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陵辱
熱い口づけ
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鬱蒼とした背の高い木々に囲まれた山道を、馬車は走る。
エルデリオンはついに話しかけた。
「暫くは森の中ですね」
だがレジィリアンスは振り向いたものの、その表情は強ばっていた。
「…お心細いのですか?」
エルデリオンはほっそりとした肩を、抱き寄せてしまいたかった。
そして彼は…心のまま行動に出る。
肌の温もりを感じるほど近くに居るレジィリアンスは、この二ヶ月エルデリオンが頭の中で追い求めてきた、夢でも幻でも無い、本物。
我慢なんて出来なかった。
腕を回し抱き寄せる。
ほっそりと華奢な体つき。
その感触に、今まで抑えつけられていた熱い想いが、一気に湧き上がる。
が、レジィリアンスはそれを察したのか。
一瞬、びくっ!と震った。
うつむくレジィリアンスは少し頬を染め、恥じらっているように見える。
その過敏な反応に、エルデリオンは出会った時、思わず口づけした事を思い出す。
「…あの…」
レジィリアンスの、か細い声。
変声期もまだの、少女のような柔らかな声に、エルデリオンは耳を寄せ、聞き入る。
間近に迫るエルデリオンの端正な顔立ちは、伏し目がちな視界に入り、レジィリアンスは恥ずかしさで頬を染め、顔を下げて肩を震わせた。
だがもうすっかり夢見心地だったエルデリオンは、腕に抱く、レジィリアンスの肩のぬくもりと感触に感激していたし、白い頬に頬を寄せ、細い体をもっと抱きしめ…。
小さな唇に、再び口づけたいと切望した。
けれどレジィリアンスはもっと、体を強ばらせ心の中で声を上げる。
“ロクに話す事も、良く知る相手でもないお方と、口づけだなんて…!”
レジィリアンスは躊躇ったが、掠れた声で尋ねた。
「あの…。
私が貴方の花嫁になるという事は…。
この間私になさったような事を…されるのでしょうか?」
意味は解ってた。
が、エルデリオンにとってそれは、ひどく遠くから響いている声に聞こえた。
聞こえたのはあれ程恋い焦がれた人をやっと抱きしめられ、感激に激しく脈打つ、自分の大きな心臓の鼓動だけ。
視線は間近に見つめる愛しい人の、口元に釘づけられる。
言葉の発せられた、小さく柔らかそうなピンクの唇。
その愛おしさ。
エルデリオンは努めて冷静に自分を押しとどめ、言葉を返す。
「…そのつもりです」
だがそう告げると、まるで事の了承を得たかのように、そっと顔を寄せた。
レジィリアンスは瞬間、恥ずかしくて顔を背けた。
エルデリオンの、眉が秘やかに寄る。
「お願いです。
貴方は私の花嫁になったのですから、どうか拒まないで下さい…!」
レジィリアンスは瞳を見開き、そう告げたその端正な貴公子を見た。
どちらかと言えば優しげに見える、その顔立ちは整って美しく、さらりとした明るい栗色の髪が額にすべり、ヘイゼルの淡い黄緑色の瞳は夢心地のように、うっとりとしていた。
が…!
“口づけは、女性にするものだ。
この人は僕の姿が少女のようだから、それでそうなさりたいんだろうか”
レジィリアンス微かに、首を横に振る。
拒絶、したかった…!
