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16話 源魔晶
しおりを挟む青森県五所川原市に到着する手前の道の駅にて、どうせ帰りは土産を買えないと踏んだ山田と腹が減ってきた野原が昼食がてらの休憩に入る。大分から此処まで来るのに急がず焦らず安全運転で来たので4日程掛かった。
「も~~~長い、長いよマイルド」
「今何回目だ!?」
「俺はマイルドじゃねえ!野原だ!」
「えーえーお友達じゃなくて申し訳ありませんねえ!」
「東北土産にきりたんぽってどうかなマイルド」
「YOUは記憶喪失or鶏か?」
「マイルドは死んだんだ…相手がかの有名な殺人鬼、魔術師殺しの亡架乃じゃ幾ら等級の高いマイルドでも負けると俺は思うぜ」
「葬儀は強制参加なのか?」
「通勤手当はでるのか?」
「お前ら友人じゃなかったのか?!」
「無料で行けよ…」
「おい、通勤手当は俺につけろよ」
「死んだら友人もクソもないだろうが!嘘だよ!そんなこと思ってないからね、マイルド君は仲良くしようねーん」
「お悔みお悔み。所で、あのロリそんなに強いのか??」
「強いなんてもんじゃなねえよ。奴は年間数百の魔術師を殺して回っている、ほぼ魔術師殺しだ」
「自身の目的の為なら一般人でさえ殺す超連続殺人鬼だ。」
「お前も知っているように魔術師ってのは何種類もいる…何処にも所属していない野良の魔術師にマイルドのような国の機関に所属する魔術師、俺みたいな戦闘に参加するだけの技量が無い為に補助要員の一般魔術師。」
「強さを大まかに言えば、一般人<自衛隊・一般魔術師<機関所属の魔術師や野良の魔術師ってな所だろう。ついでに地球外生命体は大体の個体が戦闘経験のある魔術師より強く、そもそも見た瞬間に発狂して人生ゲームオーバーだってあり得る。」
「そのロリはマイルド以上、地球外生命体と同等って所だろ。バックに何が居るかなんざ考えたくないね」
「マイルドはイージスでどのくらい強さなの?」
「そんなに強そうには見えないけど」
「上中下の中の上じゃねえか?」
「アイツは去年の任務完了数が日本のイージス内で2位、世界で4位の成績だ。」
「え、強くね」
「任務についてだが、一般魔術師に分類される俺は基本送迎か結界を張るくらいだ。」
「マイルドやお前は月に最低でも3件受けなければ給料が下がる…そして上からの指名された任務は絶対だ。」
「失敗や途中放棄は重い罰若しくは70万以下の罰金を払うことになる。」
「まあ基本マイルドクラスが担当するから俺達には縁のない話だ。あと任務以外で何かしらの事件解決叉は地球外生命体の駆除には手当、ボーナスが付く。」
「イージスのお抱え一般魔術師の数は分からないが上中下の《上中》は世界で約110,000人、日本で10,800人」
「アイツがイカれてるのがよくわかるだろ」
「じゃあもうあのロリに誰も勝てないじゃん」
「マイルドに無理ならもう無理よ。傷ついていないけど凍った足の古傷が痛むよ、あのロリ何が目的なんだよ…中村も死んでしまったし、」
「目的は知らねえが殺害した魔術師の心臓を抉り出すって話だな。」
「一説によると魔術師の魔力は心臓部に蓄えられていて、各個人が生まれつき持っている魔術式が組み込まれているらしい」
「イージスの研究員が前に子を孕んだ鼠の心臓に魔力と簡易な魔術式を流し込んで、産まれた鼠が魔術を扱えるか実験したことがある。」
「結果、誕生した鼠は魔術を本能的に理解し簡単なものであれば扱う事が出来た」
「ほえぇ」
「その後ある研究員が思った。魔力や魔術式の入っている心臓の中身が知りたい、と。」
「生き物の心臓は心筋って筋肉で出来ていて、心筋が収縮・拡張を繰り返して血液を送ったり心腔内に血液を吸い込んで体の全体に血液を循環させている。」
「要は生けるポンプってことだな。」
「死んだ魔術師の心臓を取り出して見たことは何回もあっただろう、けれどほんの微量の魔力は残っていても魔術式は何度解体しても見付からなかったらしい。」
「魔術師が死ねば体内、心臓部に保存された魔術式は消える。」
「そう。魔力を持つ魔術師が死ぬと持っている魔術式は跡形も無く消える…ならば生きている新鮮な心臓であれば、今も脈打つ心臓の中に魔術式を有する何かしらの記憶媒体が存在するのではないかと考えた」
「勿論、生きた魔術師の心臓を生きたままの状態で胸を割いて取り出したり、肉を掻き分けて抉り出すことは倫理的にアウトだ。ここで登場したのが魔術を扱える鼠君だ。」
「研究員は鼠に他の鼠の心臓を移植して生きながら魔術式のある心臓を手に入れた」
「ド○クエみたいな言い方」
「コホン……。その小さい心臓にメスを入れ、中を確認してみると入っていたのは厚さ0.3mm程のガラス片。色は翡翠色で顕微鏡で観察してみると宝石のように美しくこれが魔術式を記憶しているものだと後に結果が出た。」
「そしてこの心臓から発見された石を【源魔晶】と呼んだ。」
「【源魔晶】…。亡架乃はこれが目的で?」
「恐らくな。この石には魔力が大量に含まれている」
「そして死ぬと同時に【源魔晶】は形を崩して魔力は流れ出し続ける。一緒に魔術式も外に流れて消えていくんだろう」
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