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19話 訪問
しおりを挟む「えぇ、マイルドに巴月さんの所へ行けって……ってもう居ない!?」
山田が空を見上げ少し悩んで答えると既に岩は元に戻って巴月は姿を消した。
門の方から誰かが歩いて来るのが横目に映るも、振り向く事無く野原だと気が付いて「巴月さんには会ったけど、もう眠った」と独り言のように呟く。
野原は山田の横を「そうかい」と無関心そうに通り過ぎると巴月の家に入ってテレビを見始めた。前にならって山田が家に入ろうとするタイミングでチャイムが鳴った。
門の柵は野原が閉じたのだろう、誰かが訪ねて来たが家主は地下に潜って居留守を使っている。出るべきは一晩か分からないが巴月邸に泊まることとなる山田か野原だが、野原は「レッカー車を呼んで疲れた。誰のせいだろうなぁ」と嫌味を言ってくるので仕方無く山田が出る。
門の前に立っていたのは女子高校生だろうか、自分より若く着ている物はセーラー服では無いが多くの若者が利用するファッション誌にこんな服を来た女性が載っていた覚えがある。
女子高校生に柵を開けて山田が身分を話そうとする。
「どうも巴月さんの、友達?でも無い……俺は一体、、」
「えっ…空き巣ですか?」
携帯を取り出すと山田の目の前で110と押して耳に当て「通報します」とニッコリ笑う。
「えっ、ちょっ違っ!!」
「もしもし警察ですか!!」
「俺、私立探偵の山田悠斗です!!」
「あの有名な名探偵の、山田!!」
「ニュースとかネット記事見ない??俺結構有名人なんだけど…」
「自分のこと有名な名探偵って名乗るのキショくないですか?」
「俺だって自分の言ってることキモイって思ってるよ!!」
「というか、身分証見せてください」
「はい。」山田が免許証を見せると女子高校生は携帯でネットの記事を見て「あ、本当に山田って名前なんだ」と目を丸くしている。
「で、何でこの家に居るんですか?」
「いやぁ俺にもよく分からないんだな~これが」
「私は巴月さんに用が有って来たんですけど、今巴月さんは留守ですか?」
「居ないなら私一旦帰って出直しますけどどうですか?」
「いや、居るっちゃ居るんだけど家には居ないって言うか…」
「家には勝手に入っていいって言われたから、」
「やっぱり副業で空き巣をしている探偵ってことで通報を」
「待てぇい!!」
「俺は巴月さんの友達の友達で、その友達の代わりに来た的な」
「な、る、ほど?」
「でも貴方じゃ私の頼みについてどうにもなりませんから巴月さんが居ないのであれば帰ります」
帰ろうとする女子高校生に何と言ったらいいか分からない山田は「通報は辞めてね」と後ろ姿に向かって言うと「大丈夫ですよ~」女子高校生は振り返らずに手を挙げる。
ふと山田が門の戸締りを確認後、家の中に戻る直前で背後から柵のガタガタという音と女子高校生がくぐもった声で何かを伝えようとしている事に気が付く。
振り返ると女子高校生が山田に助けを求めるような眼差しで此方を見つめていた。何か叫ぼうとしているが声すら出せない状況で周囲に人は居らず、しかし彼女は柵から引き剥がされるように見えない何かに服を掴まれ後ろへと引っ張られている。
現状の情報は通常であれば理解が追いつかないが足の速さに自信があった山田は直ぐに駆け付けて、柵を開くと今にも後方の壁に女子高校生が激突する寸前で手を取る。そしてそのまま無理矢理門の中へと引き込んだ。
女子高校生の服を掴んでいた何かは姿を見せる。黒い影、或いはヘドロ又はスライム、無数の触腕が門の中へユラユラと伸びて山田達を襲いかかる……
「【浅倉流...」
次の瞬間、何処からか飛び出した金髪の男の背が山田達の目に映る。瞬きをしたほんのコンマ数秒で柵は金属音と共に地面へ転がり、柵だった鉄筋に成り下がった。
目にも留まらぬスピードで柵ごと女子高校生を襲った生き物……だろうか分からない何かを切り伏せて彼は欠伸をすると山田に振り返る。
「今の友達?マイルドじゃ無かったはんで斬ってもうた」
「い…や、友達じゃないっすね」
「ありがとうございます、助かりました」
「あそ、怪我が無かったなら良がった」
「あとその女は何?連れなら泊まっていくといい。我はそこさ居るから」
「連れじゃ~無くて、何か巴月さんに頼み?依頼があるみたいですよ」
「え、今日もう無理眠い。話すなら明日の朝でってことでおやすみ~」
眠そうに歩いて行く巴月を見た後に視線を女子高校生に向けると、女子高校生は山田に「見えるんですか?」と震える声で話し掛けた。
「一応そういうのには理解がある方だと思うって言えば警戒するだろうけど、君はスピリチュアル系とか魔法を信じるかい?」
「貴方も魔術師??」
「え、知ってる感じ?そしたら俺めっちゃ恥ずいじゃん…カッコつけちゃったよ」
「知らない人にひけらかすみたいでカッコ悪い大人の一面見せちゃったよ、穴があったら入りたい」
何処からか遠く若しくは地下の中から『此方、定員オーバーだはんでぇえ』と聴こえた気がした。
「まぁ話は中で聞こう、安心してくれ俺は一応最近イージスに所属した魔術師なんだ。」
「外には少し訛ってる番犬も居るだろうし、さっきの化け物も簡単に侵入は出来ないと思うから取り敢えずは安心して休むといい。」
「なんか、さも自分の家かのように話してますけど此処巴月さんの家ですよね。山田さんは少しも恥ずかしくないんですか」
「じゃあなんて言えば安心させられるんだよ!!もう俺のメンタルはボロボロよ!これ以上(悪口)攻撃を喰らったら本当に死んでしまうわ!」
「次回マイルド死す!デュエルスタンバイ!!」
「マイルドさん此処に居るんですか?」
「そしたら心強いです、2人とも私の聞いた話てはかなり強い魔術師らしいので。」
「そこに俺は入ってなーい」
「マイルドは此処に居なーい」
「取り敢えず家に入ってお茶でもしなーい?」
「テンションバグってますよ。まぁ外は危なさそうなので行きます」
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