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接近
王妃付き侍女らのお茶会 4
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レジィリアンスは突然、エルデリオンがここに来てる事に思い当たり、尋ねる。
「……もしかして…剣のお稽古…の、お約束…って、ありました?
もしそうなら、僕…」
椅子から立ち上がろうとするレジィリアンスを見、エルデリオンが言葉をかけようと、口を開くけれど。
デルデロッテは言葉の出ない隣のエルデリオンを、チラ見した後。
手にしたカップを口に運びながら、微笑みを浮かべ、告げた。
「いついかなる時でも、剣と女性なら。
女性優先でかまいません」
レジィリアンスは立ち上がったものの、デルデロッテの言葉道理、動かないエルデリオンを見、再び腰掛けた。
このデルデロッテのセリフに、彼女達はいっそう頬を赤らめ、感嘆のため息を付く。
が、アレキサンドラだけは、挑発的に言い放った。
「……らしいお言葉ですこと。
でも最近、ちっとも宮廷にお姿が無くって。
悲しんでいらっしゃる女性が、山ほどいらっしゃるのを、どう言い訳するおつもり?」
じっ、とアレキサンドラを見つめ、デルデロッテが意味ありげに囁く。
「山ほど?
…お一人ではなくて?」
デルデロッテの、男らしくも美しい濃紺の瞳で見つめられ、アレキサンドラは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「その一人が、私の事だとお思いなら!
貴方はとても、思い上がっていらっしゃるわ!」
デルデロッテは、丁寧に頭を下げた。
「失礼いたしました」
その優美さに、皆が見とれる。
「…ここにお邪魔して、よろしいんですか?」
ふいに足音を殺して、歩み寄るエウロペに、皆が一斉に振り向いた。
レジィリアンスは彼の姿を目にした途端、はしゃいで笑顔を見せる。
フランセがこっそり、横のエルデリオンに尋ねた。
「…どなた?」
「レジィリアンス殿の第一従者で…」
エルデリオンが返答した時、エウロペはもう、レジィリアンスの横に立つ。
側に居たシャルロッテが、斜め後ろに置かれた、椅子を目で指し示した。
「あの…よろしければ」
エウロペは直ぐ気づいて
「ありがとう」
そう笑顔で告げ、椅子を持って来て、レジィリアンスの横に腰掛けた。
場の女性達は、自然の気配を持ち、爽やかで流れるような動作のエウロペの動き。
明るい栗毛の短髪と、頬骨の高い男らしい容貌。
際立つ緑の明るい瞳。
けれどとても穏やかな態度。
を見て、一斉にため息を吐いた。
フランセはエーメに
「この国ではお見かけしないタイプの、素敵な男性ね?」
と小声で囁くと
「…あんな素敵な方なら、もうきっと、恋人がいらっしゃるわよ」
と囁き返され、残念そうな表情を浮かべた。
けれどその時、エリューンとテリュスが。
また別の小道から、両手にお菓子の乗った盆を持って現れた。
「ラステル殿から…ここに持って行くようにと言付かって」
テリュスが言うと、デルデロッテは笑顔で立ち上がった。
「ちょうど良かった。
エウロペ殿も、今来たところ。
こちらに、かけて」
テリュスとエリューンは、アルデリッテとアレキサンドラの間に椅子を二つ置かれ、椅子を勧めるデルデロッテを見た。
デルデロッテはひょい。
と、エリューンとテリュスの手から盆をすくい取ると、エーメに見せるように差し出した後、テーブルの真ん中に置く。
「あら、どれも綺麗なケーキですこと!」
エーメはクリームやソースの飾り付けもさる事ながら、色とりどりのゼリーや果物の盛られた美しいケーキに、感嘆した。
後から来た、エウロペとエリューン、テリュスが呆けていると。
レジィリアンスも女性達に混ざって、テーブルに置かれた盆から、ケーキを皿に取り分け始める。
エウロペはレジィリアンスにケーキを差し出され、エーメからお茶が注がれたカップを受け取り、黙してケーキとお茶を見た。
テリュスは場違いな場所に来たように、縮こまっていたけど。
横のアルデリッテに
「…どうして、お髭を生やしていらっしゃるの?」
と尋ねられ、とうとう顔を上げてうんと離れた場所に座るデルデロッテに
「ここの少女はどうして、同じ事しか聞かないんだ?!」
と叫び、皆の笑いを誘った。
エリューンは見まい。
と思いつつも、横のアレキサンドラの半分露わになってる豊満な胸に、どうしても視線が行ってしまい、アレキサンドラに振り向かれ、さっ!と顔を背けてた。
とうとうアレキサンドラに
「見ても、よろしくてよ?」
と告げられ、深く顔を下げてしまった。
レジィリアンスは彼らのそんな様子を見て、くすくすすと朗らかに笑う。
エルデリオンは笑うレジィリアンスに、心からほっとし、エウロペはレジィリアンスの寛いだ様子を見て、落ち着いてお茶を口に運んだ。
「……もしかして…剣のお稽古…の、お約束…って、ありました?
