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招集 2
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「俺とディングレーが出向くのか?」
ギュンターの問いに、左将軍ディアヴォロスが微笑む。
「私とオーガスタスも随行する」
ディングレーにとって年上の従弟の、その言葉に彼が心から安堵してる事を、室内の全員が察した。
“不安ですか?”
『光の民』の青年の言葉の上に、被せるように。
ギュンターが言った。
「で、俺達何をするんだ?」
ダンザインがその問いに、心話で答える。
“さっきの…遠くの声、アシュター殿の伝言を、地球の人間に伝えて欲しいそうだ”
ギュンターとディングレーが拍子抜けし、互いの顔を見合わせる。
が、オーガスタスが二人の内心を察し、鋭く促す。
「出向く先が安全な場所だとは、言ってない」
ギュンターとディングレーは納得し、顔を下げる。
「…化け物がわんさか居るとか?」
ギュンターの問いに、『光の民』の青年が囁く。
“邪悪な種族が、人間に混じっている。
貴方方は地球の人間に近い。
が、彼らとも少し違う。
私やダンザイン殿、アシュター殿らは、彼らからは殆ど見えない。
だから…声が聞こえても我々だと…認識出来ない場合があり…。
邪悪な種族はそれを良いことに、我らの声や姿を装って、嘘を吹き込む”
ギュンターが黙ってるので、ディングレーがこっそり尋ねる。
「…分かったか?」
ギュンターは黙したまま、首を横に振った。
が、直ぐ顔を上げて言う。
「俺らが分かって無くても、オーガスタスもディアヴォロスも行くんだ」
ディングレーは同類のその名案に、ほっとしながら頷いた。
「連中が分かってりゃ、俺らが分からなくても平気か…!」
ギュンターがおもむろに頷くのを見て、赤毛のオーガスタスは額に手を当てた。
「俺ら頼りか?」
『光の民』の青年が声を発しかけ…囁く。
“ああ失礼、名乗ってなかった。
私は『光の塔』、最上階級のレオール”
ギュンターも気づいた。
が、ディングレーも気づく。
ダンザインもディアヴォロスもが、その言葉に目を見開くのを。
“…では貴方は次期、『光の王』?”
ダンザインの問いに、レオールは笑う。
“候補…だ。
まだ他にも候補は居るから”
ディアヴォロスが、理解の追いつかないオーガスタス、ディングレー、ギュンターに囁く。
「『光の塔』の最上級者は、『光の国』でもトップクラスの能力者」
オーガスタスが無言で頷き、“トップクラスの能力者”がどれ程の者か、想像も付かないギュンターもディングレーもが、実感の無いまま頷く。
“邪悪な者らは非常に狡猾で巧妙なので、アシュター殿を装って、別の方向に地球の人間を誘導する。
誘導された者らは…とても危険なんだ”
ギュンターが首を軽く振る。
「で、それが邪悪な奴らに支配される、決定打になるって事か?」
“それに近い”
レオールに即答され、ディングレーとギュンターはそれでもやっぱり全然何すれば良いのか理解出来ず、レオールを見つめ続けた。
“ともかく、アシュター殿の船に行く。
地球に近づいてから、また説明するから”
レオールに言われ、ギュンターもディングレーも揃って、ダンザインに振り向く。
ダンザインは気づくと、不安げな二人を落ち着かせるように、穏やかな心話で告げた。
“レオール殿の側なら、いつでも私の名を呼べば、直ちに馳せ参じる。
彼は瞬時に移動出来る空間を、開く事の出来る能力者だから”
ディングレーとギュンターが今の状況に納得しつつも、ダンザインが特別参加可能と聞いてほっとしてるのを目にし、レオールは囁く。
“私だと…不安か?”
ディアヴォロスが微笑みながら、レオールに告げる。
“彼らは『光の民』や、能力者に不慣れ。
貴方よりダンザイン殿の方が、馴染み深いので”
レオールはその説明に、感謝するように顔を傾け、首を下げた。
そんな僅かな仕草ですら、金の光が零れるように輝くのを見て。
ディングレーとギュンターは
“さすが『光の王』候補者”
と、隠しておきたい内心を、心外にも心話で響かせてしまい、皆の注目を一斉に浴びた途端、揃って首を横に振った。
それは、一瞬だった。
夜空のような景色が一変し、銀色の楕円形の部屋に移動したのは。
そこには真っ直ぐな金髪で青い瞳。
『光の民』同様、長身で端正な人物が、笑顔で立っていた。
“ようこそ!
援助頂けて、本当に助かります”
また心話で話され、ギュンターもディングレーも、揃って顔を下げる。
けれどレオールはお構いなしに、アシュターに囁く。
“説明をお願いしたい。
実は私も、この世界のことは十分把握出来てない”
アシュターが、頷く。
ギュンターから見ればアシュターは、『光の民』との区別が付かなかった。
長身、端正、長い金髪に青い瞳。
そして…周囲に金色の光を纏ってる。
“…なのに世界が違うのか?”
