FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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24話 リアル脱出ゲーム

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…………………

次の日、一行は野原のタクシーでリアル脱出ゲームの会場へと赴く。
建物は至って普通の二階建て一軒家となっており外観では此処が脱出ゲームの会場だとは誰も思わないだろうと山田は考える。
外から見て会場は一般的な石造りの塀と錆びた鉄柵に囲まれ、小さな庭には一面に芝が張られているがその芝は雰囲気の演出の為か燃やされており、そもそも脱出ゲームよりもお化け屋敷に近いと感じる。
家の扉の前に昨日探偵事務所にやって来た金井 潤が立って此方にお辞儀をしている。
タクシー運転手として此処に来た野原は外でいつもの留守番で、中に入るのは山田と宮本と巴月。
塀を抜ける手前、見知らぬ人物が塀の隅っこで何かを探している。扉前の金井もその者に気が付いたようで驚いたようにその者へと駆け寄って声を掛ける。

「あ、此処は関係者以外立ち入り禁止でして…あの聞いてますか、立ち入り…」

話を聞こうとしないその者は耳に手をバシバシ当てながら「聞こえない!聞こえない!」と言いながら山田達の方へと下を向きながら近付いてくる。
その様子を見た金井が山田にこの知らない人物について聞く。

「ようこそおいで下さいました」
「…ところで、この方も山田探偵……貴方のお連れでしょうか?」

「いや、俺の知り合いじゃないですね…金井さんの知らない人であれば、住居への不法侵入で通報をすることを推奨しますよ」

「じゃあ私も山田探偵を通報っと。」

「なぁぜなぁぜ??俺も不審者なの?呼ばれたんだよ俺はさぁ!!」
「話進まないよ…もう、貴方は誰ですか?」

山田が不審者に話し掛けると不審者は高笑いしながら「よくぞ聞いてくれた!私の名前は西園寺 響!!しがないホームレスをしている者だ!!」と言う。
西園寺はボロ雑巾のような布切れを纏っている不揃いに整った黒一色のウルフヘアの女、身長は150程だろう。

「えぇ、っとじゃあ帰って下さい」
「ホームレス堂々とドヤ顔で威張る人初めて見たよ俺」

「まてまて!!」
「話聞いてくれ、私は此処に人探しに来たんだ。」

「人探し?」
「リアル脱出ゲームの会場で?」

「え」
「此処脱出ゲームの会場なのか?知らなかった」
「まぁいい、此処にこのくらいの大きさで白髪の綺麗な顔をした中学生くらいの女の子が来ていないか?」
「その子に会わなきゃ帰れないんだ」

「帰る場所無いのに何言って…」
(いやまて、白髪出思い当たる節が)
「それって亡架n...」

山田と西園寺の会話に終止符を打ったのは依頼人の金井。金色の如何にも金持ちを主張するような腕時計を確認して西園寺に営業スマイルで話しかける。

「コホン、時間も無いので貴方も会場に入りませんか?」
「もしかしたら居たかも…知れません。ならば貴方も私に付いてこられると良いでしょう」
「では僕は先に入って待っていますので、準備が出来次第皆さん中に入って来て下さい」

金井はそう言い残して扉を開け、薄暗い家の中へと消えて行く。バタンと勢い良く扉が閉まり、その場に残された一行ともう1人。

山田は周囲に目を向けて気付く。
外観の不気味な演出は只の演出に過ぎず、元々在る建物に古い建材を貼り付けただけに見えると。更に扉越しには内部から特に何も怪しい音は聞こえない。他に怪しい所は特に無いが、目の前にいるホームレスが先程言っていた内容が自身の良く知る殺人鬼の容姿に合致していた気がする。

「探している少女の名前は分かります?」
「自分、探偵をしています山田悠斗です。西園寺さんの役に立てると思いますが、どうでしょう」


「山田探偵の手を煩わせる必要なんて無い、私一人で探せるさ」
「そして名前は言えない、そういう約束なんだ。」
「君だって依頼に関して口外出来ないこともあるだろ探偵君…私も外に話せない話もあるんだよ」

初めましての相手に謎の自分怪しい人です的なアピールをする西園寺を背後で睨む巴月、西園寺の探している人物は脳内一致で亡架乃であると山田と巴月は考える。
そして巴月の探している師である恋人を殺した相手の容姿に西園寺が似ているようで、3歩程下がって見ている巴月は(我の勘違いなのか又は本人か…)と怪しんでいる。
宮本はというと黙って携帯を確認している。

「じゃあ中に入りますか、此処で話していても何も始まりませんし。」

山田が扉に手をかける直前で巴月が山田の背中を掴んで制止する。

「行く前にコレを耳につけろ」

と渡して来たのは片耳イヤホン。

「これで連絡取り合うってことですね」
「2つしか無いので俺と巴月さんで付けて、探索時二手に別れる場合は俺と宮本か西園寺さん若しくは巴月さんと宮本か西園寺さんで行きましょう」

他2人の女性陣から確認を取って山田は扉に手を掛ける。
一行が扉から中に入ると後ろにある扉は自動的に閉まり、天井に有る蛍光灯がパカパカと光って暗い廊下をボンヤリと照らしている。

…と次の瞬間、1番最初に気付いたのは巴月、次に山田が気付く。
一行の足元を突然何かが通り過ぎる。
先に魔力を感知した巴月は瞬きの間に手の届く範囲にいるものを掴んで飛びのき、逃れることに成功する。この何かから逃れることの出来なかったのは山田、宮本だ。

2人は気が付くと会場となった建物の前、扉の前に立っていました。一見同じ建物に感じる目の前の家は所々が黒く焦げ、明らかな違いは眼前の建物以外周囲に何も存在しないという事。真っ赤なブカブカした土で出来た広大な土地に一軒家がポツンと建ち、空は燃えるような…いや、炎のように揺らめく橙色の雲?で構成され更に奥にある背景の暗闇で世界が燃えていると山田達は感じる。
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