179 / 283
キリスト教圏では絶対書けないショート。(大昔に見た、ビジョンを元に書きました)
しおりを挟む
「ガブリエル。やはりコンタクト出来るのは、この時代しかないか?」
ミカエルが尋ねた。
彼らはトリエルリ人の持ち込んだ、感応ツールの、テストをしていた。
このツールでは時間、空間を超えてコンタクトが可能だという事だった。
彼らはこのツールをテストする為に幾度も、長老会(ダーデアースン)
に申請を出していた。
ダーデアースンは今、ロプスタンテック人が持ち込んだ別の空間移動ツールを、先進科学チームが取り上げ、先進派がこの計画の実用化を押し進め、蜂の巣をつついた騒ぎで議論を戦わせ、彼らの申請等後回しだった。
が、ウリエルがコネを使いなんとかねじこみ、やっと許可が
降りたばかりだった。
彼らがこのツールを使ってコンタクト出来たのはどうやら
かなり未来の地球人だった。
荒野にたたずむ男で、彼は空間に現れた彼らの姿に驚かず
言葉を交わす事に、成功した。
残念ながら、トリエルリ人達が普段使っているように空間を飛び越え
肉体を送るには、エネルギーが足り無すぎて無理だったが、その時代の人間と話す事には成功した。
荒野の男は、彼らを神聖なものだと思ったらしい。
ガブリエルが言葉にしたように、この時代は既に、彼らが用いている
エネルギーは欠片しか見つからず、このエネルギーを使って栄えたアトランティス人は最早、記憶も伝承にも、残っていないように感じられた。
…つまり、どのくらいの未来かは解らないが、アトランティス人の、知恵と繁栄はすたれ、滅び去っているようだった。
しかも男は随分粗末な衣服を纏い、顔色も体付もひどく貧弱で弱々しかった。
このエネルギーに溢れた中で暮らす彼らは、殆どの病から救われていたし、いつも循環が良く、顔色も良く、老化も、遅かった。
だが男には軽い感応作用があり、彼らのエネルギーを感知しただけでなく、感応し、吸収する能力も、あるようだった。
彼らは尋ねられる言葉に返答したが、正確に彼らの言葉が
伝わっているかは、危ぶまれた。
彼らの姿だって、男にはどう映っているのかも、解らない。
ともかく、テストしなくては。と、彼らの中で一番果敢なミカエルが言った。
男が見て、聞く事の出来るエネルギー波に出来るだけ近づけ、彼らはほんの数日先の自分達へと、映像を送ってみた。
「………随分、ブレてるな」
ミカエルが、うなった。
「生態エネルギーが背の辺りから白く広がっている……。
彼らは我々を、天使、翼ある者と思いこんでいるようだが、これなら無理も無い。白い生態エネルギーの映像のブレが、翼のように見える。
頭の周囲に金の輪も、浮かんでいるしな。
しかも、彼らは我々が話した“万能な者”
を、神と呼んでいる」
ウリエルが聞いた。
「誰か、神に似た発音の言葉を、発したか?」
皆、一様に首を横に、振った。
ガブリエルが言った。
「…感応で感知している。耳では無く、イメージで受け取っているようだ。この時代に感応者は数名いるが、彼らは民に、予言者と呼ばれているようだし、受け止める者によっては解釈も違う…」
ラファエルが、心配げに言った。
「…後世だろう?我々は時代に介入してるんじゃないのか?」
皆が、ミカエルを、見た。
彼はため息を付いた。
「…万能な者とは、ミュースの事だろう?
だが彼は、神じゃない。我々の時代一の、能力者だが」
ラファエルが言った。
「…本当の彼の様子を伝えたら、彼らはがっかりしないか?
