振った。
ロットバルトはレジィを気遣うエウロペに、言葉を足した。
「…確かに、今回ラステルは不首尾を曝した。
…少し性欲を刺激し、反応を見る気だったが…」
エウロペが、後を継ぐ。
「レジィの反応が思ったより…過激だった?」
レジィは二人の会話に、頬染めて俯く。
ロットバルトは少し、気の毒そうにレジィリアンスを見る。
「…エルデリオンの事を…。
もうそれ程、嫌いじゃ無かった?」
尋ねられて、レジィは俯いた。
「…貴方方といらっしゃるエルデリオン様は…感じが良かったし。
最近は…あまり…その、私に向ける、欲望と言うか…」
エウロペが助け船を出す。
「…ギラギラしてなかった?」
レジィは頷く。
「…だから…。
もう、凄く恥ずかしい事は、されないと思って…。
でもラステル様は、簡単におっしゃったけど…。
エウロペにお願いする事を考えたら、もう…頬が熱くて、体が沸騰しそうなほど恥ずかしくって…。
だから、その…」
ロットバルトは、ちょっとがっかりした表情を見せた。
「…エルデリオンの方が。
気軽に頼みやすかったんですね?」
けれどレジィは、顔を上げて咄嗟にロットバルトの言葉を訂正する。
「頼みやすいなんて…!
それだって、ずいぶん悩んだんです!
けど…エルデリオン様は…。
相談に乗ってくれる雰囲気だったし、困ったらお役に立ちますと、おっしゃってくださっていたし」
エウロペはそれを聞くと、目を見開きロットバルトに尋ねる。
「…ホントに、謀ってない?
エルデリオンが申し出した後に、媚薬が効くなんて。
タイミングが、良すぎませんか?!」
エウロペが怒ってる様子で、ロットバルトは言い淀んだ。
「ラステルは、場の状況を読む天才だ。
二人の雰囲気を見、多分…早期決着を付けるために、したんだと思う。
その…エルデリオンがそれだけ、レジィに対する欲望を抑え、迎え入れる態度を示し、けれどそれでも、まだ…」
「つまり媚薬で後押ししても、レジィがエルデリオンに雪崩れ込まなければ。
エルデリオンを説得しようと?」
エウロペに言われ、ロットバルトは頷く。
レジィはロットバルトを見上げた。
「…じゃ…ラステル様は、単に結果を早めただけ?」
ロットバルトは顔を下げつつ、頷いた。
レジィは背後のエウロペに振り向くと、告げた。
「…なら、ラステル様に悪意は無いよね?」
エウロペはため息交じりに囁く。
「…ラステルが、よっぽどお気に入りで。
どうしても彼を、悪人にしたくない?」
レジィは頷いた。
「だって…いつも気遣ってくれて、私が沈んでると、楽しいお話を聞かせて下さって…。
大好きな人です」
エウロペは、とうとう完敗した。
「…では、ラステルと仲直り致します」
レジィは、ぱっ!と顔を輝かせた。
が、エウロペは釘刺した。
「けれどそれと。
男との体験に、深入りする事は別。
女性も知らぬ内に、あまり男性と深い肉体関係を持つと。
女性を愛せない体になって、世継ぎが途絶えては困る」
レジィはそれを聞くなり、真っ赤に成ると。
顔を下げて、頷いた。
アッハ・ドルネスの、パーティ用に。
レジィリアンスはロットバルトが衣装部屋に来てくれて、どんな衣装を選べばいいのか。
教えてくれると聞いて、ほっとした。
「…あの…。
あまりパーティとかって、出た事が無いんですけど…」
そう告げると、ロットバルトは衣装箪笥を開き、ハンガーを掻き分けながら振り向く。
「最高騎士部隊の新人歓迎パーティは、男ばかりだし昼間。
野郎ばかりで無粋なパーティですよ」
そう言って、笑いながら言葉を付け足す。
「…けれど、荒事に慣れた騎士ばかり。
舐められないよう、せいぜい男らしく見せないと」
エウロペは背後で腕組みしつつ、その言葉を聞き、尋ねる。
「…女性はいないのか?」
ロットバルトは首を縦に振りながら、紺に近い青のかっちりしたベルベットの丈長上着を手に取り、レジィリアンスに差し出して、囁く。
「正式な最高騎士部隊の、夜の舞踏会は。
そりゃ騎士目当ての着飾ったお嬢さんが、たくさん来て華やかですが。
昼のパーティはどちらかと言えば、内輪。
作法も気にしなくていい。
