FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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3話 開始の合図

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ガチャ
『もしもし?あぁ、現在この電話はマナーモードになっているか電源が入っていない…美味いなこれ…おっと、可能性があります。御手数ですがもう一度時間を開けて、』

「せめて居留守使う時くらい食うの辞めなさいよ」
「お前が近くでハンバーガー食ってることは分かっている。これ以上食うと体重が120を越えるぞ!観念して車を回しなさーい」

マイルドが電話を掛けた相手は同僚の野原という、魔術師補助員をして生活をしている男だ。
体重119.7kgのハ○リッドのような身体は高級車を何台か買える値がするらしい。

『"仕事"だから、今からそっちへ向かう。』
『けど何故だ?一次試験には次に向かう為の車が用意されてる筈だ…俺が行く必要は無いだろ』
『まさか車を壊した訳じゃないよな??』

「……。」

『嘘だろ…マジか』

「大マジッ」(イケメンボイス)

『カッコつける所じゃないけどな。今行く』ガチャリ

電話を切るとほぼ同時、携帯を仕舞ったマイルドの所にブレーキ音を立てながらイエローのタクシーが駐車した。
運転席に座るドライバーはクチャクチャとハンバーガーを頬張りながらサングラスを少し上げて此方を覗く。

「一体何が壊れたんだ?」

「新人君が鍵回したら鍵穴に根元からボキリさ」

「まぁいいか。ほら、突っ立ってねえで乗りやがれってんだ」

タクシーの後部座席に乗ったマイルドと山田は隣に置かれた大量のハンバーガーに目を奪われているとデブ野原がイラつきながら問う。

「で、何処に行くんだ?」

「ナビに位置情報は送った」
「近くで俺と山田を下ろしてくれればいい。」

「待っていりゃあいいのか?」

「お前が帰ったら俺と山田はどうやって帰るんだ?」

「確かに。」
「後ろのハンバーガーを取ってくれ」

「ほい」と渡すマイルド。横で流れる景色をじっと見つめる山田は緊張しているというより興味が無さそうに思えた。

「到着」
「俺は此処で待っているから、さっさと済ませるもん済ませて来い。あと要らんもん持って来るなよ」

到着した場所は住宅街跡地。山田の携帯のマップには現在地が大分県内で止まることなく動き続けている。他のアプリを開いても何ともないことから位置情報だけがバグっていると考えられる。
山田とマイルドはタクシーから降りると野原はサングラスを外し、未だ手をつけていないハンバーガーを1つずつ投げると早く行けと手を振るった。
きっと彼なりの応援だろうが、車が見えなくなった所で近くに居た野良犬に山田はハンバーガーを食わせた。

「デブに借りは作らない主義なんだ」

「後で言ってやろ~」
「もうすぐ着く筈だ」

歩いている道は元々在った住宅街の細道。辛うじて残っている白線と文字から少年少女達の通学路だったと推測されるが今は特に関係が無さそうだ。
この地は地震の被災地なのだろう。
周囲の瓦礫もかつては誰かが住んで居た家屋の1つと考えられる。周囲に目をやると目の前の家以外全てが倒壊し街というより更地に近い為、見渡す限りの殺風景が広がっている。

「何もねえ」
「自販機さえあれば…」

「カフェオレが売っていればの話だろ」
「あと、そろそろ致死量のカフェインだと俺は思うけど」

「そう言えば亡架乃について調べて欲しいって言ったが、あれは強制じゃないが俺が奴を殺さなければいつかはお前も病を患って苦しみながら死ぬさ」

「どういうこと?」

「凍命病って知らないか?」

「知らない…な…。」

「ニュース見ないのか?」
「まぁ日本じゃまだ感染者が少ないのかもしれないか、通称凍壊命尽症トウカイメイツショウ 。感染源は呼吸器や感染した者に触れることで発症し魔力を限界まで吸われて死ぬ。魔力が無くなった人間は身体内部から凍って最期は皮膚表面がガチガチに凍って砕け終わりだ」

「魔力ってじゃあ…」

「そう、魔力が無い一般市民じゃ感染した時点で死ぬのが確定する。治療方法は無く症状の遅延に必要なのは或程度の魔力量、」
「関係無い話は後回しで…此処が調査対象の廃墟か。」

「その話かなり聞きたいが先に此方を片付ける必要がある」

瓦礫の山にポツンと残った眼前の家はまるで家に意思があるかのように建っている。
廃墟は二階建ての一軒家で二階は既に崩れており、まともに残っているのは一階だけのようだ。
元々玄関だったのだろう苔むした塀の奥にある扉が風も吹いていないのに開いたり閉じたりしており、その怪しい雰囲気は 山田とマイルドを誘っているように思える。

「行きたくねぇ」

「一応2次試験として君を連れて来たんだ」
「調査は2人組、俺と山田のタッグチームで行う」

2人は目星を使い、外観から情報を得ようとした。
山田は失敗し、マイルドは大成功。ここは読まなくても大丈夫だよ。

「なーんも見えない。眼鏡無い?持って来てない?」

「俺はめっちゃ見える!視力15!?になった?」
「月の表面どころかその後ろの惑星まで見えたり、しないですよね」

しませんね。
マイルドはこれまで魔術師として様々な任務をこなしてきた為、私立探偵の山田悠斗より観察力が優れていたようだ。
よってマイルドは通常では見える訳が無い場所まで鮮明に正確に視認する事が出来た。
「2階部分は屋根が倒壊していない箇所には人影も家具も何も無く下に降りる階段は瓦礫で塞がれている」ということが分かり、「1階部分の窓は板で塞がれているので正面の扉から入るしか無いと思う。」と山田に伝えた。

「お前の目、ほぼ透視じゃねえか」

「天の声?これって調査中ずっと?」

いやこの場面だけです。

「扉を開きます」
「一応年上だからね、俺が先頭で行くよ…扉を開く!!」

扉を開こうとドアノブに触れた途端、マイルドは突然名状し難い狂気に満ちた怪物が獲物を待っているかのような錯覚を引き起こしSAN値(正気度)が若干減ったが、「いつもの任務で鍛えられているからか、そんなに怖くない」と言って普通に扉を開いた。

「俺は他人を貶めるような人間じゃないから山田君には『扉に触れ』だなんて言わないよ」

「え、俺全然(SAN値チェック)巻き込むよ?」

「えやばァ…ちょっと近付くの辞めてもらっていいですか」と、言い2人は廃墟の中に侵入した。
2人が扉を開いた儘にして廃墟内を見回すと雰囲気はどんよりとしており、空気が重く少し湿っぽく感じる。そんな中で山田は静かにマイルドの後ろで出口から帰ろうとしているが、山田が扉の方を振り返ったと同時に扉がバタンと閉じ、どれだけ扉を押しても蹴ったとしても開くことは無さそうだ。どうやら現在この扉は物理的に開くこと破壊することは出来ないようだ、と山田は理解する。

「で、出られない!!」

「え?」

「扉が開かない」
「こういうこと良くあるのか?」

「よくある事しかない」
「さて、調査と行こうか」

マイルドは腕を捲り、山田は溜息を吐いた。
調査の始まりだ。
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