ちゃんと生身なんだから」
ガブリエルが異論を、唱えた。
「…むしろ、感動するだろう…。
彼の概念は我々を超えている」
ガブリエルはその時代の、万能なる者、ミュースの事を、思った。
先進派達、能力の殆どなく、交流している宇宙人達からの技術を都市に貢献し、人々の尊敬を得ようとしている、ミュースに敵対する彼らは、どれだけその技術を都市発展に役立て、素晴らしい功績を上げようと、人々の圧倒的な敬意は、ミュースに向けられていた。
…そういう意味では、“神”に近い尊敬を、受けていると言っても過言では無い。
彼は天候を操り、通常の能力者では操りきれない力を操り、多くの仲間達に力を貸して、数々の災害から多くの人命を、救ってきた。
どうしていつも、他の為にその素晴らしい力を、何のためらいも無く使えるのかと、彼に尋ねた事がある。
彼はどうして息をしているのかと、尋ねられたような顔をして、言った。
「自分のすべき事があり、それをしているだけだ」
と。
でもそれは無償の愛と同じだと、ガブリエルは思っていた。
だが、ミュースにとってそれは、当たり前の事の、ようだった。
ミュースは少し悲しげな顔をしてつぶやいた。
「私は他より耳と目がいい。
助けを呼ぶ声が聞こえ、その姿が見える。
その悲鳴を救い、笑顔に変わると、とても、ほっと、する」
彼は、大層孤独だろう。
たった一人しか、見る事、聞く事の出来ないものをずっと、見続けているからだ。
だが彼は孤独に溺れず、すべき事を、する。
多くの者が彼が空間を飛んでいくと、尊敬と感謝と、暖かい瞳で見上げる。
あの夕日の中、空間を飛んでいく白い彼の姿はまさしく、神に等しい者ではないのかと、ガブリエルは思った。
だが途中で実験を、放り出す事は、出来なかった。
コンタクトした男はその後、神をといて使徒を増やした。
そして、感応した際、彼らから受け取ったエネルギーで、その世界、時代では「奇跡」と呼ばれる現象を、起こしてみせた。
だが、コンタクトはいつも出来た訳では無かった。
男の価値観、概念、感情が変わると途端に、波長がずれる。
感情波は色で見えたが、ある色合いの時でしか、話したり、姿を現す事は無理だった。
それ以外では、男が見た物、感じた事を、こちらが受け取る事は、出来た。
が男の前に彼らの姿を現し、言葉を伝える事は、出来なかった。
男は、やがて磔にされた。
「神よ、私を見捨てたのか!」
男は十字架の上で、叫んでいた。
彼らは一様に、項垂れた。
こちらから幾らコンタクトを試みても、男の感情波は乱れ
とても話す事が出来ない。
少しでも話せたら、また力を送れて男は奇跡を起こせるに違いなかったが。
だが死の間際ようやく、男は彼らの姿を、見た。
一瞬、だったが………。
やがて彼は死した体を持ち上げ、“復活"を果たし
奇跡を起こしてみせた………。
ミカエルは、コンタクト相手を無くし、報告を、まとめはじめた。
天使。
そして、今、都市中が賛否両論の、ロプスタンテック人の持ち込んだツールについて、言い争っていたが、ロプスタンテック人は、男の時代で
彼らが思う「悪魔」にその姿が、似ていた。
ロプスタンテックは灼熱の惑星からの、訪問者だったし、彼らの星は不毛の、焼かれた岩だらけの地で、彼らの顔は黒く、頭に山羊のような角を確かに、生やしているような姿に、見えた………。
もしこれらの情報をイメージで受け取っていたら、天界と地獄の戦いのように映るし、ミュースは彼らと戦い民を、光の使徒を守る、神に見えた事だろう………。
だがミカエルは後世に、影響を与えた事より、この事を報告の
筆頭に上げた。
“かの時代でアトランティスは影も形も無く滅び、その文明は、完全に失われていた……"
………………………………と。
ミカエルが尋ねた。
彼らはトリエルリ人の持ち込んだ、感応ツールの、テストをしていた。
このツールでは時間、空間を超えてコンタクトが可能だという事だった。
彼らはこのツールをテストする為に幾度も、長老会(ダーデアースン)
に申請を出していた。
ダーデアースンは今、ロプスタンテック人が持ち込んだ別の空間移動ツールを、先進科学チームが取り上げ、先進派がこの計画の実用化を押し進め、蜂の巣をつついた騒ぎで議論を戦わせ、彼らの申請等後回しだった。
が、ウリエルがコネを使いなんとかねじこみ、やっと許可が
降りたばかりだった。
彼らがこのツールを使ってコンタクト出来たのはどうやら
かなり未来の地球人だった。
荒野にたたずむ男で、彼は空間に現れた彼らの姿に驚かず
言葉を交わす事に、成功した。
残念ながら、トリエルリ人達が普段使っているように空間を飛び越え
肉体を送るには、エネルギーが足り無すぎて無理だったが、その時代の人間と話す事には成功した。
荒野の男は、彼らを神聖なものだと思ったらしい。
ガブリエルが言葉にしたように、この時代は既に、彼らが用いている
エネルギーは欠片しか見つからず、このエネルギーを使って栄えたアトランティス人は最早、記憶も伝承にも、残っていないように感じられた。
…つまり、どのくらいの未来かは解らないが、アトランティス人の、知恵と繁栄はすたれ、滅び去っているようだった。
しかも男は随分粗末な衣服を纏い、顔色も体付もひどく貧弱で弱々しかった。
このエネルギーに溢れた中で暮らす彼らは、殆どの病から救われていたし、いつも循環が良く、顔色も良く、老化も、遅かった。
だが男には軽い感応作用があり、彼らのエネルギーを感知しただけでなく、感応し、吸収する能力も、あるようだった。
彼らは尋ねられる言葉に返答したが、正確に彼らの言葉が
伝わっているかは、危ぶまれた。
彼らの姿だって、男にはどう映っているのかも、解らない。
ともかく、テストしなくては。と、彼らの中で一番果敢なミカエルが言った。
男が見て、聞く事の出来るエネルギー波に出来るだけ近づけ、彼らはほんの数日先の自分達へと、映像を送ってみた。
「………随分、ブレてるな」
ミカエルが、うなった。
「生態エネルギーが背の辺りから白く広がっている……。
彼らは我々を、天使、翼ある者と思いこんでいるようだが、これなら無理も無い。白い生態エネルギーの映像のブレが、翼のように見える。
頭の周囲に金の輪も、浮かんでいるしな。
しかも、彼らは我々が話した“万能な者”
を、神と呼んでいる」
ウリエルが聞いた。
「誰か、神に似た発音の言葉を、発したか?」
皆、一様に首を横に、振った。
ガブリエルが言った。
「…感応で感知している。耳では無く、イメージで受け取っているようだ。この時代に感応者は数名いるが、彼らは民に、予言者と呼ばれているようだし、受け止める者によっては解釈も違う…」
ラファエルが、心配げに言った。
「…後世だろう?我々は時代に介入してるんじゃないのか?」
皆が、ミカエルを、見た。
彼はため息を付いた。
「…万能な者とは、ミュースの事だろう?