気軽に振る舞って下さい。
…勿論話題はほぼ、剣術についてです」
その後、ロットバルトは衣装を腕に抱えるレジィに屈むと、こっそり耳打ちした。
「自慢したがりの男の話は、延々自慢話ですから。
始まったら、さっさと逃げ出すように」
レジィはその忠告に、くすくす笑った。
ロットバルトはその素直な愛らしさに、笑みを浮かべる。
エウロペはそんな愛情深いロットバルトの、レジィに向ける笑顔を見つめ、ぼそりと囁いた。
「…どうして貴方のような、まともな人が。
ラステルと付き合っていけるのか、不思議だ」
ロットバルトは振り向く。
「彼は人の機嫌を取るのが、とても上手い」
エウロペは納得し、頷いた。
「…貴方の機嫌を損ねたら、いつも酒の差し入れですか」
ロットバルトは、大いに頷く。
「しかも幻の超高級酒を差し入れてくれる。
滅多に手に入らない逸品を届けられると。
流石に文句も、引っ込みます」
エウロペは俯きながら、幾度も首を縦に振った。
ロットバルトはレジィを気遣うエウロペに、言葉を足した。
「…確かに、今回ラステルは不首尾を曝した。
…少し性欲を刺激し、反応を見る気だったが…」
エウロペが、後を継ぐ。
「レジィの反応が思ったより…過激だった?」
レジィは二人の会話に、頬染めて俯く。
ロットバルトは少し、気の毒そうにレジィリアンスを見る。
「…エルデリオンの事を…。
もうそれ程、嫌いじゃ無かった?」
尋ねられて、レジィは俯いた。
「…貴方方といらっしゃるエルデリオン様は…感じが良かったし。
最近は…あまり…その、私に向ける、欲望と言うか…」
エウロペが助け船を出す。
「…ギラギラしてなかった?」
レジィは頷く。
「…だから…。
もう、凄く恥ずかしい事は、されないと思って…。
でもラステル様は、簡単におっしゃったけど…。
エウロペにお願いする事を考えたら、もう…頬が熱くて、体が沸騰しそうなほど恥ずかしくって…。
だから、その…」
ロットバルトは、ちょっとがっかりした表情を見せた。
「…エルデリオンの方が。
気軽に頼みやすかったんですね?」
けれどレジィは、顔を上げて咄嗟にロットバルトの言葉を訂正する。
「頼みやすいなんて…!
それだって、ずいぶん悩んだんです!
けど…エルデリオン様は…。
相談に乗ってくれる雰囲気だったし、困ったらお役に立ちますと、おっしゃってくださっていたし」
エウロペはそれを聞くと、目を見開きロットバルトに尋ねる。
「…ホントに、謀ってない?
エルデリオンが申し出した後に、媚薬が効くなんて。
タイミングが、良すぎませんか?!」
エウロペが怒ってる様子で、ロットバルトは言い淀んだ。
「ラステルは、場の状況を読む天才だ。
二人の雰囲気を見、多分…早期決着を付けるために、したんだと思う。
その…エルデリオンがそれだけ、レジィに対する欲望を抑え、迎え入れる態度を示し、けれどそれでも、まだ…」
「つまり媚薬で後押ししても、レジィがエルデリオンに雪崩れ込まなければ。
エルデリオンを説得しようと?」
エウロペに言われ、ロットバルトは頷く。
レジィはロットバルトを見上げた。
「…じゃ…ラステル様は、単に結果を早めただけ?」
ロットバルトは顔を下げつつ、頷いた。
レジィは背後のエウロペに振り向くと、告げた。
「…なら、ラステル様に悪意は無いよね?」
エウロペはため息交じりに囁く。
「…ラステルが、よっぽどお気に入りで。
どうしても彼を、悪人にしたくない?」
レジィは頷いた。
「だって…いつも気遣ってくれて、私が沈んでると、楽しいお話を聞かせて下さって…。
大好きな人です」
エウロペは、とうとう完敗した。
「…では、ラステルと仲直り致します」
レジィは、ぱっ!と顔を輝かせた。
が、エウロペは釘刺した。
「けれどそれと。
男との体験に、深入りする事は別。
女性も知らぬ内に、あまり男性と深い肉体関係を持つと。
女性を愛せない体になって、世継ぎが途絶えては困る」
レジィはそれを聞くなり、真っ赤に成ると。
顔を下げて、頷いた。
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