FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

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1話 山田とマイルド

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「……で、観光目的じゃ無いんだろ?」

「何故そう思うんだ?」

「そもそもだけどマイルドと初めて会った時でさえ、観光で日本に来ていたと言っていたけど嘘なんだろ?」

「……続けてくれ」

目の前に座るイギリス人は此方を品定めするような鋭い目付きで俺を見ると、ミルク増し増しのコーヒーに口をつける。
俺は息を飲みマイルドはコーヒーを飲み込む。

「日本に観光しにきて拳銃持ってる奴なんかマフィアかテロリストしかいないだろ」
「あの日お前が警察と話をした時、お前は自分がFBIだとかCIAなんて言ってなかった。読唇術からの情報では『この辺の自販機にカフェオレは無いか?』くらいだ、そもそも脇下ホルスターに拳銃を収めて刑事と真向かいに話をしていたのに刑事は気付く所か疑いもせず、頷いて君のスタバの新作の話を聞いていたじゃないか」

「このコーヒー、ミルクが足りない」
そう言ってマイルドはテーブル端に置いてあった牛乳パックを空になるまでカップに注ぐ。

「いや底が見えてるじゃないか、ミルクだけ飲むんか」
「で、君は一体何者なんだ?探偵と名乗っているが探偵は拳銃なんか持たないし、跳弾させて背後から穿つなんて技術は映画でしか見た事が無い。」

「何だと思う?」
「コーヒーカップの中身はコーヒーからミルクになった。君の見解で俺は怪しい外国人から何になるんだい?」
「あと追加のコーヒーを。」

「どんだけ飲むんだ…」

事務所に来てからマイルドが飲んだコーヒーは今で5杯目。テーブルの端にあった牛乳パックは冷蔵庫から予備まで取り出したのに、もう残りは1つになってしまった。

「払えない家賃に比べれば安いと思うが?」

「確かに16万理ある。」

山田はインスタントコーヒーがまだ残っているか食品棚の中を探したが全部使い切っていた為、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出してマイルドのカップに注いだ。

「機密情報開示に加え2ヶ月滞納した家賃の立替……その見返りが120円そこらの缶コーヒーか。舐められたものだなBADEND」

「まだ1話なんだが!?」

「何が1話なんだ?メタいこと言うなよ作者がキレる」
「……そうだな、この名前を知っているか?」
「死亡の《亡》に架空の《架》、あとは普通の《乃》で亡架乃…名前は麗。《亡架乃 麗(なかの れい)》という」

「名前の響き的には居そうな名前ではあるけど、文字見たら多分居ないだろうな」
「一応、俺が持っている資料は頭に入っているつもりだけど再度確認してみるよ」

今まで解決した事件の加害者又は被害者家族名を手持ちの資料から探すものの、マイルドの提示した名前は見付からなかった。

「無いな…知り合いの刑事にも後で聞いておくよ。ただ、俺が知る限りニュースでその名前を見た事は1度も無いね」
「そいつを探して日本に来たのか?」

「そうだ。」

「何をしたんだ?イギリスから追ってくる程の事…国王陛下の暗殺でも画策したのか?」

「俺の母親を俺の眼前で惨たらしく殺しやがった」

「は…」
言葉は続かない。
聞いてはならない話を聞いてしまったのだ。

「他に何百人と人間を殺している…裏社会じゃ名の知れた殺人鬼だ。」

「殺…人鬼。」

「通り名は『零下の殺人鬼』、俺が知っているのは奴の姿は9年前で止まっている。」
「純白の長髪にピンクのメッシュが入っている。着ているのは純白のローブて金銀で装飾されていた…身長は145~150、見た目は女だが中身は男だ。」

「ちょっと待て情報が渋滞して目が回って来た」

「続ける」
「あと目は淡いピンクだ…女好きが好きそうな外見だ、マトモじゃねえ奴は猿なって終わりさ。」

「待て待て、ちょっと待ってくれ…。」
「君の話通りなら言いたくは無いけど
__君母親を殺しあまつさえ数百人単位の人間を殺し回っている奴がロリ属性持ち聖職者の男だと言うのか?」

