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18話 氷
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「...って事があって、俺はマイルドがまだ生きていると考えています。けど亡架乃ってロリは滅茶苦茶に強かったし。。」
「因みにそいつは車椅子だったか?」
「髪色は緑黒い色をしていなかったか?」
「いいえ白髪の活きのいいロリでしたよ」
発狂中だったから余り覚えてないけど。
「言い方が気持ち悪い」
「しかし…そうか、マイルドは我に噓を吐いていなかったのか...」
「嘘??」
「嘘だ。山田はマイルドの母親が殺された話は聞いているのか?」
「聞いています。今回マイルドが戦った理由も母を殺した相手が突然目の前に現れたので仕方ないと思います」
「我も大切な人の命を奪われているなら同じく、怒りに捕らわれ正常な判断は出来なくなると思う」
そう言う巴月の目は今にも人を殺してしまいそうな程に冷たく、遠くを見ていた。
「結果的に中村という人間は死んでしまったが、実力的に見ても中村が死ぬという事象は変えられなかっただろう」
「マイルドが嘘を吐いていないかの話は過去にマイルドと…長くなりそうだ」
「長くなりそうなんですね」
「今長話をするつもりはないので簡単に要約すると、マイルドの師匠はマイルドが幼い頃に死んだ筈の母親だった。」
「そして我の師は恥ずかしながら我と恋仲にあった...が、両者が同日同じ時間同じタイミングでマイルドは母を、我は想い人を殺された」
「...。」
さっきの目はそういう…。
「マイルドの母であるザイラ・トリアイナは息子の目の前で跡形も無く凄惨な死体となり、我の師である浅倉 永遠(あさくらとわ)は我が会った時には全身氷漬けで立ち往生していた。」
「我が触れた瞬間、その場には最初からは何も無かったかのように木端微塵となってしまった。」
「我方の目撃者は人通りの多い街中である筈が、彼女が殺された瞬間は誰も見ておらず通行人も監視カメラの目にも映っていなかった。」
「犯行の目撃情報が無い。なら犯人を探すことは出来ない…のか、」
考え込む山田を横目に巴月は話を続ける。
山田の行動も考えも全て気にしていないのだ。
「だが彼女が手に持っていた小袋に近くの店のロゴが入っていた。」
「彼女を殺した犯人を追う為に蜘蛛の糸を縋る思いで我はその店に向かうと、店の店員が彼女と話をしていた者の姿を覚えていた。」
「どんな、人だったのですか?」
「車椅子に乗った女で黒髪に緑色をしたメッシュが入り、ワイシャツの下には顔以外の肌を隠すような首元から爪先まで巻かれた包帯、深海のように青く底の見えない濁った瞳...という特徴があったらしい。」
「怪しい。」
「店内で彼女とニコニコ笑っていた女は何か独り言を呟くと真剣な面持ちで店を出たらしい。」
「様子を見ていた店員は女の表情に悪寒を感じたそうだ。」
「はい、」
「それで気になった店員は外を覗いた...外は暑い夏、打ち水は太陽光と熱の籠った舗装に負けてすぐにでも蒸発してしまう炎天下だったのにも関わらず、日陰になっていない歩道で何かが光っていた。」
「それが何か気になって......1歩2歩と近付いてやっと気が付いた、人が凍っていると...」
「生きた人間が真夏の猛暑に氷漬けになっている異常な光景を目にした人々は身に余る経験したことの無い恐怖でほぼ全員が発狂し、店員もまたその中の一人だった。この話を聞けたのは事件から数週間後だった」
「話が伸びてしまって申し訳ないが、我はその亡架乃の外見をマイルドから嘘を吐かれていたらと思っていたんだ。もしマイルドが母の仇として追っている亡架乃が店員の見た女だったらと思ったが、違うようだ。」
「もしもマイルドが巴月さんの彼女さんを殺した人を殺したとしたらどうしますか?」
「疑っていたのなら尚更その後のことは決めていたと思います」
「どうだろうか。『仇を取ってくれて、ありがとう』と言えるかは今じゃ分からん事となってしまったが、結果的に違う人物だったから我としては未だ落ち着く事は出来ない。」
「山田の話を聞く限りで亡架乃という者は氷の魔術を使う殺人鬼で何の為か【源魔晶】を狙って魔術師を狩っている...そんな大量の【源魔晶】を使うとすれば儀式魔術による神格の召喚か、」
「しかし長期に渡っての連続大量殺人なら何かの地球外生命体を飼っているのかもしれないな」
「例えば何が、」
「思い当たるとすればティンダロスか星の精…あとは我よりマイルドの方が詳しいと思っている」
「だが人間が地球外生命体を使役するなら自身の魔力量じゃ基本的には賄いきれないだろう、我も【源魔晶】を扱うが魔術師の心臓となると魔力量は我が使用する物の比では無い筈。」
「勝手な我の考えだが聞いてきた限りその亡架乃という者、我の追っている人物と接点がありそうだ」
「人1人を凍らせて殺す魔術、ほぼ同時の殺害に両方の事件が氷魔術である点」
「俺も巴月さんと同じ考えです…使役しているのが何であれその生き物が人間の姿をして貴方の彼女を襲った可能性が高いと思います」
「と、言うことで話疲れた我は寝るが好きに寛いでくれ」
「部屋は好きに使うといい。」
「え!?」
「真剣な話終わったんだけど??」
「今後このような話は無いと思え…我は話すのがストレスだはんで、眠くなって来た。それに標準語もタゲ長い時間使って既にキツい」
と言って庭の方へと巴月は歩いて行く。
そして向かった先は鹿威しのある池のほとり。
巴月が鹿威しの横に在る人では持つことの出来なさそうな岩を軽く持ち上げると梯子の頭が下から突き出しており、近くまで行くと分かるが地下に人の入れるシェルターのような部屋がある。梯子に手を掛けて巴月が「そういえば」と突然忘れていた話を思い出したかのように山田へと質問を投げる。
「Youはどうして青森に?」
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