アシュターは頷く。
“貴方方の国は地球とは、別の空間の存在。
けれど地球人が貴方方の世界に幾人か、転生してる。
それで…貴方方なら地球人も、会って話すことが出来ると思います”
一区切り付けた後。
彼は声を落として囁く。
“…昔、地球には高度な文明があり、我々のような別の星から来た者らが、頻繁に訪れていました。
けれど文明は衰退し、一度完全にその存在を消したのです。
その頃…奴ら…ドラコニアンらが、地球に目を付けた。
彼らはムーと呼ばれる文明の末裔ら、龍族の…素晴らしい能力を自分達のものにしようと、龍族の女をさらいます。
けれど龍族は…レオール様のような能力を持つ一族でしたので、さらわれた女達を毎回、その神秘の力で取り戻しました。
ドラコニアンが手に入れたのは、結局卵子だけ。
その卵子から、ドラコニアンの特色を注入し、ハーフを作り始めた…。
けれど…”
皆が邪悪な者らが能力を手に入れたら、どれだけ危険か分かって、眉をしかめる。
“能力が発動した子供は、白い光に包まれ、直ぐ様仲間の龍族が、助けに来てしまう。
結局残ったのはドラコニアンの特色の強い、能力の無い子供達でした。
がある日、そんな子供の前で食事をしていたドラコニアンは…獲物の血を、子供に浴びせてしまう…。
子供はその時、歓喜に満ちあふれて能力を使いました。
けれど子供が能力を使っても、龍族は取り戻しには来ません。
ドラコニアンらは子供達が、生きた獲物が苦しんで血を流すと能力を発動させるのを、知りました。
そしてそれは明らかに龍族とは、違う能力の発動でした”
ギュンターとディングレーは、顔を見合わせた。
“…まるで俺らの世界の、『影の民』だな…。
力の源を、人が苦しむエネルギーで得る”
アシュターは、頷いた。
“恐ろしい一族の誕生です。
ドラコニアンは成長した子供らを、彼らの地へと連れて行きます。
やがて数世代後には、生け贄の血と肉、生き物の苦しむエネルギーを糧とする者達が、ドラコニアンを統べるまでになりました。
それで奴らは侵略を開始したのです…”
ギュンターの問いに、左将軍ディアヴォロスが微笑む。
「私とオーガスタスも随行する」
ディングレーにとって年上の従弟の、その言葉に彼が心から安堵してる事を、室内の全員が察した。
“不安ですか?”
『光の民』の青年の言葉の上に、被せるように。
ギュンターが言った。
「で、俺達何をするんだ?」
ダンザインがその問いに、心話で答える。
“さっきの…遠くの声、アシュター殿の伝言を、地球の人間に伝えて欲しいそうだ”
ギュンターとディングレーが拍子抜けし、互いの顔を見合わせる。
が、オーガスタスが二人の内心を察し、鋭く促す。
「出向く先が安全な場所だとは、言ってない」
ギュンターとディングレーは納得し、顔を下げる。
「…化け物がわんさか居るとか?」
ギュンターの問いに、『光の民』の青年が囁く。
“邪悪な種族が、人間に混じっている。
貴方方は地球の人間に近い。
が、彼らとも少し違う。
私やダンザイン殿、アシュター殿らは、彼らからは殆ど見えない。
だから…声が聞こえても我々だと…認識出来ない場合があり…。
邪悪な種族はそれを良いことに、我らの声や姿を装って、嘘を吹き込む”
ギュンターが黙ってるので、ディングレーがこっそり尋ねる。
「…分かったか?」
ギュンターは黙したまま、首を横に振った。
が、直ぐ顔を上げて言う。
「俺らが分かって無くても、オーガスタスもディアヴォロスも行くんだ」
ディングレーは同類のその名案に、ほっとしながら頷いた。
「連中が分かってりゃ、俺らが分からなくても平気か…!」
ギュンターがおもむろに頷くのを見て、赤毛のオーガスタスは額に手を当てた。
「俺ら頼りか?」
『光の民』の青年が声を発しかけ…囁く。
“ああ失礼、名乗ってなかった。
私は『光の塔』、最上階級のレオール”
ギュンターも気づいた。
が、ディングレーも気づく。
ダンザインもディアヴォロスもが、その言葉に目を見開くのを。
“…では貴方は次期、『光の王』?”