だが彼は、神じゃない。我々の時代一の、能力者だが」
ラファエルが言った。
「…本当の彼の様子を伝えたら、彼らはがっかりしないか?
ちゃんと生身なんだから」
ガブリエルが異論を、唱えた。
「…むしろ、感動するだろう…。
彼の概念は我々を超えている」
ガブリエルはその時代の、万能なる者、ミュースの事を、思った。
先進派達、能力の殆どなく、交流している宇宙人達からの技術を都市に貢献し、人々の尊敬を得ようとしている、ミュースに敵対する彼らは、どれだけその技術を都市発展に役立て、素晴らしい功績を上げようと、人々の圧倒的な敬意は、ミュースに向けられていた。
…そういう意味では、“神”に近い尊敬を、受けていると言っても過言では無い。
彼は天候を操り、通常の能力者では操りきれない力を操り、多くの仲間達に力を貸して、数々の災害から多くの人命を、救ってきた。
どうしていつも、他の為にその素晴らしい力を、何のためらいも無く使えるのかと、彼に尋ねた事がある。
彼はどうして息をしているのかと、尋ねられたような顔をして、言った。
「自分のすべき事があり、それをしているだけだ」
と。
でもそれは無償の愛と同じだと、ガブリエルは思っていた。
だが、ミュースにとってそれは、当たり前の事の、ようだった。
ミュースは少し悲しげな顔をしてつぶやいた。
「私は他より耳と目がいい。
助けを呼ぶ声が聞こえ、その姿が見える。
その悲鳴を救い、笑顔に変わると、とても、ほっと、する」
彼は、大層孤独だろう。
たった一人しか、見る事、聞く事の出来ないものをずっと、見続けているからだ。
だが彼は孤独に溺れず、すべき事を、する。
多くの者が彼が空間を飛んでいくと、尊敬と感謝と、暖かい瞳で見上げる。
あの夕日の中、空間を飛んでいく白い彼の姿はまさしく、神に等しい者ではないのかと、ガブリエルは思った。
だが途中で実験を、放り出す事は、出来なかった。
コンタクトした男はその後、神をといて使徒を増やした。
そして、感応した際、彼らから受け取ったエネルギーで、その世界、時代では「奇跡」と呼ばれる現象を、起こしてみせた。
だが、コンタクトはいつも出来た訳では無かった。
男の価値観、概念、感情が変わると途端に、波長がずれる。
感情波は色で見えたが、ある色合いの時でしか、話したり、姿を現す事は無理だった。
それ以外では、男が見た物、感じた事を、こちらが受け取る事は、出来た。
が男の前に彼らの姿を現し、言葉を伝える事は、出来なかった。
男は、やがて磔にされた。
「神よ、私を見捨てたのか!」
男は十字架の上で、叫んでいた。
彼らは一様に、項垂れた。
こちらから幾らコンタクトを試みても、男の感情波は乱れ
とても話す事が出来ない。
少しでも話せたら、また力を送れて男は奇跡を起こせるに違いなかったが。
だが死の間際ようやく、男は彼らの姿を、見た。
一瞬、だったが………。
やがて彼は死した体を持ち上げ、“復活"を果たし
奇跡を起こしてみせた………。
ミカエルは、コンタクト相手を無くし、報告を、まとめはじめた。
天使。
そして、今、都市中が賛否両論の、ロプスタンテック人の持ち込んだツールについて、言い争っていたが、ロプスタンテック人は、男の時代で
彼らが思う「悪魔」にその姿が、似ていた。
ロプスタンテックは灼熱の惑星からの、訪問者だったし、彼らの星は不毛の、焼かれた岩だらけの地で、彼らの顔は黒く、頭に山羊のような角を確かに、生やしているような姿に、見えた………。
もしこれらの情報をイメージで受け取っていたら、天界と地獄の戦いのように映るし、ミュースは彼らと戦い民を、光の使徒を守る、神に見えた事だろう………。
だがミカエルは後世に、影響を与えた事より、この事を報告の
筆頭に上げた。
“かの時代でアトランティスは影も形も無く滅び、その文明は、完全に失われていた……"
………………………………と。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる