FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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23話 依頼

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ソファーに腰をかけた依頼人が山田に垂れる汗を拭きながら話し出す。

「実は私、リアル脱出ゲームを作っている者で一応経営者をしています」

こういう者ですと言うように依頼人がテーブルの上に名刺を滑らせ渡して来た。
名刺には 株式会社ゴールデン 代表取締役 金井潤。
下には電話番号が書かれており山田がネットで調べるとそこには、しっかりと名刺通りの内容が書かれているが、取締役の生年月日に対して目の前の金井は若く感じる。

「そう、今日依頼するのは他でも無い私達が製作しているリアル脱出ゲーム【silent】の仕様を確認して欲しいのです。」
「なにぶん私、トリックや謎についてはカラッキシで…下の者からの案で色々してみて取り敢えず完成はしました。あ、私は頭の回転が悪いのでお恥ずかしいのですが脱出は出来ませんでした。」

「そうなんですね」

「私では相手にならないので探偵を呼ぼうと思い此処に来ました。テレビや新聞で何度か貴方の事は拝見しています、何度も事件を解決に導いているようで…お願い出来ませんでしょうか。」

(別に他の依頼は来ていない事だし、でも宮本の話もあるからなぁ…)
「ふむ、どうでしょう。すこし予定を確認しますね」
「あとこれにサインを。依頼者名のところにお名前と連絡先を一応書いて貰えますか」

「わ、分かりました。」

すると再び階段を登ってくる足音。今度のは急ぎでは無くカツカツと余裕の歩幅だ、ノックをしてから室内へと入ってきたのは宮本。
下の階のトイレは使えたらしい。

「なんか部屋臭いですね、糞…漏らした感じですか?」

「それに関して触れないでくれ。此方、金井 潤さん……リアル脱出ゲームの主催?製作担当?の人で、公開前に試験運用したいらしいそうなんだけど宮本行きたい?」

山田がそう聞くと宮本が依頼人に目を向ける。
宮本は猜疑深い表情で一瞬見つめ「まぁ良いでしょう、巴月さんも来て貰えるなら大丈夫だと思いますが」と親指をトイレに向ける。

「巴月さん、行けそうですか?」

「へーい」

「あの人何言っても『へーい』で返してくるな…」
「今度から巴月さんの泊まる部屋トイレにしようかな」
「あ、すみません。依頼…ですね、受けます。」

「本当にありがとうございます、では明日の午後1時にこの場所で待っています。」

男はチラシを1枚渡して扉から出て行った。
チラシには【リアル脱出ゲーム silent 君は謎を解き明かし、脱出できるのか!!】と大きく書かれ、右下には小さく地図が載っている。
チラシを机に置いた後に男が座っていた箇所を山田が見ると、微かにだが魔力を感じる。
少し嫌な予感を感じた山田は未だトイレから出て来ない巴月に確認を取る。

コンコン
「なんかさっきの依頼人が座っていた箇所に微量の魔力を発見しましたけど、普通の人から魔力って出る物ですか?」

「いや…基本的に出ない筈だし、魔術師も出るとしたら何かしらの魔術を使った後に残穢としてその場に漂うのが普通だ。」
「それに残った物をそのままにするような馬鹿な真似、我達がする訳なくねえか?」

「確かに、バレると厄介な事が多い気がする」

「ならその依頼人、何かしらの化け物を飼っているか……又はその男が逆に飼われているか。だ」

「宮本が此処に居ると知ってあの男を斥候させたみたいにも感じますね」
「さっき依頼人を見る時の宮本も結構疑っていた感じがしました」

「横にいる私の話を第三者目線で話さないでください」
「アイツ変に見えませんでした?」
「普通ヘルメット被ったまま人の家に入ります?しかも汗だくで」

「それは俺も思った。急いでいるにしては計画性無いし、俺だったら『この日まで作業終わらせて次の日から試験運用…』的な感じで前もって日程決めて作業すると思う」
「その日に突然『完成した!やった!試験運用しなきゃ、探偵に依頼しよう!!』にはならないと思う」

「へーい」

「それにあの依頼人、会社ホームページ記載の生年月日より若かった気がする。老けてるように感じる事があっても、一回りも二回り以上若く感じることなんてあるか?」
「あと扉開いてソファーに座るまでの間、変な感じがしてたけどアレは足首…左かな、怪我か骨折していたと思った。少し不自然に歩いているように感じた。」
「怪我をしている人間が工事現場でマトモに働けるだろうか、しかも取締役が。世間一般的に居ないとは言い切れないけど、足怪我して完治する前に走って階段登ってなんて常識的に考えてしないだろ」

「え、山田さん今ちゃんとした探偵に見えました…けど、下見たら下半身がノーパンだったのでやっぱり気持ち悪いです」
「はやく汚いキャラメ○コーンどうにかしてください」
「ドン引きです」

「巴月さんが悪いんだ…巴月さんがトイレ2時間も使うから……巴月さんが…。」

「あと1時間後には出る」

「トイレに立てこもるの辞めてください」
「じゃあ、明日皆で行きましょう。昼出発で足は野原のタクシーにお願いしときます」

「スカトロ探偵、リアル脱出ゲームに望む」
「誰も見なさそうな記事を書けそうですね」

「ノーパンにしてくれ。あと女の子がスカトロなんて言うもんじゃない」

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