FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

文字の大きさ
上 下
16 / 29

15話 ベリースモールdick

しおりを挟む

場面は変わりマイルドと亡架乃。

爆破された資料室内は真っ黒に焦げて、中にあった書類や家電類はあちらこちらに散乱している。
亡架乃が居た辺りに中村の掘った穴が有るが、先程のガス爆発時に咄嗟の判断で亡架乃が穴の中でやり過す事を見越して跳弾していた弾丸を穴の中に仕向けており、事前に匂いのキツい香水でガス臭さを消すことで亡架乃が充満したガスに気が付いたのは爆発直前。

穴へ降りる瞬間に気が付いた亡架乃は、今更猶予も無いので傷覚悟で銃弾の雨を喰らいつつ地面に叩き付けられ、起き上がった所に上からマイルドが顔を出す。

「どうだ?見下ろされる気分は…屈辱的に思うだろう?」

「別に?しかしまぁ、穴の中で銃弾に跳弾させて置くのは良い案だと思うよ」
「めちゃくちゃ痛かった。これでマイルドも気が晴れたみたいだし、俺の話を聞いてもらおうかな?」

「気が晴れる?」
「笑えない冗談はよし子ちゃんだ」

「死語だよそれ」
「聞きたくないなら別に構わない。君の家族を殺せば、君は言うことを聞くのかな?」

「俺が今お前を殺せば家族は救われるよな」

「それが出来ないから、マイルド君の母親は死んだんだろうね」
「不出来に育てた親の責任だ。なら悪いのは母親だから、俺は"毒親"から君を救った英雄なのかもしれないね」

「殺す」

「殺してみろよ」

2人だけの空間は山田が居た時より格段空気が重く、張り詰めるような緊張感が走る。

一触即発の空気。

拳銃を構えて撃つまでのコンマ何秒で眼前の敵の脳幹を撃ち抜けるだろうか、それでは確実に殺すことが出来ない為、自身の固有魔術で仕留めに行くかマイルドは迷う。
此処で仕留めることが出来なかった後のリスクを踏まえて判断が鈍った。
マイルドが選んだのは固有魔術、高火力で押し切るつもりのステージ3の詠唱を口ずさむ。

「紅い門番、9の鍵、巨z...ッ!」

「この近距離で__"儀式魔術"の完全詠唱は悪手だと思わないかい」

ほんの一瞬の出来事ではあるが突然、下から突き上げるような氷塊にマイルドの体は天井付近の壁へ磔状態にされ、固有魔術の詠唱を全身の激痛が止める。
先制攻撃、そしてこの戦いの終止符を打ったのはマイルドでは無く亡架乃の氷魔術だった。

「…クソッ」

動くことが出来なくなったマイルドに穴の中から、氷で生成した柱により勢い良く飛び出した亡架乃がニコニコして話し掛ける。

「これが実力差ってやつだ」
「実力差を埋めるにはレベル上げが必要だ。最近俺はゲームを始めてね、修練の間とか入ったら強くなるやつ。」
「マイルドに行ってもらおうかなと思って」

「それお前にメリットあるのか?」
「簡単に騙されると思っているなら別の人間に当たった方が良いと思うが?」

「どうだろう。強くなりたいなら行くべきだと思うし、手の届く範囲で誰かに死なれるのは嫌だと思える君は行った方が良いと思うけど」

「言ってる意味の半分も理解出来ない」
「俺にお前が持って来たよく分からない施設にでも潜入してくれとか__そういうのなのか?」

「潜入じゃない。行くんだよ」
「強制するのは嫌いなんだが、君が行きたくないなら仕方無いことだってある」
「抵抗出来ない今の君を送り出してあげよう。」

そう言って亡架乃は懐から取り出した黒い立方体の箱。
外観は結婚指輪をいれるような箱で表面には何も柄は描かれていない。

それをマイルドに見せ、それをマイルドの目の前で開く。
マイルドは何故か亡架乃に母親の影を見る。憎く殺したい筈の相手なのに、そこに母が立っているように感じた。

箱の中に有ったのは誰かの眼球…、通常人間の瞳は瞼によって開閉し外の景色を視認するが、
箱の中身の眼球は剥き出しで、包まれているの瞼の皮は箱の内側に細い釘で打ち付けられて何処にも繋がっていなく信号も送られてはいないのに、眼球は箱を開いた瞬間からぐるりと室内を見回してからマイルドと目を合わせていた。

眼球は眼球自体の表面から分泌された何かにより濡れて見つめていると吸い込まれそうになるが、目を向けた今__マイルドは目を離すことが出来ない。

「気持ち悪っ!」

「目が合ったよね。おやすみマイルド、長い夢にさようなら」

「おいどういう……」
「…………。」

視線の交差約4秒。気が付けばマイルドを磔にしていた氷は消え失せており、気を失ったマイルドが床に叩きつけられる。
…が、マイルドは目を覚まさない。きっと彼が起きた時、全身の痛みに悶えるがそれは後の話。
倒れたマイルドを横目に亡架乃が携帯を取り出す。時代に乗り遅れたガラケーで誰かに連絡をしているが、それが誰なのか何を話しているかは分からない。

「健闘を祈っている…と伝え忘れたがいいだろう。」
「これで約束は果たされた筈だ、《ザイラ・トリアイナ》。次の行動を終わらせよう」

誰も聞いていない部屋から携帯を閉じた亡架乃がうつ伏せのマイルドを残してその場を後にする。
出て行った資料室には誰も居ない。倒れていたマイルドは忽然と姿を消し残ったのは服のみ、彼が一体何処へ行ったのかは亡架乃にも分からない。

…………………

箱の中身を見たマイルドは急激に意識を失い気が付けば見知らぬ白い部屋。
床はコンクリートで天井から吊り下がった白熱灯が今にも消えそうな光源としてあり周囲を見回しても窓も棚も何も無い部屋、強いて言えば起き上がったマイルドの背後にドアノブの付いていない扉が1つ有るだけ。
首を動かしただけなのに交通事故にでも遭ったかのような全身に響く激痛がマイルドを襲う。
此処に来る前の記憶は山田悠斗を魔術師にする試験から野原の運転するタクシーで帰るところまで、そこからはゴッソリと何も無かったかのように記憶が抜け落ちている。何なら服すら着ていない。
しかし名前や身分、自分の目的は全て知っている。

「あの後…思い出せん。」
「oh、my favorite dick...寒がりさんめ」



To Be Continued...
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

続・歴史改変戦記「北のまほろば」

高木一優
SF
この物語は『歴史改変戦記「信長、中国を攻めるってよ」』の続編になります。正編のあらすじは序章で説明されますので、続編から読み始めても問題ありません。 タイム・マシンが実用化された近未来、歴史学者である私の論文が中国政府に採用され歴史改変実験「碧海作戦」が発動される。私の秘書官・戸部典子は歴女の知識を活用して戦国武将たちを支援する。歴史改変により織田信長は中国本土に攻め入り中華帝国を築き上げたのだが、日本国は帝国に飲み込まれて消滅してしまった。信長の中華帝国は殷賑を極め、世界の富を集める経済大国へと成長する。やがて西欧の勢力が帝国を襲い、私と戸部典子は真田信繁と伊達政宗を助けて西欧艦隊の攻撃を退け、ローマ教皇の領土的野心を砕く。平和が訪れたのもつかの間、十七世紀の帝国の北方では再び戦乱が巻き起ころうとしていた。歴史を思考実験するポリティカル歴史改変コメディー。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...