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大国オーデ・フォール
西庭園の華やかな子息子女らの誤解
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宮廷の若き貴公子らを差し置き、二人の美少女はエルデリオンを取り巻く。
「エルデリオン様が私のダンスのお相手なら、私とても嬉しいんですけど」
紫ドレスのアナシタシアが言い寄ると、花柄ドレスのキャスリンも、頬染めて囁く。
「あらぜひ、私と踊って頂きたいわ!
今夜はナスタ夫人邸宅で、舞踏会がございますの」
三人の少女らは一団から弾き出され、デルデロッテの側にやって来ると、二人はデルデロッテの横に座る、エリューンを見て頬を染めた。
彼女らは二人の美少女ほど、目立つ美しさでは無かったけれど。
それぞれが愛嬌があって、可愛らしかった。
「デルデロッテ様。
お見かけしないお方ね?」
「ご紹介、頂けないの?」
二人の少女に言われ、デルデロッテは額に手を当て、いかにも打撃を受けたように、沈痛な面持ちで呟く。
「ちゃんとお名前を覚えているのに。
お二人揃って、私を振るんですか?」
エリューンはぎょっ!として、わざとらしく落ち込むデルデロッテを見た。
けれど二人の少女は微笑むと
「だってデルデロッテ様は、お姉様ぐらい年上の女性じゃ無いと、お相手なさらないくせに」
「この方、明らかにデルデロッテ様より、お若いですわよね?」
テリュスは一人の少女が横にやって来て
「どうしてお髭を、生やしてるの?」
と尋ねて来、突然なんでそんな事言われるのか理解出来ず、首を捻った。
貴公子らは美少女らの態度に白けきり、レジィリアンスを取り巻くと、囁く。
「エルデリオン様とは、どのようなご関係?」
「よろしければ今夜、舞踏会においでになって、私のダンスのお相手になって頂けませんか?」
「彼では役不足だから、私が。
蝶のように、貴方を舞わせて差し上げます」
と口説き始めるものだから、エルデリオンはつい、そっ…と美少女らを手でやんわり押し退け、進み出ると
「このお方は華やかな事に、慣れていらっしゃらないので」
と貴公子らとレジィリアンスの間に割って入り、レジィリアンスの肩を、そっと抱いた。
「御親類ですか?」
一人の貴公子に尋ねられたが、エルデリオンは首を横に振る。
キャスリンは男装ながらも、豪奢な金髪の、素晴らしい美少女を庇うエルデリオンを見、眉をひそめる。
「…ところでエルデリオン様。
隣国シュテフザインから、花嫁を連れて帰ったと。
宮廷中の噂ですけど…。
何でも、王妃様の特別客人待遇で、きっとお見かけしたら私達、礼を尽くして。
とても気を使わなくてはなりませんわ」
貴公子らが、思わずレジィリアンスを見る。
けれどその時、アナスタシアが声高に叫んだ。
「でも、少年だとお聞きしましたわ!
ずっと女性しか相手なさらないエルデリオン様の、お心を捉えるのですから。
どれ程美しく、凜々しい少年剣士かしらと…。
母や叔母達が、いつも噂しておりましたけど…」
それを聞いた途端、レジィリアンスは顔を下げる。
だって貴公子らは、揃ってほっとしたような表情で
「エルデリオン様にはもう、お心に決めた少年が、いらっしゃるんですね?」
「お会いするのが、楽しみだ!」
と口々に呟いたから。
レジィリアンスはエルデリオンが触れる肩を避け、その場から下がろうとした。
けれどエルデリオンは、肩に置いた手に力を込め、引き戻して告げる。
「シュテフザインの王子、レジィリアンス殿。
王妃特別客人待遇のお方ですから、お見知りおきを。
そしてどうか、礼を尽くして頂きたい」
エルデリオンが言い切った後、場は一気に静まり返って、一斉に固まった。
デルデロッテとじゃれるように話ながら、エリューンに見とれてた少女二人達までも。
皆、彫像のようにピタリと動きを止め、誰も口を利かない。
ただ一人、テリュスの横に立つ少女だけが。
「お髭は、剃らないんですの?」
と呟き、テリュスの顔を、下げさせた。
デルデロッテは、きっぱり突きつけるように言い切って、レジィリアンスの肩を抱くエルデリオン。
横で、顔を下げきるレジィリアンス。
目を見開いて、驚きに固まる貴公子らと二人の美少女。
を見回し、穏やかな口調で告げた。
「驚かれるとは思いますが。
レジィリアンス殿は、少年です」
皆一斉に、にこやかにそう告げる、デルデロッテに振り向いた。
アナスタシアが、心からがっかりして囁く。
「少年で…いらっしゃるの?
私てっきり…美少女か…と…」
キャスリンは、目をまん丸にして、尋ねた。
「ホントにホントに、ホントに。
少年でいらっしゃるの?
この王宮で、エルデリオン様の花嫁になりたい少女は、山程いるから。
少年を花嫁にすると公言し、皆の期待を無くさせる為…。
少年と、偽っていらっしゃるんじゃ、なくって?」
貴公子の一人が、ぼやく。
「エルデリオン様が本当に少年趣味の道に入って、このお方が少女だったら、私達も、とても、嬉しいのですけど」
貴公子らに揃って切なげに見つめられ、レジィリアンスは気の毒そうに、囁いた。
「…あの…少女ではありません。
ごめんなさい」
貴公子らは、心からがっかりしたため息を、揃って吐き出し。
美少女二人は、がっくり肩を下げる。
「あんまりですわ…」
アナスタシアは泣き言を呟き、キャスリンも、同意して頷く。
「…美少女ですら…私達、敵わないかもと心配になるほど、お綺麗で可愛らしいのに。
少年なんて…。
…まるっきり、勝ち目が無いじゃありませんか」
レジィリアンスは場の空気を、思いっきり重くする横のエルデリオンを見上げた。
けれどエルデリオンはレジィリアンスを見つめ
「…でもあの…。
少女と間違われるのは、お嫌いでしょう?」
と優しく囁く。
レジィリアンスはエルデリオンのその気遣いに、思わず嬉しくなって、頬が染まった。
「エルデリオン様が私のダンスのお相手なら、私とても嬉しいんですけど」
紫ドレスのアナシタシアが言い寄ると、花柄ドレスのキャスリンも、頬染めて囁く。
「あらぜひ、私と踊って頂きたいわ!
今夜はナスタ夫人邸宅で、舞踏会がございますの」
三人の少女らは一団から弾き出され、デルデロッテの側にやって来ると、二人はデルデロッテの横に座る、エリューンを見て頬を染めた。
彼女らは二人の美少女ほど、目立つ美しさでは無かったけれど。
それぞれが愛嬌があって、可愛らしかった。
「デルデロッテ様。
お見かけしないお方ね?」
「ご紹介、頂けないの?」
二人の少女に言われ、デルデロッテは額に手を当て、いかにも打撃を受けたように、沈痛な面持ちで呟く。
「ちゃんとお名前を覚えているのに。
お二人揃って、私を振るんですか?」
エリューンはぎょっ!として、わざとらしく落ち込むデルデロッテを見た。
けれど二人の少女は微笑むと
「だってデルデロッテ様は、お姉様ぐらい年上の女性じゃ無いと、お相手なさらないくせに」
「この方、明らかにデルデロッテ様より、お若いですわよね?」
テリュスは一人の少女が横にやって来て
「どうしてお髭を、生やしてるの?」
と尋ねて来、突然なんでそんな事言われるのか理解出来ず、首を捻った。
貴公子らは美少女らの態度に白けきり、レジィリアンスを取り巻くと、囁く。
「エルデリオン様とは、どのようなご関係?」
「よろしければ今夜、舞踏会においでになって、私のダンスのお相手になって頂けませんか?」
「彼では役不足だから、私が。
蝶のように、貴方を舞わせて差し上げます」
と口説き始めるものだから、エルデリオンはつい、そっ…と美少女らを手でやんわり押し退け、進み出ると
「このお方は華やかな事に、慣れていらっしゃらないので」
と貴公子らとレジィリアンスの間に割って入り、レジィリアンスの肩を、そっと抱いた。
「御親類ですか?」
一人の貴公子に尋ねられたが、エルデリオンは首を横に振る。
キャスリンは男装ながらも、豪奢な金髪の、素晴らしい美少女を庇うエルデリオンを見、眉をひそめる。
「…ところでエルデリオン様。
隣国シュテフザインから、花嫁を連れて帰ったと。
宮廷中の噂ですけど…。
何でも、王妃様の特別客人待遇で、きっとお見かけしたら私達、礼を尽くして。
とても気を使わなくてはなりませんわ」
貴公子らが、思わずレジィリアンスを見る。
けれどその時、アナスタシアが声高に叫んだ。
「でも、少年だとお聞きしましたわ!
ずっと女性しか相手なさらないエルデリオン様の、お心を捉えるのですから。
どれ程美しく、凜々しい少年剣士かしらと…。
母や叔母達が、いつも噂しておりましたけど…」
それを聞いた途端、レジィリアンスは顔を下げる。
だって貴公子らは、揃ってほっとしたような表情で
「エルデリオン様にはもう、お心に決めた少年が、いらっしゃるんですね?」
「お会いするのが、楽しみだ!」
と口々に呟いたから。
レジィリアンスはエルデリオンが触れる肩を避け、その場から下がろうとした。
けれどエルデリオンは、肩に置いた手に力を込め、引き戻して告げる。
「シュテフザインの王子、レジィリアンス殿。
王妃特別客人待遇のお方ですから、お見知りおきを。
そしてどうか、礼を尽くして頂きたい」
エルデリオンが言い切った後、場は一気に静まり返って、一斉に固まった。
デルデロッテとじゃれるように話ながら、エリューンに見とれてた少女二人達までも。
皆、彫像のようにピタリと動きを止め、誰も口を利かない。
ただ一人、テリュスの横に立つ少女だけが。
「お髭は、剃らないんですの?」
と呟き、テリュスの顔を、下げさせた。
デルデロッテは、きっぱり突きつけるように言い切って、レジィリアンスの肩を抱くエルデリオン。
横で、顔を下げきるレジィリアンス。
目を見開いて、驚きに固まる貴公子らと二人の美少女。
を見回し、穏やかな口調で告げた。
「驚かれるとは思いますが。
レジィリアンス殿は、少年です」
皆一斉に、にこやかにそう告げる、デルデロッテに振り向いた。
アナスタシアが、心からがっかりして囁く。
「少年で…いらっしゃるの?
私てっきり…美少女か…と…」
キャスリンは、目をまん丸にして、尋ねた。
「ホントにホントに、ホントに。
少年でいらっしゃるの?
この王宮で、エルデリオン様の花嫁になりたい少女は、山程いるから。
少年を花嫁にすると公言し、皆の期待を無くさせる為…。
少年と、偽っていらっしゃるんじゃ、なくって?」
貴公子の一人が、ぼやく。
「エルデリオン様が本当に少年趣味の道に入って、このお方が少女だったら、私達も、とても、嬉しいのですけど」
貴公子らに揃って切なげに見つめられ、レジィリアンスは気の毒そうに、囁いた。
「…あの…少女ではありません。
ごめんなさい」
貴公子らは、心からがっかりしたため息を、揃って吐き出し。
美少女二人は、がっくり肩を下げる。
「あんまりですわ…」
アナスタシアは泣き言を呟き、キャスリンも、同意して頷く。
「…美少女ですら…私達、敵わないかもと心配になるほど、お綺麗で可愛らしいのに。
少年なんて…。
…まるっきり、勝ち目が無いじゃありませんか」
レジィリアンスは場の空気を、思いっきり重くする横のエルデリオンを見上げた。
けれどエルデリオンはレジィリアンスを見つめ
「…でもあの…。
少女と間違われるのは、お嫌いでしょう?」
と優しく囁く。
レジィリアンスはエルデリオンのその気遣いに、思わず嬉しくなって、頬が染まった。
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