森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの過去の夢

朝の散歩

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 高い木々の隙間から、朝陽の差し込む森の小道。
レジィリアンスはいっぱい空気を吸い込み、気持ちよさげに顔を上げる。
小鳥が木々の間を飛び回ってる…。

がさ…。
直ぐ後ろにエウロペの姿を見つけると、嬉しくって微笑みかける。

けれど…挿入された蕾への異物感を感じると、突然。
エウロペですら…男性だと意識し、つい顔が赤らんで、下げてしまう…。

明るい肩までの栗色の短髪。
エルデリオンよりもっと…広い肩幅。
広い胸…。
逞しくって、男らしい体格。
引き締まった表情…。
さりげないけど、迫力あるその出で立ち…。

エウロペは気づき、ちょっと首を傾げ、けれど明るい緑の瞳を向けてレジィリアンスに囁いた。
「…あまり奥へは行けません」
レジィリアンスは顔を上げる。
「…危険?」
エウロペはちょっと考えるように顔を上げると、周囲を見回す。
オーデ・フォール中央王国の兵士が、あちらにテントを張ってウロついてますから…。
大丈夫だとは思いますが。
この森には、よく盗賊が出るので」

レジィリアンスは頷く。
そして、顔を下げた。
「…本格的に、剣の稽古を始めたばかりだったのに…。
どうなるのかな?」
エウロペは微笑む。
オーデ・フォール中央王国に着いたら、頼んでごらんなさい。
エルデリオンはたいそうな使い手だそうだから、理解を示してくれるはず」

けれど途端、レジィリアンスは頬を染めて俯く。
エウロペはため息を吐いた。
「…ええ…。
確かにエルデリオンが剣を教えてくれる訳じゃない。
彼の興味は別にある」

レジィリアンスは不安そうに、エウロペを見上げた。
「…また…あれをされる…?」
エウロペは言葉を無くし、囁く。
「母君と懇意の…エルデリオン殿の母王妃にお会いになってご覧なさい。
彼女が、エルデリオンを諫めてくれるかもしれません」

レジィリアンスはもはや、初々しい色香をまとっていた。
エウロペは彼が不憫で、抱き寄せたかった。
が、今ですら…彼は自分が男だと。
意識してしまう…。

けれどレジィリアンスは気づいたように、エウロペに腕を回す。
その華奢な少年の腕が肩に触れると。
エウロペは彼を腕の中に抱きしめて囁く。

レジィリアンスはエウロペの、安心出来る胸に抱き寄せられ、小さな頃から幾度も不安に襲われる度、胸に抱いて包んでくれた事を思い返す。

広い…大きな翼持つ、鷹に護られているような安心感…。

けれどエルデリオンに挿入され、さんざ刺激された蕾の奥が、じれたような熱を体にもたらす。
あれが何だったのか。
どうすればいいのか。

レジィリアンスは今だ戸惑い、思い返しただけで混乱に叩き込まれて、自分を見失ってしまい、必死に脳裏から閉め出した。

エウロペはレジィリアンスの華奢な体を抱きしめながら、痛烈に思う。
せめて女性と、一度でも経験していたなら…!
これ程不安には、ならなかったに違いない。
けれど、もし経験していたなら…!
自分が、女のように扱われたと感じる屈辱は、何も知らぬ頃の比では無い…!

改めて、エウロペはエルデリオンへと湧き上がる怒りを感じた。
段階も踏まず、いきなり…奪うなんて!

が、言っても仕方無い。
過ぎてしまった事。
昨夜は幾度も、思い返し憤怒で眠れなかった。
レジィリアンスの声が漏れるどこかで。
自分は確信していた。
挿入されていると…!

幾度も心が急く。
止めなければと、激しく。

レジィリアンスは気づいたように、顔を上げる。

そしてエウロペを、労るように見つめ、囁く。
「…僕、あの方が何をしようとしてるか…気づかなかった。
もし知っていたら…もっと必死に…。
もっと一生懸命、お願いしたんだけど」

“それでもエルデリオンは、聞かなかったろう…”

エウロペは確信出来た。
が、見つめる不安そうなレジィリアンスに、微笑み返す。
「…ええ。
何もお教えしなかった私が…いけなかったんです」

レジィリアンスはぎゅっ!と抱きつく。
「…エウロペは何も悪くない…」

エウロペはそう自分を庇う、まだ小さかった頃に戻ったようなレジィリアンスに、胸を痛めた。
そして新たに、この細い腕が。
華奢な体が。
一人前の、立派な青年となるその時まで。
側から離れず見守ると固く誓った。

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