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エルデリオンの過去の夢
ロットバルトの謝罪とラステルの昼食の提案
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散歩から大邸宅のような宿屋に戻り、豪華な階段を登る。
部屋の前の廊下にはラステルが立っていて、エウロペを見つめ、一つ、頷いた。
エウロペは直ぐ察し、ラステルに寄って行く。
レジィリアンスは振り向いたけれど、エリューンとテリュスに促され、部屋へと入って行った。
ラステルはそれを見ながら、エウロペに尋ねる。
「…どんな、ご様子です?」
「…かなり意識してる。
まだ自分の身に起こった事が、理解出来なくて…」
ラステルは頷く。
「こちらもとりあえず、エルデリオンの睡眠不足の解消に努め、彼を正常な判断が出来るようにはしています。
昼食をここの二階の…テラスでご一緒にいかがでしょう?
天気も良く、気持ちの良い美しい場所ですから…」
「聞いてみます。
つまりエルデリオンと会わせる?」
ラステルは頷いて、囁く。
「エルデリオンも少しは落ち着いてるはず。
まずくなったら、私達が介入します」
その時、オーデ・フォール一行の部屋から、ロットバルトが姿を現した。
「…もし宜しければ。
レジィリアンス殿にお話ししたい」
エウロペはチラと、そう告げたロットバルトへと、視線を走らせる。
一瞬、背筋が寒くなるほど鋭い一瞥を受け、ロットバルトは顔を下げる。
が、エウロペは自分達の部屋の扉に寄り、ドアノブを握って、開けながら囁く。
「…どうぞ。
ラステル殿。昼食の件、ご自身で提案されては?」
部屋へと歩き始めるロットバルトの背後から、ラステルも頷きながら部屋の中へ、歩を運んだ。
レジィリアンスはロットバルトの姿を見、あまりに威厳があって立派な騎士で、気後れした。
けれどロットバルトは自分を目にし、萎縮するレジィリアンスを見て、すまなそうに顔を下げ…。
その後、思い直してレジィリアンスの前に立つ。
「…あ…あの。
おかけになりますか?」
おどおどして小鳥のようなレジィリアンスを見、ロットバルトは出来るだけ…威圧感を無くそうと、縮こまりながら囁く。
「いえ。ここで。
昨日の事をお詫びしたくて」
レジィリアンスは、びっくりした。
エウロペよりは少しだけ背は低いけれど、黒と焦げ茶の衣服は、控えめながら刺繍が入り、仕立てが良さそうでとても高価そう。
鼻髭を生やし、焦げ茶の髪で茶色の瞳で…たいそう立派な騎士に見えて、レジィリアンスは口ごもる。
「でも…あの…」
「聞いて下さい。
貴方には、大変申し訳なく思ってる。
酷い思いをされ、その…体験をされ…。
時間は戻せませんが、私もこれからは、貴方が辛い思いをしないよう、出来る得る限りの事を致します」
レジィリアンスはあんまりびっくりして…自分より背の高い、その人物を見つめた。
いかつい雰囲気に思えたけれど、茶色の瞳はとても温かく感じ、思わず頷く。
「…ありがとうございます」
ちょっと戸惑ったけれど、そう告げると。
威厳ある騎士は茶色の優しげな瞳を輝かせ、微笑んだ。
ラステルが背後から進み出ると、提案を始める。
ロットバルトはラステルの背後に下がり、まだ扉の前に立つエウロペを、顔を上げて見た。
寄ると、小声で囁く。
「…こんな程度で貴方の怒りは、収まらんだろうが…」
「私の事を、私よりご存知だ」
ロットバルトは顔を下げる。
エウロペの明るい緑の瞳はまだ、きつかった。
が、ため息と共にロットバルトに囁く。
「…エルデリオンに、謝罪する気はあるのか?」
「…謝罪までは…。
ただ、気落ちしてる。
レジィリアンスに受け入れられてないと、やっと思い知って」
エウロペは下を向いたまま、頷いた。
ラステルの軽やかな声が響く。
「不快な事の無いよう、務めます。
嫌なら退出され、この部屋に食事をお運び致しますので」
レジィリアンスは戸惑った。
が、ラステルは微笑む。
「ここの庭園は、噴水も咲き乱れる花もが、大変素晴らしいと評判です。
テラスから一望出来ますので、ぜひお楽しみ頂きたい」
ラステルの声は相変わらず、軽やかで爽やかで押しつけがましさは微塵も無い。
更に押し出し満点のロットバルトと違い、細身で優しげな風貌。
空色の瞳と明るい栗毛は、親しみやすさ全開で、レジィリアンスは思わず頷いてしまった。
ラステルはにっこり微笑むと
「ではこの後、二階テラスにおいで下さい」
そう言うと振り向き、エウロペに
「当然、場所はご存知ですよね?
