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24話 リアル脱出ゲーム
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…………………………
次の日、一行はタクシーでリアル脱出ゲームの会場へ向かう。
その場所は普通の二階建ての一軒家で、外観からは脱出ゲームの会場だとは誰も思わないだろう。山田はそのように考えながら車窓を眺めていた。
外から見た印象は、一般的な石造りの塀と錆びた鉄柵に囲まれ、小さな庭には芝が一面に敷かれている。しかし、その芝は何かの演出のためか、ところどころ焦げて燃えており、どこか不気味な雰囲気が漂う。
山田はふと、この場所が脱出ゲームよりもお化け屋敷のように感じることに気づく。
車を降りると、昨日探偵事務所に現れた金井潤が家の前で待っていた。
タクシー運転手としてここに来た野原は外で留守番をし、山田、宮本、巴月の三人だけが中に入ることになった。
塀を抜けると、誰かが隅っこで何かを探しているのが見えた。金井がその人物に気づき、驚いたように駆け寄り声をかける。
「すみません、ここは関係者以外立ち入り禁止です…聞いてますか?」
その人物は耳に手をバシバシ当てながら「聞こえない!聞こえない!」と叫び、下を向いて山田たちの方へと近づいてくる。
金井が山田にその人物について尋ねる。
「こちらの方、山田探偵の知り合いですか?」
「いえ、僕の知り合いではないですね」と山田は答えた。「金井さんの知らない人物なら、不法侵入で通報するのがいいと思いますよ」
「じゃあ、私も山田探偵に通報しようっと」
宮本が携帯を取り出し、110番の番号を表示させる。
「な、なぜ??俺も不審者なのか?呼ばれたんだよ、俺は!!」
「話が進まないんですけど…一体、あなたは誰ですか?」
山田がその不審者に問いかけると、不審者は高笑いしながら答える。
「よくぞ聞いてくれた!私の名前は石神砲大!しがないホームレスをしている者だ!!」
石神はボサボサのロングヘアをしており、髪の色は汚い灰色のような、絵の具を混ぜたような色合い。身長は150cmから160cmくらいで、話し声と胸の膨らみから女性と思われる。
「ええっと、じゃあ帰ってください」と山田は淡々と答える。「ホームレスが威張る姿、初めて見たよ」
「待て待て!話を聞いてくれ、私はここに人を探しに来たんだ!」
「人を探す?ここで?」
「ここが脱出ゲームの会場だと知らなかったよ。でも、私の彼氏、正和がここにいるはずなんだ!見つかりさえすれば帰れるのに!」
「帰る場所は無いけど、帰れないんだよ。」
「帰る場所が無いのに何言ってるんだ…」
山田は困惑しながらもその会話を終わらせようとする。
だが、金井が口を挟んできた。
金色の腕時計を確認しながら、営業スマイルで石神に向かって話す。
「時間もありませんし、貴方も中に入りませんか?もしかしたら彼氏がいるかもしれません。」
「その場合、貴方も一緒に来ていただければと思います」
「やった!!無料で入れる!!」
「では、私は先に入って待っていますので、準備ができ次第お入りください」
金井は言い残して扉を開け、薄暗い家の中へ消えていった。
その瞬間、扉がバタンと閉まり、一行と石神だけが残された。
山田はふと周囲を見渡し、気づく。
外観の不気味な演出は単なる飾りに過ぎず、古い建材が貼り付けられた建物だと感じた。
さらに、扉の向こうから特に怪しい音は聞こえない。だが、目の前にいるホームレスが言っていた内容が、山田が知っているある殺人鬼の特徴と一致しているように思えてきた。
「はぁ、自分、探偵をしています。山田悠斗です。石神さんの役に立てるかもしれませんが、どうですか?」
「私の名前は石神砲大!!今を生きるホームレスだ!!他人は私をホームレスと呼ぶ!!」
「さっき聞きましたよ、石神さん」と宮本が呆れたように言う。
「山田探偵に迷惑をかける必要はない。私は一人で探す!」
石神が自信満々に宣言すると、巴月はその背後で冷たい視線を向ける。
宮本は黙って携帯の画面を確認している。
「じゃあ、入りますか。ここで話していても始まりませんし」
山田が扉に手をかける直前、巴月が山田の背中を掴んで制止する。
「行く前にこれを耳に付けろ」と言いながら片耳イヤホンを渡してきた。
「これで連絡を取り合うってことですね」と山田が確認する。
「イヤホンは二つしか無いから、巴月さんと俺、もしくは宮本さんと石神さん、あるいは巴月さんと宮本さんで分けて行動しましょう」
他の二人に確認を取ってから、山田は扉に手をかける。
一行が扉を開けて中に入ると、後ろの扉が自動で閉まり、天井の蛍光灯がパカパカと点滅しながら暗い廊下を照らし始める。
その時、最初に気づいたのは巴月、次に山田だった。
一行の足元を突然何かが通り過ぎた。
巴月は瞬時に手近なものを掴んで飛びのき、辛うじて逃げることができた。
だが、山田と宮本はその何かに触れることとなり、次の瞬間。
二人は気づいた。
彼らは今立っているのがまるで違う場所だということに。
目の前の家は同じもののようでありながら、どこか違う。
周囲には黒く焦げた跡があり、家以外の物は何も見当たらない。
広大な土地にぽつんと建っている家、空は炎のように揺らめく橙色の雲に覆われ、遠くに見える闇の中で世界が燃えているように感じられた。
