9 / 32
8話 電話
しおりを挟む食屍鬼が塵となり何処からともなく吹いた風により流れ目の前から消えた後、マイルドは背後に居る山田に魔法陣を消すように指示する。
「この魔法陣足で踏みにじれば消えるから消してくれ」
「消さなければ又此処から召喚される可能性が有る。」
「…。」
「おーい」
「聞いているのか?」
振り返ると山田が餃子を食って携帯をいじっていた。見た感じ携帯はiPhone15、正面で見ても横から見ても下から見ても何も見えないフィルター。
しかしそんなことはどうでもいい。
「消滅した食屍鬼は誰かに此処へ召喚されたのだろう」
「今回の任務について山田君の見解を聞かせて貰おうか」
「一体誰がどんな目的で化け物を呼び出したのかについて俺は知らないが、そこに転がってる女の子の死体を見るに死んだのは最近…両親が先に逃げたか食われたのかも分からない」
「けれど化け物は女の子を大切に扱っていた筈だ。皿の上のパンは家庭の真似事か、どんな生き物にでも母性があるらしい」
「家族写真が腰の位置にあったのは女の子視点だったから。家族愛に飢えていたのかも死んだ彼女に聞いたところで返事は無い。」
「そうだね、今は誰かさんの作った餃子が美味すぎて脳が死んでる」
「そうかい」
「大体はそんな難しいこと考えたくないから報告書にはテキトーに書いている」
「どうせ今を生きる俺達には関係無い話だ」
「間違いない」
「さぁ餃子も食ったことだし帰るか。」
山田が魔法陣を綺麗に消すと1階の出入り口は普通に開き、2人は外に出た。
オレンジ色の空を見て少し気分が晴れた気がした山田が視線を下ろすとそこに居たのはタクシードライバーの野原。
ハンバーガーを片手に車の手入れをしている。
「どうやら終わったみたいだな」
「まったく、今日は随分と時間が掛かったじゃねえか」
「新人教育も大変だな…俺なら後輩なんて真っ平御免だね」
「時間が掛かった理由について言及するのは辞めた方がいい」
「なんとかヲーレさんが突然狂ったように餃子を作り出して、まさか敵にもご馳走するんだから、そりゃ遅くなるわ」
「お前も戦闘そっちのけで食ってた癖に」
「誠に美味でした」
「俺は戦闘中、見たことの無い化け物を前にして口の中では中国4000年の歴史を感じていた」
「中国で習った訳では無いから歴史云々は…」
「早く帰ってカフェオレ飲もう」
タクシーに乗ってからマイルドは顔を項垂れて眠りにつき、山田は窓の外に目を向けていた。
何分くらい経ったのだろうか車に乗った山田は車窓から見える景色がいつの間にかトンネルを抜けた辺りから変わっているような感覚に襲われる。
隣に座るマイルドと運転手は何とも思ってはいなさそう、というかマイルドに至っては口を開いて眠っている。
車が車道に駐車し、山田とマイルドは車から降りると運転手はそのまま車を後退させて元来た道を戻って行った。
少しの間を置いてから突然マイルドが話し始める。
「新人魔術師の教育に先輩魔術師が何故配置されるか…それは俺がイージスに入る数年前、新人魔術師を君のように育てるつもりで無作為に5人魔力の匂いを知った者をボスが選びあの部屋に集めた。」
「ほう」
「本来はそのまま集められた5人で簡単な任務を行わせる筈だった……簡単な任務、魔力で操作されたカカシを殴らせるだけの誰にだって出来る簡単な仕事さ。」
「そんで?」
「だが、紛れ込んでたんだよ。5人の中に1匹、人間の血が通っていない悪魔が潜んでいたんだ。」
「さっきの化け物的な?」
「……さて任務をこなしたばかりだが、これから山田君には魔術式を受け取って来てもらう。」
「え、これナレーション?確定のセリフ?」
「マイルド話通じなくなってない?」
「魔術式って何、せ、説明無いっぽい感じか」
「この足元のマンホールから入って…」プルル
「無い感じだ」
「マンホールから入って、」プルルルル
マイルドの携帯に着信アリ。
嫌な予感が冷や汗となって流れた気がしただけ。マイルドが嫌そうに携帯を耳に当てるとスピーカーにしている訳でも無いのに耳が壊れる程の爆音、山田も聞いたことのある声で話し始める。
『んーーーちょっと悪いんだけどさ、山田くんの魔術式の適正を測ろうと此処に君達を呼んだんだけどねぇ』
「はぁ…」
『なんと外生物研究所から2年前くらいかな、君が対峙したことのある«シャーノクル»が逃げ出してしまったんだ。』
「シャノークル?」
『隣にいる山田悠斗君は生きているんだろう?ならもう魔術師として扱っても良いだろう』
「シャノークル情報無しか?」
「で、これ絶対疲れるヤツだろ」
「さっきの俺と同じ状況になっとりますやん」
『マイルド君に任務を与える…緊急事態の為、早急に取り掛かってもらおう』
『あと新人がもう1人居るからn…』ガチャリ
「あ、切られた」
「新人?山田って荷物の他にも俺に持てってか?」
「積載重量オーバーだ。山田、帰れ」
「帰れるか!!」
「歩いて帰れってか!?、てかここ何処なんだよ!!」
「此処は…」とマイルドが足元に在ったマンホールを開くと下には最近何処かで見たことのある地下へと続くハシゴ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる