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6話 敵対オジ
しおりを挟む「で?下に化け物っぽい奴が鎮座していたから、上に戻って来たと。」
「Are you Wizard?」
(「あなたは魔術師ですか?」)
「I'm Mild Cafe Wore !」
(「私はマイルド・カフェ・ヲーレ」)
「Give me a cafe au lait quickly, or I'll kill you.」
(「早くカフェオレをくれ、さもないと殺すぞ」)
「お前ほんとにイギリス人なの?」
「今カフェオレなんか持ってねえよ」
「イギリス人の母に日本人の父親だから俺はハーフだ」
「トッテモ、エイゴムズカシイネ」
「片割れの情緒不安定すぎる」
「下行くか。勿論先頭はマイルドで」
「OK…」
一体どちらが先輩で年上なのだろう。
2人で梯子を降り地下にあるだだっ広い部屋へと足を進めると、先程マイルドが来た時と同じようにローブを着た大男は此方に背を向け胡座をかいている。よく観察すると胡座の上の女の子は呼吸で背中を動かす大男に比べて殆ど動いていない、いや止まっている。
山田やマイルドが皿の破片等を座り込んでいる大男の近くに投げ付けても微動だにせず未だ変わらず魔法陣の上で此方を気にせず座っている。
「これ近付かないと戦えないタイプの敵?」
「マイルドの拳銃で背後から脳天ぶち抜けば良くね??」
「いや一応敵対なるか分からないし、話し掛けるのはどうだろう」
「そして話し合いになれば日本一の論争厨探偵 山田悠斗君の出番、これはもう山田君に行ってもらう他に選択肢は無いね」
「俺《忍び歩き》無いよ」
「足忍ばせ無くても普通に話し掛けたらいいんじゃないか?」
「《言いくるめ》もあるし、行ってこい」
「いや、此処は先輩であるマイルドが行くべきだと思います…喰らえ俺の《言いくるめ》!!」
「命の危険があるかどうか調べるのは、こういう経験が豊富にある魔術師のマイルドが行くべきだと私は神に誓ってそう思いマース」
「行ってきマース」とマイルドが座っている大男に駆け寄って行くと男が此方に気付き、胡座の上に乗せている女の子を優しく床に下ろすと自分の羽織っていたローブを女の子にかける。
それはまるで母親が我が子を優しく寝かしつける所作に見え、ローブで隠れた顔は女の子から優しい物に見えただろう…例えその子が生きていなくても。
大男はゆっくりと音を立てず静かに立ち上がる。
前屈みで、顔は人間より遥かに醜く。耳は尖り、皮膚は重力方向に弛み、体躯は筋肉隆々であるがバランスが悪いくらいに腹周りは細く、手は鋭い爪、足はヒヅメのように割れている。
そんな人間ならざる異形の姿を見てしまったマイルドと山田は(SAN値チェックだったが成功したので)そこまで驚かなかった。
「化け物…なのか?」
「もっとこう、体が天井にぶつかって触手あって的な」
「まぁ資料で見た事あるから分かるけど、食屍鬼だ…グールってやつ。」
「戦ってからでないと分からないが、そこまで強くは無い筈だ」
戦闘開始、食屍鬼は各々に意味は無いような言葉の羅列をブツブツと繰り返しマイルドと目を合わせる。
「くっ…突然頭が割れるように痛い…」
「何か見えない筈の物まで見える気がする!!」
「はぁあ!!ピンク色の鳥が囀っている!!」
「精神攻撃?それとも頭痛にする攻撃?」
「頭痛にする攻撃ってなんだよ、こんな呪文唱えて効果が頭痛?弱過ぎんだろ」
「マイルド全然正気やないか」
「余裕」
「《拳銃》で食屍鬼を攻撃、成功。」
マイルドの放つ弾丸は敵の額を完全に捉えていたが体表が硬いらしく、致命傷にはならない。
「当たった弾が弾かれるか…だが何発かは皮膚を削いでいる。成程、敵の装甲は2って所だな。」
「久しぶりの戦闘だ、楽しませてくれよ!!」
食屍鬼はマイルドからの銃撃を躱す事はせずに受けながらマイルドに鋭い爪で攻撃を繰り出すが、数々の戦闘経験を経ているマイルドからすれば捻りの無い腕のひと振りなど容易く躱せる。食屍鬼の攻撃をバックステップで身軽に躱した所で山田のターンが回ってきた。
「化け物に対して《言いくるめ》を使います」
「話通じる相手じゃないだろ!!」
「化け物さん、ここは穏便に話し合いで解決しましょうよ…貴方も元人間。きっと分かり合える筈は……」
『グォオオ!!』と食屍鬼が山田に鋭い爪で襲い掛かる。
「うんッ。無いよね、知ってた!!」
敵からの攻撃は山田に到達する直前で方向を変え、近くに突っ立っていたマイルドを襲った。
「えぇ俺かよ」
「え、何?食屍鬼さんは山田より俺の方がイケメンだと思った?仕方ねえなぁ!!」
目の前の食屍鬼には知能があると考えたマイルドは「ファンサだ、ハグくらいしてやる」と言い、薙ぎ払うような爪攻撃を体で受け止める。そして間髪入れずに敵の腹部へ銃弾を4発撃ち込み、前髪を掻き上げ…
「時間ですよ。お嬢さん」
とカッコつけたのも束の間、食屍鬼の精神攻撃がマイルドに降り掛かった。
「ぬぉおおおおお!!」
「今度は!ケツがケツが割れるぅぅ」
「いやケツは元から割れてるだろ」
「え、てか何?さっきの臭いセリフ…27の代はバケモンしかおらんのか」
「体が言うことを!!聞か…、、」
と言ったところでマイルドは敵の呪文により精神支配を受け、山田の前に立ちはだかった。
「グへへへェ…地下扉の恨み此処で晴らしてくれようぞ!!」
「私怨じゃねえか」
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