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大国オーデ・フォール
王城の東門
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ラステルの指示で、皆が再び騎乗する。
道へ戻ると、ゆるやかな坂が続き、林の中を蛇行して進む。
エルデリオンはチラ…と木々の間に騎乗する姿を見せる、レジィリアンスに振り向く。
とても軽やかな乗馬で、愛らしい顔を包み込むような金の長い髪は、馬が跳ねる度に散り、青い宝石のような瞳がきらりと光る。
手綱を繰ってくねる道を曲がる姿は、まるで妖精のよう。
けれど木々の間にレジィリアンスと併走する、エリューンの姿が現れると、途端見ている事に気づき、ジロリ!と鋭い琥珀の瞳を向け、きつい視線を送る。
エルデリオンはすっかりエリューンにマークされ、暫くは背後に振り向かず、前だけを見て馬を駆る羽目になった。
…やがてまばらな木々の向こうに、巨大な白石で作られた、高い城壁が見えて来る。
ラステルが振り向き、シュテフザイン一行に叫ぶ。
「…正面門ではなく、裏門に当たる東門になります!」
やっと坂を上がりきった、平坦な草地を進むと、城壁の間に鉄柵の門が見えて来る。
裏と言いつつも全然見窄らしくなく、金で塗られた鉄格子の、王紋で飾られた左右に開く美しい門で、レジィリアンスは目を見開いてその豪華さに驚いた。
門を開けた門番と数騎の騎兵が見送る中、先頭をラステルが。
エルデリオンとデルデロッテがその後を。
ロットバルトがエウロペと並び、レジィリアンスはテリュスとエリューンに囲まれて、草の刈り込まれた道を進んだ。
やがて白石の建物が見えて来ると、道を空けて左右に兵士がずらりと並び、一行を出迎えた。
エルデリオンは軽く彼らに会釈する。
両側に立つ兵士の間を騎乗したまま進むと、建物が目前に見えてきた。
豪奢な彫刻で飾られた、白く大きな扉の前から、一人の貴族が幅広の外階段を降り、歩み寄って来る。
エルデリオンは馬から降りると、兵士の一人がその手綱を引き受けた。
手綱を手渡す、手慣れた姿。
レジィリアンスも馬から降りながら、その様子を伺い、思った。
エルデリオンがとても高貴で、この広大な王国の王子で。
多くの召使いに傅かれる、特別な存在なのだと。
茶のビロウドに銀の刺繍を刺した、決して派手ではないが高価そうな衣装を着け、一目で身分の高い者と解る、ピンと左右に跳ね上がった鼻髭を生やす貴族の男は、エルデリオンに小声で告げる。
「お疲れでしょうが、王がお待ちです」
そしておずおずと馬から降りるレジィリアンスと、その従者達にすまして優雅に、会釈する。
「皆様はこちらへ。お茶と軽い食事を用意しております。
どうか、おくつろぎ下さい」
素晴らしく豪華で大きな王城を目前に、萎縮しきっていたレジィリアンスはその丁寧な対応に、心から安堵した。
やがて数人の、厳つい顔をし、高価な衣装を着けた年上の貴族らが、扉の中からエルデリオンを王城に迎え入れる。
その後ろを、デルデロッテ、ロットバルトがついて行く。
デルデロッテは一際背は高いものの、とても若く、若輩者に見え、ロットバルトはいかつい顔の貴族らに無言で頷きながら、威圧に威圧で対抗していた。
レジィリアンスは横の貴族に促され、エウロペと共に白石で出来た横に幅広い階段を上がる。
エウロペも、テリュスやエリューン同様、田舎くさい簡素な衣服を着けていた。
若草色のシャツの上に茶のベストをベルトで巻き、飾りの無い若草色のズボンに茶のブーツ。
けれど少しも萎縮した様子は無く、その態度は堂としていて、相手の貴族に目を見張らせた。
レジィリアンスは並んで歩く、大国の威厳ある貴族が。
少しも動じないエウロペの、肩までの明るい栗毛を靡かせ、広い額の下の、真っ直ぐ前に注がれ強い輝きを放つ、明るい緑色の瞳。
そして鷹のような自然の迫力を滲ませた、颯爽と歩く姿を目にし、滅多にお目にかかれない人物を目にしたように、こっそり眺めては、感心しきりに首を縦に振るのを見た。
エウロペは横に並んで歩くレジィリアンスが、にこにこして自分を見つめてるのに気づく。
「…そちらのようです」
召使いが扉を開けて待つ、白く美しい彫刻の掘られた扉が開いているその先に、レジィリアンスを促す。
貴族の男も召使いの横に立ち、シュテフザイン一行が中に入るのを見守る。
その際ですら、通り過ぎるエウロペに、丁寧に会釈した。
レジィリアンスがそっと背後に振り向くと、テリュスは
『流石、我らがエウロペ殿!』
とご満悦で、エリューンはそんなテリュスにこっそり、くすくす笑っていた。
レジィリアンスはエウロペの横で、萎縮した気分がすっかりほぐれ、掃き出し窓から色とりどりの花咲き乱れる美しい庭園を覗い見ながら、白い壁に金の飾り彫刻の彫られた、豪華な赤い絨毯の敷かれてるその明るい部屋へと足を踏み入れても、寛ぐ事が出来た。
