アナザー

ピラフドリア

文字の大きさ
上 下
10 / 12

第10話 『願望』

しおりを挟む
アナザー



著者:ピラフドリア



第10話
『願望』



 ウィングは一足先に最上階へと辿り着く。



 そこに居たのは顔に傷のあるヴィラン、ダークネス。そして奥には鎖で縛られたフードを被った男がいる。



 情報ではそのフードの男が組織のリーダーとされていた。しかし、様子がおかしい。



 どう見てもリーダーという感じではなく。拘束されて囚われている。



「ダークネス。これはどういうことだ?」



 ウィングはダークネスに問う。すると、ダークネスは囚われた男に近づき頭を撫でる。



「俺はコイツを飼ってるのさ」



 仲間ではないということだろう。しかし、なぜ、この男を飼っているのか。



 ウィングの疑問にダークネスはすぐに答えてくれた。



「コイツは俺の本体さ。いわば、願望の発生源」



 そういえば、フードの男の情報を聞いた時はヴィラン名はなく本名である。稲葉 久一(いなば きゅういち)で教えられた。



 ヴィランのボスであるのに、なぜ名前がないのか。その理由は……。



「この男は現実世界からこの鏡の世界へ迷い込んだ。別世界の人間。イレギュラーだ!!」



 このフードの男は現実世界から来た男で、その男を利用してダークネスはヴィランになったということか。



 ウィングは剣を構える。



 そう分かった以上、その男を救うのがヒーローの務めだ。



 ウィングの敵意に気づいたダークネスも構える。



 武器は持たない。拳を前に突き出し、空手家のような構えだ。



「お前の能力は資料で知っている。降参するなら今のうちだぞ」



 ダークネスの能力は「先読み」。未来予知のような能力だ。



 簡単な未来を見ることができる。しかし、先読みは未来予知とは違い、確定する事象を読み取るのではなく、ダークネスの思考が一時的に加速し、相手の動きを予想するというもの。



 ダークネスの知識を超える範囲や知り得ない情報は予測できない。



 その能力を使っていれば、自分自身が勝てないことにも気づけるはずだ。
 しかし、ダークネスは降参しない。



 これはどういうことなのだろうか。



 ダークネス自体には戦闘能力はない。



 だが、この自信はどういうことなのか。



「警戒してるのか。ウィング?」



 ダークネスは言う。



「……」



 ダークネスの言う通り、ウィングの警戒心は強くなる。



「なぜ、俺が中村を倒せたのか? 気になるか?」



 ダークネスはそう言うとニヤリと笑ってみせた。



 そしてウィングに向かって右手を突き出す。



「見せてやろう。俺の力を!」



 すると、ウィングの身体が突如重くなる。これはまるでグラビティの重力を操作する能力!!



「どういうことだ?」



「さっき言った通りよ! 俺が願望を支配してる。それだけのことだ!!」



 その時、ウィングは理解した。ダークネスの力の理由を!!



 ダークネスの現実世界での姿はあそこで捕まっている人間だ。
 迷い込んだ自分の本体を捕まえ、願望を要求している。



 普通ならちょっとした願望じゃ能力にならない。



 だが、この世界に直接本人がいることで、その願望を捜査できる。



 普通であれば、能力は空を飛びたいや相手から見えなくなりたいなどの願望が、能力になる。
 しかし、この世界にいることで、戦闘の様子を見ていれば、この攻撃を防ぎたい、ここで攻撃したいなどの感情をコントロールすることができる。



 そのため、すぐに能力へと変化する。しかし、ただ捕らえているわけではないようだ。
 しっかりと、この男の感情をコントロールするために教育してある。



 ダークネスはこの男がいる限り、最強でいられる。



 ウィングがダークネスの重力により、動けずにいると階段から上がってくる音が聞こえる。
 その足音は二つ。



「お前の仲間はやられたようだな。ヒーローのご到着だ」



 ウィングはそう言い、ダークネスを睨みつける。



 ダークネスの仲間の可能性もある。だが、ウィングは信じている。イナズマとグラビティだと!!



 そして、



「ウィングさん、お待たせしました!!」



「ウィング!! 待たせたな!!」



 イナズマとグラビティが到着した。



 そしてイナズマは素早く能力を使い、ダークネスに奇襲仕掛ける。
 ダークネスはイナズマには気づいていたようだが、対処できずにイナズマの蹴りを受ける。



 そして蹴られた衝撃で転んだところをグラビティが重力で拘束した。



 ダークネスは二人の攻撃を受けたことで、ウィングを拘束していた重力を倍にする能力を解除する。



「助かった!!」



 ウィングは二人に礼を言う。すると、二人は頷いてダークネスと対峙する。



 ダークネスは重力を倍にされ、普通なら動くことのできない状態のはずなのに、ゆっくりと立ち上がる。



「役立たずどもが……」



 ダークネスはイナズマたちが現れたことで、仲間がやられたことを理解したようだ。



「降参するか?」



 イナズマたちも男が拘束されてる姿から、主犯はダークネスだと分かったようだ。



 そして男を助けようと行動する。



「降参? するわけないだろ……」



 ダークネスはイナズマの言葉に反応する。やはり、降参することはないか……。



 ダークネスと三人のヒーローの戦いが始まる。




【後書き】


 ついに最終決戦か!?



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

銭湯マスター

ピラフドリア
ファンタジー
銭湯マスター ⭐︎あらすじ⭐︎  最も長くお湯に浸かっていられるのは誰なのか? そんな大会があることを君は知っているだろうか。  これは四年に一回開かれる銭湯マスターという称号をかけた男達の熱いバトルの様子である!!  それぞれの想いを胸に、今、選手達が銭湯へと向かう。 ⭐︎ピラフドリア⭐︎  初心者の書き手です。誤字なども多いと思います。  イラストや動画制作もしているので、そちらもよろしければご覧ください。 ⭐︎注意⭐︎  悪質な行動やコメントはお控えください。私だけではなく、関係者や他の読者が不快に思われる場合がございます。  出来る限りを尽くしますが、全てのコメントやメッセージを把握できるとは限りません。  大幅な修正は極力控えますが、事情により修正が加えられる可能性があります。  投稿頻度に関しましては、現段階では安定は保証できません。場合によっては長い期間お待ちしてもらうことがございますが、お許しください。  二次創作や宣伝に関しましては、一度作者(ピラフドリア)を通してください。作品への影響を考え、検討させていただきます ⭐︎詳細⭐︎ 以下のサイトでも投稿してます。 ・小説家になろう ・エブリスタ ・カクヨム ・ハーメルン ・pixiv ・ノベルアップ+ ・アルファポリス ・MAGNET MACROLINK ・ツギクル ・note ・TINAMI ・GALLERIA ・YouTube

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

処理中です...