気軽な服装で構いませんので」
と告げ、ロットバルトより先に、部屋を出て行く。
ロットバルトが振り向き、エウロペを見つめると、エウロペは目を見開いていた。
それで、告げる。
「彼はかなり強引な事をしていても、殆どの者が強引な事をされてると、気づかない」
エウロペはラステルの消えて行く背を見つめつつ、頷いた。
部屋の前の廊下にはラステルが立っていて、エウロペを見つめ、一つ、頷いた。
エウロペは直ぐ察し、ラステルに寄って行く。
レジィリアンスは振り向いたけれど、エリューンとテリュスに促され、部屋へと入って行った。
ラステルはそれを見ながら、エウロペに尋ねる。
「…どんな、ご様子です?」
「…かなり意識してる。
まだ自分の身に起こった事が、理解出来なくて…」
ラステルは頷く。
「こちらもとりあえず、エルデリオンの睡眠不足の解消に努め、彼を正常な判断が出来るようにはしています。
昼食をここの二階の…テラスでご一緒にいかがでしょう?
天気も良く、気持ちの良い美しい場所ですから…」
「聞いてみます。
つまりエルデリオンと会わせる?」
ラステルは頷いて、囁く。
「エルデリオンも少しは落ち着いてるはず。
まずくなったら、私達が介入します」
その時、オーデ・フォール一行の部屋から、ロットバルトが姿を現した。
「…もし宜しければ。
レジィリアンス殿にお話ししたい」
エウロペはチラと、そう告げたロットバルトへと、視線を走らせる。
一瞬、背筋が寒くなるほど鋭い一瞥を受け、ロットバルトは顔を下げる。
が、エウロペは自分達の部屋の扉に寄り、ドアノブを握って、開けながら囁く。
「…どうぞ。
ラステル殿。昼食の件、ご自身で提案されては?」
部屋へと歩き始めるロットバルトの背後から、ラステルも頷きながら部屋の中へ、歩を運んだ。
レジィリアンスはロットバルトの姿を見、あまりに威厳があって立派な騎士で、気後れした。
けれどロットバルトは自分を目にし、萎縮するレジィリアンスを見て、すまなそうに顔を下げ…。
その後、思い直してレジィリアンスの前に立つ。
「…あ…あの。
おかけになりますか?」
おどおどして小鳥のようなレジィリアンスを見、ロットバルトは出来るだけ…威圧感を無くそうと、縮こまりながら囁く。
「いえ。ここで。
昨日の事をお詫びしたくて」
レジィリアンスは、びっくりした。
エウロペよりは少しだけ背は低いけれど、黒と焦げ茶の衣服は、控えめながら刺繍が入り、仕立てが良さそうでとても高価そう。
鼻髭を生やし、焦げ茶の髪で茶色の瞳で…たいそう立派な騎士に見えて、レジィリアンスは口ごもる。
「でも…あの…」
「聞いて下さい。
貴方には、大変申し訳なく思ってる。
酷い思いをされ、その…体験をされ…。
時間は戻せませんが、私もこれからは、貴方が辛い思いをしないよう、出来る得る限りの事を致します」
レジィリアンスはあんまりびっくりして…自分より背の高い、その人物を見つめた。
いかつい雰囲気に思えたけれど、茶色の瞳はとても温かく感じ、思わず頷く。
「…ありがとうございます」
ちょっと戸惑ったけれど、そう告げると。
威厳ある騎士は茶色の優しげな瞳を輝かせ、微笑んだ。
ラステルが背後から進み出ると、提案を始める。
ロットバルトはラステルの背後に下がり、まだ扉の前に立つエウロペを、顔を上げて見た。
寄ると、小声で囁く。
「…こんな程度で貴方の怒りは、収まらんだろうが…」
「私の事を、私よりご存知だ」
ロットバルトは顔を下げる。
エウロペの明るい緑の瞳はまだ、きつかった。
が、ため息と共にロットバルトに囁く。
「…エルデリオンに、謝罪する気はあるのか?」
「…謝罪までは…。
ただ、気落ちしてる。
レジィリアンスに受け入れられてないと、やっと思い知って」
エウロペは下を向いたまま、頷いた。
ラステルの軽やかな声が響く。
「不快な事の無いよう、務めます。
嫌なら退出され、この部屋に食事をお運び致しますので」
レジィリアンスは戸惑った。
が、ラステルは微笑む。
「ここの庭園は、噴水も咲き乱れる花もが、大変素晴らしいと評判です。
テラスから一望出来ますので、ぜひお楽しみ頂きたい」
ラステルの声は相変わらず、軽やかで爽やかで押しつけがましさは微塵も無い。
更に押し出し満点のロットバルトと違い、細身で優しげな風貌。
空色の瞳と明るい栗毛は、親しみやすさ全開で、レジィリアンスは思わず頷いてしまった。
ラステルはにっこり微笑むと
「ではこの後、二階テラスにおいで下さい」
そう言うと振り向き、エウロペに
「当然、場所はご存知ですよね?
気軽な服装で構いませんので」
と告げ、ロットバルトより先に、部屋を出て行く。
ロットバルトが振り向き、エウロペを見つめると、エウロペは目を見開いていた。
それで、告げる。
「彼はかなり強引な事をしていても、殆どの者が強引な事をされてると、気づかない」
エウロペはラステルの消えて行く背を見つめつつ、頷いた。
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