森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの過去の夢

庭園の散歩

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 エルデリオンは席を立つと、レジィリアンスの横へと進み出る。
そして椅子に座るレジィリアンスにそっと手を差し伸べ、紳士的に告げた。
「…どうか…お詫びを言わせて下さい。
出来れば…ご一緒に、庭園を少し、歩きませんか?
嫌になったら、いつでもエウロペ殿を呼んでいい。
貴方がご不快だと、感じられたら。
もしそうなっても…エウロペ殿を貴方の側から、決して離したりは致しません。
お約束します」

レジィリアンスはその丁寧な言葉を聞き、躊躇い、横のエウロペに振り向く。
エウロペは小声で
「嫌なら、お断りを」
と囁く。

レジィリアンスは俯き…けれどそっ…と、エルデリオンの差し出す手に、手を滑り込ませて囁き返した。
「お話だけなら…」

従者らはエルデリオンが心から幸福そうに、頬を染めヘイゼルの瞳を輝かせるのを見た。

エルデリオンはとても優雅にレジィリアンスを白い柵のテラスから、庭園へと降りて行く階段へと導く。
レジィリアンスは背の高い彼を見上げ、そうしていると文句の無い貴公子に見えて、少しほっとした。
背後に振り向くと、もうエウロペはテリュスとエリューンに
「君たちは、ゆっくりしてていい」
と告げ、席を立ちかける。

ラステルとロットバルトに視線を投げられ、デルデロッテもナプキンで口を優雅に拭うと、席を立った。

二人の従者はほぼ並んで、先に白石の階段を降りて行く、レジィリアンスとエルデリオンの背を追う。

エウロペは横を見ないまま、デルデロッテに早口で囁きかける。
「君がエルデリオンの手ほどきを指南したのか?」
デルデロッテはほんの少し、背の低い横に並ぶエウロペに振り向き、階段を軽やかに降りながら、穏やかな口調で異論を唱えた。
「…私がしてたら、こんな無様な事態は決して引き起こさない。
残念ながら…エルデリオンが年頃になった頃、私は従者がしらに睨まれててね。
性教育には絶対口出すなと。
固いお達しを言い渡された」

エウロペは思わず…オーデ・フォール中央王国宮廷一の色男に、振り向いてしまった。
「…君ほど適任はいないのに。
その従者頭は石頭だな?」
デルデロッテは軽やかに笑う。
「…違いない。
だからあんな…相手の事情も考えず突っ走る、お馬鹿になってしまって…レジィリアンス殿にご迷惑をかけてしまった。
が、その石頭はつい数週間前に追い出したから」
「どうやって?」
「ラステルがはかって、上級職を宛がって」
「…上手い手だ」
デルデロッテは頷いた。

レジィリアンスはエルデリオンの軽やかで紳士的なエスコートに、感心した。
もし女性なら…彼のような素晴らしい貴公子にこんな風に…軽やかに手を引かれ、微笑を向けられながら薔薇の小道を歩いたりしたら…。
きっと彼に見惚れ…抱き寄せられたりしたら、きっととても嬉しいんだろうな。
と、思った。

けれどどうしても…挿入された蕾にまだ…彼を感じ、頬が染まって恥じらってしまう。
途端、エルデリオンは心配げに屈み、レジィリアンスを覗いながら囁く。
「…すみません…。
そんなにお嫌だったなんて…気づかずに。
あの…恥ずかしかったりすると…嫌だと口にする事があると…聞いていましたので、私はてっきり、初めてだからとてもお恥ずかしいのだと…。
どこも…痛いところはありませんか?
さ程乱暴にした記憶はございませんが、もし傷つけてしまったのなら…」

レジィリアンスは頬を染め、俯いて掠れた声で囁く。
「…あの…エウロペも昨日、それを心配していましたけれど…。
傷付いてはおりません」

エルデリオンはほっとした様子で、囁く。
「良かった。
あの…本当にすみませんでした。
私はその…浮かれてしまって」

レジィリアンスはそう謝りながら、頬を染めて顔を下げる、エルデリオンの横顔を見た。
鼻の形もすんなりしていて、とても美しい貴公子に見えた。
真ん中分けの真っ直ぐな栗毛は、肩の辺りで濃い栗毛に色を変え、カールしてる。
綺麗な鼻筋で、口元も優しげ。

けれどレジィリアンスは、彼の唇が見られなかった。
あの唇で…。
思い返すだけで、唇や乳首や…股間の男の印、更に蕾にまで…舐め回された事を思い返すと。
ぼっ!と火が付いたように頬が染まり、のぼせそう…。

エルデリオンはやっぱり心配そうに、俯く愛らしいレジィリアンスを見つめる。
「…本当に…すみません。
オーデ・フォール中央王国で手ほどきを受けた少年達は…殆どが経験者で。
その…昨日馬車でしたような事をすると、とても…喜んだので…」

レジィリアンスは顔を思い切り下げ、蚊の泣くような声で囁く。
「…あの…喜ばれたの…です…か?」
エルデリオンはため息交じりに告げる。
「ええ。
その…貴方もたいそう感じていらっしゃったので…てっきり、喜んでいらっしゃったのかと…。
けれどお恥ずかしいので、拒絶の言葉を言われてると…勘違いし…て…」

そこで言葉が途切れたので、レジィリアンスは顔を上げる。
大国の王子、文句の無い貴公子は、とても気落ちした表情で、囁く。
「…それ程…怯えて…嫌がられてた事に、まるっきり気づかないなんて…」

レジィリアンスは居心地悪げに、急いで呟く。
「あの…感じる…って、良く…分からなかったんですけど…。
エウロペが、初めての私が…おかしくなったのは、貴方がお上手だからって…」

エルデリオンは驚いて、レジィリアンスに振り向いた。
レジィリアンスは恥ずかしげに顔を真っ赤にし、囁く。
「あの…本当に自分本位な者は…暴君は…。
もっと、乱暴で…ただ痛いだけらしいです…。
僕…貴方が初めてだから、良く…分からないんですけれど…」

エルデリオンはそうフォローされ、嬉しそうに微笑んだ。
「そう…ですか。
これからはあんないきなりな事は、決して致しませんから…。
どうか、私をお嫌いにならないで下さい」

そう告げられて、レジィリアンスは戸惑いながら、エルデリオンを見つめる。
エルデリオンは自分が隣にいるだけで、とても幸福そうな表情を向けるので…。
自分が少女になった気分で、やつぱり少し、居心地悪かったけれど…。

素晴らしい貴公子が、気落ちした様子から微笑を浮かべるのを見て、ほっとした。

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