山田はその光景を見て、深い不安に包まれる。
次の日、一行はタクシーでリアル脱出ゲームの会場へ向かう。
その場所は普通の二階建ての一軒家で、外観からは脱出ゲームの会場だとは誰も思わないだろう。山田はそのように考えながら車窓を眺めていた。
外から見た印象は、一般的な石造りの塀と錆びた鉄柵に囲まれ、小さな庭には芝が一面に敷かれている。しかし、その芝は何かの演出のためか、ところどころ焦げて燃えており、どこか不気味な雰囲気が漂う。
山田はふと、この場所が脱出ゲームよりもお化け屋敷のように感じることに気づく。
車を降りると、昨日探偵事務所に現れた金井潤が家の前で待っていた。
タクシー運転手としてここに来た野原は外で留守番をし、山田、宮本、巴月の三人だけが中に入ることになった。
塀を抜けると、誰かが隅っこで何かを探しているのが見えた。金井がその人物に気づき、驚いたように駆け寄り声をかける。
「すみません、ここは関係者以外立ち入り禁止です…聞いてますか?」
その人物は耳に手をバシバシ当てながら「聞こえない!聞こえない!」と叫び、下を向いて山田たちの方へと近づいてくる。
金井が山田にその人物について尋ねる。
「こちらの方、山田探偵の知り合いですか?」
「いえ、僕の知り合いではないですね」と山田は答えた。「金井さんの知らない人物なら、不法侵入で通報するのがいいと思いますよ」
「じゃあ、私も山田探偵に通報しようっと」
宮本が携帯を取り出し、110番の番号を表示させる。
「な、なぜ??俺も不審者なのか?呼ばれたんだよ、俺は!!」
「話が進まないんですけど…一体、あなたは誰ですか?」
山田がその不審者に問いかけると、不審者は高笑いしながら答える。
「よくぞ聞いてくれた!私の名前は石神砲大!しがないホームレスをしている者だ!!」
石神はボサボサのロングヘアをしており、髪の色は汚い灰色のような、絵の具を混ぜたような色合い。身長は150cmから160cmくらいで、話し声と胸の膨らみから女性と思われる。
「ええっと、じゃあ帰ってください」と山田は淡々と答える。「ホームレスが威張る姿、初めて見たよ」
「待て待て!話を聞いてくれ、私はここに人を探しに来たんだ!」
「人を探す?ここで?」
「ここが脱出ゲームの会場だと知らなかったよ。でも、私の彼氏、正和がここにいるはずなんだ!見つかりさえすれば帰れるのに!」
「帰る場所は無いけど、帰れないんだよ。」
「帰る場所が無いのに何言ってるんだ…」
山田は困惑しながらもその会話を終わらせようとする。
だが、金井が口を挟んできた。
金色の腕時計を確認しながら、営業スマイルで石神に向かって話す。
「時間もありませんし、貴方も中に入りませんか?もしかしたら彼氏がいるかもしれません。」
「その場合、貴方も一緒に来ていただければと思います」
「やった!!無料で入れる!!」
「では、私は先に入って待っていますので、準備ができ次第お入りください」
金井は言い残して扉を開け、薄暗い家の中へ消えていった。
その瞬間、扉がバタンと閉まり、一行と石神だけが残された。
山田はふと周囲を見渡し、気づく。
外観の不気味な演出は単なる飾りに過ぎず、古い建材が貼り付けられた建物だと感じた。
さらに、扉の向こうから特に怪しい音は聞こえない。だが、目の前にいるホームレスが言っていた内容が、山田が知っているある殺人鬼の特徴と一致しているように思えてきた。
「はぁ、自分、探偵をしています。山田悠斗です。石神さんの役に立てるかもしれませんが、どうですか?」
「私の名前は石神砲大!!今を生きるホームレスだ!!他人は私をホームレスと呼ぶ!!」
「さっき聞きましたよ、石神さん」と宮本が呆れたように言う。
「山田探偵に迷惑をかける必要はない。私は一人で探す!」
石神が自信満々に宣言すると、巴月はその背後で冷たい視線を向ける。
宮本は黙って携帯の画面を確認している。
「じゃあ、入りますか。ここで話していても始まりませんし」
山田が扉に手をかける直前、巴月が山田の背中を掴んで制止する。
「行く前にこれを耳に付けろ」と言いながら片耳イヤホンを渡してきた。
「これで連絡を取り合うってことですね」と山田が確認する。
「イヤホンは二つしか無いから、巴月さんと俺、もしくは宮本さんと石神さん、あるいは巴月さんと宮本さんで分けて行動しましょう」
他の二人に確認を取ってから、山田は扉に手をかける。
一行が扉を開けて中に入ると、後ろの扉が自動で閉まり、天井の蛍光灯がパカパカと点滅しながら暗い廊下を照らし始める。
その時、最初に気づいたのは巴月、次に山田だった。
一行の足元を突然何かが通り過ぎた。
巴月は瞬時に手近なものを掴んで飛びのき、辛うじて逃げることができた。
だが、山田と宮本はその何かに触れることとなり、次の瞬間。
二人は気づいた。
彼らは今立っているのがまるで違う場所だということに。
目の前の家は同じもののようでありながら、どこか違う。
周囲には黒く焦げた跡があり、家以外の物は何も見当たらない。
広大な土地にぽつんと建っている家、空は炎のように揺らめく橙色の雲に覆われ、遠くに見える闇の中で世界が燃えているように感じられた。
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