FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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15話 ベリースモールdick

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場面は変わりマイルドと亡架乃。爆破された資料室内は真っ黒に焦げて、中にあった書類や家電類はあちらこちらに散乱している。
亡架乃が居た辺りに中村の掘った穴が有るが、先程のガス爆発時に咄嗟の判断で亡架乃が穴の中でやり過す事を見越して跳弾していた弾丸を穴の中に仕向けており、事前に匂いのキツい香水でガス臭さを消すことで亡架乃が充満したガスに気が付いたのは爆発直前。
穴へ降りる瞬間に気が付いた亡架乃は今更猶予も無いので傷覚悟で銃弾の雨を喰らいつつ地面に叩き付けられ、起き上がった所に上からマイルドが顔を出す。

「どうだ?見下ろされる気分は…屈辱的に思うだろう?」

『別に?しかしまぁ、穴の中で銃弾に跳弾させて置くのは良いと思うよ』
『めちゃくちゃ痛かった。これでマイルドも気が晴れたみたいだし、俺の話を聞いてもらおうかな?』

「気が晴れる?」
「笑えない冗談はよし子ちゃんだ」

『死語だよそれ』
『聞きたくないなら別に構わない。君の家族を殺せば、君は言うことを聞くのかな?』

「俺が今お前を殺せば家族は救われるよな」

『それが出来ないから、マイルド君の母親は死んだんだろうね』
『不出来に育てた親の責任だ。なら悪いのは母親だから俺は君を救ったのかもしれないね』
『考え方の違いだろう』

「殺す」

『殺してみろ』

2人だけの空間は山田が居た時より格段空気が重く、張り詰めるような緊張感が走る。
一触即発の空気。拳銃を構えて撃つまでのコンマ何秒で眼前の敵の脳幹を撃ち抜けるだろうか、それでは確実に殺すことが出来ないから自身の固有魔術で仕留めに行くかマイルドは迷う。
此処で仕留めることが出来なかった後のリスクを踏まえて判断が鈍った。マイルドが選んだのは固有魔術、高火力で押し切るつもりのステージ3の詠唱を口ずさむ。

「門番、9の鍵、巨z...ッ!」

『この近距離で"儀式(魔術)"の完全詠唱は悪手だと思わないかい』

ほんの一瞬の出来事ではあるが突然、下から突き上げるような氷塊にマイルドの体は天井付近の壁へ磔状態にされ、固有魔術の詠唱を全身の激痛が止める。先制攻撃、そしてこの戦いの終止符を打ったのはマイルドでは無く亡架乃の氷魔術だった。

「…クソッ」

動くことが出来なくなったマイルドに穴の中から氷で生成した柱により飛び出た亡架乃がニコニコしながら話し掛ける。

『これが実力差ってやつだ』
『頭の悪い君でも理解出来たと思うけど、今のまま何度俺にかかってきた所で返り討ちにされるだけだ』
『今日は話をしに来たから見逃してやるけど、今後会った時は殺してしまうかもしれないよ』
『あとこれから俺が言うことを聞いてくれれば、君が今より強くなれるとしたらどうかな?』

「それお前にメリットあるのか?」
「簡単に騙されると思っているなら別の人間に当たった方が良いと思うが?」

『どうだろう。強くなりたいなら行くべきだと思うし、手の届く範囲で誰かに死なれるのは嫌だと思える君は行った方が良いと思うけど』

「言ってる意味の半分も理解出来ない」
「俺にお前が持って来たよく分からない施設にでも潜入してくれとかそういうのなのか?」

『潜入じゃない。行くんだよ』
『強制するのは嫌いなんだが、君が行きたくないなら仕方無いことだってある』
『抵抗出来ない今の君を送り出してあげよう。』

と言って亡架乃は懐から取り出した黒い立方体の箱。外観は結婚指輪をいれるような箱で表面には何も柄は描かれていない。
それをマイルドに見せ、それをマイルドの目の前で開く。中に有ったのは誰かの眼球…通常人間の瞳は瞼によって開閉し外の景色を視認するが、箱の中身の眼球は剥き出しで包まれている筈の瞼は箱の内側に細い釘で打ち付けられて何処にも繋がっていなく信号も送られてはいない筈の眼球は箱を開いた瞬間からぐるりと室内を見回してからマイルドと目を合わせていた。
眼球は眼球自体の表面から分泌された何かにより濡れて見つめていると吸い込まれそうになるが目を向けた今、目を離すことが出来ない。

「気持ち悪っ!」

『目が合った。おやすみマイルド、長い夢にさようなら』

「おいどういう……」
「…………。」

視線の交差約4秒。気が付けばマイルドを磔にしていた氷は消え失せており、気を失ったマイルドが床に叩きつけられる。
…が、マイルドは目を覚まさない。きっと彼が起きた時、全身の痛みに悶えるがそれは後の話。
倒れたマイルドを横目に亡架乃が携帯を取り出す。時代に乗り遅れたガラケーで誰かに連絡をしているが、それが誰なのか何を話しているかは分からない。

『健闘を祈っている…と伝え忘れたがいいだろう。』
『これで約束は果たされた筈だ、《ザイラ・トリアイナ》。次の行動を終わらせよう』

誰も聞いていない部屋から携帯を閉じた亡架乃がうつ伏せのマイルドを残してその場を後にする。
出て行った資料室には誰も居ない。倒れていたマイルドは忽然と姿を消し残ったのは服のみ、彼が一体何処へ行ったのかは亡架乃にも分からない。

…………………

箱の中身を見たマイルドは急激に意識を失い気が付けば見知らぬ白い部屋。
床はコンクリートで天井から吊り下がった白熱灯が今にも消えそうな光源としてあり周囲を見回しても窓も棚も何も無い部屋、強いて言えば起き上がったマイルドの背後にドアノブの付いていない扉が1つ有るだけ。
首を動かしただけなのに交通事故にでも遭ったかのような全身に響く激痛がマイルドを襲う。
此処に来る前の記憶は山田悠斗を魔術師にする試験から野原の運転するタクシーで帰るところまで、そこからはゴッソリと何も無かったかのように記憶が抜け落ちている。何なら服すら着ていない。
しかし名前や身分、自分の目的は全て知っている。

「あの後…思い出せん。」
「oh、my favorite dick...寒がりさんめ」



To Be Continued...
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