「そうだ」

「女子小中学生くらいの身長で殺人鬼はマズイだろ色んな意味で。」
「手口は?一貫しているのか?」

「いや、全員が全員同じ殺され方をしている訳では無い。強いていえば心臓を持っていかれている死体が多い…理由は…そうだな、言わざるを得ないか。」

マイルドは大きく溜め息を吐いて天井を見上げると両手で顔を包み、小さな声で言い放つ。

「__ゅつ」

「え?なんて言った?」

「あ~~~、魔術だよ。ハリーポ○ターは魔法だが俺は魔術師だ…」
「亡架乃も魔術師、そして奴は魔術師の心臓を奪う為に殺人を犯し続けている。」

「ふ、はっ!はははっ」
何をふざけたことを言うのだと山田は大笑いをする。

「冗談はよしてくれよ!じゃあ何か?君が撃った弾丸が4回跳弾して犯人の背中を穿いたのも魔術だって言うのか?」
「4回反射して当たるのも偶然にしちゃ行き過ぎてるけど」

「そうだよ」

「…なら証明できるのか?僕は非科学的な物は信じない主義なんだ。」
「君の撃った弾丸が偶然、運命的に当たっただけかもしれないだろ?」

山田は真剣な顔でマイルドを見据える。
それは嘘なら容赦はしない、という心の表れだろう。

「信じる信じない抜きにして俺は魔術師だ。嘘偽りなく、それが真実なんだよ山田悠斗君。」
「君が俺を信じなくても構わない…証明し無ければ亡架乃の情報を得られないと言うなら……」
マイルドは視線を壁へと向ける。

「__探偵は犯人を見つけることが仕事であり、疑われた者は自身へ向けられた疑いを晴らさなければならない。」

マイルドは座っていたソファーから立ち上がると、事務所の壁に貼ってあるチラシを指で叩く。
チラシには今日の日付と大きな文字で、【大繁盛祭パレード開催】と書かれている。

「今日この時間、君の事務所の通りでパレードが行われている。」
「丁度、隣接する繁華街の中間にあるこの探偵事務所はあと4、5分程度に入口前をこのパレードは通過する予定だ。」
「ここまで間違っている所はあるかな山田探偵?」

「あぁ、間違いない」
「だけどそれがどうしたんだ…君と何の関係が、」

マイルドは山田の言葉を遮って話を続ける。

「そしてパレードの最後尾に台車でバカデカい銅鑼を運んでいる。」
「チラシにも銅鑼を叩いてる爺さんが居る」「__今から俺がその銅鑼を叩いてやると言ったらどう思う?」

「ふん、信じないさ。」
「仮に聞こえたとしてもタイミングが偶然合ったとしか思わないだろうね」

眼前のマイルドは真剣な顔をして此方を見ているが、山田はそんな話は信じる気が無い。

「あと君がここに来る直前で銅鑼を鳴らす爺さんにタイミングを話してたとしても、俺と悠長に話し過ぎだ。」
「計画していたとしても、現実的じゃないね」

ありえない話だ。
馬鹿馬鹿しいとさえ思う。

「遠くから微かに聞こえるテンポは叩いて約15秒間を空けて次の音が聞こえるよな?山田もそう思うだろ」

「だな、間違い無い。」
「去年も僕の知り合いの友達の叔父が銅鑼を叩いていたが今年と同じテンポだ。」
「瞬間移動でもするのか?此処は俺の事務所だ…マジシャンの種は用意出来ない」

「瞬間移動?」

「マジックショーじゃ定番だろ?」
(そろそろ焦り始めたか?俺に馬鹿げた嘘を吐くなんて…)

山田が勝利を確信した次の瞬間。

「動く必要など、無い」

突然マイルドが空中から拳銃を抜いて空いた窓の隙間にノールックで2発撃ち込む。
耳をつんざくような爆音が部屋中に響いた。
そして当たり前のように、サイレンサーの着いていない拳銃の発砲音で驚いた下の階に居た大家さんが階段を駆け上がり「一体なんの騒ぎだ!!」と扉を開けたと同時だろう。
なんと遠くから銅鑼の音が連続して3、4回鳴ったのだ。

「信じるか?」

マイルドは持っていた拳銃を瞬きの間に跡形もなく消すと、山田に不敵な笑みを浮かべる。

「ま、魔術師って金になるのかな…」

山田はポケットからスタンガンを取り出しバチバチと音を立てた。
勿論フリだけで本当に売ろうなんて思ってはいないが…
山田のその様子をマイルドが見ると
「ん?殺…す?」と言って大家さんに見えない角度で山田のコメカミに拳銃を突き付ける。

「冗談ですやん~」
「オレタチ、トモダチ。」
山田は焦りながらマイルドに片言の日本語で宥めようとする。

「ワタシニホンゴワカラナイアルヨ」
此方も頭に血が上ったようで片言で返す。

「お前イギリス人だろキャラぶれっぶれやないか」
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