ダンザインの問いに、レオールは笑う。
“候補…だ。
まだ他にも候補は居るから”
ディアヴォロスが、理解の追いつかないオーガスタス、ディングレー、ギュンターに囁く。
「『光の塔』の最上級者は、『光の国』でもトップクラスの能力者」
オーガスタスが無言で頷き、“トップクラスの能力者”がどれ程の者か、想像も付かないギュンターもディングレーもが、実感の無いまま頷く。
“邪悪な者らは非常に狡猾で巧妙なので、アシュター殿を装って、別の方向に地球の人間を誘導する。
誘導された者らは…とても危険なんだ”
ギュンターが首を軽く振る。
「で、それが邪悪な奴らに支配される、決定打になるって事か?」
“それに近い”
レオールに即答され、ディングレーとギュンターはそれでもやっぱり全然何すれば良いのか理解出来ず、レオールを見つめ続けた。
“ともかく、アシュター殿の船に行く。
地球に近づいてから、また説明するから”
レオールに言われ、ギュンターもディングレーも揃って、ダンザインに振り向く。
ダンザインは気づくと、不安げな二人を落ち着かせるように、穏やかな心話で告げた。
“レオール殿の側なら、いつでも私の名を呼べば、直ちに馳せ参じる。
彼は瞬時に移動出来る空間を、開く事の出来る能力者だから”
ディングレーとギュンターが今の状況に納得しつつも、ダンザインが特別参加可能と聞いてほっとしてるのを目にし、レオールは囁く。
“私だと…不安か?”
ディアヴォロスが微笑みながら、レオールに告げる。
“彼らは『光の民』や、能力者に不慣れ。
貴方よりダンザイン殿の方が、馴染み深いので”
レオールはその説明に、感謝するように顔を傾け、首を下げた。
そんな僅かな仕草ですら、金の光が零れるように輝くのを見て。
ディングレーとギュンターは
“さすが『光の王』候補者”
と、隠しておきたい内心を、心外にも心話で響かせてしまい、皆の注目を一斉に浴びた途端、揃って首を横に振った。
それは、一瞬だった。
夜空のような景色が一変し、銀色の楕円形の部屋に移動したのは。
そこには真っ直ぐな金髪で青い瞳。
『光の民』同様、長身で端正な人物が、笑顔で立っていた。
“ようこそ!
援助頂けて、本当に助かります”
また心話で話され、ギュンターもディングレーも、揃って顔を下げる。
けれどレオールはお構いなしに、アシュターに囁く。
“説明をお願いしたい。
実は私も、この世界のことは十分把握出来てない”
アシュターが、頷く。
ギュンターから見ればアシュターは、『光の民』との区別が付かなかった。
長身、端正、長い金髪に青い瞳。
そして…周囲に金色の光を纏ってる。
“…なのに世界が違うのか?”
アシュターは頷く。
“貴方方の国は地球とは、別の空間の存在。
けれど地球人が貴方方の世界に幾人か、転生してる。
それで…貴方方なら地球人も、会って話すことが出来ると思います”
一区切り付けた後。
彼は声を落として囁く。
“…昔、地球には高度な文明があり、我々のような別の星から来た者らが、頻繁に訪れていました。
けれど文明は衰退し、一度完全にその存在を消したのです。
その頃…奴ら…ドラコニアンらが、地球に目を付けた。
彼らはムーと呼ばれる文明の末裔ら、龍族の…素晴らしい能力を自分達のものにしようと、龍族の女をさらいます。
けれど龍族は…レオール様のような能力を持つ一族でしたので、さらわれた女達を毎回、その神秘の力で取り戻しました。
ドラコニアンが手に入れたのは、結局卵子だけ。
その卵子から、ドラコニアンの特色を注入し、ハーフを作り始めた…。
けれど…”
皆が邪悪な者らが能力を手に入れたら、どれだけ危険か分かって、眉をしかめる。
“能力が発動した子供は、白い光に包まれ、直ぐ様仲間の龍族が、助けに来てしまう。
結局残ったのはドラコニアンの特色の強い、能力の無い子供達でした。
がある日、そんな子供の前で食事をしていたドラコニアンは…獲物の血を、子供に浴びせてしまう…。
子供はその時、歓喜に満ちあふれて能力を使いました。
けれど子供が能力を使っても、龍族は取り戻しには来ません。
ドラコニアンらは子供達が、生きた獲物が苦しんで血を流すと能力を発動させるのを、知りました。
そしてそれは明らかに龍族とは、違う能力の発動でした”
ギュンターとディングレーは、顔を見合わせた。
“…まるで俺らの世界の、『影の民』だな…。
力の源を、人が苦しむエネルギーで得る”
アシュターは、頷いた。
“恐ろしい一族の誕生です。
ドラコニアンは成長した子供らを、彼らの地へと連れて行きます。
やがて数世代後には、生け贄の血と肉、生き物の苦しむエネルギーを糧とする者達が、ドラコニアンを統べるまでになりました。
それで奴らは侵略を開始したのです…”
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