道へ戻ると、ゆるやかな坂が続き、林の中を蛇行して進む。
エルデリオンはチラ…と木々の間に騎乗する姿を見せる、レジィリアンスに振り向く。
とても軽やかな乗馬で、愛らしい顔を包み込むような金の長い髪は、馬が跳ねる度に散り、青い宝石のような瞳がきらりと光る。
手綱を繰ってくねる道を曲がる姿は、まるで妖精のよう。
けれど木々の間にレジィリアンスと併走する、エリューンの姿が現れると、途端見ている事に気づき、ジロリ!と鋭い琥珀の瞳を向け、きつい視線を送る。
エルデリオンはすっかりエリューンにマークされ、暫くは背後に振り向かず、前だけを見て馬を駆る羽目になった。
…やがてまばらな木々の向こうに、巨大な白石で作られた、高い城壁が見えて来る。
ラステルが振り向き、シュテフザイン一行に叫ぶ。
「…正面門ではなく、裏門に当たる東門になります!」
やっと坂を上がりきった、平坦な草地を進むと、城壁の間に鉄柵の門が見えて来る。
裏と言いつつも全然見窄らしくなく、金で塗られた鉄格子の、王紋で飾られた左右に開く美しい門で、レジィリアンスは目を見開いてその豪華さに驚いた。
門を開けた門番と数騎の騎兵が見送る中、先頭をラステルが。
エルデリオンとデルデロッテがその後を。
ロットバルトがエウロペと並び、レジィリアンスはテリュスとエリューンに囲まれて、草の刈り込まれた道を進んだ。
やがて白石の建物が見えて来ると、道を空けて左右に兵士がずらりと並び、一行を出迎えた。
エルデリオンは軽く彼らに会釈する。
両側に立つ兵士の間を騎乗したまま進むと、建物が目前に見えてきた。
豪奢な彫刻で飾られた、白く大きな扉の前から、一人の貴族が幅広の外階段を降り、歩み寄って来る。
エルデリオンは馬から降りると、兵士の一人がその手綱を引き受けた。
手綱を手渡す、手慣れた姿。
レジィリアンスも馬から降りながら、その様子を伺い、思った。
エルデリオンがとても高貴で、この広大な王国の王子で。
多くの召使いに傅かれる、特別な存在なのだと。
茶のビロウドに銀の刺繍を刺した、決して派手ではないが高価そうな衣装を着け、一目で身分の高い者と解る、ピンと左右に跳ね上がった鼻髭を生やす貴族の男は、エルデリオンに小声で告げる。
「お疲れでしょうが、王がお待ちです」
そしておずおずと馬から降りるレジィリアンスと、その従者達にすまして優雅に、会釈する。
「皆様はこちらへ。お茶と軽い食事を用意しております。
どうか、おくつろぎ下さい」
素晴らしく豪華で大きな王城を目前に、萎縮しきっていたレジィリアンスはその丁寧な対応に、心から安堵した。
やがて数人の、厳つい顔をし、高価な衣装を着けた年上の貴族らが、扉の中からエルデリオンを王城に迎え入れる。
その後ろを、デルデロッテ、ロットバルトがついて行く。
デルデロッテは一際背は高いものの、とても若く、若輩者に見え、ロットバルトはいかつい顔の貴族らに無言で頷きながら、威圧に威圧で対抗していた。
レジィリアンスは横の貴族に促され、エウロペと共に白石で出来た横に幅広い階段を上がる。
エウロペも、テリュスやエリューン同様、田舎くさい簡素な衣服を着けていた。
若草色のシャツの上に茶のベストをベルトで巻き、飾りの無い若草色のズボンに茶のブーツ。
けれど少しも萎縮した様子は無く、その態度は堂としていて、相手の貴族に目を見張らせた。
レジィリアンスは並んで歩く、大国の威厳ある貴族が。
少しも動じないエウロペの、肩までの明るい栗毛を靡かせ、広い額の下の、真っ直ぐ前に注がれ強い輝きを放つ、明るい緑色の瞳。
そして鷹のような自然の迫力を滲ませた、颯爽と歩く姿を目にし、滅多にお目にかかれない人物を目にしたように、こっそり眺めては、感心しきりに首を縦に振るのを見た。
エウロペは横に並んで歩くレジィリアンスが、にこにこして自分を見つめてるのに気づく。
「…そちらのようです」
召使いが扉を開けて待つ、白く美しい彫刻の掘られた扉が開いているその先に、レジィリアンスを促す。
貴族の男も召使いの横に立ち、シュテフザイン一行が中に入るのを見守る。
その際ですら、通り過ぎるエウロペに、丁寧に会釈した。
レジィリアンスがそっと背後に振り向くと、テリュスは
『流石、我らがエウロペ殿!』
とご満悦で、エリューンはそんなテリュスにこっそり、くすくす笑っていた。
レジィリアンスはエウロペの横で、萎縮した気分がすっかりほぐれ、掃き出し窓から色とりどりの花咲き乱れる美しい庭園を覗い見ながら、白い壁に金の飾り彫刻の彫られた、豪華な赤い絨毯の敷かれてるその明るい部屋へと足を踏み入れても、寛ぐ事が出来た。
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