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21話 戻るか
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なんやかんや無事に朝を迎えることのできた一行は地下に居る巴月を呼んで今後のことについて話をすることにした。
「「「おはようございまーす」」」
「おはよーう」
玄関で巴月を待っていた3人の所へ水の入ったバケツと雑巾を持ってやって来た巴月。
「掃除手伝いますよ」と山田が雑巾に触れようとすると巴月は「いや構わないでくれ」と距離をとる。
「じゃ、じゃあ掃除が終わったら話聞いて貰えませんか?」
「此方の宮本彩花さん、巴月さんに話が有って来たみたいで」
「それって仕事?」
(これ"仕事"って言わないと聞いてくれないタイプの人間だ…)
「仕事です。昨日、巴月さんが斬った?化け物を差し向けた奴を見付けて倒します」
「へ~い、分かった。」
「じゃあ客間で待ってますね」
(よ、よかった。もっとゴネるのかと思ってたけど案外すんなり行って良かった!!)
「いや、全員外に出てくれ」
巴月が掃除の邪魔になるというように外を指差すと山田達3人は玄関から外に足を踏み出す。全員の両足が外の地面に触れた瞬間、突然目の前に巴月が現れ「掃除終わったはんで中で話そうか」と言ってきた。
振り返れば昨日来た時に見た景色と全く同じ綺麗過ぎる部屋、ピカピカの床には天井が映るほどだ。昨日食事した食器や鍋は磨かれて食器棚へと戻され風呂には水滴1つ無い。
山田は恐らく自分含め他の誰もがこの家を朝から掃除したとしても初めて10秒経ったかどうかで完璧に仕上げる等、人間には不可能と感じる。目の前を先に歩き皆を客間に誘導する男は、いつの間にか掃除道具を庭の鹿威しの傍らに置いて悠々とお茶を並べ始める。
「はい。んで話は?」
「我に話したいことを簡潔に聞かせて貰おう」
「え、は…っと、いやこの宮本さんが昨日の使い魔?に追われてるので、その使い魔を差し向けてる奴を叩いて欲しいとの事です」
「…で、合ってますか宮本さん」
「はい、山田さんの話で討伐依頼を申請します」
と黒いカードを宮本が巴月に見せるとあからさまに嫌な顔をしながら「仕事なら仕方無い」と外に出て行く。
それを追い掛けて山田は支度を整える巴月に声を掛ける。行き先の分からない状態で一体何処へ向かうのかと聞こうとする。
現在手掛かりの持っていそうな宮本は本当の話をしているか山田は怪しいと考えており、寝る前に確認した話で宮本は住む家が無く家族も全員他界しているそうで、化け物から狙われている理由も何も知らないと言い張っていた。
此方から見て凄く怪しい宮本の話をオブラートに包んで巴月に話をした。理由は普通に話せば恐らく斬り殺してしまうと考えたからだ。
「で、何処さ行けばええ?」
巴月は左手にキャリーバッグと右手に日本刀を持って門の前に立っている。
「銃刀法違反で逮捕じゃないすか??」
「我もマイルドと同じだという事を忘れている?」と言って持っている刀を自身の背後に向けると体で山田の視界を遮る。するとどうだろう、なんと手に持っていた刀が消えてしまった。不思議なこともあるもんだ。
「そ、それ俺にも出来ますか?」
「出来る…か?出来るやもしれん。で、何処さ行く感じ?」
「差し向けてる奴の情報は何も無いが、作戦とかそういうの疲れるから任せるはんで」
「一応、他2人には俺の探偵事務所に向かうって話はしてるので大分に行く感じです」
「あと…1時間くらいしたら新しい車が来るそうなので待ちましょうか」
「運転は?」
「野原がしますよ??」
「嗚呼…良かった。てっきり猪突猛進のズッコケドライバーが運転して行くのかと思っていた」
「それなら心配無いか。」
「おっとそれは誰のことかな?」
「喧嘩か??」
指をポキポキと鳴らす山田の前で「ん?」と刀を持ち出す巴月。
「喧嘩から買u...わないですね。全然怒ってませんよ、レッツゴートウキョウ!!」
「何故カタコト」
「車が来たようだ。向かうとしよう」
門の前に新品のタクシーが停車し、運転席から顔を出したのは勿論野原。黒いサングラスに煙草を咥えて、後部座席には先に宮本彩花が乗っている。
トランクに荷物を乗せて出発進行。
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