“でも…。
エルデリオンは二領土と父様と交換で、僕を手に入れられたのだから。
そうなさる権利が、あるのかもしれない…”
この先、エルデリオンに求められても拒めないと思い知ると、レジィリアンスの大きな青い瞳はうるんだ。
けれどエルデリオンの目にそれは、同意の合図に映る。
エルデリオンが端正な顔を、息がかかる程近づける。
夢心地でエルデリオンは甘い唇の感触を再び確かめようと、レジィリアンスの小さな唇に、自分の唇を押しつけた。
「……っ!」
エルデリオンの柔らかな唇が触れた時、レジィの唇から、僅かに悲しげな吐息が漏れる。
その唇が熱く触れ、滑り、塞ぐように被さると。
レジィリアンスは手の横に触れる、上着の裾を、きつく握りしめた。
エルデリオンはついに話しかけた。
「暫くは森の中ですね」
だがレジィリアンスは振り向いたものの、その表情は強ばっていた。
「…お心細いのですか?」
エルデリオンはほっそりとした肩を、抱き寄せてしまいたかった。
そして彼は…心のまま行動に出る。
肌の温もりを感じるほど近くに居るレジィリアンスは、この二ヶ月エルデリオンが頭の中で追い求めてきた、夢でも幻でも無い、本物。
我慢なんて出来なかった。
腕を回し抱き寄せる。
ほっそりと華奢な体つき。
その感触に、今まで抑えつけられていた熱い想いが、一気に湧き上がる。
が、レジィリアンスはそれを察したのか。
一瞬、びくっ!と震った。
うつむくレジィリアンスは少し頬を染め、恥じらっているように見える。
その過敏な反応に、エルデリオンは出会った時、思わず口づけした事を思い出す。
「…あの…」
レジィリアンスの、か細い声。
変声期もまだの、少女のような柔らかな声に、エルデリオンは耳を寄せ、聞き入る。
間近に迫るエルデリオンの端正な顔立ちは、伏し目がちな視界に入り、レジィリアンスは恥ずかしさで頬を染め、顔を下げて肩を震わせた。
だがもうすっかり夢見心地だったエルデリオンは、腕に抱く、レジィリアンスの肩のぬくもりと感触に感激していたし、白い頬に頬を寄せ、細い体をもっと抱きしめ…。
小さな唇に、再び口づけたいと切望した。
けれどレジィリアンスはもっと、体を強ばらせ心の中で声を上げる。
“ロクに話す事も、良く知る相手でもないお方と、口づけだなんて…!”
レジィリアンスは躊躇ったが、掠れた声で尋ねた。
「あの…。
私が貴方の花嫁になるという事は…。
この間私になさったような事を…されるのでしょうか?」
意味は解ってた。
が、エルデリオンにとってそれは、ひどく遠くから響いている声に聞こえた。
聞こえたのはあれ程恋い焦がれた人をやっと抱きしめられ、感激に激しく脈打つ、自分の大きな心臓の鼓動だけ。
視線は間近に見つめる愛しい人の、口元に釘づけられる。
言葉の発せられた、小さく柔らかそうなピンクの唇。
その愛おしさ。
エルデリオンは努めて冷静に自分を押しとどめ、言葉を返す。
「…そのつもりです」
だがそう告げると、まるで事の了承を得たかのように、そっと顔を寄せた。
レジィリアンスは瞬間、恥ずかしくて顔を背けた。
エルデリオンの、眉が秘やかに寄る。
「お願いです。
貴方は私の花嫁になったのですから、どうか拒まないで下さい…!」
レジィリアンスは瞳を見開き、そう告げたその端正な貴公子を見た。
どちらかと言えば優しげに見える、その顔立ちは整って美しく、さらりとした明るい栗色の髪が額にすべり、ヘイゼルの淡い黄緑色の瞳は夢心地のように、うっとりとしていた。
が…!
“口づけは、女性にするものだ。
この人は僕の姿が少女のようだから、それでそうなさりたいんだろうか”
レジィリアンス微かに、首を横に振る。
拒絶、したかった…!
“でも…。
エルデリオンは二領土と父様と交換で、僕を手に入れられたのだから。
そうなさる権利が、あるのかもしれない…”
この先、エルデリオンに求められても拒めないと思い知ると、レジィリアンスの大きな青い瞳はうるんだ。
けれどエルデリオンの目にそれは、同意の合図に映る。
エルデリオンが端正な顔を、息がかかる程近づける。
夢心地でエルデリオンは甘い唇の感触を再び確かめようと、レジィリアンスの小さな唇に、自分の唇を押しつけた。
「……っ!」
エルデリオンの柔らかな唇が触れた時、レジィの唇から、僅かに悲しげな吐息が漏れる。
その唇が熱く触れ、滑り、塞ぐように被さると。
レジィリアンスは手の横に触れる、上着の裾を、きつく握りしめた。
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