森と花の国の王子

あーす。

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接近

舞踏会の仕度と、ラステルとエウロペの同意

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 レジィリアンスはラステルに連れられ、オレシニォン西の客用離宮に戻る。
そして部屋の衣装箪笥に、留守中運び込まれた数多あまたの美しい衣装を見つけ、目を見開いた。

ラステルは幾つかの華美な上着を手に取り
「紫はいかが?
あまり濃い色で無いので…とても洒落て見えます」
と尋ねる。

エウロペは横に立つと
「レジィリアンス殿の目の色と同じ、青だと引き立つ」
と囁き、お洒落な貴公子よりは、毅然とした貴公子に見える、青を勧めた。

ラステルはチラ…とエウロペに視線を向けると
「貴方とはこの件に関し、一度話し合わねば」
と告げるので、レジィリアンスは不安になって
「ええと…空色はどうです?」
と尋ねた。

ラステルとエウロペは、レジィリアンスの視線の先の、箪笥にかかってる衣装を見、揃って首を横に振る。
「…ちょっと…迫力不足ですね」
エウロペが言うと、ラステルは素っ気無く言った。
「少し軽薄で、お馬鹿に見えますから。
もっと、軽い場で無いと」

すげなく二人に却下され、レジィリアンスは“王妃の内舞踏会”だったと思い出し、顔を下げた。

一方エルデリオンは。
風呂も浸からず、そのままだったので、慌てて浴槽に駆け込む。
香水で誤魔化したが、もしレジィリアンスと、もっと接近するとなれば、やたら香水臭いのも頂けない。

ロットバルトが扉を開けて覗くので、エルデリオンは慌てて言った。
「レジィリアンスの、面倒を見て差し上げてくれないか?」
ロットバルトは頷き
「貴方は、大丈夫ですか?」
と尋ねるので、頷いて言葉を返す。
「デルデロッテが居たら…彼に衣装を、見てもらう」

ロットバルトは扉を閉め、エルデリオンの部屋を出て、共同の使われないお洒落な居間を抜け、レジィリアンスの寝室を通って衣装部屋に顔を出した。

ラステルとエウロペが、薄紫の衣装と青の衣装で言い争うのを見て、口を挟む。
「…緑の…ピンクのリボン飾りの入った衣装はいかがかな?
ピンクはそう華美では無く、控えめだし。
上品で可愛らしく、かつ気骨は損なわれない」

ラステルとエウロペ、レジィリアンスは一斉にロットバルトに振り向く。
そして…緑に銀刺繍。
袖口や襟に、僅かにアクセントとしてピンクの小さなリボンが施された、衣装を見た。

レジィリアンスは即座に
「ええ。
上品になりすぎず、華美にもなりすぎず…」
「気に入った?」
ロットバルトに笑顔で聞かれ、レジィが頷き、ラステルとエウロペは、しぶしぶ自分達の主張を引っ込めた。

ロットバルトは更に、銀のズボンと、緑の銀刺繍の入った革のブーツを勧める。
「ハンケチは白では無く、緑がいいですね。
ああとても、上品に見える」

エウロペは仕度から弾き出され、横のラステルに
「話し合おうか?」
と尋ね、頷くラステルと、共同の居間に移動した。

座るなり、エウロペが囁く。
「君達は、何かとエルデリオンとレジィを、くっつけようと計らってないか?」
ラステルは肩を竦める。
「どんどん二人を近づけ、エルデリオンの普段の様子を、レジィにお見せして。
気に入るかどうかを、見定めないと。
距離が出来たままでは、結論は先延ばし。
貴方がたも、帰国が遠ざかりますよ?」

エウロペはラステルの、説得力に呆れた。
ラステルは更に囁く。
「貴方とエリューン殿が、いつまでも猛犬よろしく、レジィ殿の側から離れなかったら。
レジィ殿が、気に入るかどうかを、考える余裕も無くなる。
我ら侍従で結託し、貴方とエリューン殿を牽制する作戦も立てていましたが…」

エウロペはため息と共に、頷いた。
「…では私とエリューンは、レジィが叫べば駆けつけられる距離で。
今後、見張る事にする」

ラステルは頷いて、付け足す。
「姿の、見えない場所から」

エウロペは言い淀んだが、しぶしぶ、同意した。
「姿の見えない場所から」
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