もしそうなら、僕…」
椅子から立ち上がろうとするレジィリアンスを見、エルデリオンが言葉をかけようと、口を開くけれど。
デルデロッテは言葉の出ない隣のエルデリオンを、チラ見した後。
手にしたカップを口に運びながら、微笑みを浮かべ、告げた。
「いついかなる時でも、剣と女性なら。
女性優先でかまいません」
レジィリアンスは立ち上がったものの、デルデロッテの言葉道理、動かないエルデリオンを見、再び腰掛けた。
このデルデロッテのセリフに、彼女達はいっそう頬を赤らめ、感嘆のため息を付く。
が、アレキサンドラだけは、挑発的に言い放った。
「……らしいお言葉ですこと。
でも最近、ちっとも宮廷にお姿が無くって。
悲しんでいらっしゃる女性が、山ほどいらっしゃるのを、どう言い訳するおつもり?」
じっ、とアレキサンドラを見つめ、デルデロッテが意味ありげに囁く。
「山ほど?
…お一人ではなくて?」
デルデロッテの、男らしくも美しい濃紺の瞳で見つめられ、アレキサンドラは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「その一人が、私の事だとお思いなら!
貴方はとても、思い上がっていらっしゃるわ!」
デルデロッテは、丁寧に頭を下げた。
「失礼いたしました」
その優美さに、皆が見とれる。
「…ここにお邪魔して、よろしいんですか?」
ふいに足音を殺して、歩み寄るエウロペに、皆が一斉に振り向いた。
レジィリアンスは彼の姿を目にした途端、はしゃいで笑顔を見せる。
フランセがこっそり、横のエルデリオンに尋ねた。
「…どなた?」
「レジィリアンス殿の第一従者で…」
エルデリオンが返答した時、エウロペはもう、レジィリアンスの横に立つ。
側に居たシャルロッテが、斜め後ろに置かれた、椅子を目で指し示した。
「あの…よろしければ」
エウロペは直ぐ気づいて
「ありがとう」
そう笑顔で告げ、椅子を持って来て、レジィリアンスの横に腰掛けた。
場の女性達は、自然の気配を持ち、爽やかで流れるような動作のエウロペの動き。
明るい栗毛の短髪と、頬骨の高い男らしい容貌。
際立つ緑の明るい瞳。
けれどとても穏やかな態度。
を見て、一斉にため息を吐いた。
フランセはエーメに
「この国ではお見かけしないタイプの、素敵な男性ね?」
と小声で囁くと
「…あんな素敵な方なら、もうきっと、恋人がいらっしゃるわよ」
と囁き返され、残念そうな表情を浮かべた。
けれどその時、エリューンとテリュスが。
また別の小道から、両手にお菓子の乗った盆を持って現れた。
「ラステル殿から…ここに持って行くようにと言付かって」
テリュスが言うと、デルデロッテは笑顔で立ち上がった。
「ちょうど良かった。
エウロペ殿も、今来たところ。
こちらに、かけて」
テリュスとエリューンは、アルデリッテとアレキサンドラの間に椅子を二つ置かれ、椅子を勧めるデルデロッテを見た。
デルデロッテはひょい。
と、エリューンとテリュスの手から盆をすくい取ると、エーメに見せるように差し出した後、テーブルの真ん中に置く。
「あら、どれも綺麗なケーキですこと!」
エーメはクリームやソースの飾り付けもさる事ながら、色とりどりのゼリーや果物の盛られた美しいケーキに、感嘆した。
後から来た、エウロペとエリューン、テリュスが呆けていると。
レジィリアンスも女性達に混ざって、テーブルに置かれた盆から、ケーキを皿に取り分け始める。
エウロペはレジィリアンスにケーキを差し出され、エーメからお茶が注がれたカップを受け取り、黙してケーキとお茶を見た。
テリュスは場違いな場所に来たように、縮こまっていたけど。
横のアルデリッテに
「…どうして、お髭を生やしていらっしゃるの?」
と尋ねられ、とうとう顔を上げてうんと離れた場所に座るデルデロッテに
「ここの少女はどうして、同じ事しか聞かないんだ?!」
と叫び、皆の笑いを誘った。
エリューンは見まい。
と思いつつも、横のアレキサンドラの半分露わになってる豊満な胸に、どうしても視線が行ってしまい、アレキサンドラに振り向かれ、さっ!と顔を背けてた。
とうとうアレキサンドラに
「見ても、よろしくてよ?」
と告げられ、深く顔を下げてしまった。
レジィリアンスは彼らのそんな様子を見て、くすくすすと朗らかに笑う。
エルデリオンは笑うレジィリアンスに、心からほっとし、エウロペはレジィリアンスの寛いだ様子を見て、落ち着いてお茶を口に運んだ。
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