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25話 夢の国?
しおりを挟む「此処、ドリームランド…」聞いた事の無いワードを口にしたのは宮本。空を見上げて隣にいる山田を横目に「あっ。」と固まる。
「私、中村さんから聞いていて……それで。」
「聞いていた話とは全然違う景観だけど、感覚は全部さっきまでと同じで空は見た事ない空してるし、たぶんドリームランドって場所だと思う」
「ドリームランドって直訳すると夢の国だけど、夢の国にしては恐ろしい空間じゃない?」
「上見ると地獄。正面は殺風景、どこからどう見ても千葉県内には見えない最悪な環境で育った生物をこれから拝むことになりそうだ」
と話つつ山田は家の扉へと手を掛ける。
扉を引こうとすると、扉はギシギシと軋み炭の粉塵が手の甲にかかる。外側は今は居ない他2人と見た扉のままだが、内側は真っ黒に焦げており触れてみると分かるが煤まみれになっている。
しかし、扉の先にあった家の中は所々燃えて黒くなっているが元々あった(此処に来る前見た)壁や扉は焼けている箇所も有るが基本そのままの姿で残っている。
内側の扉表面が黒く焦げていたのに対して家内部の燃えた後が少な過ぎると山田は思う。
この家の何処からか火災が起き、燃えたにしては家具や壁、床が焼け焦げておらず外部から燃えたにしても明らかに物が残り過ぎている。
コンクリートで出来ているなら燃えないのかと思い、壁を叩いても聞こえる音は木造の音。床下は鉄筋コンクリートのようだ。
『ジ…ジジ、ルカ』
「え?」
『聞こえるか?』
「巴月さん?」
「聞こえます、無事ですか?こっちは無事です。」
「今よく分からない世界に迷い込んでしまったようで、其方の建物に似た建物に今不法侵入した所ですね」
『こっちも無事だ、ホームレス女も無事ピンピンしてる。』
『お前達が落ちて行った穴は消えてしまった。どうにか此方から助ける手段を探すつもりだはんで、そっちでも戻ってくる方法を探してくれ』
「はい、何とかしてみます。」
山田の耳に直接聞こえる声は巴月の物。
夢の世界である筈の此処で、何処に居るかも分からない巴月達と連絡を取れるのはおかしい。眠っている筈が起きている人間と会話をしている状況に困惑するが、今この異常事態に頭を悩ませる時間は無い。
「リアル脱出ゲームがガチの脱出ゲームだったってことだな宮本………宮本?」
振り返ると宮本がその場で蹲り自身の肩を抱く。恐怖か何かに怯え震えているのか顔色が良くない。
「大丈夫か、何かあったのか?」
「大丈夫。何も無い」
近寄ると立ち上がって何事も無かったかのように前を進む。
「さぁ探索にしましょう?」
「あぁ、宮本が大丈夫ならそうしようか」
1階は客間、トイレに風呂、リビング、外に車庫。客間から調べる事にした山田と宮本は一部屋ずつ2人で回ることにした。
客間内部は畳の部屋に高そうな壺、窓の外に見える景色は外の物とは全く違う明るい現実世界の空だ。
「え!普通の空だ!!」
「山田探偵、たぶんそれ…」
「なんだ、こっから出れば外じゃーん」と外に出ようと窓に飛び込む山田は、その景色に顔と上半身を叩き付ける。その窓はハリボテ又は絵の描かれた壁のようにびくともしない。
「痛ってぇ」
「鼻血出てんじゃん、何これ壁?」
「軽率な行動は命取りになりますよ」
「分かりませんが、ハリボテであることは間違いなさそう」
「誰だよこんな期待させる物作った奴……絶対性格悪い、」
「分かりませんよ?外の世界に夢を持った若者の作品かもしれない」
「それか私達と同じ此処に連れ去られた者の願望かも。」
「兎に角、次…行ってみよう」
次に調査をするのはトイレ。
ただの風呂と隣接したトイレだ。足元には女性物のスリッパがマットの下に2足隠れており、男性物のスリッパが壁に立て掛けられている。
「3人家族?」
「父母に娘?」
「お父さんお母さん長女、次女の可能性もあるかと」
「ついでに風呂も見ていこう」
「大体こういうヤバっちい家は風呂に何か正気失うトラップがあるってマイルドから聞かされてるし、最近マイルドと調査に入った家も浴槽に極悪トラップがあったから要注意だぜワトソン君」
「いつから私ワトソンに改名されたんです?」
「なら貴方の要注意リストにさっきのハリボテも追加した方が良さそうですね」
「今のところ本日貴方、活躍してない気がしますけど主人公交代じゃない?」
「世紀の名探偵《宮本ワトソンの事件簿》じゃ、犯人に捕まって事件が迷宮入り待ったナシだろ」
「此処はやっぱりシャーロック山田が事件解決のコマだろ」
「そのコマは一向に来ませんが。」
「まだまだ証拠も何も揃っちゃいないからな。焦んなって、すぐに此処から出してやるからさ」
「どのアニメや映画だって主人公とその相方はお互いに信じ合っているものだろ」
「主人公の相方が闇堕ちしたり、元々悪の組織に属していた流れ者ってことも多い気がしますが長くなりそうなので。」
「どうします?風呂はシャーロック山田が見てくれる感じですか?」
「漢、シャーロック参る」
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