FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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14話 別行動

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「こんなことをして、一体何が目的なんだ」

今にもマイルドが飛び出しそうな横でそれを制するように手を伸ばし、口を開いたのは恐怖に支配されかけている山田悠斗。

『"何が"とかそんな物は無いんだよ山田君』
『俺は俺の目的で此処に居て、君の横でブチギレてる男の母親を手にかけた俺を殺そうとしているマイルドが居る』

「殺されに来たのか?」
「人を弄び煽り侮蔑して楽しいのか?」
「マイルドの殺意を煽って死にたがりはどっちだ?」

『楽しい。面白いと思わないのか?少なくとも俺は人間を無様に殺すのは気分が良い』
『まぁ目的は無いのに変わりは無いがマイルド君に伝えたいことが有るんだ。でもほら、彼は俺を殺したいと憎い憎いってなっている。』
『少しくらい遊んでやらないと餓鬼は黙って言うことを聞かない物だろう?』

「ベラベラと…うるせぇんだよ殺人鬼」
「母さんを、友人を、何人殺して此処に来た?」
「誰がお前の話に耳を貸すんだ…人殺しの言葉を聞く奴なんざ居ねぇんだよ!!」

突然マイルドが拳銃を抜き、自身の後方に向かって全弾を放つ。亡架乃を狙わず背後に撃ち込むマイルドの姿に山田は何をしているのか理解出来なかったが、トリガーを引く瞬間に彼が口走った一言が魔術であると分かった。

「【no one needs5ブチ切れたぜ】《復讐に燃えろ》」

撃ち終わりとほぼ同時に亡架乃へと駆け寄り近接戦闘を仕掛ける。
背の高いマイルドと小さい体の亡架乃では体格差が有り過ぎる為に直接当てるとすれば蹴り技となるが、長い足のリーチ内に亡架乃を捉えるには至らない。軽いステップと動きを予測して繰り出される氷壁にマイルドの攻撃は防がれるので追加で足元を狙って2発銃撃。
避けようと飛び上がった亡架乃に放った拳の隙を狙われて脇腹を氷の魔術により抉られ、マイルドのスーツジャケット内に有った昔のキャバ嬢が付けてそうな香水瓶が地面に叩き付けられ割れる。
激しい攻防戦の中、マイルド達の周りから室内全体にフレグランスの鼻をつく匂いが拡がっていく。

『趣味悪くねぇかマイルド!』
『副業に風呂屋でもやってんのか?』

「地獄でフーゾク嬢でもしてろよ糞餓鬼」

『俺はお前と同じ26歳だ』
『まさか初級魔術しか使えないとか、笑えない冗談は辞めてくれよ?』

「さぁ?」
「使い方にもよるだろう…なッ!!」

先程放った銃弾達は室内にある全ての物体を"障害物"として設定され、発射した後から現在も火属性を纏いながらマイルドから離れた箇所で跳弾を繰り返している。薄い氷壁など手軽に貫通する威力の銃弾は魔術師の指示を待ち、反射を繰り返す度に速度が上がり今では中村を捉えた時より凄まじい音を立てて資料室内や廊下を駆け巡っている。
亡架乃も細心の注意を払いながらマイルドの攻撃を防いでいるが、徐々に押され始めるのは自身の視野内と死角をチラチラと行ったり来たりする弾丸に気を使っている為。更にマイルドの放つ蹴り技の合間を縫って跳弾している弾丸が連続して突っ込んで来るので捌き切れない。

『"1人じゃ何も出来ない"を"1人で全て解決"に変えたのか。雑魚の考え方にも色々あるんだな』
『…!?(この匂いは!!)』

「少し暖まって行けよ」

そろそろだ、と感じたマイルドは突然近接戦の途中にバックステップで距離を空けて山田に駆け寄ると山田を抱えてそのまま廊下に飛び出した。

「な、なんだ!?」

何が起きたのか知る由もない山田を無視してマイルドが指で音を鳴らす。次の瞬間、轟音と共に資料室の扉から火柱が横向きに飛び出した。
マイルドは戦闘中に何発かの銃弾で室内にあるガス管を撃ち抜いてガスを充満させ爆破したのだ。

「こんなんで奴を殺せるなら誰も死んじゃ居ねぇからな…俺が亡架乃とやり合っている間に俺の友人に会いに行ってくれ」
「時間は稼ごう。どうやら彼奴は俺に用があるらしい」
「俺と居ればお前は俺を煽る道具として無惨に殺される確率が高い……心配するな、俺は死なん」

「俺が生きる為に死んでくれ」

「いや何で俺、身内に死ぬ事望まれてるの?」
「てか早く行け」

と何か書かれたメモを1枚山田に渡して背中を向ける。少し焦げた扉に手を掛けてマイルドが少し笑った気がした。

「巴月さんに宜しく言っといてくれ」

扉を閉めたマイルドの有志を無駄にすることは出来ない。入って来たマンホールまで戻ると来た時とは打って変わり、一般車が道路を普通に走り歩道には市民が歩いている。
道路のド真ん中で立ち上がった山田に蛇行運転のタクシーが背後から迫り撥ねられそうだったが、そのタクシーは山田の隣に停止しハザードを焚いて「乗れ」と後部座席の扉を開く。乗り込んだ山田に話し掛けたのは帰った筈の野原。

「マイルドからの不在着信2回。掛け直しで出る事は無いのなら下で何かあったんだろうと此処に来たが、何かあったのか?」

「マイルドと亡架乃が下でやり合ってる。」
「俺はマイルドに巴月って人の所へ会いに行けと言われた」

「あーー、行きたくねぇ」

「途中でハンバーガー奢るから送ってってくれ」
「因みにこの人何処に住んでるの?」

「青森」

「マジか此処大分だぞ」
「クソッ、何時間掛かると思ってんだ」
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